クロスカルチャー コミュニケーション

タイ メイクローン市場

バンコクは全く違う世界だ。デバートでそんな声が聞こえてきて、ふと、バンコクの郊外にあるメークローン市場に行こうと思った。メークローン市場は、折りたたみ市場として有名で、線路わきに広げたお店の商品や軒(日よけシート)を電車が通る直前に片づける様子をYouTubeで見ることもできる。
翌朝、ビクトリアモニュメントのバス乗り場で、メイクローン行きのロットゥー(ミニバス)を探していたら、係員らしきおばちゃんから、ここよ、と列に並ばされた。そして、待つこと30分ほど、ロットゥーの快適な車内に乗り込み、ひと眠り、1時間ほどで到着した。
ミニバスの運転手に「メークローン市場はどこ」と聞いても返事はなし。後ろにいた乗客から「前の大通りをまっすぐ行った突き当りにボート乗り場がある」と教えられた。仕方がないので、10分ほど歩いてボート乗り場へ。切符売り場でメークローン市場の写真を見せるとボートを指差し、指3本、走れのポーズが返ってきた。3バーツ支払い、ボートに向かって走る。動き出したボートに躊躇していたら、「ジャンプ」という声が聞こえてきた。とりあえず、飛び乗り、対岸へ。「ここはどこ。メイクローン市場はどこ」と近くの売店で聞いているとき、列車の汽笛が聞こえた。

私がロットゥーで到着したのは、マハーチャイだった。ガイドブックによるとメークローン市場は、マハーチャイから渡し舟で対岸に渡り、バーンレーム駅まで歩き、終点のメークローン駅まで1時間40分ほど列車に乗る。メークローン線は単線で1日4往復、バーンレーム駅の時刻表には、7時30分、10時10分、13時30分、16時40分と書いてあった。

10時10分の列車を逃したので、次の列車は13時30分。人気のない閑散としたバーンレーム駅で途方に暮れた。緑に囲まれた小さな始発駅で呆けていても仕方がないので、改修したての線路を歩いてみる。線路を台に日曜大工をする人、線路に腰掛けて井戸端会議をする人ありとのんびりしていた。
ただ、歩き出してすぐに汗が噴き出し、改修したての枕石に滴り落ちた。熱を吸収する黒のポロシャツにグレーのワークパンツ、黒のスニーカーが恨めしかった。

15分ほど歩いたところで線路脇に屋台を見つけた。何があるのか興味津々で見ていたら、声をかけられる。とっさに目に付いた麺を指差すとあつあつのうどんが出てきた。屋根はあるけど壁はない。もちろんクーラーなぞないところで、スープの熱さとまつわりつく蝿と闘いながらうどんをすする。店員のおばちゃんがオレンジジュースを私に掲げたので、うんうんと頷くと氷をたっぷりと詰め込んだマグカップにオレンジジュースを注いで出してくれた。うどんは出汁が効いていて美味しかった。知っている数少ないタイ語で「美味しい」と言うと店員のおばちゃんたちが色々と話しかけてきた。ガイドブックに掲載されたメークローン市場の写真を見せたら、時間を見て何やら提案してきた。拝むジェスチャーに頷くとスクーターを指差す。会計を済ませ、促されるままおばちゃんのスクーターの後ろに乗る。5分ほどで中華系のお寺とタイの寺院がある隣の駅に着いた。次の電車が来るまで観光をという配慮が嬉しい。たどたどしく「ありがとう」としか言えないのがもどかしかった。2つのお寺を隅々まで探索してもまだ時間がある。駅の駐車場で客待ちをしているバイクタクシーで近くの観光名所につれて行ってもらいたくても言葉が通じない。5分でお互いに諦めた。

列車が来たので、ホームらしきとこに近づくと「これじゃない戻ってくるからそれ」と身振りで物乞いらしきおじちゃんに教えられた。その後、30分ほどして折り返してきた列車に乗り込んだ。改修工事後だったので、脱線することもなく、1時間40分ほどでメークローン駅に近づいた。しばらく列車が止まり、列車の前に行く人、列車から降りる人もいた。何事と思いきや、メークローン市場に列車が進入する直前だった。たくさんの観光客が列車のすぐ脇に立ち写真を撮っているなか、列車は進む。車窓のすぐ下には、人々と市場の商品。身を乗り出して写真を撮っていたら、露店のテントにぶつかりそうになり、慌てて引っ込んだ。

