タイ バンコク
スワンナプール空港からエアポートレイルリンク(シティライン)に乗り、バンコク市内へと近づくにつれて、車両内に、黒、白、グレーの服を着た乗客が増えていった。カジュアルな服を着ている人が多かったので、一見、喪服には見えなかったけれど、2016年10月13日にタイのプミポン国王が崩御し、その後、一般の人は1ヶ月間、公務員は1年間、黒、白、グレーを着用することが課せられた時期に当たっていた。
普段はカラフルな服を好むタイ人が皆スタイリッシュな感じになっていた。ただ、おおらかなタイらしく、他の色が混じっていても問題なし。ちなみにこの法律は外国人には適用されないので、観光客がどのような服を着ても咎められることはなかった。
空港で旅行者向けのSiMカードを購入していたので、NAVITIMEバンコクを利用し、ナーナーの繁華街にあるホテルへ。翌朝、タイ在住の古い友人と再会した。
「どこに行く?」と聞かれたので、「ワットポーは?」と言うと「王宮近くの道は封鎖されているし。弔問に訪れた人々が長い列をつくっている」とのこと。ムエタイやニューハーフショーなどは喪中につき自粛中。思案の結果、チャトゥチャック市場を歩くことになった。週末のみに開催される市場なのに恐ろしく広い。露店や行商人も含めると店舗総数は1万を超えるという。暑さをぼやきつつ、迷路のような市場内を歩き、装飾用ランプ、南国の果物の形を模した石鹸、スパイスなどを買い込んだ。装飾用ランプは、日本対応の電球に交換してもらわないと光が弱いとのことで、電球を交換してもらった。
日本に帰国してしばらく経ってから、この装飾用ランプを二子玉川の蔦屋家電で見つけた。もちろん値段は数倍、お土産に最適と思う反面、かさばるし、センスが問われる気もする。私は、未だに封を切っていない。
チャトゥチャック市場の向かいにあるオートートー市場で高級なフルーツが整然と並べられているのを横目で眺め、現地のおすすめ屋台料理を買い、フードコートでいただく。日本のタイ料理とは辛さがまったく違うので、自然と汗が湧き出てきた。そんな姿を見てか、友達のタイ人の旦那がマンゴジュースを差し入れてくれた。マンゴジュースの甘さと料理の辛さにタイに来たことを実感した。
ホテルに戻り、近くのお店で2時間ほどタイ古式マッサージを受けた後、チャイナタウンへ繰り出した。ヤオワラート通りには、漢字が溢れていた。賑わっている屋台でメニューを開き、「あれ?」と思ったら、友人が「中華街の屋台では、魚介類を焼いて食べるのが一般的、中華料理店ではフカヒレを食べるのが一般的」と言った。テナガエビの姿焼き、蟹と卵のカレー炒めなどをビールとともにいただく。まとわりつくような暑さと刺激的な辛さでビールがすすむ。タイではビールに氷を入れる習慣があるけどまったく気にならなかった。
翌日も「どこに行く?」から始まり、悩んだ結果、デパートを巡ることになった。休日の定番なそうな。明るい色を好むタイの人々は黒い服をそれほど持っていないとのことで、デパートの洋服売り場は、黒、黒、黒、白、白といった感じ。ユニクロもモノクロ、H&MもB&Wのようになっていた。デパートのインフォメーションには必ず黒いリボンで作られた喪章が置いてあった。この紋章を付けていれば、何色の服を着ても大丈夫という説もあった。また、デパートの前にプミポン国王の祭壇が設けられているところも多く、多くの人が手を合わせていた。プミポン国王の追悼写真展が無料で開催されていたので、入場すると、カメラ好きのプミポン国王が撮った写真を一眼レフで撮影している若い人が多くて驚いた。
タイのデパートを歩いて、改めて気が付いたのは、日本食ブーム。大戸屋、吉野屋、すき家、CoCo壱番屋、丸亀製麺、やよい軒、八番ラーメン、モーモーパラダイス、ペッパーランチなどなど、バンコクに滞在するのであれば、日本食には困らない。「最近は家の近くでもおにぎりが買えるようになった。」とバンコクから北へ車で2時間ほどのところに住む友だちがいう。おやつに海苔をぱりぱり食べたりもするらしい。しっかりと味付けされた海苔がお菓子屋さんに並んでいた。
「タイしゃぶは1人では食べにくいから3人で」と、MKレストランを選んだものの、ふとMKレストランは日本に進出し、全国展開していることに気づき、はて・・・と思う。店内にはポケモンとそっくりなMKレストランオリジナルキャラが各テーブルに置いてあったけれど、間違いなく日本にはないと思う。何はともあれ、3人で鍋を囲んだ。
タイのダイソーは、60バーツショップで日本円に換算すると約180円、商品が日本と同じことを確認し、かき氷専門店でほうじ茶ミルク味と黒蜜きなこ味のかき氷を注文した。値段は1つ800円ほど。カーオ・マン・カイ(蒸し鶏のせご飯)が食堂で150円ほどで食べられる物価を考えると恐ろしく高い気がするのだけど、1つのかき氷を数人で食べる若者で店は賑わっていた。
「夜は、豪華なタイ料理を食べたい」と提案したら、「ちょっといいお皿にきれいに盛り付けられているだけで味は屋台の方が美味しいよ」と却下された。結局、デパートでお惣菜とビールなどを買い込み、ホテルの部屋でのんびりすることに。そして、深夜2時過ぎまで話し込み、タクシーで帰宅する夫妻を見送った。
道先案内人兼通訳がいなくなるとバンコクの暑さが身にしみた。タクシー、バイクタクシーともに言葉が通じず、行き先を告げられない。必然的にBTSと地下鉄を利用することになるので、市内の炎天下を歩く時間が増える。太陽の熱を吸収する黒い服に怒りすら覚えた。