チェロ教則本について(ウェルナーはやめよう)
(2013年8月15日V.1.3)
チェロの指導者が、過去に自身の受けた教育で使用したテキストを、生徒に教えるための教則本として使用することは、ごく自然で一般的なことです。チェロの演奏技術は、1900年代に大きな進歩を遂げました。こうした技術の進歩の中で、良い教則本が残されそうでないものは、淘汰されています。
日本では、入門者は古典的教則本「ウェルナーのチェロ教則本」でチェロの学習を始めることが多い。同書は、チェロの技巧をただ見本的に羅列したものであり、無駄が多く、すべてが旧式であり良い教則本とはいえません。詩人の宮沢賢治が大正初期にチェロを始めたときに使用したのが、「ウェルナーの教則本(Josef
Werner、1837-1922)」であり、その当時と比べるとチェロの技術の進歩は大きく、同書を使用しているのはわが国のみであり、ヨーロッパでも米国でも全く使用されておらず、既に過去の遺物となっているといっても過言ではありません。私友人の海外のチェリストの多数も同じ意見で、日本でまだ多く使用されていることを言うと、あきれかえって"Stupid!"(ばかげている)と言われたことは1度や2度ではありません。
「ウェルナーの教則本」を出版している出版社は、海外では米国の1社のみで我が国のみが何と5社以上から出版されています。主なチェロ教則本について解説しましたので参考にしてください。
■関連リンク
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コンクール指導、受験指導等
■チェロ・弓をお譲りします
フランス、イタリー、ドイツ、オールドチェロ・弓コレクションお譲りします。
■水口貴裕チェロ・リサイタル
2012年1月8日(日)東京文化会館小ホール(好評のうちに終了しました)
ピアノ:三谷 温(昭和音楽大学准教授)
<チェロ・リサイタル演映像>
◇ブラームス・チェロ・ソナタ第1番第1楽章より
使用楽器:ダビット・テヒラー(1730-1740年頃、ローマで製作)
◇サンサーンス「白鳥」、カザルス「鳥の歌」
使用楽器:ガエタノ・キオッキ(1860、イタリア・パドゥバで製作)
★CD:シャコンヌ/水口貴裕〜魅惑のチェロ小品集」(Beltaレコード)
国内外で活躍しているソリスト、水口貴裕の1stアルバム。「万里の長城杯国際音楽コンクール」での最高位入賞など、
着実にキャリアを重ねた水口の実力が存分に発揮された小品集だ。 「CDジャーナル」誌評論
チェロ:水口貴裕
ピアノ:三谷 温(昭和音楽大学准教授)
収録曲:
【1】バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 プレリュード
【2】フォーレ:「ロマンス」作品69
【3】グラズノフ:「吟遊詩人の歌」
【4】エルガー:「愛の挨拶」
【5】ショパン:「序奏と華麗なポロネーズ」作品3
【6】バッハ:アダージョ(トッカータ BWV.564より)
【7】バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 サラバンド
【8】モーツァルト:アンダンテ・カンタービレ(オリジナルチェロ曲)
【9】ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲作品46
【10】サン・サーンス:「白鳥」
【11】ラヴェル:「ハバネラ形式の小品」
【12】メンデルスゾーン「協奏的変奏曲」作品17
【13】ラフマニノフ:「プレリュード」
【15】ヴィターリ:シャコンヌ(原曲バイオリン)
【16】カザルス:「鳥の歌」
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ここをクリックし、メールを送信できます。
cellists@aol.com
水 口 貴裕 (みずぐちたかひろ)
(略 歴)
東京に生まれる。
勝田聡一氏に師事。 ニューヨークにてバーバラ・マロウ氏(コープランド音楽院教授、ニューヨーク
チェロ協会副会長)に師事。
ニューヨーク・マネス音楽院にてチェロをピーター・プロッサー氏に室内楽をナンシ
ー・ガーネー氏に学ぶ。
Bergen Philharmonic Orchestra(米国ニュージャージー州)のチェロ副首席奏者を勤め、ニューヨークを中心にソロ、室内楽活動を行う。
1994年にニューヨーク・デビュー・チェロ・リサイタルを開催、
日本国内における演奏活動としては2005年、2007年および2009年の
東京文化会館におけるチェロ・リサイタルなど多数のリサイタルを開催するなどソリストとして幅広く活躍。
