#6 Half Past Dead
 

 

PRE-PLAY


GM:さて,このシナリオを始める前に,大谷と久遠紫音には言っておきたいことが。
紫音:だからフルネームで呼ぶなっつーの。
GM:(無視)実は,4話の終わりに伏線ははっておいたんだけどね……。
真:……ああ。アレですか。
キルスティン:……何?

 GM&大谷&久遠紫音,キルスティンと咲耶榎を残してひそひそ。

紫音:……マジ? そんなことしてたの?
GM:今のところ知ってるのは,霧谷さんと大谷と君だけ。桂子さんにもまだ伏せてあります。大谷と久遠紫音はいつこれをキルスにバラしてもいいけど,ま,盛り下がらんように気をつけてくれ。
紫音:うーむ。
キルスティン:え? ねえ何? 何なの?
GM:それは後でのお楽しみ〜。
キルスティン:前回人をほっぽっておいてそれかー!

 確かにひでえGMである(苦笑)。

GM:それはそうと前回までのお話なんだけど,大谷,説明してくれたよね?
キルスティン:説明されました。なんだか粘膜女が出てきたとか。
真:粘膜言うなー!(笑)
キルスティン:それと千葉からやーな手紙がきたとか。
GM:ですね。あとシナリオロイスだけど,今のところはなし。キルス,アンナさんはタイタスにしておいてね。
キルスティン:シナリオ変わったから経験点払わなきゃいけないんじゃないの?
GM:ラストでタイタスになったから,今回は特別に持ち越しということで。おや? するとロイスが2つになっちゃうのか?
キルスティン:ユージン叔父さんにとっていい?
GM:いいでしょう。感情は後で決めて。……あれ。明日香と磨亜矢にとってる人はいないの?
一同:しーん。
紫音:そもそも俺と咲耶榎はほとんど面識ないし(笑)。
GM:うーむ。誰かシナリオ中にとってください。あと光は?
キルスティン:私が持ってます。
GM:歩ちゃんは咲耶榎が持ってる。泪は大谷が持ってたよね? 後は……。
咲耶榎:千葉狂介にとっていいですか?
GM:了解。では,そんなところでいいですね?

 

SCENE 1


「咲耶榎さん?」
 男は航空会社のパンフレットからから顔を上げた。テーブルを挟んで向こう側の彼女は,いつもと同じ姿勢で座っていた。つまり,身体を硬くし,首をすくめ,制服のスカートを両手で握り締め(皺になりはしないかといつも余計な心配をするのだが),うつむき,決してこちらと目を合わせない。
「覚えてますよね」
 と細い声で彼女は言う。
「ええ,もちろん。なかなか魅力的なお嬢さんですね」
「実は,咲耶榎ちゃんを呼び出しておいたんです」
 彼女はポケットから取り出したマッチブックを,書類の山の上に置いた。取り上げ,裏返してみると,見覚えのある地図が描いてあった。
「あー,ここね。知ってますよ。苺のムースがおいしいんですよね」
「ジェレ・ドゥ・フレーズですか。あれはムースじゃなくてゼリーです」
「……いや,そうじゃなくて」
 彼はマッチブックとパンフレットを投げ出し,ほんの少し少女を睨んだ。
「あなた,何を考えてるんです」
「……咲耶榎ちゃんを誘ってみる気はありませんか?」
「は? どこへです?」
 どこかは知らないけれど,あなたの行こうとするところへ。
 唇はそう動いたようだが,声にはならなかった。彼は少し待つ。すると,
「私は行きません」
 やっと聞き取れるほどの声で,少女は言った。
「……何ですって? よく聞こえないんですが……」
「私は行けません」
 しばらく2人は黙って座っていた。やがて彼は立ち上がり,さらに身を硬くする少女の傍らに立った。
「どうぞ。お好きになさってください」
 彼は珍しく険のある口調で呟いた。かがんで少女に顔を近づけ,
「……私だってそう思ってましたよ」
「……私は……」
「あなただけは連れていかない,とね。そう決めたんです」

 

