Ⅳ、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて
1.子どもの権利に関する要求
(1)子どもの権利条約に基づいて
①憲法19条「思想・良心の自由」、20条「信教の自由」、21条「表現の自由」に照らして、卒業式・入学式における「日の丸」「君が代」の強制をやめ、「国歌斉唱」時の起立が強制ではない旨の告知を生徒・保護者に対して行うこと。
②子どもを主人公に考え、憲法、子どもの権利条約と教育の条理にもとづく教育を貫くとともに、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。
③昨年度県立学校での校則改定がどの程度進んだか、明らかにすること。
(2)SNS・いじめについて
①インターネット、特にラインやツイッターなどのSNSをきっかけに友達間でトラブルになり、いじめにつながるなど、それらの利用で傷ついている子どもたちがいる。昨年一年で神奈川県の犯罪や被害に巻き込まれた子どもたちはどのくらいいたのか。昨年の変化と傾向、新しい試みについて明らかにすること。
②SNSでの止まらない誹謗中傷、その中での自殺者が後を絶たない。2020年7月「学校における携帯電話の取扱い等について」の国の通知から3年経つが、一昨年と昨年の回答で「指導資料」は検討中とされている。進捗状況をあきらかにすること。
③県教委が発表した2022年度(令和4年度)間の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果(公立小・中分)をみると、
暴力行為の発生件数は
小学校で6,712件(前年度比488件増)
中学校で2,526件(前年度比573件増)
小中合わせて9,238件で1,000人当たり14.6人 (前年度は12.7人)
いじめの認知件数は、
小学校で 7,987件(前年度比 1,720件増)
中学校で12,306件(前年度比 573件増 33.1%増)
小中合わせて37,785件で1,000人当たり59.5人 (前年度は47.7人)
不登校理由とする長期欠席者の人数
小学校で 6,267人 (前年度比1,141人増)
中学校で10,362人 (前年度比1,243人増)
小中合わせて20,293人で1,000人当たり32.0人
全県的に学校現場では問題行動克服のためにさまざまな取り組みが行われている中、残念ながらすべての指標が前年度を上回っていて、学校現場の努力だけでは問題行動を改善できない事態になっている。
いじめによる殺人・自殺がこの神奈川でもここ数年の間で起きている。いじめから子どものいのちを守ることが一番に求められている。つい最近の茅ヶ崎で起きたいじめに対しての対応の遅れでも明らかなように、学級担任の教員が多忙のため、わかっていながらも対処できなかった、という残念な事例も起きている。
子どもたちが成長・発達段階で様々な問題を引き起こすことは当然のことであるが、それを解決する手段を私たち大人は持たなければならない。いじめ問題解決のために、まず、どの子にもゆきとどいた教育を目指し、学力向上でも生活力向上でも、人的・物的条件の改善が図らなければならず、その基本的な解決策として、以下を要求する。"
過去最悪になった暴力いじめ不登校を克服し、暴力・いじめ・不登校、過去最悪だった状況を克服するための施策を具体的に着手すること。
(3)生理用品について
①生理用品の学校のトイレへの設置について、昨年の回答では設置者負担が原則となっているため「市町村が判断して対応するもの」とあるが、県として県内自治体の設置状況をつかむこと。
②生理用品は、県立学校のモデル校で実施したアンケート結果からもわかるように、トイレの個室に設置するべきである。県立学校での設置場所について変化はあったのか、現在の設置状況の実態を明らかにすること。
(5)人権教育・ハラスメント教育について
①昨年の回答では、文科省が策定した「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」に「子どもたちが安心して過ごせる学校・教室」「人権が尊重される環境づくり」について言及している。
だが、2024年4月に県立高校で起きたエクステによるクラス写真の生徒除外は、「人権が尊重される環境づくり」からかけ離れた事例である。どうしたら「一人ひとりの人権を尊重する」視点を子どもたちや教職員が身に着け、学校が「子どもたちが安心して過ごせる学校・教室」となり、「人権が尊重される環境づくり」が進むと考えるか。子どもの権利条約の視点にたって、県の考えを明らかにすること。
(6)スクールソーシャルワーカー・ヤングケアラーについて
①スクールソーシャルワーカーの配置状況と活動内容での昨年からの前進面を明らかにすること。また、一人当たりの相談件数はどのくらいか、現在の人数で足りるのか、把握している実態を明らかにすること。
