2025年7月19日

 

国・防衛省は 学校 ー 教育の場を
自衛隊員募集の「窓口」にするな 

かながわ定時制・通信制教育を考える会 前代表 中陣 唯夫

 
 中・高・大学生の求職活動の対象に、自衛隊を含めることは妥当だろうか。もとより、自衛隊を強く求職する人の場合はその判断に委ねるほかはない。

 しかし、就職紹介・指導の担当者がその特性を顧慮することなく、自衛隊を他の職種と一律に扱い、生きていく上での仕事―生業(なりわい)として示すのは問題ではなかろうか。
 

定員割れで躍起となる隊員募集の現実

 自衛隊という特性から、いじめやハラスメントの土壌を生みやすく、昨年度の『防衛白書』では年間1700件超の相談と明記している。

 隊員の採用達成率が過去最低の51%、中途退職者が23年度に過去30年で過去最多となる下で、なりふり構わぬ募集態勢をとつている。

 高卒、大卒予定者の住民基本台帳による個人情報の収集と業務活用、「防災教室・訓練、職業訓練」に名を借りた教育現場への踏み込み、その折に隊員募集のチラシの配布。

 埼玉の中学では1、2年全員にこのチラシが配られ、校長が「カレンダーだと思っていた」と釈明。校内で生徒全員に配布されるものを確認もしない校長とはどんな存在なのか、言葉もない。
 

隊員は、国際法上はれっきとした軍人

 卒業予定者がごく普通の就職分野として求める職種は営利法人や公務員であり、身分は社員、労働者等である。

 これに比し自衛隊はわが国が保有する陸・海・空の三部隊により、平和と独立を守り、安全を保つ「実力」組織で,隊員の身分は特別職の国家公務員と規定されているが、国際法上はれっきとした軍隊であり、隊員は軍人に相当している。

 自衛隊法には「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め」「上官の職務上の命令に従わなければならない」と、命を賭ける義務、服従義務を定めている。

 また、『服務ハンドブック』(幹部隊員用・服務参考資料)には、「自衛隊はその規律の基礎を戦闘におく」「戦闘の規律から発して、すべての平時の規律が作られていることが一般社会の規律とは異なっている」としている。つまり平和憲法と対峙せざるを得ない存在なのである。

生徒の成長と出発点に、
どんな違法性も排除するのが教職員の職責

 子ども(18歳未満)を軍隊と切り離す措置は、批准ずみの子どもの権利条約の「武力紛争における児童の関与に関する選択議定書」で、

 ○志願者が軍務について十分情報を提供されていること、
 ○敵対行為に直接参加しないことを確保する措置をとることを求めている。

 国際的にも、加盟する国際刑事裁判所ローマ規定は、15歳未満の子どもの軍隊徴用または志願入隊させることを戦争犯罪としている。

 ちなみに情報によれば、殉職・死亡した隊員は靖国神社や護国神社に合祀されるという。

 これはかつて「英霊」とされた兵士の遺族が少なくなる下で、神社の維持存続の一策とされているようだ。この件を防衛省に問い合わせたが、口を濁らされ明らかにならなかった。

 演習などで殉職の可能性がある自衛隊で、その後(あと)処理が明らかにされていないのは「一般社会の規律とは異なっている」からか。「職業の一つ」と紹介してそれで済む職種とは疑問である。

教育委員会や学校長は、児童・生徒の立場から高い見識でこの問題に臨むべきである。

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