SCENE 2


GM:ではまず,キルスからスタートです。前回ラストに久遠紫音が千葉からキルスへの手紙を預かっている。中に入っているのは遊園地のチケットが1枚。
真:何!? 我々のぶんは自腹を切れと!?
GM:(無視)それと,「もし決心がついたら,1週間後にここで会いましょう。K.C」という手紙がついてました。さて,そのXデイの前日まで話は進みます。えーと……キルスはどうしたい?
キルスティン:はあ? 遊園地には行きますよ?
GM:ああ,いや,そうじゃなくて,前回千葉から“フィーヴァー・ドリーム”入りのアンプルをもらったじゃん。あれどうする?
キルスティン:たぶんすぐに注射したと思うけど。
一同:…………。何だと?
キルスティン:え? 何かまずかった?
GM:……マジか?
キルスティン:だってアレ使わなきゃ,千葉に対抗できそうにないじゃん。
GM:…………。ちょ,ちょっと待ってくれ。とりあえずまだ使ってないということにしてくれ。頼むから。
キルスティン:えー?

 ……ちなみに前回のお話は,「広げすぎた大風呂敷をたたむ」の他に,「キルスティンに“フィーヴァー・ドリーム”がいかにヤバイものかを認識させ,使うか使わないか悩んでもらう」という目的もあった。
 …………。
 しょうがないよな。参加できなかったのだもの,キルスティンのせいではない。GMのせいである。
 いや,しかし……。
 頼むからも少し躊躇してくれよ。神楽も目の前で死んでるんだぞ(笑)。
 ここでGMは早速予定を変更。桂子さんを使ってクギを刺すことにしたのだった(ひやひや……)。

