2024年6月14日


講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載

国から地方債などを借り入れ
公共施設の統廃合を推進

和光大学教授 山本 由美

 

神奈川のコミュニティスクールの特徴は、企業・NPOの取り入れ

 コミュニティスクール、神奈川県は全部入っているのですよね。

 全国だと、コミュニティスクールを高校に入れるということを結構やっているのですが、全国でやっているのは山間部とか僻地の高校をコミュニティスクールにして、先に挙げた島前高校(島根県)もそうですが、地域の活性化とか魅力化の事業をコミュニティスクールを中心にして行って、高校を存続させるということがあるのです。

 神奈川県では、全然違っており、どちらかというと企業を優先する感じがします。

 2016年1月の「次世代の地域・学校」再生プラン(学校と地域の一体改革による地域創成)のなかで、「社会に開かれた教育課程」において、民間に開かれたと言いながら結局、企業をできるだけ教育課程に取り入れていくとか、「学校を核とした地域力強化プラン」(2016年9月)のなかでも、できるだけ地域の企業やNPOの専門家を学校に取り入れていくとかの流れがあります。

 神奈川では、このようなことが強いのかと思います。

産業構造の転換から、高校のスクラップアンドビルドへ

 先ほども述べた産業構造の転換が劇的に生じ、製造業から金融・保険・不動産・情報関連サービス・事務所関連サービス・大企業本社部門の街になった東京において、高校はもう古いタイプの工業高校や商業高校、普通科底辺校もいらなくて、新しいタイプの高校が必要ということで、劇的なスクラップアンドビルドが起きました。神奈川も似ているところがあると思います。

国から地方債や事業債を借り入れ、公共施設の統廃合を推進

 次に、全国で高校の統廃合や小・中学校の統廃合を後押ししているのが、公共施設等総合管理計画というものです。皆さん、神奈川県のこの計画をご覧になったことがありますか。

 これは、今ある公共施設を全部維持すると将来的に改修に赤字が出るということで、予め壊して公共施設を統合、複合化しておこうという計画で、自治体に立てさせています。神奈川県も地方交付税を付与されている団体なので、「総合管理計画」には多くの特典がついてきます。

 まず、計画策定費用に特別交付税が適用されるので、国からお金を出してもらい計画を立てることができます。神奈川県のこの「総合管理計画」をどこのコンサルタント会社が作ったか、ご存じの方いらっしゃりますか。

 4割くらいの自治体は役人が作るのではなく、コンサルタントに頼んで作ってもらっています。悪いコンサルタントがいろいろ暗躍していて、一番評判の悪いところは東洋大学PPP研究センターというところで、埼玉県は県に張り付いてもらっているのですが、コミュニティを無視したような計画を出してくるので、紛争化しています。

 さらに、施設解体費用に地方債が適用されるというメリットがあるので、古くなった公共施設を壊すことは今まで自治体のお金でやらなければならなかったのですが、この「総合管理計画」に書き込めば国が地方債で75%まで出してくれるということで、すごく有利なのです。高校も古くなったのを壊したい時は、県のお金を出さなくて国から借りられるようになったのです。

 その他、規模最適化、多機能化(一つの図書館を市の図書館と学校図書館と二つで使うなど)、複合化(いろいろな施設をまぜて使う)、長寿命化(すぐ壊さず、改修工事をしてもたせる)に非常に有利な地方債が使えるようになっています。

 もう一つ、「公共施設等適正管理推進事業債」という非常に有利な事業債があって、これを使うと返さなくてもいい部分があって、国からお金を借りて公共施設を新しく建て直すことができるのです。それが期限付きで、2021年度までの期限が2026年度まで延長されたので、それまでに計画化すれば国から有利な事業債が借りられるということになっていて、統廃合を進めることにつながっています。

(連載4につづく) 

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2

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