位置エネルギー

片山泰男(Yasuo Katayama)
Nov. 10 2014

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目次

1 質量がその位置にあること
2 場の概念
3 質量はどうエネルギーを蓄えるのか
4 ポテンシャルは時間経過である
5 時間経過の速さにエネルギーを蓄える
6 重力エネルギーは負で、場のエネルギーは正
7 質量がその位置にあること
8 アインシュタインの初期のポテンシャル理論
9 空間計量の意味
10 ポテンシャルの光速伝播
11 ダランベール方程式への時間計量の導入


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1 質量がその位置にあること

地上で高さhにある質量mは、mghの位置エネルギーをもつ。hだけの低下でエネルギーmghを出し(例:水力発電)、上昇には仕事を要する。 仕事は力と移動の内積だけ位置エネルギーを変化させる。質点の力学的エネルギー=位置エネルギー + 運動エネルギー= 一定で、 下降は移動と同方向の重力が質点に仕事をして運動エネルギーを増し、上昇は移動と逆方向の重力が運動エネルギーを減らす。 かく、位置エネルギーは、重力mgの仕事によると考えられる。しかし、それらの原因と結果は逆で位置エネルギーが原因で重力はその結果 かも知れない。

重力場の背後にスカラー(空間に分布する値)のポテンシャルφがあって、地上の一様な重力gに対応して、高さhに比例したエネルギー差を もつポテンシャル、φ(x0+h) - φ(x0)= gh があるとし、その高さhによる微分係数gが重力場である。ポテンシャル(エネルギー/質量)場は、 空間微分して、重力加速度(=力/質量)の場になる。

天体間も、物質密度ρがポテンシャルφを決め(△φ= ρ)、重力はその勾配である。天体Mから距離rの位置にある質量mはニュートン重力 GMm/r^2 を受ける。これを、その位置には点対称のポテンシャル、φ(r)= -GM/r があって、点対称の重力ベクトル、g= -GMr/r^3 を生み、重力はφのrによる微分 -dφ/dr(= -GM/r^2)である。一般の空間関数に拡張して、重力はφの勾配(grad)ベクトル という g = -grad(φ) = -∂φ = (-∂φ/∂x, -∂φ/∂y, -∂φ/∂z)。遠隔的なニュートン重力は、近接的なポテンシャル場へと 矛盾なく移行できる。しかし、本当はどちらなのか。

ポテンシャルφ(x)は、その位置xに質量mのあることにエネルギーmφ(x)が対応し、エネルギー差は、質量が存在するふたつの位置A、Bだけ により(φ(A) - φ(B) = 一定)、質量を A、B間の移動経路や移動速度によらない。但しこれは、質量と場の相互作用であり、空間にある質点 に依存しない場のエネルギーではない。電磁場では電場Eと磁場Bには場のエネルギー密度1/2 (E^2+B^2) があるが、場φと電荷qの関係する エネルギー qφ があり、これに重力ポテンシャルによる位置エネルギーは対応する。


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2 場の概念

位置エネルギーや重力は空間特性である。質量mに比例するエネルギーmφや力 -m grad(φ)を、mで割って、ポテンシャルφと力場gという 場の概念を得るが、それはまだ重力の遠隔作用を近接にする操作でしかなく、そのとき、場は、力を与えるが力を受ける対象ではない作用 反作用のない仮想存在である。

しかし、電磁気には遠隔の物体間の力のやり取り(作用反作用)ではなく、介在する場との作用反作用としてだけ説明できる現象があった。 例えば速度をもって交差する荷電粒子間の力が作用反作用の関係にないことは容易に考察できる(*)。この場合、場は解釈ではなく、 電磁場は、物体間に介在し、力を与え力を受ける物理的実体になる。そのとき、"場"は、真空ながらエネルギー(質量)や運動量をもち、 ある方向に張力をもち、それに垂直な面内で互いに反発する磁力線が表すような応力をもつ実体である。応力は荷電粒子が場から受ける力の 反作用をうける。こうして、電磁気において"場"の記述は完成したが、これに似る重力は、それとは違う道を辿った。

