#Intermission//Degradation Rites
 

 

PRE-PLAY


GM:はい,ではお待たせしました。謎の番外編をはじめたいと思います。前回から3年後のお話ね。
雨追:は,すると私は20歳になっておるわけですか。
GM:そうそう。旧キャラにとっては最後の出演機会かな。
光:俺は次回から「娘」になるし。
GM:そうそう。今回は,その娘が生まれるあたりのお話。
一同:おおー。
GM:旧キャラ陣からは光と雨追。でもって,新キャラのおふたり,作り終わった?
綾:俺は最初から作ってきてます。えーと,瀞南寺綾です。実はイイトコの坊ちゃんなんだけど,学生結婚でカケオチて,今は貧乏です。しかもすでに双子の子供がいるし。
GM:……20歳だろ?
綾:いたっていいでしょ?
光:それを言うなら俺だって20歳でお父さんだし。
GM:よく考えてみりゃ,泪もそうだったな……。
雨追:いやぁ,みなさん幸せそうで。
GM:幸せとは限らないと思うけどな……ところで,もうひとりは?
伊織:だいたい終わってます。名前は日下伊織。19歳です。ちなみに,ここもイイトコのぼんぼんという設定。えーと,ロイスが「親友」と,あと1人決まってないんですが……。
GM:突然だけど,彼女いらない?
伊織:……はっ?
GM:だから,彼女。名前は松山あかりちゃん。
伊織:……松山?
光:(にこにこ)俺,実は姉が1人に妹が2人いるのよ。あかりは上の方の妹ね。
伊織:いや,そうじゃなくて……何で俺が光の妹彼女にせなならんのですか。
GM:んー,伊織と光でロイス結ぼうと思ったんだけどさ。接点が思いつかなくってさ。
光:いいじゃん。俺の妹美人だぞ。気立てもいいぞ。
伊織:そういう問題じゃないっす。てゆーかね,マスター。
GM:ん?
伊織:その本から俺の彼女選ぶのはやめてくださいね!
一同:(爆笑)

 「その本」とは,別卓のプレイヤーが持ってきてくれた「Newtype HEROINES 161」である(月刊「ニュータイプ」9月号付録)。
 どーゆー本かは説明しにくいなぁ。
 つまりは,

GM:(読みながら)あ,幼なじみもいいなぁ。「毎朝起こしに来てくれたり,両親がいない日に夕飯をつくりにきてくれたり,いつまでもちゃん付けで呼ばれたり」だって。
伊織:よくない。

 ……そーゆー本だということで(説明になってない)。

 

SCENE 1


 黒いコートを着た男は,黙って卓上の資料を見つめた。
 瞳にはあからさまな倦怠感が漂っている。馬鹿げている。そう思わずにはいられなかった。煩雑な表,グラフ,関数,わかりにくい専門用語。天文学的すぎてこれっぽっちも実感のわかない数字。
 目の前の中年男はにこりともせず,「そのへんはどうでもいい。結論だけ見てくれれば」などと言う。
「それで,私にどうしろとおっしゃるんです」
「何も」
「何も?」
「我々が君に要求するのは,何もしないでいてくれること。我々の邪魔をしないでいてくれることだ」
「邪魔?」
 彼はいささかわざとらしく,深いため息をついた。
「邪魔,ねえ……」
「返事をきかせてもらっていいかね?」
 男の日本語は流暢だった。
 年の3分の1は日本で過ごしている,私は日本が好きなのだ。男はそう言うが,日本が好きなのか,日本政府が大事なお得意さまだから好きなのか,そこは微妙なところだと思う。もっとも,彼の「お得意さま」は世界各国どこにでもいる。恐らくはファルスハーツ。恐らくはUGN。
「邪魔なんかしませんよ」
 彼はぽつりと言った。
「何でまたそんなことを?」
「ふむ……」
 男はあごに手をあて,数瞬,考え込むそぶりをした。
「そう改めて訊かれると返答に困るな。……君の感想を聞いてみたかったというのが正直なところかな」
「感想。感想ね」
「純粋な興味だね。君が『人間』というものをどういうふうに捉えているか」
 陳腐な質問だ,と彼は思った。
 そこで彼は,目の前の白人男が喜びそうな応えを返すことにした。
「たぶん,『人間』とはもっとずっと悪辣なんでしょうね。私が考えていた以上に」
 男が喜んだかどうかは,よくわからなかった。

