SCENE 20


G綾:じゃあ,伊織に電話かけます。もしもし? こっちは今,霧谷さんを救出したよ。
伊織:それはよかった。こっちも工事現場にいたエージェントを確保したところです。
綾:工事現場,何かあった?
伊織:それがですね,本管が露出してですね,とかくかくしかじか。しかもこいつら,UGNのヤツらっぽいんですけど……。
綾:(霧谷に)事情,説明してくれます?
GM/霧谷:「(電話をかわって)ああ,君が日下くんかい? 霧谷だが」
伊織:あ,どうも。はじめまして。それで……。
GM/霧谷:「ああ,わかってる。近くに大量の水を運べそうなものはないか?」
伊織:給水車があります。あ,それとミキサー車もか。
GM/霧谷:「そのどちらかか,あるいは両方に,レネゲイド・ウィルスが入っているはずだ」
一同:やっぱテロか!?
伊織:それを水道管に流したんですか!?
GM/霧谷:「流したか,これから流すのかはわからない。給水車を調べてみてくれ」
伊織:そう言えばそうでした(笑)。でも中に水がたんまり入っていたとして,それがウィルス入りかどうかはわかんないですよね?
GM/霧谷:「だが,市内全域に感染爆発を起こすには,トン単位のレネゲイド・ウィルス(注:正確にはトン単位の水,レネゲイド・ウィルス入り)が必要なはずだ。だとしたら,給水車やミキサー車で運んでいると考えるのが自然じゃないか?」
伊織:わかりました,それは調べますよ。しかし……。
光:感染爆発って……。
綾:いったいどうしてUGNがそんなことを?
伊織:UGNじゃなくて,上月じゃないの?
GM:上月と,その配下のUGNの一派。話せば長いんですがね,ここ数年……。
雨追:そんなに長いんですかっ!?
GM:まぁ聞きたまいよ(笑)。ここ数年,UGNは内部分裂を起こしていました。ある一派は,政府とのパイプを太くし,営利団体としての面を強化したいと考える。UGNを各国政府や大企業と契約する,対ファルスハーツの傭兵組織として運営していくわけやね。もう一派はコードウェル博士の理想を守り,オーヴァードの人権擁護のために,国家権力とは距離をおこうと考える。さて,日本なんだけど,一応霧谷さんが後者。上月さんは前者だね。
雨追:何でまた。
GM:(きっぱり)予算がないから。日本はご存知の通りずっと不況が続いてますな。そうなると,国って右傾化する場合が多いんだよ。
伊織:右傾化って,具体的には?
GM:日本の場合は軍備の強化。すでにGNP1%枠は超えまくっているという設定で,それがここ数年の動き。これは対オーヴァード戦略でも,同様。米国で最近対オーヴァード兵器が実用化されてたんで,その輸入を進めようとしたりね。つまり,今までは日本政府からUGNに謎の内閣官房機密費が降りてたんだけど(笑),UGNに頼らずにストレンジャーズを強化しようという動きが出てきてるわけね。
雨追:はーい。ストレンジャーズって,何ですか?
綾:陸上自衛隊のオーヴァード部隊。あ,防衛隊だっけ(笑)。
GM:つまりは軍人さんだな。いや日本に軍人さんはいないけど(笑)。とにかく,そういうわけでUGN日本支部は本当に金に困っていたのだった。
雨追:おお! 大谷の安月給にもちゃんと理由があったんだ!
GM:あったんだよ(笑)。削れるところは削ろうということで。
伊織:大谷の給料が削っていいところかは,微妙だけどな(笑)。
GM:不況の時はまず人件費だ。世知辛い話だねェ。
綾:そういうヤな話はおいといて(笑)。それと今回のテロと何の関係があるんですか?
GM:だからね。T市で感染爆発を起こして,その罪をファルスハーツにひっかぶせようとしてるわけなんですよ。
雨追:UGNが?
GM:UGNが。
雨追:何でまた!?
GM:だからさ,ファルスハーツに対抗するには,同じ秘密組織であるUGNの方が適してるやろ。ここでファルスハーツが大掛かりな事件を起こせば「やっぱりUGNは安全保障のために必要だ」ってなことになるじゃんか。
雨追:……それだけのために?
GM/霧谷:「それだけのために。ま,上月くんは運営面で苦労を重ねてきてるからな。相当追いつめられての行動というところだろう」
一同:…………。
GM/霧谷:「(淡々と)上月くんの様子がおかしいと気付いたのは,まぁ1ヶ月前だな。私に隠れてレネゲイド・ウィルスを大量に培養していた。それから,日下くんも知っての通り,例の談合だ。あれを塚原設備に依頼したのは,上月くんなんだ。……私も止めようとしたんだがね」
光:その矢先に,つかまっちゃったわけね。
綾:しかし,逆に言うとよく殺されずに済みましたね。
GM/霧谷:「うん,そのへんは上月くんじゃなくてライトに何か思惑があったんだろうな」
雨追:はーい,またまた質問です。そういやライト氏は何なんですか?
GM/霧谷:「彼は要するに死の商人だ」
雨追:はい。で?
GM:で,って……少しは考えろよ(笑)。だから,日本政府がストレンジャーズに予算をつぎ込むとして,それは何を買うため?
雨追:あ! あー,そういうことですか! ……あれ? でもそれっておかしくないですか? 上月さんの作戦が成功したとしたら,逆にストレンジャーズに予算は回らなくなりますよね?
GM/霧谷:「その通りだ。ただ,我々UGNの買ってる武器も元を正せば彼の会社のものだし,T市で感染爆発が起こったらストレンジャーズが出てこないわけにはいかなくなる。UGNとストレンジャーズが両方武器を必要とすれば,一石二鳥だろう?」(←実はそれだけじゃないんだが……)
綾:つまり,黒幕は彼なわけですか。
GM/霧谷:「たぶんね。だいたい,今回何で上月くんの指令がスムーズに行き届いたかというと,UGNに残っていたのが彼のシンパばかりだったからで,何でそうなったかというと……」
綾:ファルスハーツが起こした事件とやらが,そもそもガセ?
GM/霧谷:「いや,それはないだろう。だがそこにライトが1枚かんでると考えるべきだろうな。あまりにタイミングが良すぎる」
伊織:……ちなみに,ライトはどこに?
GM/霧谷:「申し訳ないが,私にはわからない。それに彼をどうこうするのは難しいと思うよ」
伊織:…………。
GM/霧谷:「それより,工事は2ヶ所と言ってなかったか?」
伊織:……そう言えばそうだ! すぐ向かいます!
綾:じゃあ,こちらは霧谷さんと一緒に上月さんを抑える。伊織たちはもうひとつの工事現場に向かってくれ。(GMに)あ,それと便利屋さんも動員してくんない?
GM:便利屋さんって……泪? それは想定してなかったなぁ。だいたい回復とセカンドアクション追加しかできないよ?
伊織:セカンドアクションはかなり重要。
GM:そぉ? じゃあ泪はこれから工事現場に向かうということで。戦闘になったら,綾さんが動かしてくれ(笑)。ではシーン変えます。

