2024年11月7日


講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載

公共施設の再編が
高校をはじめとする学校統廃合を標的に

和光大学教授 山本 由美

 

公共施設再編が、高校統廃合を後押ししている

 学校施設など公共施設をどんどん減らしていくと、約30兆円のコスト削減になると財務省は算定しています。神奈川県をはじめ、どの県においても公共施設再編が高校統廃合を後押ししています。

 古くなった高校を壊し、国からお金を引っ張ってきて、新しい施設を建てるということをすごく行っています。

 県の公共施設に占める県立学校の床面積は、大体30%から40%くらいなのです。したがって減らしやすい。そして、多くの府県の公共施設再編の計画設定期間は10年なのです。神奈川県も10年なのです。

 10年というのは、すごく短いのです。市町村は、30年から50年で、40年のところが多いのです。県が10年とすごく短いのはどうしてなのか、総務省に1回電話をして尋ねたのです。総務省からは、「県が独自にやっています」という答えが返ってきたのです。そんなことはなく、何かあるのではないかと思います。

 この「都道府県公共施設等総合管理計画」というものが今、全国の高校統廃合を進めているのです。今まで、経済が比較的安定していた山口や富山など、あまり高校をいじらなかったところが、初めて高校再編とか定時制高校廃止などに動いていますが、それはこの「公共施設等総合管理計画」が動機となっています。

神奈川県の「公共施設等総合管理計画」では、学校施設を標的に

 総合管理計画」は2016年度までにつくれと総務省が言ったので、神奈川県は2017年3月に出しました。それを2022年3月に改定しています。改定されたものは、大体前のものよりハードになっているのが多いのです。計画期間は10年で、5年ごとに見直しをするとなっています。

 それを見ますと、計画の基本理念は「公共施設等(品質)を、経済的なコスト(財務)で適切に提供(供給)します」と記されています。

 また、改定時県内人口が減少していないにもかかわらず、長いスパン(2065年まで)をとって、将来こんなにも人口が減り、急激な高齢化が生ずるということを示しています。高齢化に伴い、介護や医療などにこれからたくさんお金がかかるということが最初に書かれています。

 さらに、これからすべての公共施設を維持すると30年間でこれだけお金がかかると強調されています。県有施設について、今後30年間(2021年から2050年まで)にかかる維持更新費の年平均は過去5年間年平均の2.49倍になり、そのうち、学校施設が3分の1強であるので、学校施設の維持更新年平均は2.51倍であることが示されています。

公共施設の統合や廃止、跡地等の売却を検討

 次に、それでは神奈川県は公共施設をどうするのかという方針の9番目に、「統合や廃止による最適配置を検討する」と記されています。

 さらに、「施設更新時には総量の縮減となる方向で検討。財産の売却時は処分方針に基づき丁寧に対応」ということが例としてあげられ、施設や跡地の売却を考えていることがわかります。

 東京の「総合管理計画」では跡地売却をはっきりと書いています。渋谷区は公共施設をまとめて、その跡地を売却し有効活用すると明確に打ち出しています。神奈川県も高校の跡地を有効活用しようと考えているのではないですかね。

 あと、神奈川県の高校再編で、都市部の再開発に利用されるようなところはないですか。例えば渋谷区では、学校の隣にマンションが建っている場合、学校の校地や容積率をマンションに貸与や売却するのです。それによってマンションの容積率が飛躍的に上がり、タワーマンションが建てられるようになるのです。そして、マンション建設業者に学校を建て直してもらうということを行っています。
 

(連載5につづく) 

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2

講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載3

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