 

SCENE 2


GM:では,今回のお話は5月11日午後3時から始まります。
光:何故に11日?
GM:別に何日でもいいんだけど,今回は「タイムテーブルありのシナリオよ〜」ということをさり気に示したいというかなんと言うか。
綾:全然さり気じゃないような……。
GM:それはそうと,綾さんです。
綾:はい?
GM:綾さんは,色々なところでバイトしてますよね?
綾:お金ないんです。カケオチ中なので。
GM:高級ホテルのベルボーイとか,できそう?
綾:それはバイトにやらせるようなもんではないような気はするが,やれるもんならやってみたいですね。
GM:ではそゆことで。突然ですが,あなたはバイト中,怪しい4人組に出会います。
綾:ほぉ?
GM:4人のうち3人は外人です。残る1人は日本人ですが,何故かぐったりしておりまして,黒服を来た外人さん2人に両脇から抱えられるようにして歩いています。
雨追:それは連行だと思うんですが……。
GM:傍から見ているとそんな風にも見えますが,実際はどうかわかりませんよ。残る1人の外人さんは砂色のスーツを着た恰幅のいい男性で,一行の先頭を歩いています。で,あなたの前を通りすぎて行くのですが,さあどうする。
綾:え? では「失礼ですが,お連れ様はご気分でも悪いのでしょうか?」と声をかけてみます。
GM:すると先頭の男の人が,「いや,気にしないでくれたまえ」と流暢な日本語で答えます。「彼にはちょっと持病があってね。でも,これから私の知り合いの医者のところに行くので,心配はいらない。君,できれば車を呼んでくれないか」
綾:……は。それは……素直にタクシーを呼ぶしかないです。一応,当ホテルにも医務室はございますが……とか言ってみますが?
GM/男:「いや,その医者というのは私の友人でね。気を遣ってくれるのはありがたいが」
綾:…………。はい。では,ただいまお車をお回しいたしますので。
GM:男は「ありがとう」と行ってしまう。他にすることは?
綾:一介のバイトくんにどうしろと。
GM:では,ここでシーンを変えます。ちなみにその日本人さんの顔は覚えておいてくださいね。だいたい30代の男の人です。

 

SCENE 3


GM:伊織さんのシーンです。ちなみに2日とびまして,本日は5月13日。
伊織:……そんないかにも「ドゥームズデイに向けて着々と時計が進んでいまーす」みたいな……。
GM:(にやにや)ところで時刻は午後11時。場所は路地裏。
伊織:俺はそんなところで何をしてるんだ?
GM:そんなの何でもいいよ。
伊織:じゃあ家に向かって歩いているんだろう。何や知らんが。
GM:では何や知らんが家に向かって歩いている,ところで,あなたは誰かがワーディングを使ったのに気付いたな。さらに,どこからともなく悲鳴らしきものが聞こえてくる。
伊織:何や知らんがとりあえずあたりを見まわして,悲鳴の聞こえた方に走っていく。
GM:あ,そう。それじゃスーツを着た初老の男が血塗れになって倒れているところに出くわすね。その周りを黒い服を着て微妙に顔を隠した男だか女だかが3人,さらに銃弾を撃ちこもうとしているところだ。
伊織:(妙に高い声で)君たち何してるんだ!
一同:…………(←イヤな沈黙)。
伊織:何故黙る。
GM:笑って欲しいか?
伊織:……うるさいな! 一応,今回は健全なボンボンという設定なんだよ!
光:……「健全なボンボン」……?
雨追:いえ失礼。ただちょっと頭上を赤トンボが通りぬけていったような。
GM:……えー,ちなみに黒服たちは問答無用で銃口を君に向けてくるが? で,「このことを誰にも言わないというなら,見逃してやるが?」と。
伊織:(妙に高い声)そんなことできるわけないだろう! 今,目の前で人が血を流して苦しんでいるのに!
GM:…………。いや……だから……えーと,問答無用で戦闘入っちゃっていいということっすか?
伊織:(高い声)俺はその人を見捨てるわけにはいかない! そうくるなら相手になるぞ!
GM:…………。
光:(ぼそっと)「健全なボンボン」って,具体的になんなんだろう。