 

SCENE 21


GM:では,戻って光&伊織組。
伊織:工事現場に向かいますが……。
光:え? で,この給水車どうするわけ?
伊織:……ここに置いとくわけにはいかないよな(笑)。アンタ運転は?
光:できない。
伊織:役にたたねえ……。
光:じゃ,そういうおまえはできんのかよ。
伊織:できねーよ。
光:じゃ,人のこと言えねーじゃん。
伊織:おまえは今回,他のことで何か役にたったかよっ!?
雨追:(にこにこ)まぁまぁおふたりとも。
伊織:まぁまぁじゃねえ。同じことはおまえにも言えるぞ。少しは動けよな。
雨追:(にこにこ)はいっ,まかしてください!
綾:……いきなり自信ありげだね。
雨追:だって命令してくれる上司がいますもん! いやぁ,よかったぁ!
一同:(爆笑)
GM:……雨追……少しは自分で考えるってことができないのかい?
雨追:はい,命令の範囲内なら。
GM:今回「ここは考えて動いたぞ!」ってところは?
雨追:いえ,特には。
一同:特には,じゃねー!(笑)
伊織:こんなヤツ減俸しろよ減俸!
雨追:何故ですか! 命令の範囲内ではしっかり仕事しているのに!
綾:……ホントに?(笑)
GM:話を元に戻そう。結局,給水車どうするの?
光:泪ちゃんを呼ぶ。
GM:だからもうひとつの工事現場に向かってるんだが……こっちに呼ぶの?
伊織:呼んでどーする。
光:どーするって,運転してってもらう。
GM:泪は免許持ってないよ。
光:そうだっけ?
GM:そうだよ。〈運転〉技能持ってないもん。
光:じゃあ他に運転できる人を……。
GM:他? 他って?
綾:……栄吉くん?(一同笑)
GM:4時間かかる道を2時間でぶっとばす人だけど,それでもよければ。
伊織:……マスター。技能なしでも〈運転〉技能って振っていいですか?
GM:この際かまわないよ。ただしファンブル振ったら覚悟してもらうけど(笑)。
綾:それでも栄吉くんにやらせるよりかはなんぼかマシだろう(笑)。
伊織:そうそうファンブルはでないと思いますが……9です。
GM:では,バイオハザードな給水車(笑)に乗って,光&伊織はもうひとつの工事現場へ,と。そこにはやっぱり待ち構えている人がいるな。
光:ワーディングかけても倒れない人?
GM:そう。今度は1+1で2人だけ。
綾:トループではないんですな。
雨追:でも,また名前のない人?
GM:(歌うように)名前〜♪ そんなのはない〜♪ 私は名もないエージェント〜♪
綾:投げやりだなぁ(笑)。
伊織:……まぁてめーらの名前なんざどーだっていい。
光:いいのか?
伊織:うるせえ! いいったらいいんだよ!
光:ええ!?(笑)
伊織:てめーら悪党のせいでこっちは色々大変だったんだよ! さっさと俺に斬られて死にさらせやコラァ!
一同:(爆笑)
雨追:伊織さん! 伊織さんだめですよ! 落ちついてください!
伊織:やかましい! これが落ちついていられるか!
雨追:パパが草葉の陰で泣いてますよ!
GM:そこか,ツッコむのは!?(笑)
雨追:(妙な声音で)ん〜ん伊織ちゃ〜ん,そんな言葉使っちゃダメだよ〜?(笑)
伊織:だからいねーよそんな親父は!
雨追:実はキラー衛星で上空から見てるかもしれませんよ!?
伊織:見てねー!
雨追:(妙な声音)ん〜ん,マァマ〜ど〜しよ〜,ワタシの伊織ちゃんがあ〜んな不良になっちゃたよ〜,とか泣いてますよ,きっと!
伊織:だぁら,俺がこうなったのはみんなおまえらのせいだろうが!
GM:わかった,わかったから話を進めようぜ(笑)。そんな会話してるとエージェントさんがふっと笑って,「日下グループの御曹司も堕ちたものですな。今なら火遊びですみますよ?」とか言うけど……。
伊織:(異常にドスのきいた声で)地獄に堕ちてほざいてろ,タァコ!!
一同:(爆笑)
雨追:(妙な声音)マァマ〜! 伊織ちゃんが〜!(笑)
光:俺はその脇でひとり頷いていよう。……うんうん。
一同:(さらに爆笑)
伊織:いったい,何にたいして頷いてるんだよおまえは!(怒)

 嗚呼,もはや収集がつかない(笑)。
 一同,笑い転げながら(伊織除く)なしくずしに戦闘開始。 

GM:ではイニシアティブはエージェントさんAが9。Bが12です。
光:では《先手必勝》使ってイニシアティブとります。距離は?
GM:離れてる。Bさんはさらに別エンゲージ。
光:じゃあ,Aさんと同じエンゲージに入って終わり。
GM:ではBさんが《小さな塵》《リフレクト・レーザー》《主の右腕》《急所狙い》《マルチウェポン》で光を狙います。28。防御行動に1個ダイスペナルティね。
光:避けられない。
GM:34点,どーん。
光:ええと《竜鱗》……。
GM:死んでリザレクトした方が早くないかな? 侵蝕値まだ70くらいやろ。
光:じゃあリザレクト。9点回復。
伊織:近づいて終わり。
GM:マイナーで《氷剣》。《炎神の怒り》《業炎》で25。(いっころ)また光ね。ダメージは26点。
光:(淡々と)死んでリザレクト。おお,着々と侵蝕値が上がっていくぞ(笑)。
伊織:てゆーかその前に避けろよ。
GM:まぁ登場判定で侵蝕値が全然上がってなかったからねえ。いいんじゃない?
雨追:ふむう。やはりラブボケているので侵蝕されにくいんですな。
GM:んなわけあるかい。じゃあセカンドアクションする人。いない? いないのね。じゃあ次ターン。
光:もっかい《先手必勝》〜。《鬼の一撃》《銘なき刃》で(ころころ)あ,下限値以下だ。
伊織:……あんた,やる気あんの?(笑)

