ゲンゴロウの飼育


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生態に関する基礎知識

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ゲンゴロウの甲羅干し ゲンゴロウ、この名前は昆虫に関心の無い方でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。 分類上は鞘翅目−食肉亜目−水生食肉亜目−ゲンゴロウ科に属する昆虫ですが、世界的に広く分布し、わが国にも渓流域から止水域まで、大小合わせて100種以上がいます。 一般的な飼育対象としては、ゲンゴロウ科の中でも最大の、いわゆるゲンゴロウや、クロゲンゴロウやシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウなどの中型のゲンゴロウです。

一概にゲンゴロウといってもその生態は様々です。 こどもの頃、夏になってプ−ル掃除をしている時に必ず紛れ込んでいるのがハイイロゲンゴロウで、都会の田んぼにも普通(?)に見られるのがヒメゲンゴロウやコシマゲンゴロウです。
ハイイロゲンゴロウゲンゴロウの仲間は、カブトムシやクワガタ類と違って大変活発に動き回るために、観察していてとても 楽しく、寿命も比較的長く、餌も死んで間が無い魚やザリガニ、刺身や煮干しなど調達が簡単なものなので、最も飼育に適した昆虫と言えるでしょう。
ゲンゴロウ成虫は硬くてツルツルしたとらえどころの無い体をしていますから天敵と呼ぶものも昆虫類には少なく、昔は田んぼや小川などどこでも普通に見ることができたようです。

 一方、成虫の飼育に比べて幼虫の飼育は大変難しく、限られた規模で趣味のレベルで飼育することはあっても、累代飼育を行っている人は極めて少ないようです。
幼虫も肉食性ですが、成虫と違い生きているものを餌とする完全なハンタ−ですから、人工飼育には大変な困難がともないます。
幼虫の体は、頑丈な顎と芋虫のような、攻撃に対して大変に弱い体をしています。 このことは強い攻撃力を持つこととは裏腹に、外敵に対しては非常に弱い存在であることを意味します。したがって、限られた空間で高密度で飼育を試みても、共食いによる事故で、まず失敗することになります。
 さて、ゲンゴロウ類の生態は概して似ていますが、やはり種類によって若干異なります。 都合上、ここでは最も大型で全国に広く分布し最も人気の高い、いわゆるゲンゴロウに関してその基本的な生態をご説明しましょう。
 ゲンゴロウの成虫は、通常夏から秋にかけて田圃や用水路、池などで見ることができます。餌は死んだ魚や蛙、オタマジャクシ、落下昆虫などで、弱ったドジョウなども襲います。ゲンゴロウは視覚ではなく、臭覚で餌を見つけるといわれ、このことについての若干の研究も行われているようです。ゲンゴロウの運動量は大変なもので、このことが飼育下における観察に便利なわけですが、それにともない食べる量も大量です。同じ水域で十分な餌が得られないと、新たな水域を求めて飛翔移動します。ゲンゴロウにとって安全な所は水底のようで、驚いたり鳥などの外敵に襲われると、水底の泥の中や石の蔭などに隠れます。夜になって飛ぶのも、夜行性と考えるより、最も危険な天敵であるゴイサギなどの肉食性鳥類に襲われないためなのでしょう。
 もう一つ重要な生態に甲羅干し行動があります。特に室内飼育などで十分な日照が無い場合、胸腹部の間や脚の付け根辺りを中心にして、水カビのようなものに覆われてしまいます。これが直接原因で死亡したケ−スは確認していませんが、生体に良いはずはありません。日中たびたび行われている甲羅干し行動は殺菌および体温調整と考えられ、夜間の甲羅干しは飛翔前に羽を乾かす行動と考えられます。
 このように活発に活動してきた個体は、秋になり、そして冬になると活動量が低下していきます。一般的に、ゲンゴロウの越冬は水中型と考えられますが、上陸越冬の可能性もあります。実際、ゲンゴロウの冬越しに関する資料は甚だ乏しく、種による越冬形態の違いもほとんど確認されていません。飼育下に於いて、水中越冬で不都合が認められていないことや、真冬の天気の良い日にゲンゴロウ成虫が泳いでいるところを確認することがあったりすることを考え合わせると、水生半翅目のタガメやミズカマキリなどと異なりはっきりした越冬形態はとらない可能性もあります。
ミズスマシなども確認されていませんが、飼育をする場合は環境を特に変えなくても冬を越しますから、詳しい生態は今後の研究に委ねることにしましょう。
オタマジャクシを狙うゲンゴロウ幼虫 3月の半ば頃から活発に活動を開始した個体は4月から7月頃にかけて交尾、産卵を行います。産卵はオモダカ類やコウホネ、ヒツジグサなどの水生植物の茎などを咬んで穴を空け、そこから組織内に1pほどの白い卵を産み付けます。2週間ほどたつと、体長2pほどの幼虫が生れます。幼虫の成長は非常に早く、食欲も旺盛で、小さい頃はアカムシやその他水生昆虫の幼虫などを補食していますが、大きくなるにしたがって、オタマジャクシなどを襲います。特に幼虫にとってオタマジャクシは最も重要で、水田などがゲンゴロウの繁殖場所になっているのも、餌になるオタマジャクシがたくさんいる恵まれた環境だからです。半月もすると8pほどに成長した幼虫は蛹化のために夜を待って上陸し、水域近くの土の中に蛹室を掘って、その中で前蛹になり、脱皮後蛹になります。蛹になって10日ほどすると立派な成虫が土から出てきます。産卵からおよそ一ヵ月ほどかかって成虫になるわけです。尚、その他のゲンゴロウ類も似たようなもの ですが小型化にともなってサイクルも短くなると考えてください。ゲンゴロウの寿命は比較的長く、2年以上4年以内といったところでしょうか。寿命が長いのも飼育向きであると言えるでしょう。

