UPDATE 2013/5/23 |
水 口 貴裕 (みずぐちたかひろ)
(略 歴)
東京に生まれる。
勝田聡一氏に師事。 ニューヨークにてバーバラ・マロウ氏(コープランド音楽院教授、ニューヨーク
チェロ協会副会長)に師事。
ニューヨーク・マネス音楽院にてチェロをピーター・プロッサー氏に室内楽をナンシ
ー・ガーネー氏に学ぶ。
Bergen Philharmonic Orchestra(米国ニュージャージー州)のチェロ副首席奏者を勤め、ニューヨークを中心にソロ、室内楽活動を行う。
1994年にニューヨーク・デビュー・チェロ・リサイタルを開催、
日本国内における演奏活動としては2005年、2007年、2009年および2012年の
東京文化会館におけるチェロ・リサイタルなど多数のリサイタルを開催するなどソリストとして幅広く活躍。
海外における演奏活動としては、
フランス(パリ)、チェコ(プラハ)、 ポーランド(ワルシャワ)、ドイツ(ミュンヘン)、ベルギー(ブリュセル)
などヨーロッパ主要都市、
アジアでは中国などにおける演奏会でソリストとして幅広く活躍。国際音楽祭にもソリストとして出演。オーケストラと共演。
日本クラシック音楽コンクール弦楽器部門審査員。
その演奏は「高いレベルの音楽を生み上げる心意気に好感...」(音楽の友誌)など美しい音色と洗練された音楽により高い評価を得ている。
現在、東京を拠点としてソリスト、室内楽奏者として活躍する一方、チェロの普及・
指導に努めている。
リサイタルでは、日本ではほとんど演奏されない優れたチェロ曲を意欲的にとりあげ紹介している。
品川 聖氏にヴィオラ・ダ・ガンバを師事。
◇コンクール入賞歴: 「万里の長城杯」国際音楽コンクール・弦楽器部門最高位入賞(1位なし第2位)
ベストプレイヤーズ・コンクール入賞(審査賞)他
◇CD:チェロ小品集「シャコンヌ」」ベルタレコード
◇ 著作等: 「愛の挨拶」KMP、 「完全チェロマスター」KMP(刊行予定)
使用楽器:ダビッド・テヒラー(Rome、1730-40年頃)★David Tecchlarについて
ガエタノ・キオッキ(Pauva、1860年) ★Gaetano Chiocchiについて
使用弓:F.ペカット、F.ボアラン
お問い合わせ:
ここをクリックし、メールを送信できます。
cellists@aol.com
電話:03-3717-4693
下記連絡フォームからも連絡可能です。(携帯電話以外のPC,スマートホン等)
渋谷クロスFM出演(2015年11月15日)
<演奏曲>
-テレマン「忠実な音楽の師-無伴奏ソナタ」
-オルティス「装飾変奏法より無伴奏レセルカーダ第2番」
ヴィオラ・ダ・ガンバのすべて
ヴィオラ・ダ・カンパは、古楽器として魅力的な楽器であり、比較的容易にマスターできる楽器と言える。楽器が比較的高価であり、教える教室もチェロなどと比べて少ないが、それを除けば初心者でも容易にマスターでき、またチェロの既学習者にとっては、高度な曲に取り組むハードルは低いといえる。ここではバスビオラ・ダ・ガンバを中心に解説している。
ヴィオラ・ダ・ガンバ(イタリア語:Viola da gamba)は「脚のヴィオラ」を意味し、16~18世紀にヨーロッパで用いられた弓を用いて弾く楽器である。フランス語では「ヴィオール viole」」とも呼ばれる。 ヴィオラ・ダ・カンパの起源ははっきりしないが、おそらく16世紀初頭にイベリア半島で生み出され、それがイタリアに持ち込まれて16世紀中頃に完成されたものと考えられている。ヴィオラ・ダ・ガンバは主に宮廷を中心に上流階級の娯楽として演奏された。当時はチェロ奏者がガンバ奏者を兼ねることも多かった。
18世紀後半のガンバの名手アーベルの死後にガンバはすたれてしまったがフランスにおいては19世紀まで生き残ったが、フランス革命以後衰退した。その後、19世紀末に古楽復興運動により16~18世紀の音楽・楽器研究が進むとともにより次第に演奏されるようになった。
B.楽器
ヴィオラ・ダ・ガンバは、一見バイオリン族の楽器に似ているが、構造的にはギターに近い。表板はバイオリン族の楽器のように膨らんでいるが、裏板はギターのように平らで上部はなで肩である。ヴィオラ・ダ・ガンバの系列の楽器にはコントラバスがあり、ヴィオラ・ダ・ガンバと似た構造となっている。また、ヴィオラ・ダ・ガンバに共鳴弦を付けたバリトンという楽器もあった。