 光さんはさらにBさんに痛手をくらい,またまたリザレクト(光「マスター,何で俺ばっか狙うの?」 GM「いや,だってダイスがそう言ってる……」)。
 ……着々と侵蝕率が上がっている(笑)。
 Aさんはエンゲージ離脱を宣言するものの,光にとめられる。
 そして予想通り《バリアクラッカー》の前に沈んだのであった。
 
GM:では次ターン……。
光:あ,今気づいたんだけど,侵蝕値100超えたらリザレクトできないんだよね?
GM:そうだが……超えたの?
光:いや,俺じゃなくて,伊織が(笑)。
GM:うっふふ。じゃあそこを狙ってやろ。Bさんの攻撃〜。
光:ああ,待って。《先手必勝》を……。
伊織:……ん? ちょっと待て。あんた《狼牙》持ってるやろ!(笑)
光:あ,そうだっけ?
伊織:「そうだっけ」じゃねーつーの! 《狼牙》と《大蛇の尾》組み合わせればヤツを狙えるだろ!
光:そうでした(笑)。それじゃ《狼牙》《大蛇の尾》《鬼の一撃》で……(ころころ)おや? 6?
一同:ダメだこりゃ(笑)。
GM:もう知らんよ,私は(笑)。
光:(淡々と)いやあ,参ったなぁ。
伊織:おまえ……。
GM:というわけでBさんが先ほどの組み合わせで(ころころ)42とかいってみるけど……。
伊織:避けられるわけないでしょ。
GM:ダメージは29点。死んだ?
伊織:死ぬに決まってるでしょっ。
雨追:昏倒するとどうなるんでしたっけ?
綾:次のシーンまで放置すると死亡だったと思う(苦笑)。
GM:ま,次のシーンまでには泪ちゃんが来るよ。まさか戦闘の役にたつとは思わなかったなぁ(笑)。
光:えーと,次俺の番?
GM:そう。とりあえず1人でもちこたえてくれたまへ。
光:はーい,がんばりまーす。
伊織:もうちょっと前にがんばれ!
一同:(笑)
伊織:GM! 蘇生ってタイタスでできませんでしたっけ!
GM:え? だってキミ,タイタスなんて持ってないだろ?
伊織:ここであかりをタイタスにして復活します!
一同:何でだ!?(爆笑)
綾:えーと,タイタスを使用する場合にはセットアップセグメントで……。
伊織:じゃあ次のターンですね。
雨追:だから,喪失決定なんですか!?(笑)
GM:ちょっと待てって! それ以前に,あかりちゃんをタイタスにする理由が何もないだろ!
伊織:それはアレですよ。今までのストレスにより,心の奥底に秘めていた凶暴な自分が顕在化して,もう彼女とか幼なじみとか言ってられなくなったんです。
GM:ええい,メチャクチャ言ってんじゃねえ!(笑)
光:(ころころ)ええと,ところでGM。
GM:はい?
光:《鬼の一撃》《大蛇の尾》《銘なき刃》で56なんだけど……。
一同:…………。
GM:……それは避けられん。くらった。
光:(ころころ)えーと,33点では?
GM:死んだ。戦闘終了。……お,おや?(笑)
綾:もしかして……。
雨追:やっぱり一番オイシイところはこの方がもっていくわけですか!(爆笑)
光:(伊織に)ほら,がんばったぞ,未来の義弟よ。
伊織:…………。
光:ほら,やっぱお父さんになるし?
伊織:…………。

 伊織,もはや何をどう怒っていいかわからないらしい(笑)。

GM:(苦笑)と,いうわけで泪ちゃんが到着しました。
伊織:俺は前のめりにバッタリ倒れています。
GM:《ヨモツヘグリ》とっといてよかった。それと《癒しの水》で(ころころ)10点回復です。
伊織:(蘇ってきた)どうも,ありがとうございます相模原さん。
GM/泪:「いえいえ,こんなことしかお役にたてませんし」
伊織:いえ,あなたは命の恩人です。
GM/泪:「いや,そんなおおげさな……」
伊織:というわけでさらにロイスを増やしておこう。
一同:(笑)
GM:…………。ま,いいんだけどな。ではシーン変えます。