ヤングケアラー支援のために、昨年スクールソーシャルワーカー2名の増員となったが、対応しきれているのか。
②県内のヤングケアラーの人数は把握しているのか、市町村ごとに調査が行われていると昨年の回答にあったが、市町村ごとの人数が分かれば明らかにすること。またヤングケアラー支援のための取り組みで昨年からの前進面を明らかにすること。
(7)自衛隊の生徒に対する募集活動について
神奈川県内33市町村のうち10自治体が自衛官募集業務への協力として、高校生を含む年齢18歳、22歳などの年齢の個人情報を、郵便物の宛名に利用できるシールにして提供しています。
一旦提供された情報が、その後どう扱われるかは闇の中です。本人の同意もなく個人情報を提供することは、憲法13条のプライバシー権を侵害するものです。住民基本台帳法では、閲覧の許可以外、本人同意なしの個人情報を提供することは禁じられています。
かつて各学校では、生徒情報が載った名簿が作られ生徒も所持していましたが、現在では個人情報秘匿のため、そのような名簿はありません。その一方で、高校生を含む個人の情報が自衛隊に提供されているのは、異常なことです。
また、中学校では、職業体験として自衛隊を体験先としている学校もあります。生徒の人権とプライバシーを守る立場から以下のことを求めます。"
②学校内外で、自衛隊への勧誘や宣伝行動等に便宜を図ることのないように、また、職場体験等に自衛隊を関与させないよう指導すること。
③自衛隊に対して、学校や子ども食堂・学童保育への働きかけを止めるよう要請すること。
④市町村立中学校・県立高校のキャリア教育等で、自衛隊を体験先としている学校数及び校名を明らかにすること。
3.県の教育行政に関する要求
(1)全般について
①教育課程は、その地域と子どもたちの実態に合わせて学習指導要領と調和をはかり、各学校に校長をはじめとした教職員の協議で編成することを確認し、各学校の主体性を保障すること。
そして、各学校において、学習指導要領の内容を縮減して実施することを認めること学習指導要領の内容を縮減すること。
②校長の権限拡大、総括教諭と企画会議設置、教員人事評価と査定昇給の導入により、学校が上意下達の空間となり、教職員の発意が縮小し、児童生徒にとっても息苦しい空間となってきた。
児童生徒・保護者・教職員それぞれの自由が保障され合意で運営される学校とする制度運用に転換すること。
(2)就学援助・経済支援について
40年ぶりの物価高騰の中、生活が困窮する世帯が増えている。憲法26条、学校教育法19条に照らしてすべての子どもたちの学習権を守ることから、以下のことを要求する。
①横浜市、川崎市に対して、県として就学援助基準を引き上げるように要請し、地域間格差が生じないようにすること。
②修学旅行や遠足・野外活動費の事前支給、卒業アルバム代、オンライン学習通信費、クラブ活動費、柔道衣や防具等に関わる費用を、対象の児童生徒にきちんと支給するように市町村に要請し、地域間格差が生じないようにすること。
(5)県立高校・県立大学について
①法的根拠のない「定期試験の共通化」「1単位授業35週分確保」を一律的に県立高校に押し付けないこと。
②住宅営繕事務所などと連携し、2023年度末までの県立学校(高校・特別支援学校)で耐震補強工事が終了した校舎等ごとのIS値(設計値も含む)を、ホームページなどで公表し、県民に知らせること
④2024年度の図書費の一校当たりの平均配当額はいくらとなったのか明らかにすること。
⑥県立高校の入学金5,650円を廃止すること。
⑧2024年度の現業民間委託校数と現業職員の新採用者数を明らかにすること。今後とも採用者を増やし、民間委託をやめること。
⑨⑧2024年度の専門学科教員、理科実習教員の採用者数を明らかにすること。また、今後の採用計画を明らかにすること。
⑩2024年度の学校図書館司書の採用者数を明らかにすること。現在臨任司書として勤めている者の採用幅を広げること。
⑪教職員の庶務事務を担当する学校事務センターを解消し学校事務センターからの民間企業への再外注をやめ、学校事務室の3人体制の事務職員を4~5人に増やすこと。
⑫空調機の設置計画の進捗状況を明らかにすること。体育館も断熱工事を行い、空調機を設置すること。
⑬各教室への電子黒板の配置状況と今後の配置計画について明らかにすること。
⑯全県一区になったことにより、近隣の学校に入れず、遠い学校に通わざるを得ない生徒がいる。1年間の交通費は駐輪場代も入れると12万円にもなっている生徒もいて交通費が保護者の負担になっている。誰もが安心して学校に通うために交通費の補助をすること。
⑰家庭の事情でクロムブックなどタブレットないしはパソコンを購入できない生徒も多い。高校入学生徒全員に授業に使用するタブレットやパソコンを県費で配置し貸与すること。