弦は6弦で、ガット弦を使用する。弓は弓なりに反ったバロック・ボウを使用する。
B-1.楽器と弓の各部の名称
楽器と弓の各部の名称は下記のとおりである。名称はチェロなどのバイオリン族の楽器と同じと考えて良い。
<楽器>
a.Scroll(スクロール・糸巻)
b.Peg(ペグ)
c.Pegbox(ペグボックス)
d.Nut(ナット)
e.Fret(フレット)
f.neck(ネック)
g.fingerboard(指板)
h.shoulder(肩)
i.strings(弦)
j.sound hall(サウンド・ホール)
k.bridge(ブリッジ・駒)
l.ribs(横板)
m.tail piece(尾留め)
<弓>
a.tip or point(先端)
b.stick(弓芯)
c.hair(毛)
d.frog or heel(フロッグ)
e.screw(ねじ)
f.pegs(ペグ・糸巻)
g.upper half(上半弓)
h.lower half (下半弓)
C.ガンバ奏法
1. 調弦
ガンバの調弦は上からD-A-E-C-G-Dとなる。E-Cが3度、それ以外は4度の調弦となる。バロックの調弦では、現代調弦442Hzより半音低い音で調弦する。
開放弦の調弦後、上、下の弦で、5度とオクターブが正確にとれるかどうかチェックする。これにより、フレットの場所が正しいかどうか確認する。
Aを調弦した後、D-A、E-C、C-Gを重音で弾くことにより調弦し、一番上の弦(第1弦D)と一番下の弦(第6弦D)は同じ音になるように調弦する。
Dは一番上のDと合わせる。
4番目のフレットで上の弦と同じ音をとり2弦を弾く方法もあるが、正確さの点であまりお勧めできない。
通常の演奏の構えで、ガンバを固定して、左手でペグをねじり込みながら弓で弾きながら調弦する。この場合手前に回すまと音が高くなり、反対に回すと音が低くなる。
別の方法としては、ガンバに向かい合う形でひざの上にのせて、左手でネックを握り、左手の親指で弦をはじきながら、右手でペグを回し調弦する方法がある。
初心者の場合は、完全に正確な音ではないが、ピアノまたはキーボードで調弦しても良い。
2.構え
椅子は高すぎず、低すぎない固めの平らな椅子(アームなし)を用意する。 椅子の前よりに浅めに座る。足を少し離し外側に向けて開く(逆「ハ」の字型(90度以上)に開く)。左足は右足よりやや前となり、かかとはしっかりと床に固定する。両ひざは自然に外側に開き、ガンバの底面が足の内側に楽器を乗せて両ひざを軽く添える。ガンバの持つ重さで安定には十分であり、硬く挟む必要はない。駒の場所はひざより高い場所とする。
全弓を弾いたときに自由に弓を動かすことができ、ひざに弓が当たらない構えにする。
特に一番上の弦を弾いたときにひざに弓があたらないように注意する。ネックはやや右側よりで下の3弦が良く見えるようにする。ガンバは胸に触らないようこぶし1個以上の間隔をあける。
最初に時計回りに弓のスクリュー(右端のねじ)を回して弓身と毛が十分に離れ、かつ中指がかかる程度に張る。弓の中央を弦につけて十分な圧力をかけても、スティックと毛が触れないようにする。フロッグから15cm以上残して松脂を軽く塗る。このとき松脂を固定し、弓を動かすようにする。
4.弓の持ち方
左手で弓の中央をつまみ、右手でフロッグの端から3~4センチくらいのところに人差指を曲げて箸を持つ要領で支え、人差指、親指の2本の指で弓で支える。中指と薬指を曲げて毛を上下から挟む。手の甲は右外側、手のひらは内側を向くようにする、この際、手首を内側に曲げないように、また右手に力を入れない様注意する。中指で床の方向に毛を引っ張ったときに、滑らないようにする。
5.弓を置く場所と圧力
ガンバの音質を決める要素としては、毛の傾き、駒からの距離、弓の速度、弓の使用場所がある。弓を置く場所は通常、駒から指2~3本程度離れた場所が良いとされているが、これは楽器によっても、弦によっても、左手のポジションによっても異なる。ベストの場所をみつけるようにする。一般的に上の弦になるほど駒に近付け、下の弦では駒から離れる。また、高いポジションになるほど駒に近付け、低いポジションほど駒から遠くなる。