元の、ニュートン重力の物体間には作用反作用の関係があった。作用反作用とは、物体Mが物体mにある方向と大きさをもつ力(作用)を与えるとき 物体mも物体Mに力(反作用)を与えている。作用と反作用とは作用線を共有し反対向きで大きさが等しい、つまり、ふたつの力の時間関数のベクトル 和 f1(t)+f2(t)=0 は、どの瞬間にも成立する。そのためには接触が必要である。なぜなら、特殊相対論では同時刻が観測者の慣性系によるから、 少しでも距離のある物体間は作用反作用の関係にない。遠隔作用は相対論によってその存在の基盤を失い(**)、力の伝達は場を介してだけあり得る。 同時刻の相対性はニュートン重力を否定するのである。

(*) 速度をもった電荷は、電流と同じく、磁場を周りに作る。磁場は電荷(+)の進行を右ネジの進行にする右ネジの回転の向きをもつ。 又は右手の親指の向きの電荷(+)の進行に伴って、曲げた他の指の向きの磁場ができる。 一方の電荷が磁場Bを作り、その磁場のなかを他方の電荷が速度vをもって進み磁場から力vxBを受ける。2つの電荷の互いに及ぼす力は、 例えば、上と左から中央で交差する、ともにプラスの2つの荷電粒子を考えるとき、交差の前のある瞬間の相互作用を考える。 上から下に移動する電荷が左の電荷の位置に生む磁場は紙面の奧に向かう。左から右に進む電荷は、vは右、Bは奧で、vxBは上だから上に力を受ける。 左から右に移動する電荷が上の電荷の位置に作る磁場は紙面の前に向かう。上から下に進む電荷は、vは下、Bは前で、vxBは左だから左に力を受ける。 両者の作用は、作用反作用(力は同じ線上にあって反対向きで同じ大きさ)であるか? 決してそうではないことが分かる。

(**) 理論物理の基礎(アインシュタイン1940)


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3 質量はどうエネルギーを蓄えるのか

上昇による高さの変化、移動がもたらす位置エネルギーを質量は(又は空間は)どういう形でもつのか。

我々には少々の距離では上昇によって質点にエネルギーが蓄えられた実感はない。 地上から上に向かい、地球の重力圏(周回速度8km/s、脱出速度11.8km/s)を抜けた程度では全く周りも変化しないし、慣性も変化しない。 太陽の重力圏(地球の公転速度は30km/s(光速の10^-4)、脱出速度42km/sec)から抜けても、銀河系の重力圏(太陽系の位置の周回速度220km/s、 脱出速度320km/sec(光速の 10^-3))を抜けても、宇宙の見え方は変らないが、精密な時計の経過速度は少しだけ変わっている。 人間の目に1000分の1の変化は感じられないが、星々は赤くなっているのである。


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4 ポテンシャルは時間経過である

位置エネルギー(ポテンシャル)は、その勾配が力を与えると静電場から類推できるが、時間経過の速さ(*)とは直観に結び付かない。 スペクトル偏移という事実が先にあって、これを説明するための理論だったのかもしれないが、考察の方が先だったかもしれない。

アインシュタインの初期理論はいう:
一様な重力は加速系と原理的に区別できない。加速系gでは光は放出から受容までの時間(h/c)に系は距離hに比例する速度gh/cを得て、光は エネルギーを獲得/喪失し、gh/c^2 だけ青方/赤方偏移する。スペクトルの偏移は周波数の変化であり、これが連続的に継続して起きるには、 加速系(重力系)は位置hによって時間経過が異なる必要がある。gh/c^2 のスペクトル偏移、gh/c^2 の時間経過差があると。

ポテンシャルφにはφ/c^2 の時間経過が伴うのである。天体の重力ポテンシャルは、重力 g= GM/R^2 のRによる積分でありφ= -GM/R は 無限遠との時間経過の差であり、積分定数の任意さからφ'の無限遠の値を1とするφ'= 1-GM/R は無限遠との時間経過の比である。 天の高さは地の深さ、地上のφは1gでR=6400kmの距離である。φ/c^2= gR/c^2= 64x10^6/9x10^16= 7x10^-10 の無限遠からの時間経過の差をもつ。