 

SCENE 22


GM:では雨追&綾組。8時30分,UGNに到着しました。ちょうどそのあたりで,泪から工事現場を2ヶ所とも抑えたと電話が入りますね。
雨追:では残るは上月氏だけですな。
GM:では受付嬢が霧谷さんの姿を見とめて「あれー,休暇は終わったんですかぁ?」とか言ってる。で,霧谷さんは苦笑しながら「ちょっとね。上月くんはどこかな?」と答えている。
雨追:(勢いこんで)で,どこにおられるんですかな?
GM:奥の部屋。……だが,その前に。
雨追:え?
GM:ちょっと〈知覚〉判定してもらえるかな?
綾:天性の……いや,もはや侵蝕値はあげたくないぞ(笑)。平目で(ころころ)あ,8で大丈夫ですか?
GM:OKです。……血の臭いがしますね。
綾:おや?
雨追:もしや?
GM:(不気味な笑い)うふふ,やっぱり遭遇してしまったわね。では,霧谷さんがドアをばーん!と開けると,床には血だまりと,その中に倒れ伏す上月さんが。
雨追:……死んでるんですか? どのように?
GM:首ちょんぱ。
一同:げっ!
雨追:マジですか!?
伊織:(冷静)それくらいしないとオーヴァードって死ななくない?
GM:あれ,言わなかったっけ? この人は一般人よ。
雨追:そ,それでは確実に死んでますな……。
GM:死んでる。まあ正確には首とんだんじゃなくて,頚動脈かっさばかれたんだけどな。どっちにしても死んでるな。
綾:あらあら……。
GM:あ,それでね。まだ続きがあってね。
雨追&綾:え?
GM:窓が大きく開いていて,そこから夜風が吹き込んでくる。そして,今にもそこから飛び降りんとする黒いコートの男が……(笑)。
一同:…………。
伊織:……それは,何?
綾:それってあれ? アメリカに行っちゃったはずのあの人?
GM:実は,行っちゃってないんだけどね(笑)。
綾:(←実は咲耶榎プレイヤー)ちょっと待たんかい(笑)。
GM:アメリカに行っちゃった千葉さんとこの千葉さんはまた別なもんでね。
綾:…………?

 ……ええと,何でそうなるか疑問な方は,NPC紹介の「ユージン・エヴァレット」の項をお読みくださいませ。
 ああ,イイワケ街道……。

GM:ま,それは第3部に関わるお話なわけであって,しかもとりあえず千葉さんであることには間違いないわけだからなぁ(笑)。
綾:何でそんな出会いたくないNPCナンバーワンな人が(泣)。
雨追:追います!
GM:追うのか!?
雨追:とりあえず,カタチだけは(笑)。
綾:ばっ!と窓から身を乗り出してみる。みるだけ(笑)。
GM:なるほど。では,夜の街に舞い降りていく黒いコートが見えただけやね。一応霧谷さんが「無駄だ,追わなくていいよ」と言います。
綾:ええ,そうみたいですね。それにしても……。
雨追:口封じですか。
GM/霧谷:「誰の差し金かは,ある程度見当つくがな……」
綾:どうします?
GM/霧谷:「(肩をすくめ)どうもこうも,こちらとしても上月くんの独断というか,暴走として処理するしかないだろうな。……後味はよくないが」では,こんなところでシーン変えます。

 

