Translated from "Uber den Einfluss der Schwerkraft auf die Ausbreitung des Lichtes" Annalen der Physik, 35, 1911. "the priciple of relativity" (Dover 出版)から訳した。
これらの思索の過程で、重力に関係するさらなる結果も産まれる。しかし、すべての思索の群れを詳しく解説するのは、却って 追跡するのが困難であるから、本当に基本的な思索のいくつかを続く頁に示し、そこから読者が理論の仮定と思考の線をつねに 確認できるようにする。ここで推論された式は、理論の基礎に見えるものさえも、1次近似までしか有効でない。
(*) A.Einstein, Jharbuch fur Radioakt. und Elektronik,4,1907
K についても、K'についても、他の質点の作用をうけないと質点は、つぎの方程式に従って運動を続ける。
d^2x/dt^2 = 0, d^2y/dt^2 = 0, d^2z/dt^2 = - γ
加速系 K' については、この式は、ガリレオの原理からすぐに来るが、系 K 一様な重力場の中で静止している系では そのような場の中にあるすべての物体が等しく均一に加速されるという経験によるのである。この経験、重力場の中では、すべ ての物体が等しい落下をするという経験は、自然の観測が産み出した経験の中で最も普遍的な経験のひとつであるが、それにも 関わらず、物理的な宇宙の我々の構築物の中には、どこにもその法則を見出せないものである。
しかし、我々は、この経験則に対して非常に満足する解釈に到達した。もし、我々が系 K と系 K' とが物理的に厳密に同等と 仮定するなら、すなわち、もし、K が重力場から解放された宇宙の中の系と見なしうるなら、そしてつぎに、それが均一に加速 している系とみなすならである。この厳密に同等の仮定は、参照系の絶対加速度についていうことを不可能にする。それは、 通常の相対論が系の絶対速度についていうことを禁止するのと同じである;* そして、それは、重力場の中のすべての物体の 等しい落下を、当り前のこと (matter of cource) にみせる。
我々が、ニュートン力学の支配する領域の中で純粋に力学的な過程に自ら制限している限り、系 K と系 K' の同等性は、 確かなものである。
しかし、我々のこの視点は、系 K と系 K' が全ての物理的過程において同等とみなさない限り、すなわち、系 K に対しての 自然の法則がすべて全面的に系 K' においても成立するとしない限り、より深遠な重要性をもたないだろう。 これをそのように仮定するだけで、もしそれが本当に正しければ、偉大な実用的な重要性のある、ある原理に到達する。 均一な加速のある参照系について行われた理論的な考察の過程によって、一様な重力場の中の過程の履歴について情報を得る。 通常の相対論立脚点から、我々の仮説に固有の性質がどの程度ありうべきかを、我々はいま、まず最初に示さなければならない。
(*)もちろん、我々は、任意の重力場を、重力場のない場所での座標系の運動状態に置き換えることはできない。そうではなく、 どんな種類の運動をもしている媒体のすべての点を、相対性の変換によって、静止した系に変換することができるにすぎない。
しかしこのことは、非常にありえないことと考えなければならない。一方、通常の相対論は、物体の重量がそのエネルギー内容に 依存するということを推論する、いかなる議論も用意していない。しかし我々は、我々の仮説、系 K と系 K' の等価性が、 エネルギーの重力を必然的な帰結として我々に与えることを示さなければならない。
ふたつの物質系S1, S2が, 用意された測定機器とともに、系 K の z 軸上に互いに h の距離(*)を置いて存在するとする。 S1の重力ポテンシャルは、S2のそれに比べてγh だけ大きい。定まった量のエネルギー E を S1 から S2 に向かって放出する。 S1とS2に含まれるエネルギーは、ある仕組(z 軸上で、ある場所にもちこまれ、そこで比較できる)で測定され、それは、 完全に動作するとする。放射によるエネルギーの輸送の過程について、我々は何も先見的な仮定を設けない、なぜなら、我々は 放射とS1とS2での測定機器における重力の影響について、何も知らないからである。
しかし、我々の前提である、 K と K'の等価性によって、一様な重力場の中の系 K は、z の正の方向への均一な加速系 K' と z 軸に剛く結合された物質系 S1 と S2 とに置き換えることができる。