弓は弦に対して直角に動かす必要がある。弓は駒側に傾けるようにする。弦にかける圧力は腕の重みを伝える弓の傾き、中指を通じて変える毛の張力が大きな要素である。手首を上下に回転させることにより、毛の傾きを変えることができる。弓の傾きは毛の量が増えると圧力を増し、減らすと圧力も減る。
6.ボウイング(運弓)の基本
ガンバのボウイング(運弓)は肘から先の前腕をひじを中心として直線上(弦と常に90度=駒と平行になるように)を動かすようにする。決して肘から先に動かしてはならない。腕はリラックスするようにする。
上げ弓にあたる右から左に動かすボウイングは「∨」または「p」と音符の上に記し、push(プッシュ)またはpoussuzという。下げ弓に当たる左右から右に動かすボウイングは「П」または「t」と音符の上に記し、pull(プル)またはtirezという。
ガンバのボウイングはチェロなどのバイオリン族とは逆に、フレーズや小節の開始は上げ弓(プッシュ)から始め、3音以上の重音も必ず上げ弓(プッシュ)となるのが原則である。これはオーバー・ハンドで弓を持つ、バイオリン族の楽器とアンダーハンドで弓を持つ、ガンバとの違いからきているとも考えられる。
上げ弓(p:pousse プッセ)は、親鵜少し曲げ、右手首を楽器の側に少し曲げて押すようにする。この際、人差指はステイックに中指は毛にしっかりと接触するように注意する。
弓の速度と圧力の関係は重要である。圧力をかけた場合には弓の速度は速くなり、圧力のかからない場合には弓の速度は遅くなる。
下げ弓(t:tireテレ)は、手首で主導しながら楽器から遠ざかるように弓を動かす。肘を主体に動かさないように、弓が下がらないよう高さを保つことに注意する。
7.弓の返し
弓の返しで重要なのが、指と手首である。上げ弓(プッシュ)から下げ弓(プル)に弓を返すときは返す手前で指を曲げて手首を少し出すようにしてから、返すタイミングで指を伸ばし同時に手首を弓先方向に曲げる。そこから逆に伸ばした指を引き寄せるように曲げながら手首を通常の位置に序々に戻す。下げ弓(プル)から上げ弓(プッシュ)からへの返しは逆の動きとなる。ここでは、指の曲げ伸ばし、手首の動きが、急にならないように、また、弓が止まらないように注意する。また肩から前腕にかけてリラックスして、全体的な重さが常に均一にかかるように注意する。
8.弓の使用場所
ガンバはチェロなどとは異なり弓の半分から先を主に使用する。従って、弓の根元は基本的に使用しない。
9.弓の速度
弓の速さは原則として一定であるが、表現により、弓の速度を減らしたり増やしたりする。低い弦程弓の速度は遅くなり、高い弦ほど弓の速度は速くなる。
弓速は楽器がチェロなどと比べて小さいため、弓の速度は比較的速めである。
音質のうち弓については、次の要素により決まる。
弓の速度
弓の駒からの距離
弓の弦に与える圧力
遅い弓の動きは駒の近くで、圧力をかけて弾く。速い弓の動きは駒のから少し離して、圧力を少なくして弾く。長い音符は遅いボウイングが必要なため、駒の近くで通常の圧力より多目にして弾く必要がある。柔らかい音を出すに弓を少し指板よりにすると良い。
10.弓の使用量
速い音符では、腕ではなく、手首と指を使い弾く。速くなる(音符が細かくなる)ほど弓の使用量を減らす。非常に速い音符は指だけで弾く。長い音符では腕が主体となり、手首と指は従となる。
11. 音質
良い音質が得られない場合は次のことが考えられる
1)ボウイングの途中で、毛と弦の接触が十分でないところがある。
2)弓に腕の重さがかかっていない。
3)弓が駒に近過ぎるかとお過ぎる
4)弓が駒と平行でない。
5)弓の動きが速過ぎる
6)圧力をかけ過ぎている
7)左手の指がフレットから離れ過ぎている。
8)左手の指の圧力が少な過ぎる。
9)松脂が少な過ぎる。
10)弦が擦り切れて音が出ない。
11)特定のところで、ウルフトーンが出ている。
12)楽器が調整されていない
弦を交換したり、サウンドポスト(魂柱)の位置を変えることも音質を変える方法である。
12. 弓の弾き始め
中間の弦で弓の先端よりから弾き始める場合には毛に接触している中指を十分に曲げる必要がある。この場合、しっかりとした圧力を弓にかけ、楽器の方向に対して指を少し延ばす。
13.弓先からの弾き方のポイント
