SCENE 21


GM:では次のシーン……咲耶榎,じゃなくてキルスティンか。
キルスティン:結局あたしも歩ちゃんのところに行くのかな?
GM:んにゃ? どうして?
キルスティン:だって千葉って,歩ちゃんのところに行っちゃったんでしょ?
紫音:「約束は破らない」人じゃなかったの千葉は。
GM:破らないよ。てゆーかそこまで非道なことはしませんので安心してください(笑)。えーと,大谷とか紫音とかが久島たちの始末でごたごたしてる時です。あなたがふと顔を上げると,遠くに背の高い,黒いコートの男が立っている。
キルスティン:…………。
GM:ちなみにまだ,紫音と大谷は気付いてない。どうする? 何も言わずに行く?
キルスティン:…………。
GM:大丈夫。ここで殺されるようなことはないから。
キルスティン:当たり前だー!
一同:(笑)
キルスティン:どーしよーかなぁ……2人きりで話をするなら,ここで行かなきゃダメだよね。
GM:当然だね。
キルスティン:じゃあ黙って駆け出す。
真:俺らは……。
GM:ぶー。マスター特権だよーん♪
真:……ですな。
GM:ちなみに千葉がいるのはライトアップされた観覧車の下あたり。手には赤い薔薇の花束を持っていたりして。
紫音:ん? てゆーかその薔薇,どっから出した?
真:まさか血で作ってたりしないだろうな。
咲耶榎:ちなみに千葉さん,ブラム=ストーカーがはいってるっぽいですよね。
GM:(にやにや)
キルスティン:…………。とりあえず,黙って受け取る。
GM/千葉:「それで? 結論は出ましたか? 見たところ,アレは使わなかったようだが……」
キルスティン:ねえ,正直に答えてくれる?
GM/千葉:「(にっこり)正直に答えられる事なら,正直にお答えしますよ」
キルスティン:……叔父さんは,もう消えちゃったの?
GM/千葉:「いいえ。まだ,ここにいますよ」
キルスティン:叔父さんを取り戻す方法はあるの?
GM/千葉:「ありますよ」
キルスティン:それは,何?
GM/千葉:「その前に私から聞いてもいいですか?」
キルスティン:何?
GM/千葉:「私はすごく疑問だったんだが……何故あなたはユージンを助けようとするんです?」
キルスティン:それは……だって,叔父さんだもん。
GM/千葉:「単に肉親だから? 今まで会ったこともないのに? 彼はあなたのことなど,知りもしないのに?」
キルスティン:…………。
GM/千葉:「……ちなみにあなた,ユージンを取り戻す方法,何か思いつきました?」
キルスティン:…………。
GM/千葉:「まさか,それを私に訊こうと思ってたんじゃないでしょうね? ユージンが元に戻るということは,私がこの世から消えるということですよ」
キルスティン:…………。
真:(ぼそぼそ)あ,これは……。
紫音:(ぼそぼそ)思ってたっぽい……。
キルスティン:……その方法がどうしてもわからないから,あなたに訊くしかなかったんじゃない! バカっ!
一同:お,おいおい(笑)。
GM/千葉:「……あのぉ,それ逆ギレっていいません?」(笑)
キルスティン:じゃあ何でママを殺したの?
GM/千葉:「え?」
キルスティン:何でママを殺したのよ! あたしが一人になっちゃったの,あんたのせいじゃない! だったらせめて,叔父さんをあたしに返してよ!
GM/千葉:「キルスさん,言ってることが無茶苦茶ですよ」
キルスティン:無茶苦茶でもいいわよ! 全部あんたが悪いのは確かじゃない!
GM/千葉:「……ユージンのせいですよ」
キルスティン:どうして叔父さんのせいなのよ!
GM/千葉:「アンナさんさえいれば,ユージンはまた『生きようと』するからです」
キルスティン:どういう意味?
GM/千葉:「言葉通りの意味です。ユージンにとって,アンナさんは全てですからね。彼女さえいればユージンは満足だ。逆に彼女がいない世界は,彼にとって何の意味もない。彼はいつものように生きることを放棄して,私にこの身体をあけわたして,そのうち消えてなくなりますよ。それが私の望みです」
キルスティン:ひどい。ひどいよ……。
GM/千葉:「ひどいものですか。ねえキルスさん,あなたはそうやって必死になってユージンを助けようとしてる。でもユージンにそれがわかると思ってるんですか? あの男はアンナさんしか見えないんですよ。あなたが彼にいかなる愛情を寄せようと,全て無駄なんです」
キルスティン:何であなたにそんなことがわかるのよ……。
GM/千葉:「わかりますよ。私はあの男のことなら何でもわかります」
キルスティン:じゃあ何? 元に戻しても,叔父さんは生きようとしないから無駄だって? そう言いたいの?
GM/千葉:「そうじゃない。もっと悪いんですよ。……あなたはアンナさんによく似ていますよね。性格はかなり違うみたいだけど」
キルスティン:悪かったわね。
