2023年12月8日

  講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

 

<6月18日に行われた「学校統廃合について考える」集会での講演を連載します>


 和光大学の山本由美と申します。私は、どちらかというと義務制の方で呼ばれることが多くて、高校は時々呼ばれるので、あまり高校の中身の問題は詳しくはないのですが、できる範囲で、神奈川県は他県との違いが際立っているので、他の県との違いも考えながら見ていきたいと思います。

神奈川の高校廃校数(76)は、
同じ首都圏の千葉(23)や埼玉(39)に比べ際立って多い


 文科省が毎年発表している小・中学校の廃校数の推移を見ると。2000年前後から統廃合が増えていき、高止まりしていることわかります(グラフは省略)。

 高校の廃校数も2000年を超えた頃から増えてきています。この頃は、三位一体改革ということで、地方交付税が減額され、それに伴い高校再編が行われ、統廃合が進められていきます。

 都道府県別の公立高校廃校発生数(2002年度から2020年度)を見ると(グラフ省略)、一番多いのは北海道で90、次が一番激しい大阪で84,三番目に多いのが東京と神奈川で76、その次が兵庫の47です。

 神奈川は小・中はあまり廃校を行ってはいないのですが、高校の廃校数は(同じ首都圏の埼玉39,千葉23と比べても)際立って多いことがわかります。

愛知県の高校廃校数は17  第二次産業が
生きている県は高校をいじらない

 人口の増加率が東京に次いで高い愛知県の高校廃校数は17で、小・中の廃校数を含めても80でしかなく、全国で5番目に廃校数が少なくなっています。

 愛知県は高校再編がほとんどなく、少し名古屋市で最近あったのですが、同じ大都市でも、産業構造が変わらないところは、高校はいじらない、

 つまり、第二次産業が継続して健全で生きているところは高校をいじる必要がなくて、工業高校とか普通科の高校を出ても、第二次産業の大企業やその下請け企業に就職できて、高卒で安定的に就職できる県は、高校をいじってないのです。

 私が最近、高校統廃合で呼ばれた県は山口とか富山など今まで高校再編がほとんどなかった県で、富山、福井、滋賀とか高校をいじらないところは、まだ第二次産業が生きています。

 山口では工業高校や普通科の高校を出て、宇部にある大きな企業に就職でき、下請けの工場の良いとこに就職できる県は高校をいじらない。しかし、そういう県が最近になって初めて高校再編を行い始めたこともあり、山口などに呼ばれるようになりました。

 そのような中で、定時制を一気につぶすようなことを他県でも行われようとしており、山口では、定時制5校を1つにまとめ、校庭もない新山口の駅前にビルを造って5校の定時制すべてを入れようとしています。萩から山口まで80キロくらいあるのですが、どうやって定時制に通えというのでしょうか。そのようなことが起きています。

 東京とか大阪、兵庫、神奈川など、第二次産業が衰退してサービス業などの第三次産業に転換することが起きたところでは、高校が古いタイプになってしまい、高校を再編しようということになったのではないかと思います。

 東京がその典型と考えられます。再編する中で統廃合(廃校)を進めるという、高校のスクラップアンドビルドが行われていると思います。

(連載2につづく)

講演神奈川県の高校統廃合を考える」 連載2

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