 私にはわからない。
 とりあえず,その甲高い声は何かが違うと思うぞ(音声をお聞かせできなくて残念です)。
 さて,戦闘なのだが,結論からいうと相手はトループだったのだね。
 伊織君の剣の一振りで3人吹っ飛び,戦闘終了。

GM:うーむ,あっけなや。
伊織:これって殺しちゃったんですか?
GM:いや,ジャームではないので気絶でしょう(←アバウト)。覆面はがしてみます?
伊織:それよりも男の人が心配です。(高い声)大丈夫ですか! しっかりしてください!
GM:(だからその声はやめてくれ……)あんまり大丈夫ではなさそうです。もう瀕死ですね……虫の息で「君は……オーヴァードか……」と呟きます。
伊織:え?
GM:男は胸に抱いていた血塗れの封筒をあなたに差し出してきます。「これを……霧谷という男に……」
伊織:霧谷? その人に渡せばいいんですか?
GM/初老の男:「そうだ……どうか……」
伊織:わかりました。けど,その人はどこに?
GM/初老の男:「U……GN……中に……地図が……」そこまで言って男は息絶えます。
伊織:あっ……。
GM:男は何発か弾をくらって死んでいるようです。
伊織:とりあえず警察に連絡しましょう。
GM:はあ。
伊織:こんな危ない犯罪者を放ってはおけません!
GM:……(やっぱり何か違う気が……)では,ピーポーピーポー♪と警察がやってきます。その前に,何かやることは?
伊織:やること?
光:逃げる(笑)。
伊織:何言ってんですか。善良な市民としては警察に協力せないかんでしょう!
GM:あー,ちなみに渡された茶封筒はA4サイズ。何か書類が入っているようですね。これはどうする?
伊織:うーん……私はあくまで被害者なので,そんなに厳しく取り調べはされないと思うのですが。
綾:……被害者?(笑)
雨追:でも血塗れの封筒,というのはあからさまに証拠物件っぽくないですか?
伊織:ならばこれだけは隠しておきましょう。
GM:では警察が来て事情徴収されます。「いったい何があったんですか?」
伊織:えーと,悲鳴が聞こえたので様子を見に来たら,彼らがこの人を襲っていたんです。
GM/警官:「ほほう……で,あなたは?」
伊織:この人を助けようとした通りすがりの者です。
GM/警官:「それはご協力ありがとうございます!」……って,それでいいのか警察ー!(笑)
雨追:まぁまぁ。ここでモメられても話が進みませんし。
綾:でも銃もった人間を3人向こうにまわして無事な人って……。
伊織:ええ,何とか不意をついてやっつけることができたんですけど。
一同:おい(笑)。
伊織:(構わず)でもこの人を死なせてしまいました……。
GM/警官:「いえ,それはあなたのせいではありませんよ。申し訳ありませんが,署でお話を聞かせていただけますか」
伊織:ええ……。
GM:するってーと,そこへ幼なじみのあかりちゃんがやってくる。(カワイイ声で)大丈夫なの,伊織クン?
一同:「伊織クン」?(笑)
伊織:…………。ちょっと待ってください。
GM:何?
伊織:幼なじみ,ですよね。
GM:そうだよ。
伊織:夜の11時ですよ? 何でわざわざ隣の子が来るんですか。
GM:それは幼なじみだから。
伊織:理由になっとらんわっ!
GM:何を言う。幼なじみは毎朝キミを起こしに来て,ついでにお弁当を2人ぶん作ってくるくらい勤勉なのだ。
一同:(爆笑)
GM:(カワイイ声で)「もぉ,いつまで寝てるんだよッ! 早く起きないと遅刻しちゃうゾ?」とか。
伊織:イヤだ。そんな幼なじみは絶対にイヤだ!
GM:わかったよ。じゃあとりあえずこの場はあかりちゃんは来なかった。あなたは任意同行。OK?
伊織:……「この場は」?
GM:ではシーン変えまーす。