キルスティン:ではまだ注射はしていないデス。
GM:(ほっ……)では,その朝あなたは桂子さんの部屋に呼ばれました。あ,ちなみに桂子さんが何してるかってーと,引き続きUGNに暫定協力中。病院と研究室を行ったり来たりしながら,主に光と楓の治療をやってました。ちなみに今日呼ばれたのはUGN付属の病院ね。
キルスティン:うん。
GM:すると入れ替わりに楓ちゃんがでてきました。
キルスティン:黙って見上げる。
GM:楓も黙ってあなたを見下ろしている。
咲耶榎:(ぼそっと)おお……ヘビとマングース再び?
キルスティン:いえ,いつもだったらケンカを売るところですが,さすがに私もその元気がないのです。桂子さんに呼ばれたの?と弱々しい声で訊きます。
GM/楓:「いや……用があったのは俺の方だ」
キルスティン:ふーん,そっか。
GM/楓:「おまえは?」
キルスティン:私は桂子さんに呼ばれたんだよ。何か話があるんだって。
GM/楓:「……そうか」
キルスティン:じゃね。あたし行くから。アンタお母さんとは仲良くしなきゃダメだよ,と言い残してわきをすり抜けていく。
一同:やっぱケンカ売ってんじゃん。
キルスティン:そういうつもりじゃありませんー! 真面目に言ってるんだよー!
真:ああ,まあ,おまえとしてはな。
紫音:でも楓にとってはケンカ売られてるのと同じ(笑)。
GM:しかしながら今回,楓くんは大人しいのであった。ちらっとキルスに目をやったきり,黙って去って行きます。
一同:おお!?
紫音:どうした楓ちゃん!?
真:まさかヤツもとうとう大人になったのか!?
キルスティン:それはともかく,私は桂子さんの部屋に入ります。
GM:はい。えー,彼女の机の上には何やら書類が散乱している。で,彼女は珍しくぼーっとしているようだ。あなたに気付いた様子もない。
キルスティン:……桂子さん?
GM/桂子:「……ああ,ごめんなさい。よく来てくれたわね」
キルスティン:用って,何ですか?
GM:桂子さんは引出しから小さなアンプルを出してくる。あなたには少し見覚えがあるけど,ユージンを元の姿に戻すときに使った薬です。「これはUGNで正式に採用された作戦ではないの。それをまず念頭においておいてね」
キルスティン:いきなり,何のことです?
GM/桂子:「まあ聞きなさい。あなた,千葉狂介と戦う気なんでしょ?」
キルスティン:はい。私は叔父さんを取り戻したいんです。どんなことをしても。
GM/桂子:「……私は私なりに,千葉を何とかする方法を考えてみたわ。これは,そのひとつ」
キルスティン:それは,叔父さんを犠牲にせず,ですか?
GM/桂子:「いいえ。だからまずあなたに話しておくべきだと思って」
キルスティン:…………。
GM/桂子:「これを使えば千葉は一時的にユージンに戻ると思う。ユージン・エヴァレットは強力なオーヴァードだけど,“スリーパー”さえ使われなければ無防備なの。自分の身を守ることすらロクにできない。この状態で彼を殺せば,千葉も死ぬわ」
キルスティン:他に方法はないんですか?
GM/桂子:「あるかもしれない。ただ,私にも霧谷さんにもそれはわからない。あなたのお仲間にしたって,そうじゃないかしら? 私はこれが一番マシな方法じゃないかって言ってるの」
キルスティン:私は嫌です。他に方法があるなら,それを探したい。
GM/桂子:「あなたがそうしたいなら,そうすればいいわ。でも,その方法って何?」
キルスティン:それはまだわかりません。……桂子さん,UGNは,叔父さんを犠牲にして千葉を殺すべきだと考えているんですか?
GM/桂子:「さあ,それは霧谷さんに訊いてみないとね。ただ千葉と真正面からやりあうリスクを冒してまで,ユージンを助ける義理はUGNにはない。それは確かね」
キルスティン:そうですね。そのリスクを払うべきは,私だと思います。
GM/桂子:「そのリスクが,“フィーヴァー・ドリーム”?」
キルスティン:私の力では千葉に勝てない。だから……。
GM/桂子:「だから? それであなたは何を犠牲にする気なの?」
キルスティン:どういう意味ですか?
GM/桂子:「言葉通りの意味よ。どんな犠牲を払っても……今までの人生で得てきた全てを失っても,ユージンのために戦う? その覚悟がある?」
キルスティン:…………。あの,マスター。
GM:はい?
キルスティン:“フィーヴァー・ドリーム”って,そんなにヤバイんですか?
GM:それを前回で説明するはずだったんだよなあ(笑)。マジやばいです。
キルスティン:でも楓とか光とか,薬使って抑えてない?
GM:光はまた別だけど,楓はものすごい綱渡りしてますよ。
キルスティン:そうなの?
GM:5話では危うく死にかけた(笑)。
咲耶榎:てゆーか,ウイルスというものに根本的な「治療薬」はないから。
GM:ワクチンってな,あれは「予防薬」であって「治療薬」とは違いまっせ。レトロウイルスは変異して免疫細胞騙すから,さらに危険。んなこたどうでもいいけど,ぶっちゃけた話,HIVを注射するようなもんだと思ってね?
キルスティン:そ,そうなの?
GM:いや,まあ,あれよかはマシかもしれんが。
真:あんまりマシじゃないような気もしますよ。
キルスティン:……しまった。
GM:何が?
キルスティン:いや……アレを使うことを前提として作戦考えてきたから。
真:考えるなー!(笑)
キルスティン:でもさぁ。結局,アレ使わずに千葉を倒すのって,難しいよね。
GM:ダイス目にもよるが,まず無理。だから千葉としては,全てを犠牲にする覚悟があれば,私を倒しにいらっしゃい,ってなとこじゃないか? そうでないと,多分相手にもしてもらえないや(笑)。
キルスティン:じゃあ,やっぱり最後の最後になったら,“フィーヴァー・ドリーム”を使うという選択肢もアリだよね?
GM:もちろんアリ。だから,ホントに最後の最後の手段として考えておいてほしいってこと。それと,桂子さんは医者だから,釘はさしまくるよ。
キルスティン:…………。
GM/桂子:まあ話を元に戻そう。桂子さんはさらに追い討ちをかける。「神楽は死んだ。皆藤早馬というまだ12歳の男の子も,死んだ。松山くんや楓はまだ運がよかったけど,この先どうなるかはわからない。あなたがやろうとしているのは,そういうことよ。今までロクに話したこともない叔父のために,全てを捨てる? クレージーだわ」
キルスティン:それは私の勝手です! 叔父さんは,私にとっては最後の肉親なんですよ! 父さんも母さんも私のせいで死んで……それで……。
GM/桂子:「だからって叔父さんを助けるために自分が死んでもいいっていうの?」
キルスティン:……父さんは,死ぬ間際にこう言いました。
GM/桂子:「え?」
キルスティン:何があっても,絶対生きぬけって。だから,私は死んでもいいとか,そういうのとは違うんです。でも……。
GM/桂子:「まだ時間はあるわ。落ち着いてよく考えてみなさい」
キルスティン:……はい。
GM/桂子:「いい? アンナなら……『マトモな母親』なら,子供に絶対こんなことはさせない。そうでしょう?」
キルスティン:あの,桂子さん。……楓と何かあったんですか?
GM:桂子さんはため息をつくだけで答えない。では,こんなところでシーンをきらせていただきたいと思います。