我々は、S2 から S1 への放射によるエネルギー輸送の過程を判定するのに、加速のない系、K0 系から判定する。 S2からS1へ放射エネルギーE2が放出された瞬間の K' の K0 に対する速度を 0 とする。時間(最初の近似として) h/c 経過後 に放射は、S1に到着するだろう。しかし、この瞬間、S1 の K0 に対する速度は、γh/c = v である。それゆえ、相対性の通常の 理論によって、S1に到着する放射は、E2のエネルギーを所持せず、E2 と比較して、より大きいエネルギー E1 をもつ。 第1次近似で式は、
E1= E2(1+v/c)= E2(1+γh/c) ...... (1)
E1 = E2 + E2/c^2 Φ .............(1a)
この式は、観察下の過程のエネルギーの法則を表す。S1に到着したエネルギーE1は、同じ手段で測定され S2で放出された エネルギーE2 より大きく、過剰分は、重力場の中の質量 E2/c^2 のポテンシャルエネルギーである。エネルギーの原理の 達成のために、我々が S2で放出前のエネルギーEを帰さなくてはならないものは、重力によるポテンシャルエネルギーであり、 それは重力質量 E/c^2 に対応することが、このように解かれた。我々の仮定、K と K' との等価性は、 この段落の始めに言及した困難をこのように除去する。それは、相対性の理論で解かれずに残されたものであった。
この結果の意味は、我々が次のようなサイクル動作を考慮するなら、とくに明らかに示される:--
1. S2で測定され、S2からS1に向けて放出したエネルギーEは、結果として今得られた E(1+γh/c^2) としてS1で測定され吸収される。
2. 質量 M の物体 W が S2 から S1 に降ろされるとき、その過程で Mγh の仕事がなされる。
3. W が S1 にいる間に、エネルギー E が S1 から物体 W に移される。それによって重力質量 M は変化し、M'という値を得る。
4. W は、再度 S2 に持ち上げられ、その過程で仕事 M'γh がなされる。
5. W から S2 に E が返される。
このサイクルの効果は、単純に次のようなものである。S1 は、エネルギー増加 Eγh/c^2 を実行し、エネルギー M'γh - M γh は 機械的仕事の形でシステムに移される。エネルギー原理によって、我々は、それゆえ次を得なければならない。
Eγh/c^2 = M'γh - M γh
又は、
M'- M = E/c^2 ..................(1b)
重力質量の増加は、E/c^2 に等しく、それゆえ、それは相対性理論の与える慣性質量の増加に等しい。 その結果は、さらにより直接的に、K 系と K' 系との等価性から、K における重力質量が、 K' 系における慣性質量に厳密に 等しいことに従えば、エネルギーは、重力質量をもち、それと等しい慣性質量をもたなければならないことを現している。 もし、質量 M0 がバネのバランスによって K' 系で支えられているとき、そのバランスは、M0 の慣性の代わりに、外面的重量 M0γ を表している。エネルギーの量が M0 に移されるなら、バネのバランスは、エネルギーの慣性の法則によって、(M0+E/c^2)γ を示すだろう。 我々の基礎的な仮定によって、重力場の中の K 系において実験が繰り返されたとしても、厳密に同じことが 起こらなければならない。
ν1 = ν2(1 + γh/c^2) ...........(2)
もし、我々が再度、光の放出時に K' に対して速度が 0 であったような、K0 という非加速系を導入すると、S1 は、光の S1 への到着時に K0 に対して、速度 γh/c をもつ。それから、ドップラーの原理によって与えられた関係が即座に結果する。 K' 系と K 系の等価性の我々の仮定への合意するならば、この式は、K系、静止系で一様な重力を備える座標系においても、 その中で上記のように放射による伝達が実行されるならば、成立する。 それは、そして次のように続く。一定の重力ポテンシャルをもつ S2 で放出された光線は、その放射周波数は、 S2 の時計に比較すればν2であるが、S1への到着時に異なる周波数、S1の中の同一の時計に比較して、ν1 をもつ。γh に 対して、S2 に(そのS1での値を0にした)Φで置き換える。そして、我々が一様な重力場のために演繹した関係は、 やはり1次の形式であることを仮定すれば、
ν1 = ν2(1 + Φ/c^2) ...........(2a)
