2023年7月28日

  6.18「学校統廃合について考える」講演集会が開かれる

学校統廃合に対抗する軸は、教職員と地域住民との共同


 6月18日横浜市内で、「かながわ定通教育を考える会」も所属する「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」主催の「学校統廃合について考える」講演集会が開かれました。

 当日は、山本由美和光大教授が「神奈川県の高校統廃合問題を考える」と題する講演を行いました。

 その後、横浜市神奈川区にある斉藤分小学校の統廃合問題と横浜翠嵐高校定時制の募集停止問題について、それぞれ報告があり、参加者で意見交換されました。

 教職員、保護者、教育関係者だけでなく、婦人団体、「夜間中学を考える会」や図書館予算の増額を求める会などの方も参加されました。また、大山奈々子県議、君嶋千佳子前県議も出席され、県の教育行政について発言されました。会場には31名、オンラインで11名が参加しました。

統廃合の基準がない   特色の創設と併合が統廃合の理由に

 山本さんは、2014年に総務省が全国の自治体に「要請」した「公共施設等総合管理計画」によって、延床面積で大きな割合を占める学校施設が主要なターゲットになり、統廃合が押し進められていると指摘しました。

 この計画では、交付税交付団体であれば、計画策定費用は国が全額負担し、不要となった公共施設を解体する費用が地方債の適用(75%)となり、統廃合を行いやすくなります。

 他県では、特に大阪が典型的な例で、3年連続定員割れした学校は募集停止・廃校とする統廃合基準があります。しかし、神奈川ではこうした基準はなく、定員割れをしていない学校でも統廃合の対象になっています。

 統廃合後の新校の校名については、校名検討懇話会で検討されていますが、どの学校を統廃合にするかについては、全く審議会等で検討していないのが、神奈川県の特徴であると指摘しました。「統廃合校はどこで決めているのですか」という問いかけに対しては、会場参加者から「(県教委の)総務室」との声があがりました。

 神奈川県では極端な「特色化」、「序列化」がすすめられ、特色の創設や併合が統廃合の理由に使われているのではないか等々が話された後、統廃合に対して、どのような対抗軸を構築していくべきかについて、アメリカシカゴで取り組まれた教職員組合員と地域住民組織との共同の例が示されました。

斉藤分小学校は地域の核・要  翠嵐定時制が行ってきた「ともに生きる」教育

 講演の後、「二谷小学校と斉藤分小学校の統廃合を考える会」代表の滝田賢治さんから、斉藤分小学校の統廃合問題についての報告が行われました。

 横浜市教委は、斉藤分小学校に入学する児童の増加は見込めないと言い、小規模校のデメリットを強調し、単学級校(1学年1学級校)では「いじめ」は解決できないとする態度に終始してきました。「考える会」は、小規模校であれば教員のもとで児童同士が「いじめ」問題を真正面から取り上げ、議論し解決せざる得ないことになると主張しました。

 滝田さんは、斉藤分小学校がなくなると、低学年や特別支援学級の児童の通学が困難になるだけでなく、この地域の子どもたちは三つの小学校に分かれて通学することになり、地域を担う保護者や生徒の人間関係が分断され、地域のコミュニティーが破壊されることにつながると述べました。

 次に、「横浜翠嵐高校定時制の存続を求める会」共同代表の鳥山洋さんから、翠嵐定時制の募集停止問題について報告が行われました。

 県は「ともに生きる」を強調するが、まさに「ともに生きる」教育を実践してきたのが翠嵐定時制であると、最初に主張されました。

 2003年頃から外国につながる生徒が増加する中で、日本語学習の授業を選択科目におき、日本語教育や多文化共生教育に力を入れてきたこと、また家庭訪問を行い支援組織と連携して生徒支援を行ってきたことが説明されました。

 こうした「ともに生きる」教育は、現場の教職員が時間をかけ構築し、蓄積してきたものであり、これを神奈川工業定時制に移し替えていくことは難しく、翠嵐定時制を必要とする生徒のために存続させることが必要であると訴えました。
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