⑱いくつかの高校で実施されている部活動の仕組みを利用した学校として行なっている「土曜講習」をやめること。教員の働き方改革に逆行するものである。
⑲特別支援学校分教室があるため選択科目や少人数科目の実施ができなくなっている高校がある。特別支援学校の増設や高校統廃合による非活用校の活用などの工夫で、分教室を解消すること。
以下略
5.児童生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する要求
(1)教員の未配置問題
教職員の働き方改革が進まず、過労死ラインを超える月80時間どころか150時間を超える教員も少なくない。人手不足補填のための非正規教員も志望者が減り、全国的に未配置問題が深刻化している。文科省調べでも、5月1日時点で、全国の1591校2065人の未配置が継続されていた。
神奈川県教委も、県議会で、5月1日時点で、県内公立小102人、中学校44人、高校11人、特別支援77人、(政令市を除く)で、114人の教員が不足していたことを明らかにした。内訳は小学校76人・中学校38人(前年度比較で58%増)で、産休・育休に入る教員の代替者の臨任職員の確保が困難になっており、非常勤講師を充ててしのいでいる状況になっている。
これは、正規教員を少なめに採用し、各校1~2名の臨時任用職員や非常勤講師で賄うこと(法令通り採用し配置しないことは違法・無法だということを自覚していない教育行政は許せない)を繰り返した結果、計画的に任用できるはずの産休や育休の代替の職員が確保できず、児童生徒の授業に、支障をきたしている学校が多数になってきている。 "
これは、正規教員を少なめに採用し、各校1~2名の臨時任用職員や非常勤講師で賄うこと(法令通り採用し配置しないことは違法・無法だということを自覚していない教育行政は許せない)を繰り返した結果、計画的に任用できるはずの産休や育休の代替の職員が確保できず、児童生徒の授業に、支障をきたしている学校が多数になってきている。 "
①小学校・中学校・県立高校・県立特別支援学校の5月1日付での①欠員臨任教員数、②欠員臨任で補えなかった教員定数、③②のうち非常勤講師で補った教員定数、④教員を配置できなかった教員定数(未配置数)を明らかにすること。
②未配置を一刻も早く解消するため、教員定数いっぱいまで、教員採用試験で採用すること。
③「先読み加配」(学期当初からわかっている産休予定者の代替者を学期初めから配置して担任との交替をスムーズにおこなう)を2学期も対象とすること。また、対象を高校・特別支援高等部・養護教諭にも拡大すること。
8.県立高校再編・条件整備・入試改革・就学保障に関わる要求
(1) 「県立高校改革実施計画」について
「県立高校改革実施計画」については、子どもたちの希望と実態、学校現場の実態を直視し、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させて高校教育の充実を図ること。 ①2028年の中学3年までの35人学級に引き続き、2029年度からは県立高校で35人以下学級を始めること。また、その段階で県立高校は何学級必要なのか、試算すること。
②横浜北東・川崎地域の麻生総合高校と田奈高校、湘南地区の藤沢清流と深沢高校の統廃合による削減を見直すこと。
" ③「県立高校改革実施計画(第Ⅲ期)」では、すべての県立高校を1学年6〜8学級を適正規模とすること。将来的には少人数学級に移行していくことも見通してこれ以上高校数を減らさないこと。
(2)インクルーシブ教育実践推進校について
①現在指定されているインクルーシブ教育実践推進校18校をを2025年度入学生から7学級に減らすこと。また、1学級は30人とすること。
②教育環境の整備、教科指導、教科外指導などを含め、「合理的配慮」を保障したインクルーシブ教育を行うために十分な予算と人員を確保すること。
(3)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
国連子どもの権利委員会は2019年2月、「子どもが、社会の競争によって子ども時代および発達を害されることなく子ども時代を享受できることを確保するための措置をとること(生命、生存および発達に対する権利)」を日本政府に勧告した。
教育における競争主義の弊害を指摘する勧告は、1998年以来、2004年、2010年と3回なされており、この勧告は4度目となる。
神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学など顕著に実体化しているとも考えられる、過酷な高校入試問題が、義務教育全体、子どもたちの人格形成にも大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。
