こんばんは!パンチョスたんげです!
実は皆さんにお話ししなければならないことが!
皆さんお忘れかと思うんですが、去年、新しい小説【TRANCE&BLUES*】を書きます。
と言っていて全くアップしてないので「パンチョスって口だけね!」と言う声が聞こえそうなので、
今書いている途中の部分だけちょっとだけ上げさせて貰います。
ちょっと、訳ありで今回は連載という形は取らないんですが、いずれ折を見て全文アップしたいと思います。
予告編PART2になってしまいましたが、お陰様で筆が勝手に進んでおります。
これもひとえに夜な夜な取材した僕の努力のたまものです(ウソ 笑)
まぁ、ほんとうに殴り書きの文章なので皆さんには失礼なのは百も承知で、申し訳ない限りなのですが、
2回にわたりお付き合い下さい。
そんな話があったのか?と忘れてる方がほとんどだと思いますので 【序章はこちらから】
 

この店は俺が唯一くつろげるスペースだ。地下の狭い暗いBAR。
マディ・ウオータースのブルースが静かに流れる。俺は時を忘れる・・・はずだったが。

「おじさん!秋入ってるよ!人生の黄昏時ってやつでしょう」
「うるせえんだよ!第一なぁ、お前みたいに若い女がこんな店にいると秋なんか来ねえぞ!ちゃんと若いときに春や夏を体験した人間だけに秋なんて来るモンだ。ほらっ!どっかに遊びにいってきな!クラブとかあるだろ。若い奴が集まるところは」
「行き飽きたよ。クラブなんて。ここの方が新鮮だよ」
「お前なぁ!俺みたいな年寄りといると老けるぜ。精神的に」
「いいもーん。体はピチピチしてるもーん」
「お前の場合は、頭の中もピチピチし過ぎてさぁ、酒のつまみにもならないんだよ。なぁママ?」
「雄ちゃんは贅沢者ねぇ!こんな若い娘、横にはべらして」
「ママさぁ!それはひがみ根性っていうの。女なんて若けりゃいいってもんじゃないの」
「ドーセ私はひがみっぽい年寄りのオカマよ。オカマいじめると祟られるわよ。しつこーく」
「ママっておもしろーい!」沙由理がキャキャ笑う。
「でも雄ちゃんの言うことにも一理あるわよ。若いんだからこんな掃きだめみたいなところにいないで遊んできたら。あたしが沙由理ちゃんみたいに若くてかわいかったら、若いイケメンと遊びまくるわ!」
「それも悲劇だよなぁ!若いイケメン君が!」
沙由理が首を横に振りながら「だって、つまんないんだもん。同じぐらいの年の男は」
「そりゃ、若い女にも責任があるんだよ。俺から見りゃどっちもどっちだぜ。女もてめえの服だメイクだって、自分のことしか考えないから男だって女を守ろうなんて思わなくなるぜ。自立なんて気取ってないで男に頼れ。ちっとは男を立てないといけないぜ!そうすりゃ男も強くなるモンだ」
「そうよ!男と女は合わせ鏡なんだから。あたしは立てるの上手よ。ねっ!雄ちゃん」
「ママ、悪い冗談よせよ!本気にするだろ!沙由理はまだ子供なんだから」
「あれっ?雄ちゃんってそういう趣味じゃなかったの?だからピチピチの私に手を出さないんだと思ってた!」
「お前なぁ!俺はいくら酔いつぶれても男と子供には手を出さないの!本能だよ。本能!それとなぁ、その雄ちゃんって言うのやめてくれないか。子供にちゃんづけされるのは男のプライドが許さないんだよ。まぁ、世間知らずだから大目に見てやるけどさ」
「沙由理ちゃん、まともに受けちゃだめよ。まんざらでもなさそうだもん。このおじさんは!ねぇ雄ちゃん!」
「一言多いのママも。おじさんはお互い様だけどなぁ」
「あらっ!あんたよ!一言多いのは!あたしはお姉さま!ねぇ、沙由理ちゃん!」
「はーい!お姉さま!」沙由理はまたキャッキャ笑う。

この店には似つかわしくないビシッとしたスーツを着た男が入ってきた。20年以上の友人でペーぺーのチンピラだった頃から知っている。この街のシマを預かる三光会の若頭、都築健だ!この街を取り仕切り、人望も厚い。この街の人間なら一度は都築に世話になったことがある。昔ながらの男気を持ったヤツだ。
「いらっしゃーい!あらっ!珍しいわね。三光会の若頭がこんな店に来て、不況もいよいよ深刻ね」
「馬鹿野郎!たまにはこういう店に来たくなるときもあるんだよ。おう!雄一!やっぱりここにいたか!」
「どうした!珍しいな。三光会の都築が女も連れずに、こんな店に来るとは」
「ちょっと、おねえちゃん。雄一の隣座っていいかなぁ?」
「うん!いいよ!ヤクザ屋さんって女の子シャブ漬けにして、風俗とかに売り飛ばしちゃうんでしょ!」といつもの沙由理の世間知らずな言葉に
「そうよ。このおじさんは怖いのよ!近づいちゃだめよ沙由理ちゃん!」とママが冗談ぽく言う。
「このオカマのおばさんが言う通りだ!いい子は近づくとやけどするよ。なぁ都築!」
「何とでも言え!その通り、ろくでもないヤツだよ俺は!今日ほどヤクザ稼業から足を洗いたいと思った日はないぜ!」と長い付き合いでも初めて聞くような弱気な言葉を発した。
「聞き捨てならねぇなぁ!三光会の都築って言やぁ、この街じゃ泣く子も黙る男じゃねえか!シノギが納められなくて、いよいよエンコでも詰めることになったか?」
「今のヤクザはエンコなんか詰めたら商売あがったりだぜ。それに俺はそんなドジ踏まねぇよ!」
「じゃ、懲役でも決まったか?」
「雄一なぁ、懲役怖くてヤクザなんかやってられるかよ!お前こそ少し入った方がいいぞ!酒抜けて肝臓綺麗になるぞ」
「ばか!俺は堅気だぜ。お前みたいに入って箔が付いて、おまけに健康的になるようなメリットないの」

