2020年3月14日

労基法・憲法違反の「1年単位の変形労働時間制」を
選択・導入させず、長時間過密労働を解消しよう

 

 昨年の12月、安倍自公政権は、公立学校の教員を「1年単位の変形労働時間制」で働かせることを可能とする「改定教職員給与特別措置法(以下、改定給特法)」を教職員等の反対の声を押しきり強行成立させました。「1年単位の変形労働時間制」は、1日8時間労働という原則をこわし、条例によって勤務時間を延長させる、労働法(労働基準法など)および憲法に違反する制度です。

 国は、2021年度から制度を運用できるように、都道府県・政令指定市において条例を制定し、個々の学校への導入を目指しています。「1年単位の変形労働時間制」を選択・導入させず、長時間過密労働を解消していく取り組みを早急に強めていかなければなりません。

   

「1年単位の変形労働時間制」は、公立学校の教員には本来適用除外されていた

 「1年単位の変形労働時間制」は、業務の繁閑に応じて労働時間を配分することを認める制度であり、労働基準法32条4で次のような条件をもとに 定められています。
 労働者の過半数を組織する労働組合との書面による協定(労働協約)により、年間で平均して 週当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、繁忙期には基準となる労働時間 (1日8時間)を超えて割増賃金なしで働かせることができる。

 しかし、地方公務員法58条は、「1年単位の変形労働時間制」を教員を含む地方公務員には適用しないと定めています。それは、@住民サービスを目的とする公務員の業務に「繁忙期」「閑散期」はありえず、A労働基本権が制約されているため「労働協約」を締結することができないためです。

 改定給特法は、労働協約によって定めることとされている事項について、都道府県等の条例で定めることができるという乱暴な「読み替え」で公立学校の教員に「1年単位の変形労働時間制」を導入しました。

教員の合意なしに、強制的に1日8時間を超えて働かせる

 文科省は、授業のある学期中を「繁忙期」、長期休暇中を「閑散期」と想定し、4月、6月、11月などの「繁忙期」の勤務時間を週3〜4日、1〜2時間ずつ延長し、夏休みなどに休日を「まとめ取り」できるようにするといいます。

 公立学校の教員は、「給与等に関する特別措置法(給特法)」(今回一部改定された)によって、「限定4項目」(生徒の実習、学校行事、特別指導などの緊急職員会議、非常災害等の業務)以外は、「時間外勤務を命じられない」とされています。したがって、「限定4項目」でない場合、管理職から言われても退勤時刻になれば帰宅することが可能です。しかし、変形労働時間制が導入されると、「繁忙期」には、常時1〜2時間残業が命じられているのと同じ状況になります。

 労働基準法は、週40時間1日8時間労働を基準としており、労働時間に関することは労使対等の交渉を行い、協定によって決定することを基本としています。労働者との合意なしに勤務時間を延長して働かせることは認められていないのです。都道府県等の条例だけで、労働者の合意なしに、8時間を超えて働かせることが認められる「1年単位の変形労働時間制」は、労働法の原則に背き、労働基本権を定めた憲法に違反します。

長時間労働の解消ではなく、学期中の勤務時間がさらに延びる

 労働基準法一部改正時(1994年)の労働省(当時)通知では、「1年単位の変形労働時間制」は「恒常的な残業がないことを前提とした制度である」とされています。しかし、文科省の調査では、小学校教員の33.5%、中学校教員の57.7%が過労死ラインといわれる月80時間以上という恒常的な残業(2016年調査)を行っており、制度導入の前提はありません。

 変形労働時間制が導入されている職場では、勤務時間が延びることによって、「それまでよりも多くの、いろいろな仕事をしてしまい、それが所定の時間までに終わらず、結果的に残業時間は導入前と変わらないことになる」と言われています。この制度がすでに導入されている国立大学付属学校においても、「長時間労働の解消にはならない」という声があがっています。

 具体的に、所定勤務時間が1時間延長されると休憩時間が15分延びるため、勤務終了時刻の17時(8時30分始業)が18時15分になります。その時刻まで、打ち合わせや職員会議、研修が入ることもあり、採点や翌日の準備などは18時15分以降となり、退勤時刻が今より遅くなることは明らかです。

 育児や介護をかかえた教員には「配慮が必要」とされていますが、それ以外の教員は18時15分までの拘束が強制されることになります。育児や介護以外にも、毎日18時過ぎまで残れない人は常に1時間の年休を余儀なくされます。職場内での分断をもたらすような制度は選択すべきではありません。

夏期休業期間中の業務縮減を行えば、今の制度でも休みのまとめ取りはできる

 文科省は「1年単位の変形労働時間制」を導入すれば、夏期休業中に休みのまとめ取りができるようになると言います。しかし、教職員の病気休暇が生ずるのは5〜6月が最多です。「休むのは、夏休みまで待て。4月から6月は忙しさに耐えよ」というのが、この制度の本質です。

 さらに、夏期休業期間は閑散期ではなく、生徒指導、保護者との三者面談、補習、行政研修、部活動指導、新学期準備などに追われ、まとめて休みを取れる状況ではありません。

 一方、2018年度岐阜市が行った夏期16日間連続学校閉庁日の例で明らかなように、現状の夏期休暇中業務を見直し、縮減することができれば、変形労働時間制を導入しなくても休みのまとめ取りは十分可能です。

条例制定に反対し、各学校への導入を許さない運動をすすめよう

 政府は、「改定給特法」の国会審議の中で導入の論拠が次々と崩されるもと、「1年単位の変形労働時間制」が「恒常的な時間外労働がないことを前提とした制度であること」を認めざるをえなくなりました。

 さらに、「すべての教員に画一的に適用せず」、「職員会議や研修は、通常の勤務時間のなかで行う」などの附帯決議が行われました。また、文科省から「条例を選択しないという選択肢もある」、「学校の意向は尊重される」、「制度適用の教員は時間外労働月45時間という国のガイドラインを越えないことが必要で、守れなければ途中で適用をやめる」などの答弁が引き出されました。

 今後は、組合を先頭に県教委に「1年単位の変形労働時間制」を選択し導入するかどうかは教職員組合との「交渉事項」であることを認めさせ、保護者・県民に幅広く訴え、未組合員を含めたすべての教職員の力を総動員して選択・導入させない闘いを進めていかなければなりません。

 さらに、長時間過密労働を解消するために、教職員定数を抜本的に改善し、専任教員を増やすことによって持ち時間を縮小させるとともに、行政研修や調査報告などの業務を縮減させることが必要です。

 また、各学校においても分会を中心に学習会、教研を行い、この制度の問題点を教職員で確認し、制度導入反対、教職員増、業務縮減などを校長交渉で求めていきましょう。
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