ガンバは弓先から弾き方始めることが多い。弓の先では、圧力がかかりにくいため、意識的に圧力をかけてから弾き出す必要がある。
14.ボウイングにおける手首の動き
手首の動きは常に水平方向となる。手首を縦方向に回転させることにより、圧力を増減できる。この2つの組み合わせにより、力強い音を出すことができる。手首を引く動きでは、圧力を減らすこととなり、これと反対に手のひらを出す動きが圧力の増加となる。これが自然な強弱の動きである。
この自然な動きができると同時に上げ弓で弱く、下げ弓で強くしていくこともできるようにしておく。
15.重音の弾き方
ヴィオラ・ダ・ガンバは、重音を弾くのに適した楽器である、重音は特に独奏曲においては重要である。重音を弾く場合にはまたがる左手の全ての指を浮き上がらないようにして押さえる必要があるが、力を入れ過ぎてはならない。重音を弾くときの弓は単音を弾くときと同様であるが、複数の弦を同時に弾くため、圧力が分散されるため、圧力を増やす必要がある。
・ガンバは弦が多く、重音をとりやすいため、「ソーハ」といい同時に複数の弦に指を置くことを多用する。
・3音以上の重音はアルペジオで弾く。ただし3音でも同時に弾く場合がある。(テレマン第2楽章)3音の重音は和音同士をスムーズにつなぐようにする。
・3音以上の重音は上げ弓で弾く。クレッシェンドにならずディミヌエンドとなるように注意する。
16.長い音の重音
2音以上の長い音の重音を弾く場合は、同じフレットの位置に複数(1~4指)を置くこともある。
重音のボウイングでは上げ弓を使用し、バス音を単独で響かせて弾き、それからその上の音を短く弾く。この際、弓の移動に従って、圧力を減らしてゆく。最後に最上弦を長めに響かせてから弦から離し、響かせる。3音の重音では、3番の音を最初に弾き、続いて上の2音を同時に弾く。最後は最高音の1音のみとしても良い。
17.移弦
18.2弦間の交互の移弦
2弦間の交互の移弦には手首を回転させるようにして指を伸縮させて行う。
弦を越える移弦では、弦から弓を離さずに圧力を維持するが、間の弦を鳴らさないように注意する。
弾き終わった音も響きを残すためにすぐに弓を離さずに音の最後まで弓で弾くようにする。
腕による圧力のコントロールはしにくいため、主として中指により毛の張りをコントロールすることにより、強弱のつけ方をコントロールする。
また、2声部の場合には、下の音を眺めに弾き響かせる。
21.長く弾く音
和音の変わり目、大きな跳躍の前の音は長めに弾いて強調する。
22.左手
左腕は軽く空中に支え親指は中指の下に指板と90度になるように指板をはさむように置く。フレットの糸巻き側に指板と90度になるように、フレットに指のはらが少しかかるように置く。なお、フレットの無い高いでは、左手の親指は指板の横に添えるようにする。弓の圧力はかけすぎず、弦がフレットに十分に付くようにする。左肩と腕をリラックスして、肘を軽く支えることを忘れてはならない。
23.第1ポジション
人差指(1指)は第2フレット、中指(2指)は第3フレット、薬指(3指)は第3フレット、小指(4指)は第4フレットに置く。ここを第1ポジションと言い、最も基本的な良く使用する場所である。各指は曲げて、指板と直角になるように軽く置く。指が反ったり、つっぱったりしないように注意する。
24.ポジション移動
ポジションの移動は並行移動で、次にとる指を意識して、最短距離ですばやく行う。
拡張ポジション(Extension)への移動は通上の構えから人差指を伸ばすことにより行う。
通常のポジション移動は、原則としてジャンプせずに、肘を中心に弦上で指を滑らせて行う。決して肘から先に移動してはならない。
25.ポジション移動のポイント
親指と他の指の力を抜いて、スムーズにできるだけ速く目的のフレットに移動する。
高い音へのポジション移動は重力を利用し、低いポジションへの移動は、手を引き上げるようにする。左手の形を正しい角度に保つように注意する。
ポジション移動においては次の3点に注意する。
1. フレーズの表現とあわせて、できるだけフレーズの間で移動する。
2.付点音符等の長い音符の後では、移動の時間が十分にとれる
3.小節の最初の拍に限らず、移動により強拍に軽いアクセントを付けることができる。