 

SCENE 4


GM:では次の日。14日の10時くらい。雨追のシーンです。
雨追:はっ。
GM:君は例によって例のごとく,外国にトバされていたのだが……。
雨追:またでありますかー!(笑)
GM:今度はトルクメニスタンにしよう。ニヤ○フ氏とお友達にでもなっててくれ(笑)。そんなわけで君は久しぶりに日本に帰ってきたんだけど。
雨追:なるほど。まずは相模原さんや霧谷さんに挨拶したいところですな。
GM:では,UGN日本支部です。……どうやら,かなり人が少ない気がします。んでもって,あなたが周りを見まわしていると,泪がいますね。
雨追:あっ,お久しぶりです相模原さん。お元気ですか?
GM/泪:「あ……雨追さん,帰ってらしたんですか」
雨追:はっ,雨追永,ただいま帰還いたしました。相模原さんもお変わりないようで何よりです。
GM/泪:「ええ,まぁ……」
伊織:(ぼそっと)でも,実は妊娠5ヶ月だったりするんだよなー。
一同:(寒い笑い)

 実はそういう設定なのだ。
 何故そうなるかは……第3部で。
 てゆーか,本当に続くのかよー?(←無責任)

雨追:……相模原さん,ご結婚されたので?
GM:してないよ。妊娠したことも周囲にバラしてないよ。だからツッコんじゃダメだよ。
伊織:5ヶ月ってバレません?
GM:服によると思う。
綾:結構隠せたりするもんですよ。
光:ピチピチの服とか着られるとツライけど,泪ちゃんって元々お嬢様ルックだから。ワンピとか着てればOK。
GM:はい,そういうわけで気付いちゃダメだよ,雨追くん?
雨追:はっ,ではこれっぽっちも気付きません(←素直)。お元気そうで何よりです。はい。
GM/泪:「えーと……雨追さんもお元気そうですね」
雨追:は,おかげさまをもちまして。ところで相模原さん,何だか人数が少ないようですが?
GM/泪:「あー,それはですね,仙台の方で結構大きい事件があったんですよ。ファルスハーツがらみの。大谷さんとか,紫音さんとか,皆さんそちらへ出てらっしゃるんで」
雨追:そうですか。それじゃ,霧谷さんも仙台へ?
GM/泪:「いえ……」(と首をかしげる)
雨追:? どうかなさいました?
GM:そうしていると,後ろから40歳くらいの冴えないおっさんが近づいてきます。この人は上月さんといいまして,UGN日本支部の,ま,役員さんですな。
雨追:偉い人なのですね。
GM:泪ちゃんより偉い。あなたより全然偉い(笑)。
雨追:(←直立不動)はっ,雨追永,ただいま戻りました!
GM/上月:「あー,雨追くんか。遠くまで大変だったね。……ひょっとして,霧谷さんを探しているのかい?」
雨追:は,やはり報告もありますし。
GM/上月:「うーん,困ったなぁ。霧谷さんね,一昨日から休暇をとってるよ」
雨追:休暇,でありますか?
GM/上月:「うーん,いきなりそういう電話があったからさー。こっちも困ってるんだよね。何? 何か用事があるんだったら,戻り次第連絡つけるけど」
雨追:いえ,急ぎの用ではありませんので,またこちらからご挨拶に伺います。
GM/上月:「そっか。じゃあしばらくはキミも休暇ということで,指示があるまでゆっくりしててよ」
雨追:は,ありがとうございます。
GM/上月:「ところでホテルとか予約してる?」
雨追:はあ? あ,考えてませんでしたな。私,住居とかどうなってます?
GM:ないよ,そんなん。
雨追:そうなんですか?
GM:常に日本にいる大谷にさえなかなか支給されなかったものが,滅多に日本にいないアナタに支給されるわけがない。
一同:(笑)
雨追:うーむ,相変わらずハードですな。
GM/泪:「雨追さん,だったらウチにきます?」
雨追:はっ!? え,いや,だって,ソレってマズイんじゃないですか?
GM/泪:「あー,構いません構いません。ウチってほとんど合宿所みたいなものですし」
雨追:ええ!?(笑)
光:相模原,おまえもつくづく相変わらずだな。
伊織:ダンナはどうすんですか,ダンナは!(笑)
GM:だから結婚してないって。だいたい,楓ってあの後生きてるか死んだかまだ決まってないんだよ。
一同:ひでえ!(爆笑)