海外における演奏活動としては、
フランス(パリ)、チェコ(プラハ)、 ポーランド(ワルシャワ)、ドイツ(ミュンヘン)、ベルギー(ブリュセル)
などヨーロッパ主要都市、
アジアでは中国などにおける演奏会でソリストとして幅広く活躍。国際音楽祭にもソリストとして出演。オーケストラと共演。
日本クラシック音楽コンクール弦楽器部門審査員。
その演奏は「高いレベルの音楽を生み上げる心意気に好感...」(音楽の友誌)など美しい音色と洗練された音楽により高い評価を得ている。
現在、東京を拠点としてソリスト、室内楽奏者として活躍する一方、チェロの普及・
指導に努めている。
リサイタルでは、日本ではほとんど演奏されない優れたチェロ曲を意欲的にとりあげ紹介している。
◇コンクール入賞歴: 「万里の長城杯」国際音楽コンクール・弦楽器部門最高位入賞(1位なし第2位)
ベストプレイヤーズ・コンクール入賞(審査賞)他
◇CD:チェロ小品集「シャコンヌ」」ベルタレコード
◇ 著作等: 「愛の挨拶」KMP、 「完全チェロマスター」KMP(刊行予定)
使用楽器:ダビッド・テヒラー(Rome、1730-40年頃)★David Tecchlarについて
ガエタノ・キオッキ(Pauva、1860年) ★Gaetano Chiocchiについて
使用弓:F.ペカット、F.リュポ、F.ボアラン
リサイタルでは、日本ではほとんど演奏されないが、優れたチェロ曲を毎回積極的にとりあげ紹介している。
◇プロコフィエフ:チェロソナタ
◇サンサーンス:チェロソナタ1番
◇サンサーンス:チェロソナタ2番
◇メンデルスゾーン:チェロソナタ1番
◇メンデルスゾーン:チェロソナタ2番
◇フォーレ:チェロソナタ1番
◇フォーレ:チェロソナタ2番
◇ショパン:チェロ・ソナタ、「悪魔ロベール」の主題による大二重奏曲
◇バーバー:チェロソナタ
◇ドビュシー:チェロソナタ
◇ルビンシュタイン:チェロソナタ1番
◇ドホナーニ:チェロソナタ
◇シベリウス:マリンコニア
◇ピアソラ:ル・グランタンゴ
◇ビターリ:「シャコンヌ」(ルイジ・シルバ編曲)
◇カサド:無伴奏チェロ組曲
◇イザイ:無伴奏チェロソナタ 作品28
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チェロ教則本について
チェロの指導者が、過去に自身の受けた教育で使用したテキストを、生徒に教えるための教則本として使用することは、ごく自然で一般的なことである。チェロの演奏技術は、1900年代に大きな進歩を遂げた。こうした技術の進歩の中で、良い教則本が残されそうでないものは、淘汰されるに至っている。
日本では、入門者は古典的教則本「ウェルナーのチェロ教則本」でチェロの学習を始めることが多い。同書は、チェロの技巧をただ見本的に羅列したものであり、無駄が多く、すべてが旧式であり良い教則本とはいえない。詩人の宮沢賢治が大正初期にチェロを始めたときに使用したのが、「ウェルナーの教則本(Josef Werner、1837-1922)」であり、その当時と比べるとチェロの技術の進歩は大きく、同書を使用しているのはわが国のみであり、ヨーロッパでも米国でも全く使用されておらず、既に過去の遺物となっているといっても過言ではない。「ウェルナーの教則本」を出版している出版社は、海外では米国の1社のみで我が国のみが何と5社以上から出版されている。
●推奨する主な教則本(練習曲)
◎R.サポージニコフ(Roman Sapozhnikov):「チェロ基礎教本」 初心者
ロシアのチェリスト、モスクワ音楽院教授のR.サポージニコフが様々なエチュードから初心者が習得すべきテクニックの短かい練習曲を集め、それにサポージニコフ自身のものを加え、各練習曲で習得すべき技術を明確にしている。ロシアで初級者用テキストとして使われている教本で無駄が少なく、短期間でチェロの基礎技術を習得できるように配慮している。
◎A.シュレーダー(Alwin Schroeder 1855-1928):「170 Foundation Studiesfor Violoncello」 初心者―中級者
主要なエチュードから練習曲を集め、それにシュレーダー自身のものを加えている。各練習曲で習得すべき技術の記載は無いが、指導者がその意図を汲み取り指導することにより、協奏曲に必要なレベルまでの技術をマスターできる。
◎F.ドッツアー(Friedrich Dotzauer 1783-1860):「113 Etuden for Violoncello」 初心者―中級者
最もポピュラーな古典的なエチュードで、我が国はもとより、欧州、米国でも使用されることが多い。