26. 隣り合ったフレットの音を弾くとき
1指-2指、3指-4指など隣り合ったフレットの音を弾くときは手首をネックに沿う方向に傾けてとり、音を明確にする。また、2音を同時にとる場合には1指を使う。
27. 指使い(フィンガリング)
解放弦を積極的に使用して良い。
27.演奏上の注意事項
・ 古楽の奏法としては、古典派以降の音楽と異なり、強弱の付け方を強音、弱音に忠実に従って付ける。
・ クープラン以降の音楽では前打音をテンポ内に入れるが、バロック以前の音楽では前打音をテンポ前に入れる。
・ フランス音楽の演奏法では、イネガリテinegaliteという音の長さに長短の差をつけて演奏する方法がある。指定がないときには、2分の2拍子では8分音符で、4分の4拍子で は16分音符で行う。
・ フレーズの頭はアップボウとするが、アウフタクトはダウンボウから始め、フレーズの頭がアップボウとなるようにする。
・ 開放弦の使用
開放弦は積極的に使用してよい
・ フィンガリングの選択
弦をまたいでの移動左手の移動は出来るだけ避ける
・ ビブラート
ビブラートはかけない、または控えめに一部の音にかける
・トリル
トリルは古典派以降の曲以外は必ず基音の上の音からかける。
C.主な作曲家とガンバ曲
ドイツでは、ブクステフーデ、テレマン、J.S.バッハ、C.E.バッハ、フリードリヒ・アーベルなどがバス・ガンバのために多くの曲を残している。フランスではマラン・マレの他、フランソワ・クープラン、フォルクレ親子などが多くの曲を作曲した。
<ドイツ>
●シェンク:ヨハン・シェンク (Johann Schenck1660~1716以降)
ドイツのヴィオール奏者・作曲家で、デュッセルドルフ宮廷のヴィオール奏者であった。
ヨハネス・シェンク(1660-1712以降)はオランダに生まれ、1696年頃からは玉にドイ
ツのデュッセルドルフの宮廷で活躍したガンバ・奏者。遅くとも1716年までに亡くなったこと以外にははっきりした経報が判明していない。 しかし その作品からはたしかにイギリスのヴィオール音楽からの影1 i 加うかがえる。
◇ソナタ第6番イ短調(「ドナウ河のこだま」Op.9より)ヴィオール独奏ソナタ
このソナタは1706年以前にアムステルダムで出版された6 曲からなる曲集の最後に置かれる曲である。この曲集は第1番~4番までが2つのカンパ、残り2曲が独奏となっている。 シェンクは他にもカンパのための作品を数多く出版しており、直前の作品8の曲集には「ライン河のニンフ」という名称を付けている。
ソナタと言うが、実際はごく短い小品を6曲つなぎ合わせた組曲風の曲である。
1Adagio 2 Allegro
3.Adagio
Adagio
Aria largo 2 Allegro 3 largo
Giga
Presto
Aria:largo
-vivace
Aria:largo
- Aria:Adagio
●アーベル:カール・フリードリヒ・アーベル(Carl Friedrich Abel, 1723年- 1787年)
ドイツの古典派音楽の作曲家でヴィオラ・ダ・ガンバの音楽史上最後の名手であり、今日では貴重なガンバ曲を数多く作曲した。ドイツのヴィオラ・ダ・カンパ奏者一族に生まれたアーベルは、ドレスデンの宮廷管弦楽団の奏者を務めた後1759年にイギリスに渡り、王妃シャーロット付きの音楽家となって、以来終生ロンドンを活動の本拠地とした。特に、同じ時期にロンドンで活路としていたヨハン・クリスティアン・バッハと共同で予約演奏会シリーズ「バッハ=アーベル・コンサートを主催して評判を集めた。
アーベルの存命時期はバロック~マンハイム楽派に代表される古典派への移行期であり、その作品にもマンハイム楽派の様式が見られる。ビオラ・ダ・ガンバが衰退した後も、独りこの楽器に愛情を注ぎ、バロック風の構築的な曲から古典的な曲まで、27曲の小品を残した。
◇無伴奏ヴィオラ・ダ・ガンバのための小品集 WKO 186-212
-5つの小品ニ短調〔WKO.205,206,207,209,208〕
WKO.205 WKO.206 WKO.207 Allegro WKO.209; Adagio WKO.208
この5つの小品は、手稿楽譜(おそらく自身による)としてニューヨークの図書館に収蔵されているものからニ短調の5曲を採ったもの。 1770年ごろの作と考えられる。 WKOの番号はW.クナーペによる整理番号である。