 ……いや,本当にそうなのだ。
 たぶんそれは次のGMであるみうりぃ氏が決めてくださるであろう(←本気で無責任)。

綾:(苦笑)いや,しかし,結婚してるとかしてないとかそういう問題じゃないような……。
GM:いやほら,だって雨追だし?
綾:(ちらっと雨追を見て)……なるほど。大丈夫か。
光:どっちかってーと,番犬の扱いなんじゃん? ドーベルマンみたいに。
伊織:もしダンナにバレたとしても,雨追ならば波風はたたない,と。
雨追:……私って,一体何なんでしょう(泣)。
GM:では,雨追は泪ちゃん家に泊まるということで,シーン変えます。

 

SCENE 5


GM:はい,お待たせしました。そこのラブコメアン,どうぞ。
光:はーい,ラブコメアンでーす。
一同:(爆笑)
伊織:受け入れるのか!? その呼び名を受け入れるのか!?
光:(の,プレイヤー)だってしばらく参加しないでいるうちに,そういうことになっちゃってるらしいし。
GM:ははは(←コイツのせいである)。
光:だったらまぁ,徹底的にラブコメ路線でいってみようかと。
伊織:いいんかい,それで。
光:別にいい。だって,新婚さんだし♪
雨追:そうだったんですか?
GM:そう。しかもここんち,臨月なんだよね。
光:そう。もうじき,お父さんになるし♪
伊織:……コイツ……。
綾:このラブコメアンめ。
GM:で,光って何の仕事してるんだっけ?
光:まだサッカー選手だったはずだと。
GM:じゃ,そういうことで。えーと,サッカーって5月ならオフシーズンだよね? しかももうじきに赤ちゃん生まれるし。
光:もぉ練習に身が入りませんな。
雨追:そこへパスが来たら?
GM/チームメイト:「光,いったぞ!」
光:え?
GM:がすうっ!!(と,ボールが顔面に命中した音)
光:はううううっ!(一同苦笑)
GM/チームメイト:「……おまえ,素直に病院につめてた方がいいんじゃないのか?」
光:(さわやかに)いや,大丈夫さ。
GM/チームメイト:「……いや,そんなうわの空で練習されても困るんだが……」
光:うん,でも何かあったら連絡くれるっていうし。
GM/チームメイト:「そうか?」
光:それに,予定日の2日まえから休暇とって病院に泊まり込むつもりだしさ!
一同:…………。
光:(やはりさわやかに)さあ,練習練習!
GM/チームメイト:「そっか……そうだな……」
光:がんばらなくちゃな! やっぱ,ほら,お父さんになるし?
GM:…………。
伊織:(冷たく)……いいね,周りが好意的な人間ばっかで。
GM:……えー,そんなこんなで休憩時間なんだが。
光:(いそいそ)さ,電話電話。
一同:…………。

