SCENE 14


GM:では次のシーン……当日。遊園地の名前は……ティー摩遊園地であるが。
一同:(笑)
GM:考えてみれば咲耶榎以外は能動的にすることないか。
紫音:そうだねえ。
真:ないですね。
GM:じゃあ連続で悪いけど,咲耶榎。
咲耶榎:(嫌そう)えー……千葉さんは来てるんですか?
GM:女の子を待たせるようなことはしません。千葉は花束こそ持っていませんが,やっぱりおなじみの黒いスーツに黒いコートですね。
咲耶榎:何とゆーか,デートだというのに洒落っ気のない人ですね。
GM/千葉:「私はモトがいいからいいんです」
一同:…………。
GM:何かな。何でひくかな?
真:……千葉,キャラが壊れてきてませんか。
GM:そっかなぁ。
真:最初は「女なんて煩わしいだけ」とか言ってたくせに。
GM:恋愛対象として女を見てない,ってことなんでしょ。
真:それは……。
紫音:ヤるだけヤってポイ,か?
GM:多分ね。
咲耶榎:……えー……そんなことを外野から囁かれても,私としては非常に困るんですが……。
GM:いや,正確には「子供作らせるだけ作らせてポイ」だからおっけー(笑)。
紫音:使い捨てかー(笑)。
咲耶榎:何がおっけーなんでございましょう(涙)。
GM/千葉:「(妙に上機嫌)ところで,まず何に乗りましょうね?」
咲耶榎:…………。
GM/千葉:「? どうかなさいました?」
咲耶榎:いえ,別に……。
GM/千葉:「どうします? 乗り物」
咲耶榎:そうですね……おまかせします。
紫音:(何やらメモ帳に記録している)「まずは千葉,普通に誘っている。とりあえず妹,優柔不断」
一同:(笑)
咲耶榎:おにーさま,何をなさっておいでで?
紫音:いや,おにーちゃんはおまえが心配で(笑)。
真:つまりピーピングしているわけなんだな……。
GM/千葉:(構わず)「そうですねー,観覧車は『夕暮れの』がつくのがベストですから,……ジェットコースターにでも乗ります?」
咲耶榎:そうですね……。
紫音:(書き書き)「しょっぱなからジェットコースター。マイナス1点」
一同:(爆笑)
GM:……そうなのか?
真:ジェットコースターは2番目か3番目にもってくるのがナイスです。
紫音:(書き書き)「千葉も所詮この程度か」
GM:…………。ところで,D10振ってみてくださる?
咲耶榎:はい?
GM:今遊園地にはいろんな人が来ているわけですね(笑)。さて,誰に会うかな?
咲耶榎:なるほど……2。
GM:2ね。えー……あー,ある意味一番アレなカップル。
咲耶榎:誰? らぶこめーず?
GM:いえ,ギクシャクとした楓&泪組ですね(笑)。
キルスティン:2メートルくらい離れて歩いてるんじゃないの?(笑)
GM:声かけてみます?
咲耶榎:向こうはこっちに気付いてるんですか? 気付いてないんなら,そのまま暖かく見守りますよ(笑)。
紫音:ちなみにピーピング中の俺も気付いてるぞ。
GM:ほえ?
紫音:(書き書き)「あれから全く進展のない模様」
GM:ほっとけ!(笑)
キルスティン:結局,実際はどんな感じなの?
GM:え? それはアレだ。楓が不自然なまでにまっすぐ前を見つめたままスタスタと歩き,泪ちゃんがその後ろを気まずそーにてくてくと……。