都築がタバコにを一服して、せき止めていた水を流すように、いつになく神妙な顔で俺に向かって、
「実はよぉ!今日、亜希子と兄妹の縁を切ってきた」
「あの亜希子ちゃんと?お前ら、たった二人だけの血縁じゃねぇか!お前慕って、東京まで付いてきたんだろ」
「今じゃ、こんな生活してるけど、田舎じゃ酷い目に遭ったからなぁ」遠いところを見つめる目で都築がタバコの煙を吐き捨てた。まるで自分の過去を吐き捨てるように、
「高校の時か、お前らが青森から出てきたのは」
「そうだ!俺が高二。亜希子が高一の時だ。親父は飲んだくれで俺も亜希子も意味もなく殴られ続けたし、お袋は男作って俺たちが小学生の頃、出て行っちまった。親戚の家をたらい回しにされたけど、どこ行っても邪魔者扱いよ。飯もろくに食わせて貰わなかった。俺だって別にヤクザになろうと思って東京に出てきた訳じゃない。亜希子だけにはいっぱしの生活させてやりたかったんだ」
「亜希子ちゃんはなんて言ってる?」
「亜希子には言ってない。戸籍と金だけ置いてきた。こう見えても金は腐るほど持ってるからよ」
「亜希子ちゃん泣くぜ」
「ああ!しばらくはそうだろうな。でもあいつは俺と違って頭いいし、いい大学も出てるし。俺みたいなヤクザもんの兄貴はあいつにとっちゃ邪魔になるだけだ。実はあいつ大学出たときも名の通った会社に就職決まってたんだ。土壇場になって取り消された。俺には言わなかったが、俺の存在が取り消しの理由だ。結婚まであと一歩の男もいたんだ。でも、男の方から引いていった。ヤクザもんの兄貴がいたんじゃ、面倒なことになると思ったんだろうなぁ。その度に兄妹の縁を切ろうって話したんだが亜希子が反対してな。でも、あいつも38だ。どうも最近いい男が出来たみたいなんだ。振り返ってみると亜希子には可哀想なことをした」
「痛いほど解るわ!その気持ち!あたしは親から縁を切られたけど」ママがボロボロこぼれる涙を趣味の悪いハンカチで拭く。
「ママ悪いなぁ。ヤクザもんの愚痴を聞いて貰って。雄一!今日は付き合え!おねえちゃんもママも来いよ!今日は最高級の店でドンペリでも抜いてバァーと行こう!表で舎弟にベンツ待たせてあるから」
「あたしはダメよ。お客さん来るかも知れないから。せっかく来るお客さんが店閉めてたら可哀想でしょ。雄ちゃん、沙由理ちゃん行ってあげなさいよ」
「いい女はいるんだろうな!お前は女見る目がないからなぁ!」
俺は都築の辛い気持ちが痛く突き刺さり、わざと冗談めいて言った。
「そのセリフそのまんまお前に返すよ!まぁ、このおねえちゃんも5年もすりゃ綺麗な蝶になるだろうが」
「なによー!じゃ私、綺麗じゃないの?」
「今は、サナギなのおねえちゃんは。女は男で綺麗な蝶になるんだよ。雄一じゃ無理だけどなぁ」
「まぁ、それは都築の言うとおりだ。もっとも沙由理はまだ毛虫だけどな。目の保養に綺麗な蝶でも見に行くか。なぁ毛虫ちゃん!」
沙由理はちょっとふくれながら「都築さんの言う通りね!雄ちゃんは女を見る目がないのよ。何年か経って後悔しても相手にしてやらないから!」
「じゃ、二人は付き合え!ママいい店だな。この店は!これ勘定」
無造作に財布から札束を渡す。
「あらっ!都築さん!いくら何でも多すぎるわよ!」
「いいから取っとけ!ヤクザもんに恥かかせるなよ。余ったら表の看板でも直しとけよ。あれじゃ表も中も化け物屋敷だぜ」
「口の減らないヤクザもんね!今度はうーんとサービスしてあげるから」
「だったらもう来ねえよ!ただでさえ怖ええのによー!ハッハッハ」

都築のその笑顔のサングラスの下から流れる涙を俺たちは見落とさなかった。

皆が何らかしらの傷を持つ。そういう街だ。この街は。

       

<<<BACK

NEXT>>>