パウリの相対論にある解説(p.251-252)。 回転円板の円周上の速度をもった点は、回転系では外に向いた重力(遠心力)内の静止点である。 円周上点の特殊相対論の速度による時計の遅れτ= t/√(1-v^2/c^2) (横ドップラー効果)は、回転系の重力ポテンシャルφ= -1/2 v^2 を使って、 τ= t/√(1+2φ/c^2) と表せる。回転系上の静止点の慣性系との速度から、ポテンシャルと時間経過の関係が説明される。 つまり、重力ポテンシャル低下は時間経過の低下を伴うのである(**)。

(*) 速度は空間変位の時間微分であり、時間経過の速さ又は速度という言葉は、対象の時空間の1点Aの時間経過を別の時空間の1点Bからみたもの である。特殊相対論は相対速度のある慣性系の1点Aの時計が遅れることを明らかにしたが、重力現象では天体の側のAに置かれた時計が無限遠に 置いたBと比べて遅れることを明らかにした。遅延の比率は古典的なニュートン力学のポテンシャルと一致し、ポテンシャルの実在が証明された。 精密な時計合わせに使われるGPS衛星軌道と地上の時計の遅れの差は、無限遠を1とする古典的なポテンシャル比例による。

(**) これには、双子のパラドックスと同様な、幾つかの前堤がある。 双子のABの一方Bが回転する円板に飛び乗り、1周して慣性系の同じ点に飛び降り、ABは再会し互いの時計を確認する。ABのそれぞれの時間経過は、 慣性系からみても回転系からみても違いがない。回転円板は一周して元の場所に戻るから引返し系への乗り換えがないが、系の乗り換えは考慮 する必要がある。系の乗り換えには加速が伴うが本人の時間はかからないとする。つまり、向心力や加速度自体は本人の時計には影響しないとする。 慣性系の向心力、回転系の遠心力は、系が原因の加速で重力と同じとみなす。さらに、回転系と静止系は、どちらが静止系か区別でき、ニュートン のバケツの思考実験は、回転には相対性はないというニュートン側に立つ。これらを前堤として、さきの結論のように、特殊相対論の時計の遅れを、 重力ポテンシャルによる遅れとみることができる。相対速度をもつ慣性系間は対等で、互いに相手の時間経過が小さいとみる関係だが、 これはそうでなく、どちらから見ても回転したほうが時計が遅れるとみるのである。Bからは速度を持ったAが上方にいるため時間経過が速い期間がある。 又は、Aが円板の中心なら、つねにAはBより上方に静止し時間経過が速い。回転円板の系からみるとBはこれに飛び乗って来て静止し、Aは回転を続ける。 回転に完全な相対性があって両者が対等ならABの時間差は生まれないのである。ニュートンに対するマッハの反論のように、バケツの水面が放物面 になる理由を周囲の大きな質量が原因と考えることもでき、一般相対論による サーリング(Thirring)による解析 がなされマッハに味方する結果が示された。ここではそのような大質量の回転がそばに存在する話ではないから時間差は存在する。


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5 時間経過の速さにエネルギーを蓄える

我々の上昇によって測定器は星々のスペクトルが全体として赤方に偏移したことを示す。我々の時間経過が速くなるため起きる現象である。 時空の関数である位置エネルギーは時間経過と光速として表われる。ポテンシャルの勾配は重力であるが、ポテンシャルはエネルギーと 時間経過を決め、時間経過はそのまま光速に比例し(*)、光速の空間変化はホイゲンス(ホイヘンス)の原理による光の屈曲(**)になる。

そして、位置エネルギーの意味、質点を高所に持ち上げることの意味は、空間座標にエネルギーを無駄に支払ったのではなく、その位置の 時間経過の速さに質量を到達させるのに支払ったのである。そんなことのためかと驚くだろうから、それについて説明する。

(*) ポテンシャルがエネルギー比例なら(E=mφ)、光速度に比例しない(φ=c^2)ようにみえる。しかし時間経過が光速度比例なら、 ポテンシャルは光速度に比例するようにに思える。ポテンシャル差が1に比べて十分小さいとき1次近似に混乱がある。光速に比例で、 エネルギーに比例なら、E= mc^2はcの片方だけに比例するのだろうか。ポテンシャル低下には時間経過の遅延と空間の短縮が伴い、 光速はφの2乗で影響するとすると矛盾はさらに大きくなる。

