2025年9月9日
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載8特色を併せることを「口実」に
統廃合をすすめる
和光大学教授 山本 由美
高校再編をしている本体が見えない、わからない
神奈川県は、高校再編をすすめている本体がわからない、総務室の県立高校改革グループなのかもしれないのですが、それが見えない、よくわからない。再編は、兵庫県の進め方とよく似ていますが、これでは反対の動きは起きにくいだろうと思います。
例えば、神奈川教育ビジョン(2007年策定、2019年改訂)などがあるのですが、企業との連携は見えるものの、「人材観」が見えてきません。スクールミッションとか、スクールポリシーはどこがつくっているのですかね。形式的には、学校(新校)ごとの準備委員会でつくっているのでしょうか。
だけど、この学校(新校)の特色をどうするとか、統廃合の理由ですよね、それはいったいどこがつくっているのでしょうか。それがすごく見えないのです。それでも、反対しないのですかね。そんなのおかしいとか思いませんか。
第T期計画 総合学科(4校)・専門コース(12校)・フレキシブル校(1校)の解消
(県立高校改革計画のT期計画では、前回の県立高校改革推進計画(2000年から2011年)で大量に創設された総合学科高校(11校)のうち、4校を普通科高校(3校)と専門学科高校(1校)に再編することになりました。
また、12校ある専門コースのうち、3校は専門学科として改編され、残りの9校の専門コースは廃止されました。さらに、1校に2課程以上(全定あるいは全定通)があるフレキシブル校2校は残すものの、1課程(全日制)のみの1校はフレキシブル校ではなくなりました。)
T期の再編は上のようないじり方をしたのです。校名は、総合をとるなどとして対応したとのことです。ただ、2校統合の場合は、校名をどうするかで、すごくもめて、横須賀明光と大楠の場合は、開設から10年しかたってないのに校名変更はおかしいという意見が複数出ていました。
それから、弥栄と相模原青陵の場合は、弥栄を残したいという声が大量に出ていて、結局相模原弥栄になったのですね。こういうことしか議論がないということはおかしいですよね。
第U期計画 ピンポイントの
第U期計画で目に付くのは、新学習指導要領や新たな教育課題に対応できるような研究テーマに基づいた教育課程の研究開発を行うことが打ち出されていることです。
研究開発指定と進学重点校への競争誘導
特色といっても、福祉科とか体育コースとかということではなく、ピンポイントで「総合的な探求の時間」の研究校とか「SDGs」の研究校などが指定されています。そんなのを特色で出して、特色になるのかどうかわからないですね。
あと、ICTとかプログラミングなどというピンポイントの研究テーマのある学校を特色として出している反面、学力向上進学重点校は指定校4校とエントリー校12校を示し、エントリー校を競わせて指標に達したら随時進学重点校に指定するとされています。上の方の学校は、いじらないというか競わせることになっています。
特色を併せることを「口実」に、統廃合をすすめる
神奈川県では、特色を併せるということ、この学校とこの学校の特色を併せるということが統廃合の理由になっています。子ども(入学者)が減っているかどうかではないのですね。
たとえば、瀬谷と瀬谷西の統合、そして逗葉と逗子の統合は、地域的に近く同じ普通科という特色で統廃合。城山と相模原総合の統合は、「進めてきた情報教育の取り組み」という特色を併せる、共有するということを「口実」にして統廃合。厚木東と厚木商業の統合は、商業はすでに必要がなくなっている「人材」として普通科とビジネス科として統廃合。
(連載9につづく)
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載1
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載2
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載3
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載4
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載5
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載6
講演「神奈川県の高校統廃合問題を考える」 連載7
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