 

SCENE 3


GM:えー,では大谷です。大谷は泪に呼び出されますね。
咲耶榎:『放課後,体育館の裏にて待つ』(笑)
GM:いやそーでなくて。
紫音:『屋上にて待つ』(笑)
GM:ガン○レの告白シーンでもないし。
真:ということはアレか……俺と楓の仲がいいのを妬んだ彼女が……。
GM/泪:「……何を考えてるんですか,大谷さん」
真:お? ああ,いえ,こっちのことです(笑)。
GM/泪:「ふざけてないで。はい,これ」と彼女はひとつの鍵を差し出します。
真:なんです,これ?
GM/泪:「あなたの住居,ようやく支給されましたんで,その鍵です」
真:…………。
紫音:おお,ようやくか。
咲耶榎:おめでとうございます。
真:…………。ちょっとこっち見ないでください,とかゆって目頭を抑えています。
キルスティン:おおげさな。
真:何とでも言え。……ようやく……ようやく久島の世話係からも,相模原さんちのおさんどんからも解放されるんだ……。
GM/泪:「人聞きの悪いこと言わないでください。ちなみに,喜ぶのはまだ早いですよ」
真:はい?
GM/泪:「楓と同居ですからね」
一同:(笑)
真:…………。
GM/泪:「いや,何も泣かなくったって」
真:…………。いいんです。あんたに俺の気持ちがわかってたまりますか。
GM/泪:「まあ何と言いますか。霧谷さんが『またしても』お守役をおしつけたとゆーのは否定できませんが」
真:あんた最近さり気に俺にキツクありませんか!?
GM/泪:「そうですか?」
真:そうですよ。てゆーか,どうしてあんたが同居しないんですか。
GM/泪:「誰と?」
真:楓と。
GM/泪:「…………」
真:…………。
GM/泪:「…………」
真:えー,黙りこむほどのこと言いましたか俺。
GM/泪:「……いや,それは,その,ほら,ねえ」(←と,両手の人差し指をつつき合わせる)
キルスティン:そーゆー手つきやめんかい。
一同:(笑)
GM:だって大谷がいきなり直球なんだもん。
紫音:でも当然と言えば当然の疑問じゃないのか?
咲耶榎:一応男女ということがありますよ。
真:だってこの人アレだぜ? 自分の部屋に平然と男何人も泊めてるんだぜ?
GM/泪:「誤解を招くよーなこと言わないでくださいッ! あれ別々の部屋じゃないですか!」
真:だからその「別々の部屋」に楓泊めりゃいいじゃないですか。
GM/泪:「……もぉいいです。大谷さんなんか,二度とウチに泊めてあげないから!」
真:あんたが留守してる間,家事を一手に引きうけてたの,誰だと思ってんです。
GM/泪:「失礼な! 私は家事くらいちゃんとできますよ! あの時は忙しくて帰れなかっただけじゃないですか!」
キルスティン:(ぼそっと)でも料理は焦がす。
GM/泪:「焦がしてませんよッ!」
真:この場にいない人間との会話はさておき(笑),俺は楓と同居するのは構いませんよ。そんなこったろうと思ってたし。
GM/泪:(一転して暗い声)「……お願いします」
真:あー。マメに連絡とらせるようにはしますって。
GM:とゆーと泪は何だかさらに暗い顔になってしまいました。
真:ちょっと。……マジで何かあったんですか?
GM/泪:「別に何もないですけど……」
真:あのですね,相談のりますから! 俺はマジで楓をあんたんとこに落ち着かせたいんですよ。
GM/泪:「……何で大谷さんがそーゆーこと言うんですかぁ?」
キルスティン:だからその手つきはやめいっちゅーに(笑)。
紫音:ダメだ,この人完全にいぢけてる(笑)。
真:いったい何に対していじけてるんですかあんたわ!
咲耶榎:わかんないんですか?
真:え?
咲耶榎:だって大谷さん,楓くんと同居なんですよ?
真:だから?
咲耶榎:これで晴れて2人きり!
真:何がじゃ!
紫音:なるほど! これで2人の仲が一気に進展!
キルスティン:ただでさえ泪ちゃんより大谷の方と仲がいいのにねえ(笑)。
GM:もはや『Hな雰囲気』直行。
一同:(爆笑)
真:ちょっと待ったらんかいッ!!
GM:(聞いてない)ちゃ〜らら〜ららららら〜♪
真:何でそーなるッ! 俺らはあくまで友情であって,てゆーかおまえら,何で俺と相模原さんを天秤にかけるんだ!?
紫音:(甲高い声で)Hはいけないと思います! 「×」はいけないと思います!(笑)
真:…………。俺はこれにてこのゲームを離脱させていただきます。