一同:何やっとるんじゃおまえらわ!(爆笑)
キルスティン:大正時代のカップルじゃないんだからさあ!
紫音:(書き書き)「まったくどいつもこいつも」
真:まるで『たけくらべ』か『金色夜叉』のよーだ……。
咲耶榎:(苦笑)やっぱり声をかけるのは非常にアレなので,放っておくことにします。
GM:では2人の姿は人ごみの向こうに消えていきます,と。
咲耶榎:しかし,目だってそうですねえあの2人は……。
GM/千葉:「余命がいくばくもない人のデートにしては,少々そっけない気もしますけどね」
咲耶榎:…………。
GM/千葉:「どうかしました?」
咲耶榎:そういう言い方,よくないですよ。
GM/千葉:「おや,お気にさわられたなら失礼」
咲耶榎:……私に謝られても仕方ないんですけど。で,どうなんです?
GM/千葉:「何がです?」
咲耶榎:あなたが私を引き換えに兄に売りつけたデータですよ。本物なんですか?
GM/千葉:「引き換えはひどいな。アレは冗談ですよ」
咲耶榎:(黙って見かえす)
GM/千葉:「……失礼。あのデータね。あれは確かなものですよ。こちらの調べでも新条楓の病状は非常に深刻だ」
咲耶榎:あれって,もう手のつけようがないんでしょうか?
GM/千葉:「さて,私は私なりに研究しているんですがねぇ。どうも後天的な“フィーヴァー・ドリーム”のキャリアは,揃って短命のようだ」
咲耶榎:……そうなんですか?
GM/千葉:「まだ症例が少なすぎるんですが,恐らくはね。だから私としては,ウィルスを無理やり感染させるのはあきらめたわけでして」
咲耶榎:私や,キルスティンさんは?
GM/千葉:「こう言ったらお気を悪くされるでしょうが,女性の場合は『一時的な』感染でも問題ないのです」
咲耶榎:それ,かなりセクハラですよ。
GM/千葉:「純粋に生物学的見地とゆーことで」
咲耶榎:何かが激しく間違ってると思いますが……。
GM/千葉:(無視)「ところで,こういう話をするならもっと落ち着いた場所に行きましょうか?」
咲耶榎:だから顔を近づけながらそゆこと言わないでください。……落ち着いた場所って,例えば?
GM/千葉:「例えば……観覧車とか」
咲耶榎:…………。
真:(ぼそっと)うわぁ,コトに及ぶ気だ。
一同:(爆笑)
紫音:お兄ちゃんは許さんぞー!(笑)
咲耶榎:(←迷惑そう)とか言いつつ楽しそうに見物しないでいただきたいものですが。
紫音:(書き書き)「でも傍から見ているとちょっと楽しい」
咲耶榎:…………。とゆーか,私,何でこんなことやってんでしょう。
真:そもそも何でデートOKしたわけ?(笑)
紫音:歩嬢になんか言われたからっしょ?
咲耶榎:それもあるんですけど……。何かこう,GMにハメられてるような……。
GM:いやー,私としては,千葉に色々話を聞いてくれる役は咲耶榎ちゃんがいいなあ,とか(笑)。
一同:(ちらっとキルスを見て)……なるほど。
キルスティン:何よ。
咲耶榎:いえ何でも。とりあえず観覧車に向かいます。
GM:では次のシーンに……。
紫音:ちなみに俺は一両後に乗り込みますんで。
一同:(笑)
咲耶榎:おにーさま,やっぱ楽しんでません?

