2016年7月18日


前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく、
新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」 
(下)




 (上)では、新たな「県立高校改革計画」が、総合学科高校や単位制普通科高校を量産した「多様化」政策の誤りを総括せずに軌道修正しようとしていることを明らかにしました。(中)では、専門コースやフレキシブルスクールでも、「多様化」の失敗を糊塗しようとしていることを示すとともに、今回の「改革計画」では、県立高校の新たな「格差化・差別化」が打ち出されたことを指摘しました。

 今号では、この「格差化・差別化」がさらにどこに現れているのか、そしてその問題点を解決するための一つの方策を示します。


少人数指導・6学級規模を、インクルーシブ校や「課題集中校」でも

 今回の「県立高校改革実施計画(全体)」では、「クリエイティブスクールなど、きめ細かな指導や様々な教育的支援を必要とする学校については、弾力的な学級編成と少人数指導などの授業展開が可能となる学校規模とします」と記されています。

 現在、クリエイティブスクールは1クラス40名6学級を1クラス30名8学級にして授業を展開しています。「実施計画」は、クリエイティブスクールの学校規模を「1学年6学級規模を標準とする」としており、1クラス30名8学級展開が今後も可能となる計画となっています。しかし、インクルーシブ教育パイロット校(Ⅰ期3校は各クラス3名の知的障がいのある子を受け入れる予定)は7学級規模、さらにクリエイティブスクールとそれほど変わらない生徒が入学している「課題集中校」は8~10学級規模の学校があり、1クラス30名の学級編成は不可能です。

 クリエイティブスクールは、前回「計画」の目玉の一つで入試の倍率も高いのですが(今年度は1つの学校で大量の定員割れが生じました)、クリエイティブスクールという特定の学校だけに弾力的学級編成や少人数指導が可能となるような優遇策を行うことは、「格差化・差別化」につながります。困難を抱えた生徒が入学し、課題が集中している学校はすべて6学級規模として、1クラス30名8学級で授業展開ができるようにすべきです。



校長のリーダーシップ強調ではなく、教職員・生徒・保護者の協議・合意形成の重視を

 「改革基本計画」では、「校長のリーダーシップの下、全教職員が一丸となって、すべての生徒への質の高い教育の提供に向けて、組織的で機動的な学校運営を進める」と校長のリーダーシップを強調しています。

 しかし、前回「計画」で導入・強調された校長のリーダーシップや権限強化によって、教職員の意見を無視したトップダウン、企画会議などによる管理職の専断、パワハラの発生など、学校運営に様々な問題が生じています。

 「実施計画」では、「頑張る県立高校応援事業の取り組み」として、「真摯に努力し、学校経営に成果をあげている優れた学校を、学校評価や第三者評価の報告などに基づいて総合的に選考し、その取組みに必要な支援を実施する」とされています。しかし、「真摯に努力」や「成果をあげている」などをどのような基準で評価できるのでしょうか。また教職員や保護者・地域住民とは異なる第三者によって、十分で適切な評価ができるとは思えません。このような「評価」や「報告」などによって県立高校を選考し、優れた学校、普通の学校、劣る学校などと区別することは、学校間競争の激化をもたらすだけでなく、県立高校の「格差化」につながります。

 校長のリーダーシップ強化や学校評価をいかした学校経営の推進を強調するのではなく、企画会議を見直し、教職員・生徒・保護者の協議や合意形成に基づく基本的な学校運営を重視することが必要です。

以上

前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」(中)  

前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」(上) 

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