GM/千葉:「別に悪いと言ってやしませんよ。顔が似てるのが問題だって言ってるんです。あなた,身代わりにされますよ」
キルスティン:身代わり……?
GM/千葉:「誓ってもいいですよ。ユージンはあなたのことをアンナさんだと思い込みます。何故なら,彼はそう思いたいんだから」
キルスティン:…………。でも,あなたの言う通り,あたしとママは全然違うわよ。
GM/千葉:「そうです。そして,それをユージンに悟らせちゃいけないんです。そうでなきゃ,あの男はまた自分の中に引っ込みますよ。そうしたらあなたはどうします? ユージンを助けるために,あなたはどうすればいいか,わかりますか?」
キルスティン:……つまり,私がママのフリをしなきゃいけないってこと? 『あたし』じゃなくて,ママじゃなきゃ叔父さんはダメだから……。
GM/千葉:「わかってるじゃありませんか。あなたは何でそれで平気なんです? わかりますか? あの男はそうやって,どうあっても『あなた』を見ようとしないんですよ? あなたはそれでもいいんですか?」
キルスティン:…………。いいよ。
GM/千葉:「何ですって?」
キルスティン:それで叔父さんが幸せなら,それでいいよ。
GM/千葉:「…………。呆れたな。それはあなた,“フィーヴァー・ドリーム”に感染するよりヒドイ話だ」
キルスティン:……あんたにはわかんないわよ。
GM/千葉:「わからないですね。……どうしてです? どうしてそこまでしたいんです?」
キルスティン:私は,パパをこの手で殺したんだよ。
GM/千葉:だから?
キルスティン:それにママのことも守れなかった。
GM/千葉:「アンナさんを殺したのは私ですよ」
キルスティン:そういうことじゃないよ! じゃあ私は何のために生きてるの!? どうして何にもできないの!? どうして何もしてあげられないの!?
GM/千葉:「…………」
キルスティン:パパも,ママも助けられなくて……それだったら……叔父さんくらい助けられてもいいじゃない。
GM:……う,うーむ……(と大谷と紫音を見る)。
真&紫音:…………。
GM:…………。えーと,ちょっとごめん,いっぺん切るね。マスターから言っておくと,一応ユージンが助かるエンディングは用意している。フラグさえたてば。
キルスティン:……だからぁ,全然思いつかないんですけどぉ……(泣)。
GM:うーん,ごめんね。それキルスのせいじゃないんだけどね……。
キルスティン:前半にマスターがここの2人(←紫音と大谷)と何かこそこそやってたじゃん。それが関係してると思うんだ。
GM:大正解。
キルスティン:そうなの?
GM:そうなの。そうなんだが……で,そこの2人,どう?
真:うーん……。
GM:タイミング的に,これが最後通牒。もし登場したいなら……。
紫音:俺にはユージンを助けるつもりはありませんので悪しからず。
真:うーん。そうだよな。俺にもないな。
キルスティン:そうなの!?(怒)
紫音:千葉はユージンの件に関しては嘘ついてないよな。そうなると……やっぱユージンの肩はもてんわな。
キルスティン:あ,あんたら……。
真:てゆーか,これじゃあんまり気の毒すぎるんだよ。
キルスティン:誰が?
真:おまえだ!
紫音:自覚ないんか……(笑)。
キルスティン:その気の毒なあたしを,何であんたらはいじめるわけ?
真&紫音:だから,いじめてるんじゃなくて……。
GM:はいはい,登場する気がないなら外野は黙るように(笑)。で,話を戻すとキルス,どーする?
キルスティン:……叔父さんはやっぱりこのまま消えちゃうんだよね。
GM:たぶんねぇ。
キルスティン:ねえ千葉さん,今だけでいいから,叔父さんに会わせてくれる?
GM/千葉:「残念ながら,私が任意にユージンを呼び出せるわけではないんです」
キルスティン:そっか。そうだよね。私,叔父さんに言いたいことがあったんだけどな。
GM/千葉:「言ってみたらどうです? ひょっとしたら聞いてるかもしれませんよ?」
キルスティン:は?
GM/千葉:「私の場合,ユージンが見聞きしたことは大抵記憶してます。ユージンがどうかは存じませんが……」
キルスティン:そ,そうなんだ。えーと……。
GM/千葉:「(にこにこ)『私』には言いにくいですか? 後ろ向いてましょうか?」
キルスティン:いい。あんたの顔さえ見なきゃいいんだもんね。
GM/千葉:「またヒドイことをおっしゃいますね。それで?」
キルスティン:うー……だからぁ……あ,あのさ,しばらくじっとしていてくれる?
GM/千葉:「目も閉じてましょうか?」
キルスティン:目は開けてて。
GM/千葉:「注文の多い人だなぁ」
キルスティン:うるさいな。えーと……では千葉の首に腕を回して,目をまっすぐ見つめながら……。
GM:…………。
キルスティン:…………。
GM:…………。早くやらんかい。

