2022年12月13日

  さいたま超勤訴訟 二審も原告の訴えを退ける不当判決

長時間労働解消、教職員大幅増、「給特法」改正の運動をすすめよう!


 埼玉県の公立小学校教員が時間外労働に残業代が支払われないのは違法として、未払い賃金の支給を求めていた控訴審判決で、8月東京高裁は一審に続いて訴えを退けました。

 教員の長時間労働が問題になるなかで、一審のさいたま地裁は昨年10月原告の請求を退けたうえで、「給特法は、もはや教育現場の実情に適合していないのではないか・・・・教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望むものである」という異例の指摘をしました(詳しくは、『ニュース158号』参照)。

 また、当時の萩生田文科相は「司法からも改善を求められていることは重く受け止める」と述べていました。

「繁忙期には法定労働時間を超過しているが、常態化していたとはいえない」

 二審で原告は、26ページにわたる労働法学研究者の意見書を提出するなど、一審判決の誤りを詳細に指摘しました。

 しかし、二審判決は一審判決と同様、教員の業務は自発的なものと校長の命令に基づくものがこん然一体となっているため、一般の労働者と同様の厳密な時間管理を前提とする割増賃金制度は教員にはなじまないと指摘、こうした事情から「給特法」で教職調整額が支給されているとして、残業代の請求を退けました。

 また、国家賠償法(以下、「国賠法」)上の違法性については、「学期末などの繁忙期には法定の労働時間を超過しているが、その状況が常態化していたともいえない」として認めませんでした。

 原告は、「現場では勤務時間内に終わらない仕事が次から次へと命じられている。判決では自発的なものだと判断されてしまった。このままで良いのか世の中の人に考えてもらいたい」と訴え、上告の意向を明らかにしました。

自発的でない「時間外労働の常態化」をしっかり記録しておこう

 二審判決は、一審判決を字句修正した程度であり、一審判決にある積極的な面と判決まとめ(付言)にある「給特法」改正要請は生きています。

 一審判決では、これまで労働時間と認められてこなかった「超勤限定4項目」以外の時間外労働の一部について「労基法上の労働時間に該当する」と認定され、時間外労働の実態に関する証拠を積み重ねることにより、時間外労働の常態化が認められるならば、労基法32条違反として「国賠法」上の違反にもなりうることが示されました。
 したがって、今教員には次のようなことが求められます。

@ 時間外労働のなかで、自発的な業務ではないものを一つひとつはっきりさせることです。

A自発的でない時間外労働が、いつ、いかなる会議で決まったのかを明らかにしておくことが重要です。

 本来、教員には「給特法」によって、「超勤限定4項目」以外の時間外労働を命ずることはできませんが、職員会議等を利用して教員が自発的に時間外業務を決めたかのような体裁をとっています。

 しかし、一審判決では、校長の具体的な命令がなくても、職員会議を通じて行うことになった業務は労働時間であることが認められました。

Bその時間外労働を、○月○日何時間何分行ったのかをしっかりと記録しておくことです。

長時間労働の解消とともに、教職員の大幅増と「給特法」改正の運動を

 「長時間労働の要因のひとつは、教育委員会や管理職から要請される調査や報告、アンケートなどがあげられます。これらを、精選、減少させることが重要です。それと同時に、教職員定数の大幅増員が必要です。

 そして、教育現場の長時間労働の実態を広く保護者、県民に訴え、「給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に」という一審判決まとめ(付言)を宣伝し、長時間労働解消、教職員大幅増、「給特法」改正の運動をすすめていきましょう。
労基法・憲法違反の「1年単位の変形労働時間制」を選択・導入させず、長時間過密労働を解消しよう
さいたま超勤訴訟」判決を梃子に長時間労働解消と「給特法」改正の運動をすすめよう!
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