時間計量g_00はその1/2乗が時間経過に比例する。φ= √-g_00 とすると時間経過に比例、エネルギーも比例(E= hν)、光速も比例する。 E= mc^2のcは基準のc0であり、mがφに比例するとして、E=mφのmは、基準のm0であるとする。つまりポテンシャルφは、質量の変化式 m= m0φに関係し、質量の位置依存性 E=m0φ= m, E= m c0^2 は単位の変換になる。特殊相対論での静止質量m0と動質量mとの関係 m= m0γ と同様である。φ= c^2 であり、エネルギーは光速だけが2乗比例でなく比例となる。

(**)次の時刻の波面は、現在の波面の各点から速度を半径とする球面を連ねて作られる。光は光速一様のとき直進し、光速に空間的な変化 があれば光速の遅い方向に曲がる。これは真空以外の屈折現象でも成立する。


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6 重力エネルギーは負で、場のエネルギーは正

地球や太陽の重力井戸の底に暮らす我々は、それらの重力から解放されて自由になるには借金を返さなければならない。そうしないと、円、楕円運動 から離れ、双曲運動で天体から無限に離れることはできない。また、我々が銀河系の中心から十分離れれば、我々と銀河系の中心との間の真空に、 上昇に必要とされたエネルギーが蓄えられているのではないかと思うが、エネルギーを与えれば与えるほど、重心から遠方に移動することで重力は 減少し、間の空間の歪も減るから、何かの形で真空に蓄える空間の歪のエネルギーは減るはずである。

そして無限遠にまで我々が行けば、全ての歪は消えて重力関係がなくなる。引っ張りバネは力が伸びに比例し伸長の歪にエネルギーを蓄えるが、 重力の引力のバネは伸長すると力は距離の2乗に反比例して減少する。重力は距離の-2乗で薄まっても、体積は距離の3乗に比例して増大しているから 歪のエネルギー総量は距離に比例して増大するが、単なるスケール則では無限遠で無限に増える。(スケールを2倍にすれば、重力は1/4になるが体積は 8倍だから、エネルギー総量は2倍である。) このエネルギーは無限遠で一定値にならないといけないのである。しかも、質量は離れていって関係を なくすから一定値は0である。無限遠のエネルギーを0にすると途中の有限距離のエネルギーは負になる。重力の2乗がエネルギー密度なら-4乗則で、 体積が3乗で増大しても、場のエネルギーは無限遠で一定値に留まるが、その一定値は lim r→∞(1/r) = 0 である。

これは、何かおかしい、不思議な仕組み、又は矛盾である。つまり、これを与えたエネルギーの空間への蓄積とは理解できない。上昇はエネルギーを 位置に支払ったが、自然は何をその見返りにしたのか? 少なくとも何をその領収書にしたか? 費したエネルギーは、"場のエネルギー" として空間に 蓄えた訳ではないようである。場のエネルギー密度は、体積積分して正の必要があり、場のエネルギーには符号に問題がある。仮に場のエネルギー があっても、それは与えた仕事の蓄積ではない。なぜなら、場のエネルギーは正でなければならないから。また元もと、場のエネルギーは場にある 質点の質量には関係しないものである。位置エネルギーは場ではなく、場と質量との積の関係にある。では、エネルギーはどこにいったのだろうか。 この無限遠で0になる力の関係は、電荷や磁石の単極の接近においても異極で引力、同極で斥力ではあるが、同様である。

電場のエネルギーのように重力場のエネルギーは、1/2 g^2 で記述できるか? それが2質点の接近による位置エネルギーの低下を補うか? (補わない)。 1/2 g^2 = 1/2 (gradφ)・(gradφ)= 1/2 (∇・∇)φ=∇^2 φ= △φ (動的なφの場合、□φ)。静的エネルギー密度は△φ= ρで、 これが静電場のように反対符号のポアソン方程式△φ= -ρなら、物質と場のエネルギー和の一定は自明だが、重力のポアソン方程式では △φ+ρは一定でなく、物質と場との和のエネルギー保存が成立しない。これは、質点から無限遠で1のφを使い、φが時間経過に比例する ことで解決するか? エネルギーと質量にφが乗算された、φ(Δφ+ρ)=一定だろうか?