 キルスのプレイヤーもシリアスは苦手らしい。
 みんなそうかも……。

キルスティン:う……えー……私もママも……私たちはあなたを愛してるよ,と言います。
GM:……ほー。するとあなたの目の前で,千葉の髪と目の色がさあっと薄くなっていく。気がつくと,白人男性がぼんやりあなたを見つめていたりするんだが……。
キルスティン:…………。ユージン叔父さん?
GM:そのように見える。彼はぼんやりあなたを見つめているが,やがてうっすらと微笑んで言うんだ。「……アナベル姉さん?」と。
キルスティン:…………。
GM:さて,あなたは何と答える?
キルスティン:…………。そうよ,ユージン,と答える。
一同:…………。
GM:ほー。そう答えるか。
キルスティン:だってママだと思ってるならそう思ったまま死なせた方がいいじゃん。
GM:ほー。
キルスティン:(←気マズイ)えーと,それで叔父さんの額にキスする。
一同:ほー?
キルスティン:あー,ほら,キルスって外人さんだし,こういうのは日常的に。
GM:別にイイワケせんでもええわい。こっちは額にキスされる前に,キルスを抱きしめなおしてマウス・トゥ・マウスだから。
一同:おお!?
キルスティン:(焦って)あのぉ? 叔父と姪なんですけど? あ,向こうはママと思ってるから姉と弟か? あー,でもそれはそれでヘンじゃないか? マジでそういう感情だったんか!?
GM:誰がユージンだと言ったよ。
キルスティン:ええ!?
GM:その時にはユージンの髪って,すでに黒くなっていたりして……。
キルスティン:…………。
真:(ぼそっと)まさか……粘膜感染?
一同:マジか!?(爆笑)
キルスティン:ぎゃあああああ! 何すんだこいつー! 信じらんねえええっ!
GM:(慌てて)いや,そーゆーんじゃないから! てゆーかキスで粘膜感染とかないし! それだと経口感染だし!(←何言うとんのじゃ)
紫音:大丈夫大丈夫。……舌入れてなきゃ。
真:おい,こら!(笑)
キルスティン:ふぎゃああああああ!
GM:落ち着け! 感染させようとかそういうんじゃないから!(笑)
キルスティン:そういう問題じゃなーい! 何で私が千葉にキスされなあかんのだー!
GM:え? それはシチュエーション的にいいかな,と。ほら,ライトアップされた夜の遊園地でー,黒いコートの背の高い男の人とー,金髪の美少女でー,しかも薔薇の花束つきでー。
キルスティン:ふざけるなー! ファースト・キスなのにー!

 そうだったのか(笑)。

GM:……えー,話を元に戻します。千葉はあなたの肩をどん,と突き放して言う。「あなたは少々寛大すぎるんじゃないですかね」
キルスティン:何が寛大だー! ばかやろー!
GM:いやぁ,なんかひき逃げみたいで悪いんだけどー(笑),そこで千葉消えるんだわ。
キルスティン:はいい?
GM:一瞬皮肉げに笑ったかと思うと,その姿が崩れ去る。
咲耶榎:おや。
紫音:またやりやがったか。
キルスティン:……ニセモノ?
真:ニセモノというか,血の従者。
キルスティン:うー……これで終わりか,アイツ。
GM:終わりだねえ。
キルスティン:…………。結局バッドエンドじゃんか。
GM:(うーん,そういうわけでもないんだけど)
キルスティン:いいもん。では寂しげに立ちつくしていよう。
GM:(うーん……)ではここでシーンを変えます。