SCENE 23


GM:……さて。ここからはエンディングです。一夜が明けて,16日です。ところでちょっと訊きたいんだけど,16日から17日の間にT市を出る人,いないよね?
綾:T市から? 俺は……別に理由がないな。
伊織:同じく。
光:俺は病院だもん。
雨追:私,出るかもしれません。
GM:……そうなの?
雨追:東京観光をしてないのです。
一同:そこかいっ!?(笑)
GM:(苦笑)ちなみに今回のシナリオが終わった時点でT市の外にいる場合,第3部への出場権がなくなりますのでそのつもりで。
綾:(←第3部からレギュラーになる人)だから,俺は出ませんよ。でも,雨追さんは?
雨追:うーん,私は第3部に出るつもりはないですし……どうせいっつも海外だし(笑)。
GM:では,雨追はホントに東京観光?
雨追:そうですな。一応,相模原さんや霧谷さんに挨拶はしていきますが。
GM:マジで東京観光か……では雨追のエンディングからいこう。雨追は17日の朝6時に東京を発つことになった。
雨追:観光は!?
GM:16日まる1日あったろ。
雨追:あ,そうか。では東京ディズニーランドを堪能したあとで,成田から復興めざましからぬカブールへ。
一同:何故だ!(笑)
雨追:浦安から成田ならそれなりに近いじゃないですか。
GM:距離はな(笑)。というか,何故カブール……まぁがんばって復興のお役にたってきてくれ。
雨追:それではみなさん,さようなら〜♪
GM:……と,ノンキに手を振ってもいられないんだよなぁ……。
雨追:え?
GM:君は今,空港でテレビを見ている。空港は大騒ぎだ。便はすべて運休。君も足止めをくっている。
雨追:え? 何かあったんですか?
GM:テレビに映っているのは,米軍の戦闘機。たった今,米軍によるT市空爆が始まったのだ。
一同:…………。は?
GM:と,いうあたりで雨追のエンディングは終わってしまうのだな。シーン変えます。
雨追:え? 何? 何なんですか?
GM:(にやり)何が起こったかは,次のシーンでね。

 