 光プレイヤー,本気で開き直ったらしい。

GM/看護婦さん:「はい,○×病院ナースセンターです」
光:あ,松山と申しますが……。
GM/看護婦さん:「あら松山さん。毎日熱心ですね」
一同:(爆笑)
綾:毎日……。
雨追:毎日ですかい。
光:正確には毎日3回,朝昼晩。
伊織:単に病院の業務妨害じゃねーかよ!
GM/看護婦さん:「えーと,今奥様にかわりますね」(笑)
光:ええ,お願いします。
GM:(しばらく間をおいて)……もしもし,コウくん?
光:うん,オレ。明日香,具合はどう?
一同:…………。

 残りの3人,机に突っ伏す。

綾:……ぐ,ぐふぅっ(笑)。
雨追:涙がちょちょぎれちゃいますわな。
光:(聞いてない)ちゃんと食べてる? 気持ち悪くなったりしてないか?
GM/明日香:「うん,大丈夫だよ」
光:お腹の子供は元気そう?
GM/明日香:「うん,そう思うよ。……ねえコウくん,もう名前考えてくれてる?」
光:女の子なんだよな。「遙」にしようと思ってるんだ。
GM/明日香:「『松山遙』だね。……えへへ,いい名前だねっ」
光:え,そうかい?
GM/明日香:「ねえコウくん,予定日は練習休めるの?」
光:バカだな明日香。そんなの当たり前じゃないか?
GM/明日香:「ホントに? ……嬉しい」
光:俺,明日から練習休む。……ちゃんと側にいてやるよ,明日香。
GM/明日香:「コウくん,ボク……ね,手,握っててくれる?」
光:ああ,怖いことなんか何もない。俺がいるよ。
一同:…………。

 ……以下,この手の会話が続くこと数分。

伊織:……てめーら……。こっちがツッコむまでやめねー気だな!?
光:えー。何のことかなー?(笑)
雨追:あー。……何と言うか,暑いですな?
綾:寒いよ。寒いって(笑)。
光:(構わず)ずっと側にいる。約束するよ。
GM/明日香:「コウくん……」
伊織:(の,プレイヤー)俺,トイレ行ってくるわ。

 一同爆笑。
 そして本当に部屋をよろめき出て行くプレイヤー氏。
 どうやら傷は深かったらしい(笑)。
 
GM:……えー,まぁ負傷者も出たことですし,ラブコメーズはこのへんにしましょう。
光:じゃあ練習に戻るけど。
GM:うん。……しかし,よく考えてみると,光って他にすることなかったりするんだよね。
綾&雨追:おい!(笑)
GM:ははは。じゃあシーン変えるまでにひとつだけ。あなたがグラウンドに戻ってくると,黄色いヘルメットをかぶった工事現場のカントク風なおっさんが挨拶に来ています。ヘルメットには「塚原設備」と書いてありますね。
光:?
GM/工事現場のおっちゃん:「あー,すいません。明日の昼からここいらの道路補修工事をするんです。ちょっとうるさいかも知れませんが,ご了承ください」
光:あ,わざわざすいません。工事って,いつごろまでやってるんですか?
GM/工事現場のおっちゃん:「えーと,明日明後日で終わる予定ですが」
光:あ,わかりました。
GM/工事現場のおっちゃん:「では,よろしくお願いします」
光:はいはい。
GM:…………。
光:…………。
綾:(忍耐強く)……で?
GM:え? いや,だから,光はこの会話をすること以外,このシーンではすることないんだけど……。
綾:単にラブコメ見せつけただけかいッ!(笑)
雨追:……皆さん,お幸せなようでうらやましいですな。
GM:と,オチがついたところでシーン変えさせていただきます(笑)。

 