 

SCENE 22


GM:では咲耶榎のシーンだ。
咲耶榎:歩ちゃんとこに向かいます。
真:俺らはどうしてるだろ。久島と“カプリース”を確保して,松山と茶山さんを保護してもらって……。
紫音:そのへんは栄吉っちゃんにおしつけて,俺は早々に咲耶榎の後を追うぞ。
GM:歩ちゃんちに着くと,血の匂いがする。
一同:おや?
キルスティン:まさか歩ちゃんまで……。
GM:殺さん殺さん。
真:血の従者とかじゃなくて?
咲耶榎:あれって匂いするもんでしたっけ?
GM:違う違う。中に入ってみると,死体がいっぱい転がってるんだよ。
真:何の?
GM:顔は知らないけど,黒服さん。ファルスハーツのエージェントじゃないかな,っと。
真:……あー,しまった! 忘れてた!
咲耶榎:私もうっかりしてました。歩ちゃんもこっちでガードしなきゃいけなかったんですよね。
紫音:歩はファルスハーツの拉致対象から外れてると思ってたけどなあ。
GM:今回は結局千葉が助けたけど,歩ちゃんがファルスハーツにさらわれる可能性もありましたぜ。
咲耶榎:で,結局千葉が来てんですね?
GM:ざっと説明すると,歩ちゃんが呆然とソファに座ってて,千葉がその横に立ってる。その辺に死体が点々。
咲耶榎:ではその点々は無視して,千葉に声をかけます。彼女を連れて行くつもりですか?
GM/千葉:「…………。どうもこの状況では,そうせざるを得ないらしい」
咲耶榎:そうですか? 単にボディーガードが必要なら,UGNで面倒みてくれますよ。
GM/千葉:「ついさっきは私がいなければ危ないところだったんだが……」
咲耶榎:そーゆー問題じゃなくってですね。つまり,あなたは,もう決めてるんでしょう? 違うんですか?
GM/千葉:「うーん。あなたにはかなわないな」
キルスティン:(ぼそっと)少しは人間らしい心があったか。
真:人間らしい心を,学習してるんじゃないかね。
咲耶榎:まーそれはいいとして。これって「当て馬」っていうんですよ。ご存知ですか?
GM/千葉:「……殴られても文句は言えないとは思いますが……」
紫音:全くだ。ウチの妹は高いって言っただろう。
一同:(笑)
咲耶榎:だからおにーさまに値段つけられる覚えないんですけど?
紫音:(無視)とゆーわけで《プロフェット》で登場です。何か,話はまとまってるみたいだな?
咲耶榎:そうみたいです,と,言いたいところなんですが……。
紫音:ん?
咲耶榎:歩ちゃんはどうなんです? 歩ちゃんは,千葉さんについて行きたいの?
GM/歩:「…………。よく,わからない……」
咲耶榎:(ため息)そういうと思いました。
GM/歩:「……ごめんなさい」
咲耶榎:別に謝ることないですよ。私も行きますから。
一同:えっ!?
咲耶榎:だからさっきも言ったでしょ。歩ちゃんは千葉さんが何しよーと止めようとしないでしょうからね。
GM/千葉:「……本気ですか?」
咲耶榎:そっちから誘っておいて何言ってるんです? それとも何ですか? 私ホントにタダの当て馬で,このままついて来られたらお邪魔ですか?
GM/千葉:「いや,そんなことは全く……」
咲耶榎:別にあなたが何しようと好きにしてくれって感じはあるんですが,それで歩ちゃんが泣くのも嫌ですし。
GM/歩:「咲耶榎ちゃん……」
咲耶榎:あ,ちなみに千葉さん。私がついて行くのは歩ちゃんのためであってあなたのためではないのでそのつもりで。
GM/千葉:「それはわかってますが。……どっちにしろ役得のような気がしなくもない」(笑)
紫音:まったくだ。あれだけの金額じゃワリにあわないんじゃないかい?
真:まだ売るか!(笑)
咲耶榎:…………。まったくこの人わ。
GM:まだ払わせるの? ホントに?
紫音:ウチの妹はほんっっとに高いからなぁ。(書き書き)「千葉狂介,貸し点1」
一同:(爆笑)
GM:それは……さすがの千葉も「しまった」という顔をしている(笑)。
紫音:(すまして)ただこれだけは言っておくぞ。向こうでも同じことやるようなら,俺はどこまででも追いかけてくからな。
GM/千葉:「……期待して待ってましょ」
紫音:ではここで退場します。
GM:んーと,では千葉も席を外そうかね。
咲耶榎:外されても,私は特に歩ちゃんに言うことはないですが。
GM:そうですね。歩もここで何を言うという人でもないです。ただ静かに咲耶榎をだきしめて,細い声で「ありがとう……」というくらいですね。では,このシーンはここで終わりです。