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7 質量がその位置にあること

上昇にエネルギーを費す反対に、無限遠から天体の近くに質点を下してくればエネルギーは取り出せる。そのとき取り出したエネルギーは一体、 どこから来たのだろうか? エネルギーを取り出した我々は、一体、何を代価に支払ったのか。何の不利益を代償にして、エネルギーを買ったのか。 我々が知る、最もありそうな答えは、質量は自身の時間の経ち方の緩やかさ(ポテンシャルの低下)を代償にして支払ったという答えである。 ここ低地にいれば、宇宙の放射のエネルギーは全て青方偏移して大きくなって受け取られる。が、それはここが時間の経ち方が遅いためである。 ここの動作は、平坦な無限遠方からみて緩慢なのである。それが質量が低地にあることの意味であり、切り離し失った位置エネルギーの代償である。

話が微妙過ぎるので極端な状況を考えて、巨大な銀河中心のブラックホールの半径の外側に、ロケット噴射で留まる場合、軌道周回する場合、 それぞれ時間経過は違う。その遅延、時間経過1/2の距離がブラックホールの半径の何倍かに存在する。そのとき、我々がそのままであるはず はないと思わないか? ブラックホールのそば、我々の時間経過に比例して我々の発生する光の(周波数に比例する)エネルギーも、音も、全て 1/2になって遠方に受け取られる。全ての波動のエネルギーは時間経過に比例する。時間経過が1/2なら、毎秒のエネルギーは1/2。それなら、 質量もそのままでは済まないだろう。E=mc^2だから、エネルギーは1/2であり、エネルギーは慣性を伴う。我々の慣性も重力も1/2であろう。 しかし、ポテンシャルに慣性が比例するとは聞かない。これを確認する方法、又は思考実験はないのだろうか。


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8 アインシュタインの初期のポテンシャル理論

アインシュタインの「物体の慣性は、そのエネルギー内容に依存するか」(1905) は確かにそのテーマである。 そのE=mc^2を導く論理はここに使える。エネルギー内容は、ポテンシャルに比例する。ポテンシャル低下によってエネルギーを失う物体は質量を失う。 ポテンシャルは、現在最も確認された時間計量である。空間計量には確たる証拠がない。但し、アインシュタインのポテンシャルの理論は、 彼自身を満足させなかった。 「光の伝播への重力の影響について」 (1911) は、後の、A.エディントンによる皆既日蝕の測定の光線の屈曲の、 丁度半分を再現していた。最終的に空間計量まで含めて扱う一般相対論を必要とした。質量からの半径方向の重力による空間短縮を含めて初めて、 測定と一致した。しかし、初期理論は、短い素朴な物理的推論がこれほどのことをなし得るかと、我々を驚嘆させる。これは自明過ぎ、容易過ぎて 彼を満足させなかった。

そして、その後の物理が、質量は静止質量を指し、速度によって質量が変化するとか言わなくなり、エネルギーも運動量も動質量を使わず、 まるで相対論がなかったかのように、実効速度とかいって光速を超える速度をいうことを我々は知っている。物理の専門家で、 E=mc^2 をγ=1/√1-β^2の級数展開の第1項でしかないといい、慣性質量が変化するなどということを相対論は言わないという、その人は 初期論文を読んでいない。その表題さえも。

時間経過が緩慢になること以外に何もないか?といえば、時空間を扱う一般相対論によれば、ブラックホールのそばの時間が緩慢に経過することと、 その場所の空間軸の1つの目盛が細かくなることがある。点対称のブラックホールでは、局所のその軸はブラックホールの半径の軸であり、 重力の上下方向である。しかし、点対称のブラックホールの近辺のように一方向につぶされた局所空間だけではなく、 地面のなか銀河のなかのように大体積で密度が存在するなかは、時間経過の緩慢さ以外に、空間の縮小現象が存在するかと考えられる。 時間経過はg_00の大きさに関係し、空間的サイズの変化は、g_ii(i=1-3) が関係する。|g_00| が小さくなる場所では、|g_ii| は大きくなる。 物体の縮小である(*)。

