Essay

<<PreviousNext>>
【2003.3.15〜フジテレビ「DNA・それは奇跡か運命か」から考えたこと

大変興味深い内容の番組を見ることができました。
3月15日の夜9時からフジテレビ系
で放送された、「それは奇跡か運命か」というタイトルの番組です。
内容は、人が誰でも持っているDNA(つまり遺伝子)についてのオムニバスのドキュメンタリーでした。
その中で特に心に残ったのは、カナダに住む、一人の女の子・アシュリーのドキュメンタリーでした。
その女の子は11才。ただ普通の女の子ではありません。ある病気を抱えています。
その病気の名前は「プロジュリア」というDNA異常が原因で起こる病気で、
世界で30例しかない難病です。

その症状は、普通の人の8倍〜10倍のスピードで体が老化していくという恐ろしいものです。
そのため、脳卒中、白内障、心筋梗塞、骨粗鬆症など子供がかかるはずのない病気と
闘いつづけなければなりません。彼女は11才なのに体重は12Kgしかありません。
そして、胸の痛みや関節の痛みが時々襲ってくるのです。
その姿は、痛々しいもので、髪も抜け、お年寄りのように血管が浮き出てしまっていました。
ここまでの話では、病気のかわいそうな女の子にしか思えません。
素晴らしいのは、その生きようとする力と考え方なのです。
アシュリーは、お母さんと二人暮らしです。
お父さんは彼女の病気を知って家を出ていってしまったそうです。
そして、お母さんは酒や麻薬に頼るようになったこともありました。
今はそこから立ち直り、スポーツジムのインストラクターをしています。

アシュリーは、現在小学校6年生です。
朝は具合が悪いことが多いので、午前中は、ほとんど出席できません。
勉強も遅れてしまっていますが、泣きごとも言わずに懸命に頑張っています。
学校で彼女を知らない子供はいません。
入学した当初は、からかう子供もいたそうですが、今はそういうことはなくなったそうです。
そして、私が素晴らしいと思ったこと、
それは、3年生の時に仲良くなった、親友のクレアのことです。
二人は、クラスが分かれても、いつも一緒で、
他の友達が休み時間に外で遊んでいてもアシュリーのところにやってくるそうです。
それはとても微笑ましい光景でした。
こんな友達がいれば、生きる勇気や希望が湧いてくるはずです。
もちろんアシュリーに魅力があるからですが…。

アシュリーは、授業が終わると、どんなに関節などが痛くて歩くのがつらくても
必ずクレアと一緒に帰ってくるのです。
クレアもアシュリーの病気のことをすべて分かっていますが、
単純に同情ではなく、本当の友達として接していました。
同情だけで接している間は心から打ち解けることはできないはずですし、
同情なしでということは、大人でもなかなかできないことです。
二人の姿に大切なものを教えられたという想いがしました。

もう一つ印象に残ったのは、アシュリー自身があれほど大変な体なのに
クリスマスになると自分が通う病院に入院している子供たちに
自分のおこづかいをためて買ったクリスマスプレゼントを贈るそうです。
サンタクロースの格好をして病室を回っていました。
その姿勢には本当に頭が下がります。「人のために」という姿勢−
私たちが忘れてきたものかもしれません。
アシュリーは、自分の運命を受け入れ、それに逆らわずにその時その時を生き切ろうとしています。
今の世の中に大きなメッセージを発信してくれているのです。

このドキュメンタリーの最後にこんな風に話していました。その言葉には驚かされました。
「私は生まれかわっても私で生まれたい。私は私が好きだから。」

きれいごとを言うつもりはありませんが、アシュリーの言葉は
「すべての人が自分のことを好きになり、相手のことに関心を持つようになれば世界は変わる」
という意味でもあると私は思います。
このドキュメンタリーの中に世界中の人間がこれから未来に向かって
目指していくべき方向性が見えてくる気がしました。
つまり、結局は心や思想の問題に行きつくのです。

たとえば、今回のイラク攻撃をとってみてもたとえ相手に非があるとしても、
自分たちの論理(キリスト原理主義といわれるようなもの、新保守主義−ネオ・コン)
を押し付ける形を取って、支配したところでその国、地域は理想的なものになるでしょうか?
極端な言い方すれば、フセイン政権よりはましという程度のものであると思うのです。
一つの国だけで成り立つはずのない世界を力のみで支配しようとすることが
神の目から見て許されるとは思えません。
もちろんフセインのようなやり方も認められるはずはないのですが、
本当に「その国の人たちのため」になるのでしょうか?

それを変えていくには、国や政治家の論理を超えた価値や思想が必要です。それは目には
見えることないものです。話がそれましたが、そんなことまで考えさせられました。


ページのトップへ

Essay目次へ

ホーム