SCENE 24


GM:では,他の3人なんだけど,時間を戻します。16日の夜9時である。この時間,みんな何をしている?
伊織:自宅。
綾:同じく。子供をほったらかしにもしておけないし。
光:病院に決まってるじゃん。
GM:了解した。では動けるのは伊織とお父さんだね。では伊織。
伊織:はい?
GM:泪からいきなり電話がかかってくる。「日下さん,大変なんです!」
伊織:相模原さん? どうかしたんですか?
GM/泪:「それが……いきなり空からジャームが降ってきて……」
伊織:は? 何ですって?
GM/泪:「あ,ですから,パラシュートで降下してるんです。投下,と言った方がいいかもしれませんが」
伊織:……どういうことです。
GM/泪:「わかりません。申し訳ありませんが,瀞南寺さんと合流して私の家でまで来ていただけませんか?」
伊織:わかりました。すぐ向かいます。で,瀞南寺さんにも電話をかけます。
GM:泪ん家まで行く途中,確かにジャームが街中で暴れているね。しかもパラシュートが後から後から降ってきてる。
綾:それ,大騒ぎになってません? 松山さんとこの病院は?
GM:もちろん大騒ぎだが,今妊婦を動かすわけにもいかんだろう。さて,エンディングだから戦闘は省いて,泪の家。泪が「霧谷さんから説明してくださるそうです」と受話器を渡してくれる。とりあえずどっちか受けて。
綾:はい,じゃあ俺が。
GM/霧谷:「瀞南寺くんか。申し訳ないが,最悪の事態になってしまった」
綾:何がです?
GM/霧谷:「昨日の工事現場,あれも囮だったんだ」
一同:ええ?
GM/霧谷:「昨日の夜T市の水道局に何者かが侵入して,メーターをいじった形跡があった。誰かがバルブを閉めてもわからないようにだろう。多分給水ポンプの前でバルブを閉めて,ウィルスを流したんだ」
綾:まさか,それって……。
GM/霧谷:「ああ。恐らく,今朝がたからT市のほぼ全世帯にレネゲイド・ウィルス入りの水が流れたはずだ。……一応,水を止めて非常用の用水に切りかえるよう指示をだしてはいるが……」
綾:手遅れでしょうね。もう1日経ってる。朝食も夕食も,その水は使われてしまっているはずです。
GM:21時の段階で,7割は感染してるな。人口14万として,9万8千人か。
伊織:しかし,聞いてないぞ,それは。
GM:(素に戻る)いや,申し訳ないんだけどね。これ,確信犯的なシナリオなのよ。相手方の陰謀が成功してくれないと話になんないんで(笑)。
綾:T市はいかにして魔街になったか,ってシナリオですからねえ。それはわかってますよ。
雨追:え,そうだったんですか!?
GM:そうだったの。悪いが,第3部のために犠牲になってくれい(笑)。
雨追:でーっ!?(笑)
伊織:話を戻そう。レネゲイド・ウィルス入りの水が流されたということはわかった。で,このジャームは何のために?
GM/霧谷:「感染しても発症してくれなければ感染爆発にはならないだろう? 元々レネゲイド・ウィルスは発症率も低く,潜伏期間も長いウィルスだ。だがレネゲイド物質を撒き散らすジャームが暴れまわれば,それに誘発されて発症するものもでてくる」
綾:……わかりました。とりあえず俺たちにどうしろと?
GM/霧谷:「出来る限り,ジャームの活動を抑えて欲しい。焼け石に水だということはわかっているが……」
伊織:わかりました。できるだけやってみます。
GM:繰り返すが,エンディングなので戦闘は省く。君らがそうして不毛な戦いを続けていると,大谷,紫音がやってくる。
一同:おお?
GM/真:「UGNの大谷真だ。時間がないので悪いが挨拶は省かせてもらう。……霧谷さんから話は聞いているか?」
綾:ええ,だいたいのところは。
GM/真:「では追加情報だ。市ヶ谷で,ストレンジャーズがすでに集結を終えている。誰かリークした奴がいるんだろうな」
綾:…………。ライトか……。
GM/真:「とにかく,すぐにT市を脱出しろ」