一般に局所的に物質が時空にもたらすのは、時間計量g_00の縮小と空間計量の増大であり、 質量は、自らの時間を緩慢にし宇宙を時間的に短く計測させるだけでなく、自らの物体(間隔)を小さくし宇宙を大きく計測させる。 一様な物質密度の宇宙を仮定するとき、遠方においてその傾向が増大し、遠方に時間経過が緩慢で、空間的には詰まった殻のある宇宙になる。

慣性がそのエネルギー内容によって変化するなら話は単純で、我々は自分の時計の進み、時間経過の緩慢さを、失ったエネルギーの指標にする だけでなく、自らの慣性の喪失、の存在を意味する。ブラックホールに落ち込む質量は、運動エネルギーを放出すれば、自らの質量を減らし、 最後には質量0となって、この事象の地平線から姿を消すのである。もちろん、物体が運動エネルギーを逃さない場合、質量は0にならない。 これは質量エネルギー保存則からも必要な特性である。質点を大質量の近傍に移すときエネルギーを利用しても、質点の質量が減らないなら 質量エネルギー保存則は保たれていない。ニュートン力学では制限がないこの方法のエネルギー抽出において、相対論では元の質量までの エネルギーが抽出できる。質量の100%近くのエネルギーを得るのに、物質反物質変換がない間、小型のブラックホールを発見し、 それへの物質落下に伴う発熱を利用する方法が残されている。


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9 空間計量の意味

(*)これはよく膨張と誤解される。tをパラメータとしてA〜B間の距離はこう表される、∫ds= ∫√g_ik dx^i/dt dx^k/dt dt は、時空間距離はg_iiが 大きければ大きい。しかし、ここからのブラックホールまでの距離や、アインシュタイン定常宇宙の周辺までの距離を既知を考えると、その場所の 1里塚や巻尺の目盛を細かくするしかない。これは物体や物差しの縮小と表現できる。局所の物差しが縮小しているために、多くの物体が存在でき、 物差しの目盛の示す距離としては大きくなる。そこからみる宇宙は大きい。3つの空間軸全てにこれが起きる一般相対論の解は、一様密度の宇宙解 であり、宇宙項が密度を打ち消さない限り、2次関数に類似する計量g_iiは遠方において発散する。そうして、 アインシュタインの定常宇宙は有限の距離に、ド・ジッター宇宙は有限の時空に、フリードマンの宇宙は有限の時間に特異をもつ。

フリードマンの宇宙では、塵の漂う系、銀河の間隔を物差しにする共動座標の時空の計量は、g_ik が増大することを膨張という。それは通常は、 銀河の間隔が短縮する宇宙の計量である。物差しが小さくなるから宇宙は大きくなるという理屈も成り立たない。物差しは銀河の間隔なのである。 これをそのまま宇宙の膨張と理解するのは、ブラックホールの側の時空やアインシュタインの定常宇宙の周辺短縮との関係が逆であることに気が付く。 紙の上に置いた透明な地球儀に光を上から照らし、円形の射影を得るとき、円の周辺になる赤道の近辺の緯度線の間隔は短縮して射影される。 これを決してそこが膨張しているとは言わない。宇宙の周辺の短縮を、空間計量g_iiが大きいことで表す(*)。 本当の球体のその部分の面積はg_iiを掛けてピタゴラスの2乗の不変量ds^2になる。それと同じことがフリードマン宇宙には成立しない。 そこでは計量が逆数に解釈されている。初期宇宙の空間計量g_iiが現在に比べて小さい。


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そこでは現在からみてと現在と同じ物体の間隔は大きいから小さな係数が付いているようにみえる。宇宙の周辺にある大きなg_iiは、 宇宙の一様性から、その物体が大きい係数とともにそこにあることは、その物体なり物差しが、そこでは短縮していると表現できる。 フリードマン宇宙では初期宇宙(時間的周辺)の物差しが、膨張宇宙なら短縮しているはずが、小さい係数をもって存在するのである。 そこでは物体の時間のなかでの移動において、物体がその固有なサイズを変更しないという考え方はない。アインシュタイン宇宙の 一様性とフリードマン宇宙の時間的変容は、その計量の扱いにおいて相反している。宇宙の一様性は時間的変容にとって代わられている。 宇宙の一様は、どのように遠方が赤方偏移していても、現在のこの場所と同じ状況のその領域が存在するとして空間計量を解釈していた。

