2025年7月17日


講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載

神奈川は、特色を新たに創設するかのような
統合理由で、統廃合を推進

和光大学教授 山本 由美

 
 小・中学校の適正学校規模は標準学級数というのがあって、1学校12から18学級というのが標準学級数と言っています。これも昭和の大合併の時に、人口8千人に中学校を開設すると12から18学級になるということで、行政効率性から出した数字なので、子どもにとっては意味のない学級数で、それを自治体が勝手に適正学級数と言っているだけなのです。

 高校の適正学校規模はより根拠が全くなく、県によってバラバラで、統合したい意図にそってつくっているだけで、小泉政権の時の「三位一体の改革」の時に一斉に出てきたのですが、その後全県一学区制が入ってきて、小規模になった学校を廃校にしていく時に、勝手に適正規模を設定することが起きたのかなと思っています。でも、何年続けて定員割れをしたら(廃校にする)というのは、ここ何年かで入ってきたと思うのです。

 それで、神奈川は本当に特殊だと思います。「県立高校改革実施計画」の1期計画の時から、特色化を表に出しながら統合対象校の特色を新たに創設するかのような統合理由を出す、生徒(入学者)減少は理由には出さない、商業高校など産業ニーズ、「人材」養成に合わなくなった高校のスクラップは感じられる。

 産業構造の転換に応じて学校を変えていかなければならないのだけど、それを特色化を使ってやっているような印象を受けます。

どの高校を統合するかの審議会、県民の「参加」はない
あるのは、校名検討懇話会のみ

 神奈川では、県立高校名検討懇話会というのをやっています。なぜこの学校を統合するのかという議事録がないのかと思って探したのですが、全然出てこなくて、審議しているのですかね。

 統合するというのなら、県の再編統合検討審議会などの議事録で出てくるのですが、統合の根拠などを審議しなければならないじゃないですか。

 兵庫県ならば、県立高校をどうやって再編統合するかという審議会があって、本当はどっかで決めているのだろうけど、一応形だけにせよ審議会で議論した会議録、議事録がホームページに出てくるのですが、神奈川ではホームページを探しても全く出てこないのです。

 誰が決めているのかわからない、人々(県民)が話し合うものとしては、校名検討懇話会しか出てこないのです。校名だけは話し合わせてくれるということにも、すごいと驚きました。
 
 神奈川県は、各再編統合時に「参加」させるわけではないのに、校名を決める時に県に5名からなる検討懇話会という会があるのです。5名は、研究者、企業、校長、P連、公募から成っているのです。こんな制度、他にないですよ。それで、研究者は代々数学教育の研究者がやっているのです。

 二つの学校が統合され新しい学校の校名を決める時に意見を聞くのですが、ここだけで議論しているのですね。一応、生徒、教職員、同窓会、保護者(PTA)、地域住民から意見を聴くのですが、「形式的意見聴取」ですね。

 前回の県立高校改革(2000年〜2011年)では、再編統合等により総合学科や単位制普通科などが誕生し、ほとんどの新校に新しい校名がつけられました。

 今回の改革(2016年〜2027年)では、「県立高校改革における高校選定の考え方」において、できる限り校名が浸透し親しまれている現在の校名を活かすとされています。

 単独改編、普通科専門コースやフレキシブル解消の場合には校名変更は行わない、生徒が喜びと誇りを持てるよう設置趣旨、期待を表す言葉などを使用するとなっています。

こんなことしかやらせない、「参加」させないというのでは、一体誰が教育に関わり、つくっていくのでしょうか。 

(連載8につづく) 

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載3

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載4

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載5

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載6

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