 

SCENE 15


咲耶榎:では,次のシーンですが。
GM:はい?
咲耶榎:泪ちゃんと楓くんのシーンです。どうぞマスター。
一同:(爆笑)
GM:なんでそうなる!
真:しかしなあ。俺ら,イマイチやることないし。
紫音:俺はこいつら(←咲耶榎と千葉)の付属品と化してるし。
キルスティン:あたしなんか「来い」と言われたはいいものの,千葉他の女とデートしてるじゃん。
真:そういや,日にちの指定はあっても時間の指定がなかったんだよな。
キルスティン:そうなんだよね。
真:まず最初に気付けよ,そういうことは!(笑)
咲耶榎:で,まあピーピングなおにーさんはいいとして。結局あなたらどこで何してんですか。
真:何だろう。とりあえず,護衛なんだよな。
キルスティン:ラブボケ組の?
真:そう,ラブボケ組の。考えただけでも脳味噌腐ってきそうだが。
GM:(そこまで言うかい)ちなみに磨亜矢はどうしてる?
真:もちろん俺らと同行させてるよ。……よく考えてみると俺,周りのヤローどもに視線で殺されそうだな。
GM:傍から見ると美女2人をひきつれてんだよな(笑)。
咲耶榎:そして傍からみるとすげえ悲しい人がここにひとり。
紫音:俺か!
一同:(爆笑)
キルスティン:遊園地でひとりピーピング・トム(笑)。
GM:「なんでアイツ,遊園地に男1人で来てんだよ?」とか。
咲耶榎:しかもストーカーっぽいですよね。
キルスティン:ちょーさみしー(笑)。
紫音:……ち,ちきしょー。
GM:観覧車とか男1人で乗るか? マジで?
紫音:うーん……あ,でもこいつのことだからその辺で女の子見繕ってるかな。
GM:……遊園地ナンパは一人でやっても成功率低そうな……てゆーかそれは遊園地に女一人で来ている人をひっかけるのか?
紫音:(聞いてない)「いやー,実は妹の初デートでさー。兄としてはちょっと心配なわけよー」
咲耶榎:…………。
GM:(マジでどんな女がひっかかったんだか)ではとりあえず大谷&キルス&磨亜矢組で。
真:まずは松山と茶山さんを探しましょう。
キルスティン:え? 例えばどこを?
真:何となくジェットコースターではないかとゆー気が。
咲耶榎:マイナス1点(笑)。
GM/磨亜矢:「でも明日香ちゃんのお気に入りって,確かコーヒーカップなんですよ」
一同:…………。
紫音:それは……ものすごく光景が想像できてヤなんですけど。
キルスティン:すげー勢いでカップが回ってたりしない?
GM:ではコーヒーカップのところにいってみると。予想に違わず,凄まじい勢いで回転しているカップがあるね(笑)。
真:この全力カップルが……。
咲耶榎:三半規管がやられそう……。
紫音:(書き書き)「とりあえず,カップの耐久性の方が心配である」
一同:(笑)
GM:どこから見てるんだよ?
紫音:観覧車の上から。目はいいよ(笑)。
GM:ちなみに大谷,あーたもサイコロ振って。
真:え? ……7ですけど。
GM:7か。7は……あ,誰にも会わなかったな。
真:よし!
キルスティン:よし,ってねー。それはそれでヒマだよ,あたしら。
真:くやしーから,俺らも何か乗るか?
GM/磨亜矢:「と言いますか,私誘っていただいてこんなことしてるだけなんですか?」
真:…………。すみません,非常にご迷惑をおかけしております。
GM/磨亜矢:「まあ本当のことで責めてもしょうがありませんし」
真:ひでえ!
キルスティン:(聞いてない)そうだね磨亜矢ちゃん。この辺には何があるかな?
GM:メリーゴーランドとか。
キルスティン:じゃあ真,馬車の屋根に乗って。
真:はぁ!?
GM/磨亜矢:「いえ,どうせならあそこの大きい白馬に立ったまま乗っていただきましょう」
真:み,水上さん!?
キルスティン:あ,わかった。片腕でバーにつかまって(と身体を斜めに倒しつつ)こう,もう片方の腕を広げて……。
真:だから何で!?
キルスティン:それは,あたしのこの沈んでゆく心を鎮めるために……。
真:おまえのどこが,どのように沈んでるってんだ!?
GM/磨亜矢:「まあそれはともかくとして,その程度のことはやっていただいても」
真:……ちょっとマスター。水上さんまでキャラ壊れてるんですけど。
紫音:この人が演るとたいていのキャラは壊れる。
GM:やかましわ。……あ,そうやって騒いでるならもっぺんサイコロ振ってもらおうか?