 さて,恒例大谷いぢめはともかくとして,話を元に戻そう。
 ちなみに泪ちゃんがいぢけてるのは大谷に嫉妬してるわけではないです。念のため(笑)。

GM:さて,こゆことやってるとキリがないので,大谷は早々にあてがわれた部屋にやってきたということで。
真:(←ぐったり疲れている)楓は?
GM:もう先についていて,荷解きもすましているようだ。荷物少ないからね。んでもって,テーブルの前で腕を組んで何やら考えこんでます。
真:よぉ。……何してる?
GM:すると楓は黙ったまま顎でテーブルの上を示します。そこには遊園地のパスポートチケットが2枚と,「新条楓様」と書かれた茶封筒が置いてあります。
キルスティン:それって……。
GM:いえーす。あなたが千葉にもらったのと同じチケットですね。
真:……で,何。相模原さんを誘うのか?
GM/楓:「……何でそういうことになる?」と言って彼は封筒をひっくり返す。差出人の名前なし。
真:(こともなげに)千葉だろ。
GM/楓:「やっぱりそう思うか」
真:そりゃ思うさ。でも,それはそれとして,行ってくれば?
GM/楓:「罠という可能性は?」
真:それはないだろ。罠なら,もっと手の込んだマネするさ。
GM/楓:「というか,あの男の真意がつかめんのだが」
真:あいつの真意なんて考えるだけ時間の無駄だ。いいから,おまえは楽しんでこいよ。ここんとこ戦いづくめだったんだから。
GM:楓は難しい顔をして考えこんでいたが,しばらくするとチケットを手にして,「ちょっと考えてくる」と自室に閉じこもってしまいました。
真:おう,ゆっくり考えてこい。後でコーヒーでも持っていってやる。
一同:…………。
真:え? なんです?
GM:……てゆーか大谷。あんた何でそんなに楓に甲斐甲斐しいの?
真:え,だって……。
紫音:(真より早く)そりゃ男キラーだからさ。
真:何でだ!(一同笑)
キルスティン:真,あんたやっぱり……。
真:そんなことはない! ちゃんと相模原さんの世話も焼いてるじゃないか!
咲耶榎:でもやっぱり部屋で2人きりになると。
GM:ちゃ〜らら〜ららららら〜♪
紫音:Hはいけないと思います! 「×」はいけないと思います!(笑)
真:…………。
GM:さて,そんなところでシーンきってよろしいでしょうか?
真:…………。
GM:おーい,大谷ー? もういぢめないから戻っておいでー?(笑)
キルスティン:ほら,どうせシーンもきれることだしー(←あんまりフォローになってない)。

 

SCENE 4


GM:さて,久遠紫音なんだけどさー。
紫音:俺,とりあえずすることないよなあ。
GM:そだね。桂子さんの監視任務は一応続いてるんだけど……。
紫音:今んとこは特に心配もないよな。と,いうことは……やっぱり青春を謳歌してるんじゃないか(笑)。
咲耶榎:またナンパですかい。
GM:そのパターンは前回やったからナシ。では……そうですねえ。ではある夜。自宅。
紫音:あい。
GM:メールが届いています。差出人は知らないヒト。件名は「ごきげんいかかですか?」で。
一同:うわウイルスくさっ!(笑)
紫音:とりあえず厳重にチェッカーかけて,それから開いてみます。
GM:ウイルスメールではなかったようだ(笑)。ではこんなメッセージで(と,紙を渡す)。
紫音:(読む)…………。
GM:それに添付ファイルがついてるね。
紫音:…………。一言マスターに訊きたい。
GM:ん?
紫音:ヤツはロリコンか?
一同:はあ!?
GM:(にやにや)
キルスティン:何? 何の話?
紫音:いや,千葉からのメールなんだが……。
GM:(にやにや)ところで咲耶榎ちゃんっていくつだっけ?
咲耶榎:16ですけど?
GM:大丈夫。ロリコンじゃないじゃん。
一同:…………。
咲耶榎:……えー,今なんかすごく不穏当な発言がありませんでしたか?