 

SCENE 23


GM:えー……ではエンディングなんですが。
咲耶榎:私はエンディングいりません。さっきのシーンで終わりでしょう。
GM:なるほど。
真:あー,でもそう言われると俺もすることがないような気がする。
紫音:久島は?
真:久島のタイタスって昇華しちゃったんで。
咲耶榎:もう過去の男なんですよね。
GM:別に現在の男とのシーンを作ってあげてもいいけど?
真:…………。俺,最後まで言われ続けるわけですか!?
キルスティン:(聞いてない)そう言えば,私もママのタイタスそのまんまなんだけど。
GM:ああ,それは残しておいてください。
キルスティン:え!? どして!?
紫音:(さりげなく無視)そういえば俺もさっきでエンディング終わっちゃったようなもんだけど,ここで出てもいいの?
GM:いえ,大谷と紫音はここで出ていただかないと困ります。
真&紫音:なるほど。
GM:さて。……ところで,楓と泪にツッコミたい人はいるか!
一同:しーん(笑)。
真:俺は楓が逃げてなきゃOKなんですけど。
紫音:いや,逃げた可能性も大(笑)。
キルスティン:私は気になってるけどね。
GM:そうか,ま,どっちにしろシーン・プレイヤーはキルスだね。
キルスティン:そうなの!?
GM:そうなの。あ,そうだ。光と明日香に……。
一同:(いっせいに)結構です。
GM:あ,そう(笑)。それではUGNです。泪ちゃんが仕事してますが,機嫌悪そうですね。何かぶつぶつ言ってます。
キルスティン:(にこっと笑って)……どしたの,泪ちゃん?
GM/泪:「……何ですか,その笑いは」
キルスティン:え? 何ですかって,別に何でもないよ。別にいつもみたいにからかいに来たわけじゃないし。
GM/泪:「からかいに来たんでしょう!」(笑)
キルスティン:えー? 違うよー。今日は私真面目だよー。
真:いつもは真面目でないのは自覚してるわけか。
キルスティン:(にこにこ)それで? あの後どうした?
GM/泪:「(じろり)あの後って,何の後ですか」
キルスティン:えー。だからぁ。
GM/泪:「……つまり,また例によって見ていたわけなんですね? 私と楓が遊園地行って,観覧車とか乗って,私が楓にジュースかぶせたのとか,みーんな」
キルスティン:そこまで見てないんだけど。
一同:(笑)
GM/泪:「…………」
キルスティン:えー? ジュースぶっかけたの? 楓に? 何かあったの?
GM/泪:「楽しそうですね,キルスさん」
キルスティン:えー,そんなことないよぉ。心配なんだよぉ。あのバカ(←要強調)がちゃんと泪ちゃんのこと幸せにする気あんのかとか,特にさぁ。
GM/泪:「……それは無理だときっぱり言いましたが」
一同:ええ!?(笑)
真:言ったか!? そゆこと言ったか!? あのおバカわ!?
キルスティン:……それでジュースかけたの?
GM/泪:「…………」
キルスティン:泪ちゃん,あのさ。楓の病気のことって……。
GM/泪:「…………。聞きました」
キルスティン:あ,そう。言ったことは言ったのか。それで? だから泪ちゃんのこと幸せにできないって?
GM/泪:「……というか……」
キルスティン:え? 何?
GM/泪:「……それでもいいか,と言われたんですよ」
キルスティン:は?
GM/泪:「いや,だから……それまで側にいてもいいか,と……」
一同:(しばしの沈黙ののち,大爆笑)
キルスティン:ぎゃーはっはっはっは! バカだ! あいつバカだ!
GM/泪:「…………」
キルスティン:あはははははは! すっげえおかしい!
GM/泪:「笑わないでください! こっちは深刻なんですから!」
キルスティン:わはははははは! それで? それで泪ちゃんなんて答えたの?
GM/泪:「…………」
キルスティン:なーんーてーこーたーえーたーのーかーなー?(笑)
GM:そうすると泪は無言のまま立ちあがって,コーラの缶をしゃかしゃかしゃかっとやって,ぷしーっ!と(笑)。
キルスティン:あーれー! やったわねー! 同じくしゃかしゃかしゃかの,ぷしー!
咲耶榎:…………。あーあ。