真:え? (ころころ)1ですが……。
GM:おや,楓と目があいましたな。
一同:(爆笑)
紫音:(書き書き)「びみょーに友情にヒビが入った瞬間であった」(笑)
真:……も,もうこうなったらヤケです。何もかもあきらめた笑顔です。きらーん!(←白い歯が光る!)
GM:楓は何とも言えない顔をしていますなぁ。(ころころ)あ,しかも明日香が気付いた。「あれぇ? ねえコウくん,あれ大谷くんじゃない?」「本当だ……いったい何をしてるんだろう」
咲耶榎:輝いてるんですな(笑)。
GM:そうすると「お客さーん,立たないでくださーい」と係員さんの声が(笑)。
真:きらーん!(泣)
GM:いや,輝かれてもな(笑)。えー,ちなみに楓は大谷に呆れてるとも同情してるともとれる視線を投げたまま,行ってしまいました。代わりにあなたがたの前にやってきたのは光と明日香です。「おまえら……ここでいったい何してるんだ?」
キルスティン:んー,いや,邪魔する気はなかったんだけどね?
真:(←降りてきたらしい)もちろん,そんなつもりはない。何か? 俺が水上さんとキルスティンをデートに誘っちゃマズイのか?
GM/光:「そりゃマズイだろ」
真:どうして。
GM/光:「どうしてっておまえ,デートって1人で2人を誘うもんなの?」
一同:その通りだ(笑)。
真:…………。
キルスティン:(←目が不穏に輝く)ねえ真……。
真:(←ちょっとビビリ)な,なんだよ。
キルスティン:いいかげんに,私と磨亜矢とどっちを選ぶか決めてくれない?
一同:(爆笑)
キルスティン:私……そろそろ疲れたの……大事な友達と,恋を争うなんて……。
GM/光:「おまえ,それはよくない! よくないよ!」
真:…………。お,おまえ……。
GM/磨亜矢:「キルスさん,私はいいんです。大谷さんとキルスさんが幸せなら,私,身を引く覚悟はできてます……」(笑)
真:ええ!?
キルスティン:ほら,メリーゴーランドから降りたら決めてくれるって言ったじゃない!
真:だから何で!?
GM/光:「バカヤロウ! 見損なったぜ大谷!」(←とか涙を流しながらパーンチ!)
真:…………。
紫音:(書き書き)「あいつら目的を忘れてるなぁ」
キルスティン:ほら,こんなことでもしてないと,どんどん私の心は沈んでいくので。
真:少しは沈めよ!
GM:はいはい。ちなみにピーピング中の紫音さん。どうやら楓と泪も観覧車に乗り込んだようですよ。
一同:ほー。
紫音:(書き書き)「ヤツらなかなかおさえてるようだ。プラス2点」
咲耶榎:観覧車って最後に乗るんじゃないんですか?
真:まずはじめの方に乗っておいて,最後にもういっぺん乗るのも吉。
キルスティン:そうなの?
真:昼間の観覧車は「わー,高ーい」なんですよ。でもって夕暮れとか夜の観覧車は。
GM:あー,カーテンとか閉めてもいいわけね。
真:そうじゃないでしょ!?(泣)
紫音:また頭腐ってきてるしこの人は……。
GM:(無視)ちなみに光と明日香は次にお化け屋敷に向かうようですね。どうします?
キルスティン:その後を追う,と言いたいところだけど。
GM:はい?
キルスティン:私は一応,千葉のことも探してるよ。アイツはどこにいるんだろう。
GM:え? 探してみる? 目がいいならわりとすぐ見つかるかもよ?
一同:観覧車の中だ(笑)。
キルスティン:……アイツ,なんで女連れなんだー!?(怒)
GM:しかもその下に,久遠紫音もいるしな。
キルスティン:あれ? しかも千葉といっしょにいるのって,咲耶榎ちゃん?
真:話聞き出してる途中みたいだな。どうする。
キルスティン:どうするって言われても……。
真:今は彼女と紫音に任すか?
キルスティン:(眉間にシワ)うーん……。
真:では2人を信頼して,俺らはお化け屋敷に向かいます。
GM:信頼するの!?
真:しますよ。
紫音:そのころ俺はテキトーに捕まえた女の子と楽しくピーピングしてます。
一同:(笑)
咲耶榎:「あれ俺の妹なんだー」とか言ってるわけなんですね(←ちょっと声が冷たい)。
真:……ええと,水上さん。すみませんけど,一緒に来てもらえます?
GM/磨亜矢:「はあ……別に構いませんけど」
キルスティン:いいじゃん,楽しいじゃん真いぢめんの。
GM/磨亜矢:「それもそうですねえ」
真:おい!
GM:では次のシーンに行きたいと思いまーす。