 ちなみに紫音プレイヤーに渡した紙には,こんな文章が書いてあった。

久遠紫音様

 ご機嫌いかがですか?
 実は日本を離れることにいたしました。
 つきましては,大変お世話になったあなたがたへ,有益な情報を提供いたしましょう。
 もっとも,使い方はあなたがた次第。
 有意義に使ってくださることを願っております。
 では,またいつかお会いしましょう。

K.C

 追伸:パスワードは妹君に預けておきました。
 追伸A:御礼は別に期待してませんけど。できれば妹君がいいな。私としては。 

咲耶榎:(←読んだ)……なんです,これは。
紫音:俺にもわからんけど,だから,ロリコンかって言ったんだ(笑)。
咲耶榎:何で私なんですか。
紫音:だから知らねえってば!(笑)
GM:ちなみに添付ファイルにはプロテクトがかかってる。
紫音:パスワードがどうのって言ってたもんな。じゃあ咲耶榎に連絡つけてみよう。電話してみる。
GM:あー。そうすると紫音のシーンってこれで終わっちゃうんだけど,いい?
紫音:なにー? ホントに短いな(笑)。
GM:何故かっちゅーと,咲耶榎ちゃんは紫音からの電話を受ける前に,千葉とデートだから(笑)。
咲耶榎:……だから,めっちゃ不穏当なんですけど?
GM:(にやにや)というわけでシーンきります。よいかな?

 

