2023年3月10日

  「県立高校改革V期計画」は

過大規模校の更なる増加と
インクルーシブ校の困難をもたらす

 

 昨年9月に発表され、1ヶ月も経たない10月に拙速に決定された「県立高校改革実施計画(V期)」(以下「V期計画」)は、横浜翠嵐高校定時制を含む夜間定時制6校の募集停止ばかりでなく、数多くの問題を含んでいます。

 今回、そのうちの二つを取り上げ矛盾と問題点を示し、「V期計画」の見直しを求めます。
 
 

横浜北東・川崎北部地区、湘南地区では、過大規模校が続出する

 前回の「県立高校改革推進計画」(2000〜2011年)において、学校規模は1学年6〜8学級が適正規模とされました。9学級以上の学校規模になると、教職員がその学年の生徒を統一的に十分把握することが難しくなり、生徒の生活指導などに困難が生ずることになります。

 そうした懸念を考慮せず、今回の「県立高校改革実施計画」(2016〜2027年)では、この適正規模を6〜8学級以上と改悪し標準規模としました。そのことにより、9学級以上の過大規模校が以下の表のように数多く存在する事態となっています(2023年度第1学年の学級数で表記。以下同様に表記)。

 地区 9学級規模校(24校)   10学級規模校(15校)
 横浜北東  翠嵐 港北 川和 霧が丘 白山 新栄 元石川  新羽 市が尾 荏田
 川崎  菅 住吉  生田 百合ヶ丘
 湘南  湘南 鎌倉 七里ヶ浜 西浜  大船 鶴嶺
 その他  11校(学校名省略)  8校(学校名省略)
 

 「V期計画」では10校を統廃合し、横浜南西地域で2校、横浜北東・川崎地域、横須賀三浦・湘南地域、中・県西地域で各1校削減するとされました。しかし、横浜北東、川崎北部、湘南地区では、現在でも1学年9学級以上の過大規模校が下表のように数多く存在しています。

 地区 県立高校数  8学級以下規模校数  9学級規模校数   10学級規模校数  過大規模校割合
 横浜北東 17  7  7  3  58.8% 
 川崎北部 8  5  1  2  37.5% 
 湘 南 15  9  4  2  40.0% 
 

 計画による削減が実施されると、これらの地区では今まで以上に過大規模校が増えることになります。横浜北東・川崎地域、湘南地区などの中卒者は、9学級以上の過大規模校に通うか、自宅から遠い他の地域の高校に行くことを余儀なくされます。


「横浜北東・川崎は今まで削減していないので削減する」  削減計画の見直しが必要

 「県立高校改革実施計画(全体)」では、県立高校の適正配置について、「生徒数の動向に対応した学校数・学級数を確保」、「全県を、隣接する旧学区を組み合わせて区分した5つの地域を基本に再編」するなどと記されています。

 そのうえで2015年に適正配置の資料として、2030年までの地域別公立中学校卒業予定者数を推計しています。

 しかし、この推計には、その年以降の県内への人口流入などが十分反映されておらず、推計の誤差が生じています。今回2022年に推計した数値が発表され、横浜北東・川崎地域では、中卒者の数が以下の表のようにかなり多くなるとされています。

各地域別公立中学校卒業予定者数(「改革実施計画(V期)」資料より)

     2026年3月 2028年3月  2030年3月 
横浜北東
川崎地域   
 2015年推計  20,420 19,646  19,427 
 2022年推計 21,312  21,201  21,221
 推計誤差 +892 +1,555  +1,794
 

 横浜北東・川崎地域は、2022年3月の実績中卒者数が20,770人であり、今後8年間はこれを下回ることはなく、最大21,312人まで増えると推計されています。推計より800〜1800人増えるということは、20〜45学級(3〜6学校)分にあたり、削減ではなく増設こそ求められる数です。

 昨年9月の県議会文教常任委員会で、県教委の改革担当課長は「横浜北東・川崎地域は本来削減できる地域ではないが、1期とU期計画で1校も削減していないので今回削減することにした」という趣旨の答弁をしています。また、横須賀三浦・湘南地域の湘南地区では今後中卒者はあまり減少しないが、1期とU期で横須賀三浦地区を3校削減したので、今回は湘南地区を削減すると答えています。

 「計画(全体)」の適正配置の考え方の第一に掲げられている「生徒数の動向に対応した学校数・学級数を確保」はあっさり捨てられ、県立高校を削減すること自体が目的化され、今後の中卒者数、すなわち「生徒数の動向に対応」するのではなく、形式的に1期とU期でどの地域で何校削減したのか、その数の少ない地域で削減するという計画になっています。自ら決めた「改革計画(全体)」に基づいておらず、計画の見直しが必要です。
 


インクルーシブ校の半分以上が標準規模(7学級)を超える  標準規模は有名無実

 インクルーシブ教育実践推進校の学校規模は、「県立高校改革実施計画(全体)」のなかで、次のように規定されています。「障がいのあるなしにかかわらず、共に学ぶ仕組みを提供するため、1学年7学級規模を標準として、指導上の必要から多様な学習指導の展開が可能となる規模」

 この間、推進校に指定された14校と今回「V期計画」で新たに指定された4校の学校規模を示したのが以下の表です。

 学校規模 2016年指定のパイロット校  2018年指定の実践推進校   2022年指定の実践推進校
 標準である7学級規模校  厚木西   足柄  城郷 津久井浜 湘南台
 二宮 伊勢原
 南陵
 標準以上の8学級規模校  茅ヶ崎  川崎北 上矢部 橋本  保土ケ谷
 標準以上の9学級規模校    霧が丘 綾瀬 上鶴間  白山  菅
 

 標準としている7学級規模校が8校、これに対して標準の学級数を超える学校が10校、特に9学級規模校が5校も存在します。「改革計画(全体)」にある「1学年7学級規模を標準」とする規定はまったく有名無実となっていることがわかります。

インクルーシブ校には、7学級規模(30人クラス)と教員の十分な加配が必要

 インクルーシブ校には、1校あたり障がいのある生徒が21名特別募集として入学しています(最近は、21名の定員を満たさない学校が多くなっています)。これらの生徒を含め、1クラスが37名以下になるように学級編成されています。

 しかし、7学級を超える8〜9学級規模、1クラス35名以上の人数では、学習指導も生活指導も様々な問題を抱えることになり、十分指導が行き渡らない事態が生じています。

 さらに、今回指定された高校のなかには、過去「課題集中校」とされていた学校も含まれています。また、現在でも生徒指導などで教職員の負担が重い学校も存在します。そのうえ、これからはインクルーシブ教育を行うことになるわけで、今後教育上の課題が増えることが懸念されます。

 インクルーシブ教育を本当に推進していくためには、学校規模を「改革計画(全体)」が自ら定めた7学級規模に限定し、学級規模も30人クラスにすべきです。「V期計画」を見直すとともに、教職員の加配を今以上十分に増やすなど、教育諸条件の抜本的な改善を強く求めます
・翠嵐定時制を募集停止にすると、外国につながる生徒の支援教育が断絶する
・全日制5校削減、定時制6校募集停止の「第V期計画」― 県立高校の削減を前提とした生徒募集計画 ―
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