綾:どういうことです?
GM/真:「T市はこれから陸上防衛隊によって封鎖されるだろう。終わったらお次は米軍だ。早くしないと,二度とT市から出られなくなる」
伊織:脱出しろと言っても,まだ間に合うものなんですか?
GM/真:「災害派遣要請が出ていないからな。まだ間に合う。だが,今しかない」
伊織:……しょうがない。
GM:ん?
伊織:こうなったら,松山さんちに行きます!
一同:おおっ!?
光:何? あかりを迎えにくんの? マジ?
雨追:やりました! 男です伊織さん!
伊織:どうせこうしなきゃ,おまえら納得しないんだろうが! あァ!?(怒)
GM:ヤケになるなヤケに(笑)。もう一度言っておくけど,この時点でT市を出ると第3部への出場権はなくなるからね?
伊織:いいです。「健全なボンボン」作戦も失敗したことだし,仕切り直しします(泣)。
GM:(苦笑)では,松山さんちだ。あかりちゃんが,「伊織クン? 一体どうしたの?」と訊いてきますが。
伊織:何も言わずに手ェ引っ張って家から連れ出す。
一同:おおっ!?
伊織:(無視)来るんだ。
GM/あかり:「えっ? な,何? 何なの?」
伊織:いいから来い。
GM/あかり:「ちょっと何? 説明してよ!」
伊織:いいから来いっつってんだよ! ここで死にたいのか!
GM:お,おいおい(笑)。
雨追:(横から)ん〜ん伊織ちゃ〜ん,ダメだよ女のコを乱暴に扱っちゃ〜。ほぉら,パパがヘリを用意したよ〜?
綾:だからそのお父さんはもういいってのに……。
伊織:あかりを連れて乗り込む。
GM:ちょっと待てやっ!?(一同爆笑)
伊織:(毅然と)よし,出せ!
GM:出せ,じゃねー!(笑)
雨追:伊織さんかっこいー!(笑)
伊織:真面目な話,俺はヘリで脱出しますよ?
GM:(いったい,どの程度金持ちなんだろう……)それはいいが,あかりちゃんが「でもでも,お父さんやお姉ちゃんやひかりはどうするの?」
伊織:あん? 家族? そんなの,全員こっちで面倒みますよ。
GM/あかり:「でも,兄貴やお義姉ちゃんは?」
伊織:「明日香さんは動かせないんだろ? じゃあおいてく」(一同再度爆笑)
光:おまえなあっ!
伊織:はーっ,せいせいした!
綾:伊織……おまえってヤツは……(笑)。
GM:そりゃ,光は連れて行かれるとこっちも困るんだがね……(笑)。では,伊織はあかりちゃんと松山さんご一家とともにT市を脱出したと。そんなところでいいですか?
伊織:OKです。
GM:では次,綾だ。大谷が再度,どうする,と訊いてくるが。
綾:……あなたがたは?
GM/真:「俺たちは残る。まだ大事な仕事がある」
綾:それは,霧谷さんが発案したという例の新組織のことですか?
GM/真:「……霧谷さんがそこまで話したのか?」
綾:いえ……相模原さんから訊きました。彼女も残るんですか?
GM/真:「相模原さんと,あともう1人の実家(←注:新条家のこと)が新組織のスポンサーなんだ。彼女も重要なメンバーだ。残ってもらうことになるな」
綾:そうですか……。
GM/真:「元々はUGNの内部分裂に備えて,なるべく自由に動ける組織を作るつもりだったんだが……まさか,こうなるとはな」
綾:……そこに雇ってもらうわけにはいきませんか。
GM/真:「本気か?」
綾:元々UGNのイリーガルとして雇ってもらうつもりでしたからね。それに……。
GM/真:「それに?」
綾:それに……ここで出てくと第3部に出られませんし……(笑)。
一同:それを言うなそれを(笑)。
伊織:(横から)大丈夫だ,安心しろ。15年も経てば,俺が日下コンツェルンの総帥になってる。
一同:ええっ!?(爆笑)
GM:何が「安心」なんだよそれ?(笑)
伊織:任せろ,物資ならバンバン送ってやる。
GM:封鎖されてるってばよ。
伊織:裏ルートぐらいいくらでも用意してやる!
綾:伊織……それ,喜んでいいのかどうか……(笑)。