◇三つの無伴奏小品による小さなソナタ ニ長調
アレグロ(快速に)WK186
(表情表記なし)WK187
ヴィヴァーチェ(快活に)WK190
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ホ短調WK150
シチリアーノ(三拍子のゆったりした舞曲)
アレグロ(快速に)
プレスト(急速に)
●テレマン:ゲオルク・フィリップ・テレマン (Georg
Philip Telemann(1685-1750)
テレマンは、後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、40歳以降は北ドイツのハンブルクで活躍した。彼は多くの楽器を演奏することができ、木管楽器、特にリコーダーについては名人であったという。テレマンは、バッハやヘンデルと同時代の音楽家であるが、当時は彼らより人気と名声があったという。彼の音楽様式には、フランス・イタリア・ポーランドの民族音楽、特に舞曲からの影響がある。対位法を主体とする後期バロック様式からホモフォニーによる古典派様式への橋渡しをした作曲家である。
テレマン(1681-1767)は1721年にハンブルク移って以来、市の音楽監督を務める一方5つの教会の楽長を同時に務め、教会と市民のための音楽を書き続けた。その膨大な作品は、いずれも当時の聴衆の好みに沿った多様なスタイルで書かれており、これは明らかに当時の最もモダンな音楽であった。テレマンは史上初めて楽譜の定期刊行まで行っており、これも市民階級の要望を踏まえたものであった。
◇テレマン:ヴィオラ・ダ・カンパのためのソナタニ長調(「忠実な音楽の師」より)TWV40:1
バス・ヴィオラ・ダ・ガンバのための無伴奏ソナタで、4楽章からなる。このソナタもそうした1曲で、テレマンが1728年から翌年までの1年間、25課にわたって定期刊行した「忠実な音楽の師」の第15課に収められている。様々な編成の小品を徽曲ずつ収めたこの曲集はまさに、家庭で音楽を楽しむアマチュアを想定したものであった。なお、膨大な作品を誇るテレマンだが、無伴奏のカンパ・ソナタはおそらくこれが唯一である。
全体は4つの楽章Andante-Vivace-Recitativo-Arioso-Vivaceで構成されており変化に富んでいる。重音奏法やアルペジォなどのテクニックばかりでなく、RecitativoとAriosoといった語り歌うような人間の声に近いヴィオラ・ダ・ガンバの特性を意識して作曲されている。この終楽章は、3拍子のパスピエあるいは軽快なメヌエットで全体の中で一番馴染みやすい曲である
第1楽章 Andante二長調
第2楽章Vivace二長調
第3楽章Recitativo-Arioso、ロ短調
第4楽章Vivacc二長調
重音のフェルマータ後半はフーガ形式をとっている。
原典:Del getreue Musicmeister(1728-29)の P57(15lesson), P61(16lesson)に記載されている。 出版社:Schott
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ホ短調TWV41-e5~音楽のたしなみ
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ イ短調TWV41-a6~音楽のたしなみ
●J.S.バッハ:Johann Sebastian Bach(1685-1750)
ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ1番~3番
バッハは宮廷楽長を勤めていたケーテン時代(1717年から1723年)に3曲のビオラ・ダ・ガンバ・ソナタを作曲した。これらはビオラ・ダ・ガンバを演奏するケーテンのレオポルト公爵を念頭に、無伴奏チェロ組曲同様に宮廷オーケストラのメンバーでチェロとビオラ・ダ・ガンバの名手であったアーベル(1682-1761)のために作曲されたと考えられている。
●カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714~1788)