しかし、フリードマン宇宙では現在と同じ様相をそこに求めないようだ。単にそこの間隔に空間計量を係数として掛けているだけのようだ。 固有の間隔を示す不変量ではなく、間隔が変容するだけである。空間計量の空間的変化には空間計量の逆数が固有のサイズにするために存在し、 時間的変容のためには、空間計量自体がそのサイズを示すというかのようである。しかしそれは、フリードマン宇宙の他の宇宙との時空 計量と不変量に意味の違いがあるだけかもしれない。そしてアインシュタインはそれを許容し、膨張宇宙を認めたのである。他の宇宙論と 同じ計量の意味からいえば、その計量の逆数が固有のサイズを示すから、膨張宇宙の全ての様相はその逆数の宇宙のサイズをもつ時間的 遠方で巨大な収縮宇宙論である。アインシュタイン宇宙は定常の計量だが、ド・ジッター宇宙は時空遠方で計量が発散する。遠方では計量 g_iiが発散するのが他の宇宙解なのに、フリードマン宇宙は空間計量は0から開始する不思議さがある。しかも、時間計量は現在と同じ不変である。


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不変量が存在することをフリードマン宇宙は満たしているだろうか。満たしているだろうもしそれが収縮宇宙なら。フリードマン宇宙の導出 のどこかに誤りがあるだろうか。いやないだろう、結果の解釈以外は全く正しい。過去の銀河間隔と現在の銀河間隔は、現在の銀河間隔が 過去の銀河間隔の100倍のとき、過去の√g_ii= 100であり0.01ではない。100であるとき不変量である時空間隔dsが保存される。これを 0.01という転倒した理論がフリードマン宇宙である。これから比べれば、ド・ジッター宇宙の方が、どれほどか膨張宇宙である。そして、 なぜアインシュタインは、これを認めたのだろうと不思議に思う。時代が膨張宇宙を説明する理論を必要としていたことを優先しただろう、 そしてこうすれば、誰もこの誤りに100年も異義を唱えないだろうと予測したのだろうか。なぜなら、逆数の膨張宇宙は単なる収縮宇宙であり、 未来が開ける感じがしない破滅的であり、なによりも赤方偏移しないから観測事実にも合わない。だから、そんなことはあり得ないと考えるだろうと。

フリードマンが、膨張宇宙に空間計量の増大を割り当てるとき、時空の不変量の解釈の問題に気が付いていただろうか。もし、微かな気付きでも あれば、全くの逆数を宇宙のサイズなどと呼ぶことはなかっただろう。時空のなかで時空間隔 ds が不変であるということの意味を多少でも 理解していたら、まさか逆数になる膨張宇宙を作り出すことはなかっただろう。もし彼の全ての導出が正しかったら、式はそのままの収縮宇宙 の時刻が-130億年の膨張位相にいるかである。

フリードマン宇宙の話を、なぜここでするかというと、空間計量の意味は微妙で、存在の証拠が希薄であることをいうべきだからである。 多くの人が実験に関わる重力波も、空間計量が関わっていて100年間地上で存在確認できない。光は発生場所の時間計量を保存するのに、 空間計量を保存しない。これらから私は一度、時間計量だけで宇宙を考え直してみる。それは一般相対論を否定するが、初期理論は否定しない。 ポテンシャルだけ存在する宇宙では、重力で光も確かに半分は曲がるし、現代のGPS衛星も正確に時計を保てるだろう。 そして、余計な項は空間計量だったということにならないだろうか。何事も一度は疑うべきという意味においてである。


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10 ポテンシャルの光速伝播

経路に依存しないエネルギー差とは、任意の2つの経路を結合した閉曲線の、1巡のエネルギー 0を意味する。エネルギーが位置のみによる ポテンシャルの存在は、力場 g の回転 0 (rot g= 0) に対応する。静電場や静重力場のように、回転のない力場は、スカラーポテンシャルをもつ。

同様に発散のない力場bは、背後にrot A = b なるベクトルポテンシャルAを持つことができ、重力場gは真空中には発散がないのでベクトル ポテンシャルAをもつことができるが、div(gradφ)= △φ= ρである。ρ>0 を考慮するとき、gにベクトルポテンシャルはない。