                

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飼育法


 飼育環境を整えることが飼育の第一歩です。活動量の多いゲンゴロウには、できるだけ広い空間を用意してやることが大切です。
餌に群れるゲンゴロウ 水は多めに入れ、大きめの流木などで甲羅干しのための陸域を用意します。流木は水面下において格好の隠れ家を提供します。夜には活発に飛び回るため、蓋を忘れてはいけません。水草も沈水植物と産卵用の抽水植物をバランスよく配置します。屋内で飼育する場合は日当たりの良い窓際などで行い、水草に十分な日照が当たるようにします。前述したように、甲羅干しのためにも陽当たりは気を付けなければなりません。屋外飼育の場合は、反対にあまり陽当たりが良すぎると水温の異常上昇が予想され好ましくありません。

一般に昆虫は低温より高温の方が苦手で順応できません。せめて日中の半分は直射日光が当たらない環境下で飼育して下さい。浮葉植物や浮遊植物で直射日光が水面に当たらないようにするのも大切なことです。水質維持には簡単な濾過装置を使用してもいいですし、まめに水交換をしても結構です。肉食昆虫の排泄物は水質を急速に悪化させますから水質には特に注意します。餌の量も食べ残しが沢山でないように適量与えてください。
春になると雌雄は盛んに交尾をします。人工飼育で累代飼育を行うためには産卵させ幼虫飼育をしなければなりません。産卵期になったら1つの水槽にあまりたくさんの個体を入れないようにし、産卵場所になる植物も多めに入れておいて下さい。
オタマジャクシを捕まえた幼虫ペアリングして10日くらいたったときから、水槽を注意深く調べるようにしていると、1pほどの幼虫を確認することができます。見つけ次第シャ−レなどの容器に取出し一匹づつ別々に飼育します。餌はアカムシが適当で、大きくなるに従いオタマジャクシなどの大きな餌に切り替えていきます。
サイズが大きくなるにしたがって飼育ケ−スも大きくしていくのは当然です。幼虫の体長が10pを超える頃になって丸一日食べなくなったら、暗くなってから上陸行動が始まりますので、土などで予め蛹化スペ−スを用意してある飼育ケ−スに幼虫を移します。10日ほど後に成虫が出てきたら累代飼育の成功です。



この稿おわり


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