SCENE 6


GM:では,次のシーンはお父さん(←綾のこと)ですな。時刻はまだ,14日の昼前です。
綾:……さっきのでかなりHP吸い取られたんですが(笑)。
GM:でも働かなきゃ暮らしていけませんよね。
綾:(ため息)ふう……ホテルだけだと,ちょっとツライし,またバイト探さなきゃな……。
GM:ええ。そこでなんですけど。あなたは,雨追からUGNのことについて聞いたことがあったんですよ。
綾:そうなんですか?
GM:そう。んで,雨追からUGイリーガルとして推薦するって話が前にあったのね。でも雨追は滅多に日本にいないから……。
綾:ナシのつぶてだったわけですね(笑)。
GM:ところで,そんなあたりであなたは雨追くんが帰国しているという話を聞いたんですよ。ここはお仕事発見!のチャンスでわ?
綾:(ため息)それ何か違うし……だいたい,UGNってずいぶん資金ぐりに困ってるって話ですけど。
伊織:(←プレイヤーが戻ってきた)俺はさ,危険手当以外の基本給が安いんだと思ってたんだよ。そしたら本当に安いんだもんな。大谷のボーナスとか。
GM:5000円とか? あれは霧谷さんの冗談。つーか,大谷いぢめ(笑)。
伊織:そうなの?
GM:そうだよ。だって泪はちゃんと貰ってるもん。紫音にもちゃんと出てるよ。
光:イリーガルの俺にもちゃんと出てるもん(笑)。
GM:貰ってないのは大谷だけ。
伊織:本気でただのいぢめじゃねーか!(笑)
真:(隣の卓から)……今,何か言いませんでしたか?
GM:……えー? 何でもないよぅ?
真:…………(←疑いのまなざし)。
GM:(しらじらしく)で,どうする?
綾:凄まじい不安感が胸をよぎるんですけど(笑)。でも,今はなりふり構ってられないしな。あくまでそれも選択肢のひとつということで,電話してみます。
GM:はい,では雨追くん,登場してください。あなたはあの後まっすぐ泪ちゃん家に行って,今はお昼ご飯ですな。
雨追:……ホントに,ダンナはいないんでしょうな?
GM:だから,いないって(笑)。
雨追:では,ありがたくご飯をいただきますです。いやあ,こんなマトモなご飯をいただいたのは久しぶりですな!(一同笑)
GM/泪:「……普通のご飯なんですけど」
雨追:いえっ,たいっへんおいしいです!
GM/泪:「……雨追さん……失礼ですけど,今まで何食べてらっしゃったんです?」
雨追:は,何と言われましても……ネズミですとか,ヘビですとか。
光:どこの国のだよ(笑)。
雨追:ちなみにヘビの肉は美味しいんですぞ。
GM/泪:「……ネズミは?」
雨追:サソリよりはマシかと。調理法をお教えいたしましょうか。
GM/泪:「いえ,結構です」 さて,そんなところで電話がなります。
雨追:あ,ちょっと失礼いたします。……はい,雨追ですが。
綾:あ,雨追さん? 瀞南寺ですが。
雨追:おお,お久しぶりですな。今日は何のご用で?
綾:えーと,以前にUGNの仕事を都合していただけるとお話があったと思うんですけど。実は先日子供が生まれまして,色々と物入りなので。
雨追:おお,それはおめでとうございます。ではすぐに上司に問い合わせてみますので,お待ち下さい。(受話器を抑えて)えーと,相模原さん。
GM/泪:「はい?」
雨追:私の知り合いで,瀞南寺という者がUGNで働きたいと言っているんですけども。
GM/泪:「……あー,その名前,聞いたことありますよ。雨追さんが霧谷さんに紹介した人ですよね」
雨追:ああ,そういえばそうですね。
GM/泪:「いや,そうですね,じゃなくて……今霧谷さんがいらっしゃいませんし,私が直接お会いしてお話を伺いたいんですが」
雨追:は,よろしくお願いします,と言って電話を相模原さんに渡します。
綾:……もしもし?
GM/泪:「あ,瀞南寺さんですか? 私,UGNの相模原と申します。お仕事の件,今雨追から伺いました。つきましては,一度直接お会いしたいと思うんですが,今日ご都合はいかがですか?」
綾:あ,今日ならいつでも結構ですよ。
GM:それでは,今日の3時に喫茶店『コスタ・デル・ソル』,ということで。他にすることがなければシーンを変えますが?