SCENE 5


GM:では,咲耶榎ちゃんのシーンですな。歩ちゃんに「話がある」と呼び出されました。近所の喫茶店です。行ってみます?
咲耶榎:さきほどのGMの発言をあわせるとひじょーに罠くさいのですが,そんなことはキャラクターは知りませんしね。特にすることないし,行きます。
GM:その喫茶店に入るとですね。でっかいカサブランカの花束が目に飛び込んできます。
咲耶榎:カサブランカって,何?
GM:百合。いっちゃん高いやつ。1本5000円くらいするのよ。すごく大きな花だけどね。
紫音:それが花束だと? ウン万円? 何考えてんだ,ヤツは?
咲耶榎:でも,うちの庭にいっぱい咲いてそうですけどね。
一同:…………。
GM:いや,さすがにカサブランカは庭に咲かんと思うが……(注:咲きます)。
咲耶榎:あ,じゃあうちの温室にはいっぱいありそうですけどね。
一同:…………。
真:……おい。おまえ,少しコイツの教育考えろ。
紫音:俺が教育してるわけじゃないんだがなあ。
咲耶榎:それはそうと,その花束を持っているのは?
GM:黒いコートのあの人である。
咲耶榎:ああ,じゃあ指定された席が間違ってるんですね。
一同:(笑)
咲耶榎:あれー? 歩ちゃんはどこだろー?
GM/千葉:「そういう言い方はちょっとつれないんじゃないですか?」
咲耶榎:つれないも何も,歩ちゃんはどうしたんですか?
GM/千葉:「まあそう言わずに。こういう花束はお気に召しませんか?」
咲耶榎:もらう人によりますけど,と言って受け取ります。
GM/千葉:「とりあえずお座りなさい。立っていてもしょうがないでしょう?」
咲耶榎:そうですね,と言って座ります。
GM/千葉:「(にこやかに)何にします? ここは苺のムースがオススメで……」
咲耶榎:いえ,コーヒーでいいです……ってなんか流されてるぞ私!
GM/千葉:「すみませーん,ブレンドふたつお願いしますー」(笑)
紫音:ちなみにマスター。
GM:はい?
紫音:このシーン,《プロフェット》はアリですか?
咲耶榎:なにー!?(笑)
GM:紫音は許す。おもしろいから(笑)。
咲耶榎:じゃあ千葉さんと背中合わせの席に座ったりしてるわけなんですね? で,会話を全部聞く気なんですね?
GM:千葉は……多分気付いてほっといてるだろうから,判定省略(笑)。
咲耶榎:あの,まずお伺いしたいんですが。歩ちゃんに呼び出されたのに,なんであなたがいるんです?
GM/千葉:「(終始にこやか)実は歩にちょっと協力してもらいましてね」
咲耶榎:……つまり,私,騙されたと?
GM/千葉:「そう言わないでくださいよ。別にあなたに何かするわけでもなし」
咲耶榎:こないだされましたけど。
GM:……アレ? そうだっけ?
咲耶榎:忘れてるしこの人。
紫音:したじゃんか。《抗いがたき言葉》とか。
GM:あ,そうかそうか(←本当に忘れていた)。「でも未遂だったじゃありませんか」
咲耶榎:それは単なる結果論です。
GM/千葉:「いいじゃないですか。操ってナニするわけでもないんだし」
咲耶榎:その「ナニ」の言い方が気になるんですが?
紫音:……お兄ちゃんは許さんぞー。
一同:(笑)
咲耶榎:で? 結局何のご用で?
GM/千葉:「私,実は近々所用でアメリカに行くんですよ。しばらく帰ってこられそうもないんで,その前に日本の想い出作りというところですかね」と遊園地のチケットを出してきます。
キルスティン:それって,あたしや楓んとこにきたやつと……。
GM:同じに決まっておる。
咲耶榎:あのー。これってつまり,何なんですか?
GM/千葉:「俗に言うデートというものですかね」
紫音:ではそこで。後ろの席から身を乗り出して言います。……うちの妹は高いぜ,千葉。
一同:売るな!(爆笑)
咲耶榎:…………。
紫音:どうよ千葉さん? あぁん?(笑)
咲耶榎:……それって何? ヒモ? というか美人局?
GM:では千葉さんは指をこう(ぴっと人差し指と中指を立てる)。
紫音:ほう? 2千万?
GM/千葉:「いや,あなたそれは暴利でしょ」
紫音:あん? ウチの妹はそんなに安いと思ってんのか?
GM/千葉:「安いってあなたね。遊園地行って遊ぶだけですよ。別にナニするわけじゃなし」
咲耶榎:だからなんで「ナニ」を強調するんですか。
GM/千葉:(無視)「ま,そんなとこじゃなんですから,こっち来て座ったらどうですか,お兄さん」
紫音:じゃあコーヒーとレアチーズとチョコパフェとホットケーキな。
GM/千葉:「甘いものがお好きで?」
紫音:いや,アンタからぼったくれるうちにぼったくっておこうと思って(笑)。……で? マジで何考えてる?
GM/千葉:「だから言ったでしょ。最後の想い出つくり。ま,それは別として,あなたがたにひとつ忠告しておこうと思ってね」
紫音:忠告? アンタが俺らにか。魂胆がわかんねーよ。
GM/千葉:(かまわず)「あなたがた,神楽を殺したでしょ」
紫音:あれは自爆だろ。
GM/千葉:「で,私も先ほど申し上げた通り,日本を離れます」
紫音:そりゃありがたいね。で?
GM/千葉:「ありがたいことばかりでもないですよ。私らがいないとよけいな連中が首つっこんでくるんです」