J.S.バッハの息子で、プロイセン王国の皇太子フリードリヒ(後のフリードリヒ2世)のルッピンの宮廷にチェンバロ奏者として奉職しベルリンの宮廷楽団員にまった。ヨーロッパでも最先端のクラヴィーア奏者のひとりとなっており、1731年にさかのぼる作曲活動も、お気に入りの鍵盤楽器のための、30曲のソナタや数々の小品が含まれる。同じ時期にロンドンで活路としていたヨハン・クリスティアン・バッハと共同で予約演奏会シリーズ「バッハ=アーベル・コンサートを主催して評判を集めた。
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ニ長調Wq.137/H.559
アダージョ・マ・ノン・タント(緩徐に、しかしそれほどでもなく)
アレグロ・ディ・モルト(快速に、それもきわめて)
アリオーソ(歌のような楽章)
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと参加必須の鍵盤楽器のためのトリオ・ソナタ ト短調Wq.88/H.510
アレグロ・モデラート(快速に、中庸に)
ラルゲット(ややゆったりと)
アレグロ・アッサイ(じゅうぶん快速に)
◇ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ハ短調Wq.136/H.558
アンダンテ(歩く速さで)
アレグレット(やや快速に)
アリオーソ(歌のような楽章)
● グラウン(ヨハン・ゴットリープGraun,J.G.)(1703-1771)
フリードリヒ大王の宮廷楽団で、ベンダ、C.P.E.バッハ、クヴァンツらと共に大活躍し、バロックから古典派への橋渡しをした重要な役割を果たしたと見られている。
ヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲ハ長調 (Guntersberg出版)
ヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲イ長調
<イタリア>
・ タルティーニ:ヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲
<フランス>
●マレ:マラン・マレ(Marin
Marais 、1656~1728)
マレは、フランスのヴィオール奏者、作曲家、指揮者、で、靴屋の息子として生まれ、ルイ14世の宮廷のヴィオール奏者に任命された。ヴィオール奏者として活躍するほか、リュリの信任を得て、オペラ座の指揮もしばしば任された。700あまりのヴィオール曲を作曲。
パリ南の貧民街で見習い靴職人の子供として生まれ、幼少の頃から音楽の才能を認められて1667年にはパリ第一の音楽教育機関だったサン=ジェルマン=ロクセロワ教会の聖歌隊に入り、1672年までフランソワ・シャプロンなどのもとに教育を受ける。
◇ ヴィオール曲集(第1巻~第5巻)
・独奏・二重奏のためのヴィオール曲集(第1巻)(1686年、通奏低音は1689年)
・ヴィオール曲集(第2巻)(1701年)
・ヴィオール曲集(第3巻)(1711年)
・独奏・三重奏のためのヴィオール曲集(第4巻)(1717年)
・ヴィオール曲集(第5巻)(1725年)
● クープラン:フランソワ・クープラン(François Couperin、1668年-1733年)
クープランはフランス盛期バロック音楽の作曲家。楽才を発揮した他の一族と区別して、オルガンやクラヴサンの卓越した演奏能力から「大クープラン 'Couperin le Grand' 」として知られてきた。クープランはサン=ジェルヴェ教会オルガニストに就任する。その後、ヴェルサイユ宮殿礼拝堂のオルガニストとなり。ルイ14世の死後1717年には宮廷のシャンブルの音楽家に任命された。
◇ヴィオール組曲第1番ホ短調(2台のヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音)
I. Prelude
II. Allemande legere
III. Courante
IV. Sarabande grave
V. Gavotte
VI. Gigue
VII. Passacaille ou Chaconne