◎D.ポッパー(David Popper 1843-1913):「High School of Cello Playing」 op.73、上級者
米国では音楽大学でよく使用されており、特に左手の高度な技巧の習得を目的としている良いエチュードである。ポッパーのこのエチュードをマスターすれば、通常のコンチェルトであればむしろ易しく感じるはずである。繰り返し学習することをお勧めしたい。
◎O.セビシック(Otakar Sevcik 1852-1934):「主題と変奏」作品3 中級者-上級者
オリジナルはバイオリン用で主題と変奏の形式をとっているが、変奏はありとあらゆるボウイングの技術を使用しており、右手の技術の習得を目的としている。
◎R.クロイツアー(Kreutzer, Rodolphe 1766-1831-L.Silva):「42 Studi per Violoncello (Etudes)」 中級者-上級者
バイオリンのエチュードをルイジ・シルバ(L.Silva、チェロのパガニーニと言われた筆者の先生の先生)がチェロ用に編曲したもので、様々なパターンのボウイングの技術を習得できる。
◎A.パイス(Aldo Pais) Ricordi社:「La Technica del Violoncello」上級者
フランスのチェリストのPais左手のための教則本で、重音の中での独立した各指の動き、左手のみによるピチカートなど、他の教則本にはみられない、非常に高度な左手の訓練ができる。
○J.デュポール(Jean Louis Duport 1749-1819):21 etudes (1813年頃) 中級者-上級者
デュポールはベートーヴェンの属していた宮廷オーケストラのチェロの名手でベートーヴェンがチェロ・ソナタを書いている。古典的なエチュードである。重音や移弦等の様々なパターンの曲で構成されている。
○フランショーム(Auguste Franchomme 1808-1884):12 Studies, Op.35 中級者
フランショームはショパンの友人であったフランスのチェロの名手で、ショパンがチェロ・ソナタを書いている。古典的なエチュードで、メロディが美しい。レガートなボウイングの技術の習得をさることながら、音楽表現の練習にもなる。
○F.グリュッツマハ(Friedrich Gr?tzmacher 1834-1903):24 Studies, op.38 中級者-上級者
グリュッツマハはボッケリーニのチェロ協奏曲(グリュッツマハ版)を校訂したことで知られている19世紀に活躍したチェロのビルティオーゾである。技術的に高度なエチュードで、チェロのあらゆるテクニックを駆使している。
△J.シュタルケル(Janos Starker):「An Organized Method of String Playing」 上級者
現代のチェロの巨匠シュタルケルによるエチュードで、実際の曲(ハイドンのチェロ協奏曲等)を教材として使用し、左手の灰ポジションの練習に特化していることが特徴である。
△S.リー(Sebastian Lee 1805-1887):40 Melodic Studies op.31 中級者
リーはドイツのチェリストで、パリで活躍した。このエチュードは1845年に出版され、当時のパリ音楽院で使用された。非常に旋律的なエチュードである。
△F.A.クンマー(Friedrich August Kummer 1797-1879):Violoncello Method,Op.60 中級者
クンマーはドイツのチェリストで、ドッツアーの弟子である。この教則本は、様々なボウイングとフィンガリングのパターンの簡潔にまとめられている。
△フォーヤール(Louis Feuillard 1872-1941):Daily Exercises 中級者
フォーヤールはフランスのチェリストで、パリ音楽院教授を務めた室内楽奏者である。このエチュードは、左手の動きの様々なパターンを網羅している。他のエチュードを補うものとして使用するとよい。
△セルベ(Adrien Francios Servais 1807-1866):6 Capries op.11 中級者?上級者
セルベはベルギーのチェロの名手で、高度な技巧を必要とする練習曲である。
◎ロエベ(Jules Leopold-Loeb1857-1933)):Gammes et arpeges 中級者?上級者
ロエベは、パリ音楽院教授でポール・トルトリエ、アンドレ・ナヴァラの師である。この音階教本は音楽大学の受験課題としてよく出されるテキストであり、受験生はマスターしておく必要がある。
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