この結果(その我々の演繹によるものは、1次近似まで有効である)は、最初の段階として、次の応用を許す。ν0を基本的な 光発生器の振動数とし、同じ場所のデリケートな時計で測定されたとする。それら両者が、太陽の表面の場所にあることを 想像してみよう、(そこに我々の S2 が位置している。)放出された光の一部が、地球 (S1) に届く、そこでは、我々が到着 した光の周波数を時計 U、それは上述のものと全ての点で似ている時計であるが、それでもって測定する。そして、(2a)によって
ν = ν0(1 + Φ/c^2)
ここでは、Φは、重力ポテンシャルの太陽表面と地球との(負の)差である。このように、太陽光のスペクトル線の観測に従って 光の地上の源からの対応するスペクトル線と比較して、それはいくらか赤の方に偏って、実際、相対的大きさは、
(ν0 - ν)/ν0 = - Φ/c^2 = 2.10^-6
もし、太陽帯域の発生する条件が正確に知られるならば、この変位が測定にかかるかも知れない。しかし、他の影響、(圧力、 温度)が、スペクトル線の中心位置に影響を与えるなら、重力ポテンシャルの推論された影響が本当に存在するかどうか、発見 するのは難しいだろう。(*)
(*)L.F. Jewell (Journ. de Phys., 6, 1897, p.84) ととくに Ch. Fabry と H. Boisson ( Comptes rendus, 148, 1909, pp. 688-690) は、実際にそのような赤方に向かうスペクトル線の変位を発見した。それは、ここで計算されたオーダーの大きさであった。 しかし、それは、吸収層の中の圧力の効果に帰された。
ν2(1 + Φ/c^2)
そして、それゆえ、それは、(2a) によって、同じ光線の S1 に到着時の周波数 ν1 と等しい。
これは、我々の理論にとって基本的に重要な帰結をもつ。 なぜなら、加速され重力から解放された系 K' の異なる場所の光速を全く同じ構成の時計 U で測定したなら、 全ての場所で、同じ大きさを得るからである。我々の基本的な仮定によって、系 K においても同じことが成り立つ。 しかし、今しがた述べられたことから、重力ポテンシャルの異なる場所の時間を測定するためには、 違う構成の時計を使わなければならないのである。 座標系の原点に対して重力ポテンシャルΦをもつ点の時間を測定するためには、座標系原点に再移動したとき、 座標原点で時間を測定するのに使う時計よりも、(1 + Φ/c^2) だけゆっくりと進む時計を使わなくてはならない。 もし、座標系原点の光速を c0 とするなら、重力ポテンシャルΦの点の光速 c は、次の関係で与えられよう。
c = c0 (1 + Φ/c^2) ..............(3)
光速一定の原理は、この理論に従っても、通常の相対論の基礎をなす形式とは異なる形式でよく保たれているのである。
時刻 t+dt に対応する波面、というか、その紙面との交線、は、P1、P2 を中心とした半径 c1dt と c2dt で円を描き、 (それぞれ c1, c2 は、それぞれP1, P2 の光速を示す。)そして、それらの円の接線を引くことで得られる。それゆえ、 cdt の通過によって光線の屈曲する角度は、n' の増加の方向への光線の弯曲を正にとると、
(c1-c2)dt= - dc/dn' dt
光線の単位長あたりの屈曲は、
-1/c dc/dn'、又は (3)によって、-1/c^2 dΦ/dn'
最終的に、光線の経験する、任意の経路 (s) の n' の方向への屈曲の式を得る。
a= - 1/c^2 ∫dΦ/dn' ds ..........(4)
我々がもし、均一に加速される系 K' において、光線の伝播を直接に考察し、それを K 系に、そこより任意の形式の重力場の場合 に移しても、同じ結論を得ただろう。 (4)式によって、天体の側を通過する光線の受ける屈曲は、重力ポテンシャルの減少する方向、すなわち天体の方向に大きさ、
a= 1/c^2 ∫_-π/2^π/2 kM/r^2 cosθds = 2 kM/(c^2Δ)
k は重力定数、Mは天体の質量、Δは天体の中心からの距離を表す。太陽を通過する光線は、それゆえ屈曲を受け、その大きさは、 4.10^-6 = .83 秒角である。その星の太陽の中心からの角度の距離は、この量だけ増加して見える。 固定した星が空の部分として太陽の側にあるのは、皆既日食のときに見ることができるから、この理論は実験と比較可能である。 惑星である木星では、この変位の大きさは、上に与えられたものの約1/100の量になると期待される。 天文学者がここで挙げられた質問を取り上げることが最も望まれることである。なぜなら、どのような理論から離れても、 現在手に入る機器で、重力場の光の伝播に対する影響を検出することが可能であるかどうか、ということは疑問であるから。