クロスカルチャー コミュニケーション

クアラ・トレンガヌ


縁側で作業をする人や昼寝をする人が多い長閑な漁村をめぐりながら、路線バスはゆっくり走り、クアラ・ブスッの村から3時間ほどかけてクアラ・トレンガヌの街に到着した。スカーフで頭を覆った女性の多さに異国を感じる。マレーシア半島の北東部はイスラム色が強くて、コタ・バルの街でも宗教色の濃い服装で歩く人を大勢見かけた。

バスターミナルで荷物を預け、セントラルマーケットに向かう。南国の果物や野菜、お菓子を物色した後、鮮魚売り場に行くとほとんど店じまい状態だった。わずかに残った魚やエビ、カニを眺めていると熱心に勧められるので、そそくさと退却してお隣の中華街に行く。「魚料理がおいしくて、ビールが飲める」とガイドブックに載っていた中華料理店に入った。イスラム系のレストランでは、お酒はご法度で出してくれない。久しぶりに本格的な中華料理を堪能した後、並びにある中華寺院を訪ねた。赤がまぶしく色彩豊かな寺のなかに入り、せっかくだからお参りをしようとお金を払ったものの中国式の参拝方法がまったくわからなかった。赤と金の紙に包まれた数本のロウソクと大きな線香の束を手に思案していると、お寺の人が声をかけてくれた。本堂、外、本堂と一緒にまわってもらい、すべての線香を上げ、座布団に膝をつき祈ると、なんだかすごくご利益があるような気がした。親切な中国系の青年にお礼を述べて中国寺院を後にする。中華街は小規模だったけれど、しっかり中国を主張していて楽しかった。


街に点在するモスクを目印にして、宿探しをするも適当なところはみな塞がっていた。クアラ・トレンガヌに滞在するのは諦めて、夜行バスで首都のクアラ・ルンプールへ行くことに決めた。午後10時30分発のチケットを買い、出発までまだ時間があったので、クアラ・テンガルの郊外にあるトゥンガ・ザハラ・モスクへ行くことにした。バスターミナルでモスク、モスクと訴えていると白いスカーフを被った女の子がバスに連れて行ってくれ、白い服を着た運転手がトゥンガ・ザハラ・モスクの前で降ろしてくれた。椰子の木が規則正しく植えられた公園の歩道を歩いていくと水上に浮かぶ白亜のモスクがあった。イスラムの伝統とモダンを調和させたデザインで水に浮かんでいるような幻想をあたえる。トゥンガ・ザハラ・モスクは、別名、「フローティング・モスク(Floating Mosque)」と呼ばれている。近くに寄るとモスクが浅い池に囲まれているだけなので驚いたけれど、水に反射して映し出される姿は美しくて、一見の価値がある。祈りの場が広がるモスクのなかも近くから覗いて、充分満足したところで、公園と隣接する東シナ海の砂浜へおりた。釣り人のあいだを少し歩いてから、バスが通る大通りへと向かった。


フードコートのような屋台村で、スイカジュースを買って一休みした後、教えられたバス停に行き、バスを待った。1時間ほど佇んでいると一人のおじさんが現れ、「もう今日のバスは終わったよ。車で送ってあげるよ」と言った。まだ7時前だったので、にわかに信じられず、「えっ?」と言ってしまった。そのおじさんは、バス停の脇にあるドライブインのオーナだった。「うちのカキ氷はおいしい」と言うので注文すると、カキ氷にピーナツ、ゆで小豆、トウモロコシ、パイナップル、ゼリー、アイスクリームなどをトッピングした上にココナッツミルク、黒糖シロップ、イチゴ?シロップをかけたものが運ばれてきた。2リンギットでいいというので、お言葉に甘えつつ、白熊くんもびっくりなカキ氷に手をのばす。味は意外にさっぱりとしていて食べやすかったけれど、さすがに途中で頭が痛くなった。それでも、残すのは気がひけて完食する。その後、タクシーで行くから大丈夫と断るも、結局、おじさんの車でバスターミナルへ送ってもらった。お礼にとキティちゃんの電卓を渡すと笑っていた。