2016年4月23日


前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく、
新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」 
(上)



 1月に決定された「県立高校改革実施計画(全体)」と「実施計画(Ⅰ期)」は、学校規模の拡大と統廃合を打ち出しました。それとともに、前回の「県立高校改革推進計画」(2000年~2009年)で推進した「高校多様化」の問題点を十分に検証・総括することなく見直しをすすめ、新たな「高校格差化」を目指そうとしています。


総合学科高校を見直し、普通科や専門学科にもどす

 前回の改革推進計画では、大師高校しかなかった総合学科高校を10校(統廃合後の新校として8校、既存校の改編として2校)新設しました。総合学科高校は、前回計画において単位制普通科高校と並ぶ目玉でした。

 今回の改革計画では、その総合学科高校(現在、全日制11校)のほぼ半数に当たる5校(Ⅰ期では4校)を、単位制普通科や専門学科に改編します(Ⅰ期4校については下表参照)。

大師高校
横浜緑園総合高校
横浜清陵総合高校
単位制普通科に改編
吉田島総合高校 単位制専門学科(農業科)に改編
(2019年度から生活科学科を新設)
    

 この4校のなかでも、特に県内で初めて総合学科として新設された大師高校は、全国的にも総合学科のモデル校として県内外から学校視察が耐えませんでした。大師高校の「成功」をひとつの根拠として、総合学科高校が大量に新設されました。しかし、時が経つにつれ、総合学科の問題点(総合学科は、専門性や共通教養性が乏しい、「お粥」的学科と言われた)が肥大化し、普通科に比べ財政がかかるということから撤退することになったと思われます。大師高校が単位制普通科高校に改編されるのは、その象徴的な現れです。

 さらに、吉田島総合高校は、前回の改革推進計画で吉田島農林高校という専門学科高校(普通科も併設)から総合学科高校(普通科・園芸科学科・環境土木科も併設)に改編されたのですが、今回はそれをもとにもどし専門学科高校にすることになります。まったくの朝令暮改です。

 総合学科高校を、このように10数年で大幅に見直し・改編しなければならなくなったことに対して、県教委は「多様化」推進という、自らの誤りを糊塗するのではなく、根本的に検証・総括を行い、説明責任を果たすべきです。


単位制普通科高校を見直し、年次進行型での運用へ

 単位制普通科高校については、1995年に開校した神奈川総合高校に加えて、前回の改革推進計画で7校(フレキシブルスクール3校を含めると10校)を新設しました。
 今回の改革計画では、「共通教科の科目を中心とした構成を基本とした教育課程に改善します」(「実施計画 全体」)と打ち出されました。特に、生徒の学習ニーズや進路希望が多様な学校以外においては、「年次ごとに共通に学ぶ科目を定めることを基本とした教育課程による年次進行型での運用に取り組みます」(「実施計画 全体」)とされ、単位制ではない普通科高校とそれほど変わらなくなると考えられます(単位制普通科11校のうち8校が「年次進行型」となる予定)。

 「単位制高校」(単位制普通科高校や総合学科高校)については、新設される前からショッピングモールスクールという批判など、多くの問題点が指摘されていました。「かながわ定時制教育を考える会」(当時)も「意見書」(1999年)のなかで、「従来の高校に比べてホームルームなどの基礎的集団の形成が十分でない」など、「単位制高校」の新設には慎重でなければならないと主張しました。

 しかし、こうした指摘に耳を傾けることなく、前回の改革推進計画は、「単位制高校」(総合学科高校を含む)を量産しました(この期間中に再編新設された全日制40校のうち20校、定時制10校のうち10校がこうした「単位制高校」でした)。

 単位制普通科高校についても、総合学科と同様に、このような短い期間に見直すことになったことについて、県教委は根本的に検証を行い、県民に対する説明責任を果たす必要があります。 

(中)につづく

前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく、新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」 (中)

前回改革で推進した「多様化」の誤りを糊塗するだけではなく、新たな「格差化」を目指す「県立高校改革実施計画」 (下)

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