◇ヴィオール組曲第2番 イ長調(2台のヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音)
I. Prelude
II. Fuguete
III. Pompe funebre
IV. La Chemise blanche
◇コンセール第12番 イ長調
I. Pointe-coule
II. Badinage
III. Lentement, et patetiquement
IV. Air: Gracieusement, et legerement
◇コンセール第13番 ト長調
I. Vivement
II. Air
III. Sarabande
IV. Chaconne legere
●フォルクレ:アントワーヌ・フォルクレ(Antoine Forqueray, 1671年頃 – 1745年)
アントワーヌ・フォルクレはフランス盛期バロック音楽の作曲家。
パリで音楽家の家系に生まれ、マラン・マレとともにフランス・ヴィオール界のヴィルトゥオーゾの双璧と呼ばれた。
優雅で暖かな美音を特色とするマラン・マレが「天使のようなマレ」と呼ばれたのに対して、フォルクレは表現衝動に富んだ鬼気迫る演奏から「悪魔のようなフォルクレ」と呼ばれた。このような評価は、フォルクレの気性の激しさをも暗示している。
1689年にルイ14世の宮廷室内楽団員に選ばれ、ヴェルサイユ宮殿で演奏に携わる。1710年まで夫人のクラヴサン伴奏によって独演を続けた。
フォルクレは自分の神秘的なイメージを好んで、自作を出版しなかったが、長男ジャン・バティストが父親の作品が世に埋もれることを惜しんで、父親の死後2年の1747年に、
そのヴィオール曲集を出版した。これはクラヴサン独奏用に編曲された組曲版が付いており、現在は後者がよく演奏されている。
◇ 組曲(5曲) 「Chaconne La
Buisson」、「Allemande de La Borde」、「La Couperin」。
<イギリス>
●ヒューム:トビアス・ヒューム(Tobias
Hume, 1569年頃-1645年)
イギリスのヴァイオル奏者・作曲家。職業軍人でもあった。スウェーデンやロシア帝国の軍隊で将校を務めている。生涯に2冊の重要なヴァイオル曲集を残し、イギリスにおけるヴァイオル音楽史に多大の貢献をしたことで知られる。彼はヴィオラ・ダ・ガンバ奏者として有名で、当時主流だったリュートに抗して、ガンバの推進派として活躍した。
エア集はそのほとんどがヴァイオルの独奏曲、ヴァイオル合奏と、ヴァイオル伴奏の歌曲が放曲ずつという構成になっている。
◇2つの小品〔あの彼女のものはとってもすてき/そっと触れてみて〕(エア集第1部より)
◇「詩的音楽集」10曲
◇『音楽の諧謔(ユーモア)』全115曲)」(ロンドン、1605年)独奏
●シンプソン:クリストファー・シンプソン(Christopher Simpson, 1605年頃–1669年)
シンプソンは、イギリスの音楽家でとりわけヴィオラ・ダ・ガンバやコンソート音楽の作曲家や音楽理論家として名を残している。彼自身ヴァイオル奏者であり、生涯にかなりの数の作品を出版している。中でも最も重要なものは1659年にロンドンで出版された、ヴァイオルを用いた変奏曲技法に関する「ディヴィジョン・ヴィオリスト」(またはディヴィジョン・ヴァイオル)という著作である。
◇ 3つのプレリュード〔二長調/ホ短調/変口長調〕(「ディヴィジョン・ヴァイオル」より)
プレリュード二長調
プレリュード ホ短調
ニブレリュード 変ロ長調
◇ ファンタジア集《四季 The Seasons 》
<スペイン>
●オルティス:ディエゴ・オルティス(Diego Ortiz, 1510年頃- 1570年頃)
スペイン・ルネサンス音楽の作曲家・音楽理論家。当時スペイン領だったイタリア南部で活躍した。 1553年にはナポリ副王領に住み、ナポリ宮廷の聖歌隊長に任命されている。著書に「ヴィオラ・ダ・ガンバ演奏の装飾論ならびに変奏論
」がある。
◇4つの無伴奏レセルカーダ(「装飾変奏法」全27曲より第1部)
第1番 Reccrcada a prima
第2番 Reccrcada a segvnda
第3番 Reccrcada a terccera
第4番 Reccrcada quvarta