2017年2月5日


寄 稿

総合的学習の時間「学びの森」 実践報告 (上)

横浜翠嵐高等学校 定時制 岩脇歳文



   

本校定時制の雰囲気・・・多様な生徒の集まる学校

 本校定時制の全校生徒数は約290名、うち外国につながる生徒は全体の平均で3割程度である。今年度入学生に限ると外国につながる生徒は約4割にのぼり、県内でも屈指の国際的な学校だ。それに加え、年齢の異なる生徒、仕事を持つ生徒など、多様な生徒が机を並べて勉強しており、「多数派」が存在しない。

 生徒たちは良い意味でそれぞれ自分の考えや世界を持っており、同調圧力が少ない。生徒の中には、小学校や中学校においていじめを経験している生徒もおり、「学校が怖い」という感覚で入学してくる生徒もいる。生徒が自分の考えを踏みにじられることがなく、ありのままでいられることが本校の良いところではないかと思う。

「先生ウチあと何回休める?」

 反対に本校の悪いところは、とにかく欠席者が多いことだ。生徒は成績のことではなく、欠課時数を気にして授業担当にこのような質問をしてくる。私の受け持つ「学びの森」は、総合的な学習の時間に相当する学校設定科目で、1、2年次に総合的な時間を落としてしまった生徒たちのために設定されている。

 このような状況で設置されている科目なので、この授業を担当する前に私は、「生徒たちは授業中に何も活動しないではないか」と予想していた。


テーマ1:キャリア教育

授業を始めるとき、私は正直に生徒たちにこう言った

 「この授業は言葉による評価なので、2や3といった数字は出ません。また、正解のない授業です。しっかり動画や私の話を聞き、皆さん自身で考え、表現して下さい」
 生徒たちに考えを表現してもらう手段の1つとして私は毎回プリントを回収し、生徒たち1人1人が書いたもので「深く考えられているな」と思われる部分を赤ペンで「褒める」ことにしている。

 キャリア教育のテーマとして私はまず、10年ほど前にNHKで放映された「フリーター漂流」というスペシャルを生徒たちに見せた。この番組は、当時新しいライフスタイルとして世間で認識されていた「フリーター」として生きる若者が、道具のように使い捨てられる現状を特集したものであった。

「フリーターで結婚するとか信じらんねーよな」

 これが私に衝撃を与えた生徒からの感想であった。そもそも私が生徒たちにこの動画を見せたのは、「しっかり未来のことを考えて今をまじめに生きないと大変なことになるぞ。だから勉強せよ」という気持ちからだった。しかしながら、私の予想に反して生徒たちは、「上司に注意されただけでキレるなんてガキ」、「仕事は嫌なことも含めて仕事」、「自分に合った仕事に巡り合うためには、今からしっかり調べないと」など、私が考えていた以上に、自分たち自身の将来を心配している声が多く寄せられた。

 私はこの初めて授業が終わってから、「自分の仕事は生徒に不安やプレッシャーを与えることではなく、生徒に希望と自信を与えることだ」と実感した。それと同時に、成績のつかない授業で、打算抜きに真剣にこちらを向いている生徒の姿に、私自身が鼓舞されている。

(中)につづく


   

資 料

<授業に使用したワークシート>
*記入用の空白部分は省略しています。
*日本語が不自由な生徒もいるため、漢字にはルビをふっています。



寄稿  総合的な時間「学びの森」実践報告(中)    岩脇 歳文

寄稿  総合的な時間「学びの森」実践報告(下)    岩脇 歳文

投稿  「県立高校改革実施計画」がめざす学校規模の過大化を憂う   岩脇歳文

投稿  入学者を「選抜」してよいのか    岩脇歳文

隣人に愛を ~ある定時制高校のホームルームの1年間をふり返って


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