φの動的な時間変化は存在でき、これによってニュートン重力の即時伝達は光速伝達するφの波動伝達に置き換わる必要がある。 電磁気では、E、B、φ、Aが全て光速の波動方程式をもつことから、光が電磁波であることが明らかになった。重力もこれに類似するなら、 g、b、φ、Aが存在し、電磁波と同様に、光速伝播する波動として存在するかもしれない。φは波動方程式、ダランベールの方程式をもつ。 そして g も波動方程式をもつように見える。しかし、b やAは存在するか確かでない。

電磁気では、磁場 B が div B = 0 なので、 rot A = B とするベクトルポテンシャルAを仮想できる。 電磁気では、電場と磁場のベクトルはそれぞれの空間的な微分と時間微分が互いに関係して存在するが、 (rot E = - dB/dt, div E = ρ, rot B = dE/dt + i, div B = 0) 重力場は電場に相当するが、磁場に相当するものが知られていない。電場と磁場のような対でなければ、真空中を伝播しない訳ではなく、 ポテンシャルはそれ自身で波動方程式を満たし、真空中を伝播できる。ポテンシャルφは物質密度ρから作られ、ポアソン方程式△φ=ρ が成立し、真空中で □φ= 0 という波動方程式(ダランベール方程式)が成立すれば、両者から、自動的にあらゆる場所で□φ=ρとでき 光速伝播する。

平面波φ(x,t) は、y,z 平面上で同じ値をもち、その勾配に波の進行方向に垂直な成分はない。この波は進行方向にだけ勾配の成分をもった gが物体に振動力を与える。スカラーポテンシャルφの単独の波は、gの縦振動を与える縦波である。


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11. ダランベール方程式への時間計量の導入

(1) 時空間隔:ポテンシャルφは、時間経過の速度を決める。計量の式を時間以外は 1 とすれば、 その点の光速は、φ:√-g_44 時間経過の速度であり、空間間隔 dl^2= dx^2+dy^2+dz^2 とすれば、時空間隔は、

ds^2= dl^2 - φ^2 dt^2 .......(1)

この式は、φdt= dt' とおけば、時間経過と光速が正規化され、(dt', dl)がミンコフスキー時空間隔である。

ds^2= dl^2 - dt'^2 ......(1')

(2) ダランベール方程式:静的なポテンシャルφは、その勾配が重力g=-grad(φ)を与え、真空中ではラプラス方程式△φ= 0を満たす。 質量密度ρを考えるポアソン方程式△φ= ρは、φを質量から生じる物理量とする基本的根拠を与える。しかし、動的には、 ポアソン方程式を4元化したダランベール方程式がφの光速移動を示す、ポテンシャルφの波動方程式である。

□φ= ρ .......(2)

∂^2φ/∂l^2 - φ^-2 ∂^2φ/∂t^2 = ρ .......(2')

(1)(2)の関係は、(2')から、

dl^-2 - dt'^-2 = ρ/(dφ)^2

φの座標成分による2階の偏微分は、座標微分の-2乗和であり、□(2階偏微分の4元和)は、式(1)の時空座標微分の逆数の2乗和である。 これは空間のある方向成分lを選択するとき、時空間隔ds^2の式を分子にもつ形になる。

(dl^2 - (φ dt)^2)/dl^2(φdt)^2 = ρ/(dφ)^2

ds^2= dl^2(φdt)^2ρ/(dφ)^2

結論:lを使うとき (1)が(2')を導く。

(2)は、□'= ∂^2_l - ∂^2_t' として、(□'= ∂^2_l - φ^-2 ∂^2_t )

∂^2φ/∂l^2 -1/φ^2 ∂^2φ/∂t^2 = ρ

( ∂^2_l -∂^2_t' )φ = ρ .....(2'')

□'φ= ρ と表される非線型の波動方程式になる。(2'')は、逆数の時空間隔と物質密度ρの関係、ポテンシャルと物質の関係を示す、 後期ニュートン的な重力方程式である。l方向に進む平面波内でそれに垂直な平面内のφの偏微分がないとすると、1次元空間と時間は、 時空間隔 ds^2 と同じ式になる。