2025年2月9日


講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載

特色化推進による高校再編・統廃合

和光大学教授 山本 由美

 

極端な特色化・序列化・英語力重視
 進学校はインクルーシブ教育実践推進校 になっていない

 (県立高校改革実施計画の三本柱―@序列化・インクルーシブ教育 A学校経営力の向上 B再編統廃合―を見てきましたが)加えて、極端な各校の特色化、さらに序列化に応じたインクルーシブ教育、在県外国人生徒対応を打ち出してくるのも、他の県にはあまりないと思いました。

 あと、生徒学力検査(高2対象)を始めていること、別格の学力推進校があり、グローバル教育研究推進校や国際バカロレア認定校など英語力を重視していることが目につきます。

 また、すべての学校でインクルーシブ教育を推進するとしながらも、インクルーシブ教育実践推進校を設定していて、進学校は実践推進校になっておらず、中以下の進学レベルの学校が実践推進校になっています。

コミュニティスクールの委員に企業関係者を入れる

 次に、神奈川らしいコミュニティスクールということなのですが、何が神奈川らしいのかがよくわかりません。神奈川は山口県と同様、すべての県立高校がコミュニティスクールになっているのですが、学校運営協議会をつくれば自動的にコミュニティスクールになるのです。

 神奈川の特徴は、保護者委員や地域委員という委員が少なく、1校あたりの委員は校長を含んで10名程度であり、こんなに少ないのは珍しいと言うかあまりない。

 あと、他の県などによくある、法定3権限の一つである教員の任用について県教委に意見を言える権限が明記されていないのではないかと思います。一応コミュニティスクールにするけれど形骸化しているのでは(全県1学区でコミュニティ重視になるのか、疑問)。

 また、企業関係者が委員に入っているのが何校かあることや、特色のなかにあるコンソーシアムという地域や企業、団体と連携していくことなどが目につきました。

 例えば、国際バカロレア認定校である横浜国際高校では、学校側委員が6名で、それ以外の4名の委員のうち3名が企業・団体代表になっていて、生徒の海外進学支援、情報などについて審議するとされています。コミュニティスクールの委員に企業関係者を入れてくるのが特色であると思いました。

特色に応じた学校適正規模を設定  中身の多様化に対応

 神奈川のクリエイティブスクールは、東京のチャレンジスクールにあたるものと思っていたのですが、違うのですね。

 東京のチャレンジスクールは、不登校生徒を対象としてT部、U部、V部からなる昼間定時制の高校です。T部の子がU部の授業を選択するとか、U部の子がV部を選択することができるということなのですが、クリエイティブスクールは全日制高校で、初めから不登校の生徒を対象とするとは明記されていないのですね。

 クリエイティブスクールは6学級規模、フレキシブルスクールは6学級規模、インクルーシブ教育実践推進校は7学級規模、昼間定時制は各部4学級規模など、特色に応じた学校の適正規模を設定するのが神奈川の特色の一つでもあって、それは中身の多様化に対応していると思います。

 普通の学校の適正規模については明記されてはいないのですが、6〜8学級以上ということなのですね。 

(連載7につづく) 

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載3

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載4

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載5

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