①「公立中学校卒業予定者の進路希望調査」において、近年、県立高校への希望が減少し、「定員割れ」も生じている。その実態についての調査・分析と対策が必要である。生徒にとって魅力ある高校教育を目指して、県立高校の条件整備をすすめると共に、学費補助の所得制限をなくすなど私学進学の条件整備もすすめ、「県立高校改革推進計画」で掲げた最低目標値の全日制高校進学率93.5%を達成すること。
"
②公私立高等学校設置者会議を再編し、生徒募集計画の当事者である高校生、中学生の意見表明も保障し、中・高教員代表、PTA代表も正式メンバーに加えた組織とすること。
③「公立中学校卒業予定者の進路希望調査」を新規に5月にも実施して、9月策定の「公立高校生徒募集計画」に反映させること。現行10月の調査では当年度の募集計画には生かされない。進路希望が固まる10月の調査は市年度の計画に生かす。
④夜間定時制高校は、様々な問題を抱えている生徒が多く学び、重要な役割を担っている。その学級定員を現行35人から20人定員にあらためること。
(4)高校入試について
①公立高校入試問題の簡素化を図ること。高校の学習に必要な基礎学力をみる内容とし、子どもたちへの心理的、肉体的負担を軽減すること。生徒に過重な負担をかける18校の特色検査は廃止すること。面接の一律実施を廃止したことは大いに歓迎したい。
②全県一学区制を見直し、従前の10学区制に戻すこと。また、通学費に対する補助制度を創設すること。
⑤公立高校入試の受験料について、「共通選抜」、「二次募集」、「定通分割選抜」、全ての検査を受験生1人当たり1回の納入で受験できるように「手数料条例」等必要な条規を改めること。受験が何回も必要なように制度をつくったのは県教委であり、「中高接続の試験」として一つの試験の扱いにすればよい。不合格となった子どもが次の受験のたびに経済負担が増す現状は、教育権の保障、教育の機会均等の立場からも許されない。「受益者負担の原則」との回答があるが、複数回受験せざるを得なくなった子どもたちにとっては「受益」ではなく「ペナルティ」であり、子どもたちの心理的負担も大きい。
(5)定時制高校の充実について
①定時制生徒の食堂への補助により、生徒は200円以下で利用でき大変助かっている。食材費が高騰しても、200円以下で利用できるように、この制度の継続と改善をもとめる。また、夜間中学生の利用を認めている総合産業高校では、利用容認も継続してほしい。
②全定併置校については定時制枠として県費図書費を50万円増額し、横浜市や川崎市の水準に近づけること。全日制と定時制では購入する書籍に違いがあり、同額ではそれぞれに必要な書籍を揃えられない。
③夜間定時制の専任教員を増やし、様々な困難な事情を抱えた生徒が多く在籍することをも踏まえ、全日制に比べて臨任や非常勤の比率が高い現状を改善すること。
④生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、夜間定時制専任の事務職員、現業職員、司書を配置すること。
⑤定時制には様々な配慮を必要とする生徒が多い現状を踏まえ、定時制全校にスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーの配置と充実を図ること。
⑥夜間定時制の適正規模は、1学年2学級以下とすること。また、応募者が少数となっても、通学の便など、教育を受ける権利の保障を最優先に考慮し、統廃合を行わないこと。「県立高校改革実施計画(Ⅲ期計画)」で募集停止が発表された定時制6校を1学年1学級規模校として残すこと。
⑧横浜翠嵐高校定時制は、外国につながる生徒への生活支援、日本語教育、多文化共生教育などが積み重ねられてきた。
「県立高校改革計画(全体)」では、「外国につながりのある生徒への教育機会の提供と学習支援」という見出しを掲げ、「日本語指導をはじめとする学習面や、学校への適応に向けた生活面等への必要な支援を実施」と記している。横浜翠嵐高校定時制は、まさにこうした多文化共生教育を先進的に行ってきた学校であり、県内外から高い評価を得てきた。
こうした教育に関するノウハウや経験豊かな人材は現場の教職員が、時間をかけ独自のネットワークを構築して形成・蓄積してきたものである。これを全く別の学校である神奈川工業高校定時制に移し替え、継続していくことは難しく、これまでの共生教育が断絶してしまう。
横浜翠嵐高校定時制の募集停止については、教職員だけではなく、広く識者、県民からの声を聞き、一旦募集停止を見直し、今後については時間をかけて検討することを求める。
⑨横浜翠嵐高校定時制の募集停止が行われることになった場合でも、全学年が同時に一気に移動するようにすること。ある学年が横浜翠嵐高校キャンパスで生活し、他の学年が神奈川工業高校キャンパスで生活するというような、分離が起こらないようにすること。
以下、省略
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