2026年2月22日


講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載10

定時制の統廃合は、一番弱い層の切り捨て

文化や培ってきたものが配慮されていない

神奈川は高校と地域の関係が強くない

和光大学教授 山本 由美

 

定時制6校の募集停止
文化や培ってきたもの(翠嵐定時制の多文化共生教育)が配慮されていない

 次に、適正配置の考え方です。定時制高校の場合は、これは文書に書いていたのですが、県内各地から1時間以内で通えるかどうか、そして通学先として代替可能な定時制課程設置校がまわりにあるかどうかなど、総合的に判断して、今回の募集停止校6校と継続校を決めたとされています。

 これによって、津久井高校を除く11校が、徒歩15分圏内となると書かれているのですが、本当ですか。そんな通いやすくなるのですか。本当ですか。本当でないのですね。

 ただ、通えればよいということでいいのか。高校の文化とか、高校の今まで培ってきたもの(翠嵐高校定時制などの多文化共生教育)とか、そういったものは何も配慮されなくて、とにかくどこかに通えればいいというように考えられます。

神奈川は高校と地域の関係が強くない
高校は地域に根付き、18歳までは地域で育つことが必要

次に、2023年度の神奈川県全日制進学率が89.3%、東京は今94%なので、神奈川は4%程度低いのですね。それで、東京の全日制進学率目標は96%(神奈川の目標は90.3%)ということで、神奈川と東京はこんなに違うのだということです。

 神奈川はコミュニティスクールとかというのを行っていますが、高校と地域の関係がそんなに強くないといえます。

 (私の大学の)学生さんに「母校の高校が廃校になってしまうのはどうですか、いやじゃないですか」と聞いてみたところ、「近くにいっぱい学校あるから」とかなんか言うのです。高校を守る広範な運動が組織されにくいとか、学校と地域の関係が弱いところなどが(統廃合に)狙われてくると思います。

 教育学者の田中孝彦氏は、高校は地域に根付いて18歳まで徹底的に地域で育つのがよく、その後グローバルになっていくにのしても、(地域で育つことは)絶対必要だと言っています。

定時制の統廃合は、一番弱い層の切り捨て

 神奈川の場合は、先ほども言ったようにインクルーシブ教育とか、在県外国人受け入れなどは、進学校でない学校で受け入れ、高校を序列化し包摂して特色化しています。

 結局、定時制高校を廃校にするということは、一番弱いところを切り捨てることで、親が低所得層の生徒、高校に通いづらい人材を切り捨てることになります。東京も同じですが、拡大する広域通信制高校や民間のオンラインスクールで包摂すればいいと考えているのではないかと思います。

 これは(定時制の大規模統廃合をすすめる)山口県なども同じで、一番最底辺の層をあまり真面目に引っ張り上げる気がないというか、必要ない人材というか、何かひとつ違うターゲットにしているように感じます。

対抗軸をどうつくるか
 グローバル都市シカゴにみる高校再編

 これで最後ですが、私の研究がシカゴ市の学校教育をテーマにしているということなので紹介したいと思います。

 私は、東京のモデルとしてアメリカのシカゴ市をみていました。シカゴは、かつて(70〜80年代)製造業の町だったのです。それが、金融、サービス、不動産、多国籍企業の本社という劇的な産業構造の転換がありました。

(連載11につづく) 

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載3

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載4

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載5

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載6

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載7

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載8

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載9

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