メークローン駅は市場のすぐ隣にあり、ホームからも折りたたみ市場といわれる所以を見ることができた。列車が通り過ぎると市場のおばちゃんたちが次々に商品を線路のすぐ脇に並べていく。通路となっている線路と線路の間を歩き、生鮮食品の市場を眺めるのはとても興味深かった。列車が市場を通過するのを見るため、大勢の観光客とともに線路際に立つ。日本ではありえない場所で、市場のおばちゃんが商品を片付け姿と通過する列車を見つめた。列車が去った後は、すぐにまた元の市場の姿に戻っている。

なるほど、と思いつつ、バーンレーン行きの最終電車を見送ったので、ロットゥーの停車場を探した。見あたらなかったので、バイクタクシーの停留所で聞くと、目の前の店を指差された。「バンコクに行くロットゥーの停車場を探している」と電器屋のおじさんに伝えるとおじさんはスマホを取り出し、どこかに電話をかけた。何事かと思いきや、「娘が英語を話すから」とスマホを渡された。きれいな英語を話す女性に「バンコクのナーナー駅の近くにあるホテルに帰りたい」と伝えるととても親切に説明してくれた。
そして、お店のおじさんに電話を代わるとお店にいたお客さんに停車場までの案内を頼んでくれた。英語を話すお兄さんに停車場まで案内してもらったおかげで、バンコクのビクトリアモニュメントでロットゥー乗り場が見つからなかった理由も判明した。ビクトリアモニュメントの渋滞を回避するため、ロットゥー乗り場は移動したのだとか。
1時間半ほどでバンコクに到着する予定が渋滞に巻き込まれ、3時間ほどかかりバンコクのロットゥー乗り場に到着した。ロットゥー乗り場からは無料送迎バスでビクトリアモニュメントまで送られた。
ビクトリアモニュメントの歩道橋に人が集まっているので、何事かと思えば、ポケモンのスポットだった。タブレットを取り出し、私も仲間に入ってみる。ゼニガメ、フシギダネ、ポッポ、カイロス・・・日本と同じことを確認して、ホテルに戻った。

早朝、水の都アムパワーに行くためウォンウィエン・ヤイ駅を探した。駅の近くまで来ているはずなのになかなか見つからない。やっと見つけたときは、これが駅なのね、と思った。そして、ウォンウィエン・ヤイ駅からマハーチャイ駅までの列車は、おそろしく揺れる。1時間ほどでマハーチャイ駅に到着したが、なんだかぐったりしてしまった。ここからメークローンまで行き、ソンテオに乗り代え、アムパワーに行く気力が沸かない。前日に飛び乗ったボートを見送り、マハーチャイ町を散策することにした。

市場には新鮮な魚や干物が並べられ、多くの人が行き交っている。迫力のある肉の塊、果物、お菓子など見ていて飽きない。そして、バンコクから列車で1時間ほどしか離れていないのに物価が安い。ココナッツ味のキャラメルなどを大量に買い込み、食堂に移動した。言葉が通じなかったので、近くで食べている人の料理を指差し、ビールは冷蔵庫の前で注文する。出てきた料理は私の予想とは違い焼きバナナ、スパイシーな炒め物とソーセージだった。お隣さんは魚を食べていたはずと思いつつ、口に運ぶ。何はともあれ、ビールはすすんだ。

マハーチャイの繁華街を一周して、ちょっとおしゃれな屋台でアイスティを買い、列車に乗り込んだ。揺れる電車の車窓から椰子の木々や小川、畑、トタン屋根の民家などを眺めつつ、タブレットでメールを送り、ネットを見る。電波状況は良好だった。ただ、タイ語の無料翻訳アプリを見つけてしまい、旅の終わりのこのタイミングでなぜ、と思った。

バームレーンの隣駅から徒歩2分
バームレーンの隣駅から徒歩2分
メークローン駅付近(車窓より撮影)
メークローン駅付近(車窓より撮影)
ゲストハウス キャピタル
メークローン市場を通過中
(車窓より撮影)
メークローン市場
メークローン市場
メークローン市場
メークローン市場
バンコクのポケモンスポット
バンコクのポケモンスポット
ウォンウィエン・ヤイ駅
ウォンウィエン・ヤイ駅
マハーチャイの市場
マハーチャイの市場 魚屋
マハーチャイの市場
マハーチャイの市場 干物屋
マハーチャイの市場
マハーチャイの市場 お菓子