咲耶榎:よけいな連中?
紫音:だいたい見当はつくが,まあ訊いてやろう。どこだ?
GM/千葉:「あなたがたUGNが何のために設立されたか……こう言えばおわかりでしょ?」
紫音:ファルスハーツか。
咲耶榎:…………。
キルスティン:つまりどゆこと?
真:だから,今まで神楽と千葉が抑止力として働いてたんだよ。それが両方いなくなるってんで,ヤツらが“フィーヴァー・ドリーム”目当てにちょっかい出してくるってこったろ?
GM:意識的に牽制してたわけではないけど,ま,結果的にね。
紫音:千葉や神楽とやりあうリスクと,“フィーヴァー・ドリーム”を比べて,ゴーサインが出せなかったってとこだね。
キルスティン:じゃあこの2人がやっといなくなったと思ったら,また何かでてくるわけ?
真:やったぜ俺らのもんだぜべいべー!みたいなもんで。
咲耶榎:そう。「ひゃっはあ! やっと俺たちにもチャンスが巡ってきたぜ!」みたいな感じで。
GM:(何故ひゃっはあ?)いや……何でもいいんだけどな……。
キルスティン:でもファルスハーツは千葉よりはマシだと思うんだけどなー。
真:そんなこたぁないだろ。千葉はどう転ぶかわからんが,絶対的に俺らと敵対してるわけじゃない。
キルスティン:えー,でも,
真:おまえの事情はこの際却下だ(笑)。
紫音:その点ファルスハーツとの和合はあり得ないしな。それはそうと千葉さんよ。あんた,ウチの妹をデートに誘って,単に想い出作りするだけか?
GM/千葉:「いけませんか?」
紫音:いや,単に信用できないだけさ。
GM/千葉:「ふむ,ま,他に下心があることは認めますよ」
咲耶榎:やっぱりナニと。
GM/千葉:「まあそれもあるんですが」
一同:あるのか!?(笑)
GM/千葉:(へーぜん)「いえ,私実はパートナー募集中なんです」
一同:…………。えーと。
咲耶榎:……まさかそれが私,とか言いませんよね?
GM/千葉:「あなたも候補のうちの1人,ですかね」
紫音:候補ね。ウチの妹,ホントに安く見られてるな。
GM/千葉:「ひとりの女性として見れば妹さんは素晴らしい女性ですよ。ただし,私が望む条件とはそういうことではないので」
紫音:つまり?
GM/千葉:「私は“フィーヴァー・ドリーム”のキャリアが欲しいんですよ。私以外のね。できれば松山くんのような真性のキャリアがよかったが……それでは確率が低くなってしまうのでねえ。それに,どうせならパートナーは女性がいいですし」
真:……それは,子供つくれるから,とか言わんか? もしかして?
GM:はい,ご名答(にやにや)。
一同:…………。
咲耶榎:(ひくひく)で? 私に“フィーヴァー・ドリーム”に感染したうえで,ついて来いって言うんですか?
GM/千葉:「ひらたく言えばね」
紫音:……させると思うか?
GM/千葉:「こう言っちゃなんですが,強要はしてませんし,する気もありませんよ。自由意志でついてきていただかなきゃ,意味がないのでね」
咲耶榎:あなた歩ちゃん使って“フィーヴァー・ドリーム”ばらまいてませんでした? あのヤンキーさんたちも「自由意志」ですか?
GM/千葉:「あれはまた別の話です」
咲耶榎:パートナーと下僕は別だってことですか?
GM/千葉:(にっこり)「この話はここまでにしましょう。で? どうなんです咲耶榎さん?」
咲耶榎:どうって?
GM/千葉:「『ただのデート』でも,お受けいただけないですかね? あなたに危害は加えないと保証しますよ。……もちろん,操ったりするのもナシでね」
咲耶榎:……いいでしょう。お受けしましょう。
キルスティン:マジ!?
咲耶榎:そうしないと話が進まないような気がする,とゆーのはさておき。この人に訊きたいことが山のよーにあるのは事実ですからねえ。
紫音:…………。
GM/千葉:「お兄さん,まだ文句がおありで?」
紫音:デートまでなら許す。手つなぐのはペケです。
一同:(笑)
GM/千葉:「あのー……それくらい許してくれてもいいんじゃありません?」
紫音:(無視)しかし何でまたいきなりアメリカへ?
GM/千葉:「うーん,邪魔なものを始末しに,かな」
咲耶榎:邪魔なものって?
真:ペンタ○ンとか(笑)。
GM:ユーサム○ッドとか(笑)。
紫音:昔,ユージンを実験してた組織?
GM/千葉:「そんなところにしておきましょ。……さて,話もまとまったことですし,私はこれで」
紫音:待てよ千葉サン。
GM/千葉:「……まだ何か訊きたいことがおありで?」
紫音:パスワードよこせ。
一同:(笑)
GM/千葉:「……何と言うか,ひじょーに即物的ですね」
紫音:はっきり言って他に用なんざねーんだよ。さっさとしな。
GM/千葉:「やれやれ,つれない人だ……」
咲耶榎:(ぼそっと)とゆーか,パスワードって何のことですかお兄様。
紫音:え?
一同:(爆笑)
咲耶榎:てゆーか,だいたい何で今日ここに現れたんですか?
紫音:それはほら,おにーちゃんはおまえが心配で……。
咲耶榎:それだけですか? ホントーにそれだけですか? 天地神明に誓ってそれだけですか?
紫音:…………。
GM:ま,兄妹の問題は当人同士で解決してくれや(笑)。シーン変えます。