 

SCENE 16


GM:では観覧車組。咲耶榎ちゃんのシーンです。景色がキレイですね。
咲耶榎:はあ。
GM:ところで下には久遠紫音がいたりするんだけど……気付くかどうか〈知覚〉〈隠密〉の対抗判定で。
咲耶榎:(ころころ)15です。
紫音:(ころころ)げっ。11。
GM:では千葉が「なかなか妹思いのお兄さんですねえ」
咲耶榎:妹離れしなくて困ってるんです。
紫音:お〜い。
咲耶榎:(無視)とりあえず害はないので放っておきましょう。
GM/千葉:「そうですねえ,こうやって黙って景色を観てるのも悪かないですけどね。何かないんですか? 私に訊きたいこととか言いたいこととかやりたいこととか」
咲耶榎:そうやってどアップで迫られても困るんですけど。てゆーかどさくさに紛れて何すんですか。
紫音:……お兄ちゃんは許さんぞー(笑)。
一同:(笑)
咲耶榎:(咳払い)じゃあまず根本的なところからお訊きいたしますが。
GM/千葉:「はい」
咲耶榎:あなたがパートナーを欲しがっている,とゆーのは相当オゾマシイですが,まあよしとしましょう。それが何で私なんでしょう?
GM/千葉:「うーん,何故,と言われましても」
咲耶榎:ひょっとして千葉さん,歩ちゃんに何か言われませんでした?
GM/千葉:「……何故そう思われるんです?」
咲耶榎:他にあなたが私を誘う理由がないからです。
GM/千葉:「こないだお会いした際に一目ボレしたという説は……」
咲耶榎:…………(←目が冷たい)。
GM/千葉:「はいはい,わかりましたよ。確かに歩が私に『あなたとデートしろ』と言ったんです。だから?」
咲耶榎:それが,謎なんですよね。何でそんなことしたいんでしょ。
GM/千葉:「残念ながら皆目存じません。だいたいあの子は自分の内心を表に出さない子なんです。……私を信頼できる友人に預けたとか,そういうことじゃないんですかね?」
咲耶榎:歩ちゃんは,あなたを助けてって言うんですよね。
GM/千葉:「彼女は何故か私を心配してくれていてね。私は心配されるような人間じゃないと思うんだが……」
真:(ふと)てゆーか,彼女なんで自分がついて行かないんだ? 立場的にも,千葉が求める「資格」とやらにもぴったりだと思うんだが……。
咲耶榎:私は賛成できませんね。
GM/千葉:「どうして?」
咲耶榎:あなたがまたロクでもないことを企んだ場合,彼女は積極的にあなたに協力はしないでしょう。でも積極的に止めにも入らないと思います。
GM/千葉:「…………。なるほどね」
咲耶榎:それって,はっきり言って彼女のためになりませんよね。
GM/千葉:「確かに」
咲耶榎:でも,あなたにしてみたら歩ちゃんを連れていくのが一番いいんでしょうね? 私やキルスティンさんや,あの気の毒なヤンキーさんたちにわざわざ“フィーヴァー・ドリーム”を感染させるのは,ちょっと迂遠すぎますもの。歩ちゃんなら,別に小細工する必要も説得する必要もない。あなたが「ついてこい」と言えばついて行くでしょうに。
GM/千葉:「…………」
咲耶榎:なんで彼女ではないんですか?
GM/千葉:「……申し訳ないが,それにはお答えできないだろうな」
咲耶榎:どうしてです?
GM/千葉:「自分でもよくわからないんですよ。でも多分……あなたがさっき言ったことが理由なのかも」
咲耶榎:それが歩ちゃんのためにならないから? 本気ですか?
GM/千葉:「うーん……多分ね」
咲耶榎:あなたって,少しは歩ちゃんのこと好きなんですか?
GM/千葉:「好きか嫌いかと訊かれれば好きだと答えますよ。ただ,あなたはそういうことを訊いてらっしゃるわけではないんでしょうね」