 

SCENE 25


GM:最後。光のエンディング。
光:はーい。
GM:なのだが。もはやラブコメは見たくないので省くことにしよう。
光:なぬをー!(笑)
伊織:いえ,正しい判断です。
光:病院の外は大騒ぎなんでしょ!? だいいち,子供が生まれるってのにいちいちラブコメしませんよ!
GM:まあそれは冗談として,光のエンディングでやることはひとつだけだ。17日の午前1時,T市は封鎖。6時から雨追が見た通り,米軍による空爆が始まる。気化爆弾降ってきます。
綾:やっぱりなー!
伊織:何で気化爆弾!?
綾:ウィルスを効果的に殺すためっしょ。
光:それ,死人でちゃうんじゃない?
GM:そりゃ出るさ。最低でも1000人は死ぬな。それでもレネゲイド・ウィルス感染者が市外に出るよりいい,と判断されるわけやね。
光:…………。
GM:もちろん,明日香の入院してる病院あたりには落ちないんだろうけど。とにかくぼろぼろになった病院で,光は必死に明日香を見守っている。必死に分娩にあたっている医者と看護婦がいる。やがて静けさを取り戻した街に,赤ん坊の泣き声が響き渡るわけだ。……では,そんなところで今回のシナリオは終了します。次回,第3部をお楽しみください。というわけでお疲れ様さまでした。
一同:お疲れ様でしたー!

 

SCENE 26


 200×年5月16日23時00分。
 岩原都知事が在日米軍に災害派遣要請。米軍出動。
 200×年5月17日01時00分。
 陸上防衛隊所属特別犯罪鎮圧特化部隊,通称ストレンジャーズがT市包囲を開始。
 200×年5月17日06時15分。
 米軍による空爆が開始される。

 画面の中,美しい火花が舞っている。
 昨日までは誰も想像すらしなかった光景。その向こうには彼のよく知る街があった。
「……1ヶ月前,ストレンジャーズは新型の対オーヴァード兵器を導入」
 彼はテレビの前で頬杖をつき,言った。
「あれって気化爆弾の一種ですよね」
「…………」
「いくらぐらいするもんなんですか? ま,繁盛なさってて結構なことです」
「…………」
「……何人死んだかな」
 男は黙ってリモコンでテレビを消し,立ちあがった。彼はその後姿を見送っていたが,ノブに手がかかったところでぽつりと言った。
「ひとつ伺ってもよろしいですか,ミスター・ライト?」
「何かね?」
「あなたは『人間』をどのように考えておいでで?」
「私は人間をどうとも思わない。何故なら,私も人間だから」
 振りかえった男は,初めて幽かに笑ったようだった。
「人間について他人より多少多くのことを知っていればいい。それで商売ができる」
「…………」
「だが,君はどうかな?」
 黒いコートを着た男は黙ったまま座っていた。閉ざされたドアを見つめる黒い瞳が,遠くの炎を映したように,仄かな燐光を帯びている。


 200×年5月20日08時12分。
 ストレンジャーズによる包囲網の完成。
 魔の都市――デモンズシティの出現である。


 

“Intermission//Degradation Rites,” End. And see you next age...

 ※末筆になりますが,今回のシナリオ作成にあたっては,「私立経済学園」の霞様に全面的なご協力をいただきました。改めて御礼申し上げます。