紫音:……何をやってるんだ,何を……。
GM:するとそこへ楓が入ってきて,「……何をやってるんだ,おまえらは……」(笑)
キルスティン:あははははは! 楓,聞いたよ!? アンタってサイコー! サイコーにバカ!
GM/楓:「俺の何が馬鹿だ!」
キルスティン:だってバカじゃーん! やーい,バーカバーカ!(笑)
GM/楓:「…………」
真:(完全に頭を抱えている)楓がマジでキレる前に登場します。……キルス,桂子さんが呼んでるぞ。
キルスティン:あれ,何かな? ほんじゃね楓,あたし行くけど,いきなり泪ちゃん襲っちゃだめだよー?(笑)
GM/楓:「……とっとと行けッ!」
キルスティン:(大笑い)
真:おまえわ……(嘆息)。
紫音:それでは俺もそこで登場します。てゆーか,コーラまみれになって何やってるわけよ?
キルスティン:それが,泪ちゃんと楓がね(とまた笑い出す)。
GM:えーと,そこには桂子さんもいて,冷たい目であなたを見ます。「とにかく,まず着替えてらっしゃい。そんな格好では病室に入れられないわ」
キルスティン:病室? 何で?
真:ああ。おまえに会わせたい人がいるんだ。
紫音:桂子さん,もう目は覚ましたの?
GM/桂子:「いえ,それはまだ」
キルスティン:ねえ,だから何が?
GM/桂子:「(そっけなく)せめてタオルで顔拭きなさい」
キルスティン:むー……。
紫音:ではその辺のタオルでキルスティンの頭をわしゃわしゃ拭きながら,言います。おまえさんの一番会いたい人が,待ってるぞ。
キルスティン:……え?
紫音:んでタオルかぶせたまま病室の中に突き飛ばして。
GM:なるほど。では紫音がタオルを取ると,そこにはベッドがある。桂子さんがむすーっとした顔で,「何とか一命はとりとめたわ」
真:運がよかったんだな。俺が近くにいて。
GM/桂子:「そうね。少し癪だけど,彼の処置がよかったのよ」
紫音:(にやにや)処置がよかった? 余計なマネしてるだけだよな。
真:うるさいな。
キルスティン:…………。ちょっと呆然としてる。
GM:ベッドにはアンナさんが寝ている。顔はまだ青白くて,包帯だらけで,点滴とかつけられてるけど……かすかに呼吸しているようだ。
キルスティン:…………。ママ?
GM/桂子:「(キルスティンの肩に手を置き)糠喜びはさせたくないの……やっと安定したところでね。いつ目を覚ますかもわからない。でも,たぶん……」
キルスティン:…………。
GM/桂子:「側にいてあげて。手を握ってあげて。アンナがいつ目を覚ましてもいいように」
真:で,俺らはいくか?
紫音:だな。黙って病室を出ていきます。
GM:「あ……それと,やっぱり着替えてからの方がいいと思うわよ」と桂子さんは珍しく優しい微笑を浮かべながら病室を出ていきます。
キルスティン:それは聞こえていません。恐る恐るママに近寄って,手に触れてみます。
GM:では,アンナさんの瞼がかすかに震えた……ような気がしたところで,今回のシナリオを終了させていただきます。

 

SCENE 24


 男は黒いコートの襟を立てながら,ガラス張りの壁面から滑走路を見下ろしていた。
「こちらミスター・ライト。出国を確認。これから戻るよ」
 携帯電話を肩と顎の間に挟み,そっと顔の角度を変える。窓に,背後にたたずむ人影が映る。
 彼は声をたてずに笑った。
「……え? いや,何でもない。……心配ないさ。せいぜい派手に暴れてくれた方がこちらとしても都合がいい。国防総省の興味も,とうぶんあちらに向いているだろうよ。…ああ。また連絡すると言ってくれ」
 電話を切り,青空に白い筋を引くジャンボジェットを見つめた。
「いい旅をな,ユージン・エヴァレット」
 指を2本揃え,気障ったらしく惜別の挨拶を送ると,彼はいきなり振り返った。
 反射的に立ち止まり,その場で硬直した人影……紺と砂色と灰色の,目立たないスーツ姿。揃って腕にかけた鳩麦色のトレンチコート。
 楽しくなってきた。
 内心で呟くと,彼はゆっくりと歩き始めた。

“Fever Dream”...end.  And next, ...