咲耶榎:(冷たく)で,どうなんです?
GM/千葉:「……どうなんでしょうね」
咲耶榎:意外に曖昧ですね。
GM/千葉:「さて……多分私は,一個の『人格』としてはすごく未熟というか,不安定なんでしょうよ。何せ生まれてからそんなにたってませんからね」
咲耶榎:そうなんですか?
GM/千葉:「そうですよ。だいたい今から15年くらい前かな。私は気づいたらこの世にいたんです」
咲耶榎:えーと,じゃあ,もしかして,今15歳なんですか?
一同:(笑)
GM/千葉:「意外と若いでしょ」
咲耶榎:いえそーゆー問題ではないと思いますが。
GM/千葉:「ユージンのことについてどの程度ご存知で?」
咲耶榎:(少し考え)キルスティンさんの叔父さんですよね。アメリカ人。13年前,神楽って人と千葉桂子さんに連れられて来日したオーヴァード。他人に擬態するという特殊な能力の持ち主で,それ故彼の持つレネゲイド・ウィルスは特別に“フィーヴァー・ドリーム”と呼ばれている。
GM/千葉:「そんなところですね」
咲耶榎:それで? ユージンさんがどうかしたんですか?
GM/千葉:「…………」
咲耶榎:あなたとユージンさんってどういうご関係で?
GM/千葉:「お知りになりたい?」
咲耶榎:いえ,私は別に知りたくないですが,特に知りたいと思っている人もいるでしょうし。
キルスティン:そうだー!(笑)
咲耶榎:(構わず)でもその人が落ち着いてあなたから話を聞けるとも思わないので。代わりに私が。
GM/千葉:「なるほど。理にかなっていますね」
キルスティン:…………。ム,ムカツク……。
GM/千葉:「(にこやかに)そうですね,ユージンが色々な人間に擬態していくうちに,彼の中に擬似人格体が生まれたんですね,きっと。それが私なんです」
咲耶榎:…………。何ですか,そのギジ何とかいう異常にイカガワシイ説明は。
GM/千葉:「別に多重人格でも何でもいいんですけど……いや,そんな目で見ないでくださいよ。私にだってよくわからないんですから。わかっているのは,私がいつの間にかユージンの中に生まれて,彼と肉体を共有してるということぐらいです」
咲耶榎:ユージンさんはあなたのことをご存知で?
GM/千葉:「さぁ……知らないんじゃないですか。別に私じゃなくたって,あの男が外界をどれだけ把握しているものだか」
咲耶榎:あなたがユージンさんを乗っ取ってるとか?
GM/千葉:「それはどうかな。どうも,私が生まれる前からその兆候はあったようだから……詳しいことは知りませんがね,どうも神楽や桂子さんの話を総合すると,米軍に相当ヒドイ目に遭わされたらしい。そういう時身を守る術として,あるでしょ,『現実から心を閉ざす』というのが」
咲耶榎:…………。
GM/千葉:「彼の擬態能力はそのへんが関わっているのじゃないのかな。他人になりすましていれば,いくらでも現実逃避できるんだし」
咲耶榎:あなたもその『現実逃避』のうちのひとつ?
GM/千葉:「不愉快ながらね」
咲耶榎:不愉快ですか。
GM/千葉:「不愉快ですねえ」
咲耶榎:あなたって,ユージンが憎いんですか?
GM/千葉:「ありていに言って」
咲耶榎:……私にとってユージンさんは別にどうでもいいことではありますが。キルスティンさんに何かするつもりなら,そうもいかないんですけど。
GM/千葉:「(にっこり)そろそろ観覧車も終わりますね」
キルスティン:ちょっと!?
GM:えー,では長くなってきましたので,ここでシーンきらせていただきたいと思いまーす(笑)。
キルスティン:おーい!?(悲鳴)

