2022年11月11日

  今年4月の全日制進学率は89.6%  90%を切ったのは8年ぶり!

全日制5校削減、定時制6校募集停止の「第Ⅲ期計画」

― 県立高校の削減を前提とした生徒募集計画 ―


 9月29日の県議会文教常任委員会で、「県立高校改革実施計画」の「第Ⅲ期計画」(2024〜27年度実施)が報告され、全日制5校の削減と定時制6校の募集停止が発表されました。

 また、9月5日第2回公私立高等学校設置者会議が開かれ、来年度の生徒募集計画が決まり、全日制の「計画進学率」は何と「90.3%」。また、8月4日の公私協議会で報告された、2022年春の全日制進学率は「89.6%」で2014年の「89.2%」以来、8年ぶりに90%を切りました。

 「90.3%の計画進学率」では、来年の全日制進学率も90%を切ることは確実です。県立高校の削減を前提とした、生徒・保護者の要求に反する生徒募集計画と言っても過言ではありません。

 日本社会の「低迷」、「少子化」がいわれています。少子化になるような教育政策が長く続けられてきました。こうした政策を転換し、「教育は自己責任ではなく、社会全体で担うもの」という考え方に立って、将来を担う若い世代への「投資」=「教育」を充実させることがなによりも重要です。生徒・保護者の要望よりも財政を優先する全日制5校統廃合計画、定時制6校募集停止は撤回すべきです。

全日制5組(10校統合5校削減)統廃合  定時制6校募集停止

 9月29日の県議会・文教常任委員会で「県立高校改革実施案・第Ⅲ期(案)」が報告され、全日制5組の統廃合と夜間定時制6校の募集停止が発表されました。

<全日制の統廃合>
地域 施設活用校 削減校 新校の学科等 新校開校年度
川崎・横浜北東 田奈 麻生総合 単位制総合学科
(クリエイティブスクール)
2026
横浜南西 横浜旭陵 学年制普通科 2027
横浜桜陽 永谷 単位制普通科 2027
横須賀三浦・湘南 藤沢清流 深沢 単位制普通科 2027
中・南西 小田原城北工業 大井 工業科
学年制普通科
(クリエイティブスクール)
2026

<夜間定時制の募集停止>
学校 募集停止年度
横浜翆嵐、向の岡工業、磯子工業、茅ケ崎、秦野総合、伊勢原 2026
   

 「コロナ禍」で、「ソーシャルディスタンスの確保」や「少人数学級」が叫ばれる中、世論を受けて文科省は今年は小学3年までの「35人学級」を学年進行で進めています。

 神奈川ではこれ以上の高校削減をすると、将来の県立高校での少人数学級が不可能になります。

 一方、国は総務省が2014年から「公共施設等管理計画」で人口減に向けた公共施設削減を主とする財政計画を都道府県や市町村など各自治体に求めています。公共施設の削減の中心となるのは小中学校・高校です。今回の高校削減は、「神奈川県の国に対する回答」です。

1990年代は91%台だった「全日制進学率」が「89.6%(2022年4月)」は深刻
〜2019年頃から下がり始めた全日制進学率〜

 8月4日の公私協議会で2022年春の全日制進学率が89.6%と発表されました。90%を切るのは2014年の89.2%以来8年ぶりです。

 2006年に、前年の90.1%を切って89.6%となって以来、2015年に90.2%と90%台になるまで10年近くかかっています。

「県立高校削減」を意図した「2023募集計画」で、来年も90%を切ることはほぼ確実

 2000〜2009年度に行われた「高校改革推進計画」による「高校統廃合」で25校の全日制高校が削減されました。「全日制進学率向上」を犠牲にした「高校統廃合」が行われています(右上記グラフ参照)。

 9月4日に設置者会議で確認された来年度の生徒募集計画では「計画進学率」が90.3%でした。

 昨年確認された今年春の「計画進学率」は90.6%で実際の進学率は89.6%です。それから考えると来年春の全日制進学率は「89.3%前後または89%を切る?」となりそうです。

 現在進行中の「高校改革実施計画」では、「Ⅰ期」「Ⅱ期」「Ⅲ期」2016年から2028年の12年間で合計全日制13校と1分校の削減が行われます。

 今回の募集計画は、『県立高校削減のために意図的に生徒募集定数を減らす、低進学率募集計画』と呼ばざるを得ない計画となっています。

「希望8割、進学6割り」の公立高校

 2015〜2022年度の進学状況の変化を見ると、公立が61.8%から59.0%へと減少しているのに対し、私立が19.7%から22.5%へと増加しています(下表参照)。

公立中学校卒業者の進路別進学率
進学年度 公立中卒業者数 全日制進学者・率 公立 私立 県外等
2015 69,744 62,886  43,079    13,714  6,093 
90.2% 61.8% 19.7% 8.7%
2022 67,124 60,111 39,582 15,070 5,459
89.6% 59.0% 22.5% 8.1%
     

 2020年4月から国による「私立高校授業料実質無償化」が始まり、私立高校への進学がしやすくなったことが大きな要因ですが、募集計画で「公立」を相対的に減らしてきたこともあげられます。

 神奈川の高校進学について、「公立希望8割・公立進学6割」と長く言われてきましたが、その現実はいまだに変わりません(希望は下表、実績は上表参照)。

公立中学校卒業予定者の進路希望調査(2021年10月調査)
 年度  全日制進学率  公立   私立   県外等   定時制   通信制 
2021 90.1% 77.4% 7.8% 4.8% 1.1% 3.7%
   

教育条件整備で魅力ある県立高校を

 さらに、近年県立高校の定員割れなどが問題となっています。「広域通信制進学者の増加」なども懸念されています。とくに県立高校の校舎の「老朽化」、「きたなさ」などは目立ちます。

 日常の維持運営の費用も少なく、私立高校や県内の市立高校、他都県の高校などと比べて見劣りするのも現実です。教育予算を増やして、生徒・保護者にとって魅力ある高校とすることが必要です。

定時制6校募集停止は、撤回を!

 県立高校改革実施計画(全体)では、「定時制配置の考え方」として、「定時制の配置については、全日制の今後の再編・統合の状況と全日制進学率の動向を踏まえ、適正な規模と配置にとりくみます。」とあり、2022年8月にパブリックコメントに付した「一部改訂(素案)」でも全く同様の記述となっていました。

 これらを踏まえると、今回の定時制6校の募集停止発表はあまりにも唐突であり、撤回を求めます。
トップ(ホーム)ページにもどる