 

SCENE 17


GM:では久遠紫音のシーンだが,まだ観覧車だなあ。特にやりたいことは?
紫音:ないねえ。
真:そうじゃなくて,ファルスハーツのエージェントを探せよ!
紫音:そんなん見たら一発でわかるさ。黄色いレインコート着てるんだろ?
真:着替えてるかもしんないだろ!
紫音:しかも幼稚園児のようにちっこいらしいし。
真:エグザイルだったら変形できるだろ!
紫音:……そこまでされたらどうせ探したってわからないって言わない?
真:《天性のひらめき》があるだろ!(笑)
紫音:ところで大正カップルはどうしてるのかなあ。
真:少しは働け!
紫音:(無視)で,どうなの? こっから見える?
GM:少し見える。何か話しこんでいるらしい。そうこうしてるうちに,泪ちゃんが持っていたジュースを楓にぶっかけた。
一同:なにぃ!?(笑)
キルスティン:かなりがーん!な感じです。楓のヤツ,何してんだ?
紫音:とうとう例の話をしたかな?
咲耶榎:……そうかなあ。別れ話って説もありますよ。
キルスティン:最後の最後まで話さないとか。ありそう。
紫音:どっちにしろ決別ってことだろうなぁ。でもジュースをぶっかけたってとこからすると……。
咲耶榎:やっぱ別れ話じゃないんですか?(笑)
紫音:たぶん理由もまともに告げずに(笑)。
真:あんのバカは〜! 何でそういうことしかやんないかなあ!
GM:(にやにや)さて,どうなんでしょうねえ。そんなこんなしているうちに2人の姿は死角に入ってしまいました。
真:おまえ何とかゆーたれよ。
紫音:何言えってんだよ(笑)。
咲耶榎:どーでもいいけど,お兄様ヒマそうですね。
紫音:そうねえ。おまえと千葉の会話を読唇術(←っておい)で全て読んでるくらいかな。することは。
GM:ではお化け屋敷組に話を移してしまおう。えーと,いわゆる古風な日本式お化け屋敷。ひゅ〜どろどろどろ〜とか。
真:死人がんなもん見て何がおもしろいってんだ。
GM:サイコロ振ってみる? 出目によってはコンニャクが降ってくる。
真:いりません。
GM:ちなみにお化け屋敷の中って空いてるんだけどさ。光と明日香の向こうに妙なのがいる。
真:はん? 黄色いレインコートですか?
GM:プラス,彼女と腕を組んだパジャマ姿の男が。
咲耶榎:変。
キルスティン:ねえ,お化け屋敷の中なんでしょ?(笑)
GM:中です。ちなみに明日香と光はお化け屋敷に全力を注いでいてその変さには気づいてないようだが。
真:奴らにはなーも期待しとりゃせんわ。
GM:(にやにや)おや? キルスちゃん,アレはお父さんのパジャマではないか?
キルスティン:え? パパのって,例のモーモーさんパジャマ?
GM:……何でそうなるかな。
咲耶榎:かえって遊園地の着ぐるみさんに見えるから,いいんじゃないですか?
キルスティン:で,あれ誰。楓?
一同:(揃ってコケる)
GM:なんでそーなる!
キルスティン:あれ? あたしどうしてもモーモーさんパジャマというと楓のイメージが。
GM:ちーがーうー!(笑)
キルスティン:ちがうの?
咲耶榎:モーモーさんパジャマを着たのは,久島ですよね?
GM:あれ? 結局誰も着なかったんじゃなかったっけ。
キルスティン:……そうだっけ? 貸さなかったっけ?
紫音:ちょっと待て! いくらなんぼでも,そんなん着て写真に写ってたら俺が気づくわ!
一同:(笑)

 結論から言うと,モーモーさんパジャマは楓&久島とも着ていないッス。
 でも遊園地なら,確かにモーモーさんパジャマの方が目立たなかったような。

キルスティン:で,結局あのパジャマ男って久島なの。
真:すごく関わりたくないが,多分な。
GM:ちなみに“カプリース”はお化けに大げさに驚いてみせて,「きゃあ,真ちゃんコワイよぉ!」とかやってますが。
一同:…………。
真:さらに関わりたくなくなってきた。
紫音:俺,“カプリース”はこっちに出るような気がしてたけど。
GM:だから,ファルスハーツは基本的に光&明日香を狙ってくるって言ったじゃん。
紫音:そっか。(大谷に)がんばれ。
真:…………(怒)。

 この後に起こった醜い争いについては,語り伝えぬ方が世のためであろう(笑)。
 すったもんだの末,真は紫音に携帯メールで連絡を取り,救援を要請。
 しかし,

紫音:しかし俺,観覧車が下に着かなきゃ行けないんだけど。
GM:そりゃそうだわ(笑)。
咲耶榎:(冷たく)いっそ飛び降りたらどうなんです?
真:……と,とりあえず,久遠紫音が来るまで行動は控えます。
GM:(にやにや)向こうが待っててくれるといいけど。何せかなりアレなエージェントだから。
真:…………。