SCENE 6


GM:さて,大谷のシーンだ。せいぜい働いてくれたまい。
真:(←あきらめの境地)はいはい。それで,どんな感じなんですか?
GM:そりゃもぉ大騒ぎさ!って感じ。UGNの本部じゃなくて,息のかかった病院なんだけどね。騒ぎの中心になってるあたりに行くと,壁にでっかい穴が開いてる。
真:それって,爆発とかじゃないんですよね。
GM:ないと思う。純粋に打撃。
真:局長。何があったんです?
GM/霧谷:「うーん,つまりあの穴を見ての通り,獣が2匹壁をブチ抜いてでてきて,さあ大変」
真:……もちっとマシな説明はないんですか。
GM/霧谷:「いや,真面目な話,私にもよく状況は飲みこめていないんだ。現場にいたのは私じゃなく茶山さんでね」
真:(こめかみを抑える)そりゃまた……。
GM:とりあえず2人に話を聞いてみてくれ」ということで,破壊された病室の前には泣いている明日香と慰めている磨亜矢がいる。明日香は君を見るなりとびついてくるね。「あっ,大谷くん! どうしよう,コウくんがいなくなっちゃったよぉ! どうしよう! うぁ〜!」
真:えーと……とりあえず落ち着け。何があった?
GM/明日香:「だってコウくん行方不明なんだよぉ!? えーん,何が何だかわかんないよぉ!」
真:……で,水上さん。何があったんですか?
GM/磨亜矢:「えーと,私も明日香ちゃんに話を聞いただけだから,よくわからないんですけど」(笑)

 そのよくわからない明日香の話を総合すると,こうなる。
 泪と明日香と磨亜矢は交代で光の世話をしていたのだが,その時,当番だった泪がいつまでたっても戻ってこない。不審に思った明日香が病室に行ってみると,中からものすごい音と泪の悲鳴が聞こえた。
 慌てて中に飛び込んだ明日香が見たものは,泪をくわえた白い巨大な獣が,壁に開いた穴から飛び出していく姿。さらにそれを追って飛び出していったのは,灰色の毛並みをした獣だったという。

真:(考えて)ええと茶山。それで何がわかんないんだ?
GM/明日香:「その獣がコウくんなのかどうかがわかんない」
真:なるほどな。松山は《完全獣化》できなかったはずなんだよな。
GM/磨亜矢:「それに松山くんだとしても,どっちが松山くんなんだかわからないですよね」
真:追っていった方が松山なんじゃないかという気はするが,ここで考えててもしかたないな。
GM/明日香:「どぉしよ〜!」
真:だから,行動するしかないだろ。とりあえずそんなバカでかい獣が街中走ってったんなら,必ず目撃情報があるはずだ。まずはそこから何とかしよう。俺は紫音にも声をかけておく。
GM/明日香:「紫音って,誰?」
真:え? あ,知らなかったっけ?
GM/明日香&磨亜矢:「知らない」「知らないです」
真:……まあ,知らない方がいい。下手に種蒔かれても困るし。
紫音:おいおい。
真:(無視)そっちも訊きこみ始めてくれ。ただし,おまえらはUGNの保護下にいるんだから,あんまり無茶はしないようにな。
GM:そこで霧谷さんからお呼びがかかります。
真:はい?
GM:「あまり役にたたないとは思うが,一応遺留品だ」と言って渡されたのは,白い光沢のある長い毛と,メタリックな灰色の毛。銀色に近くて,こっちは少し短め。ちなみにDNA判定はボツ。それと,カメラが捉えてた写真があるんだけど,スピードが速いためわかりにくい。白い獣は虎に近い感じで,灰色のはライオンに似てる。いわゆる「異形の獣」なのであくまで似てるだけだけど。
真:わかりました。この写真は聞き込みに使えるかもですね。
GM/霧谷:「そうだな。こちらは事後処理で手が離せないので……」
真:あのナンパ男使っていいっスか?
GM/霧谷:「好きにしてくれ。何なら一筆書くか?」
真:お願いします。命令権は俺にあるってことで。
紫音:ええ〜。
真:命令にそむいたら銃殺ってことで。
GM/霧谷:「いいだろう」
紫音:おい!
真:ヒエラルキーの最下位に立ってたまるか(笑)。そんなわけで紫音に電話します。もしもし,紫音か?
紫音:えーと俺はただいま忙しいので電話にでることができません。
真:……局長から指令なんだけどな。
紫音:局長,今本部にいるの?
真:俺と一緒。病院だよ。
紫音:あ,そう。俺,桂子サンから局長に届け物頼まれてるんだけど……。
真:ちょうどいいから,おまえも今からこっちに来い。
紫音:何? 仕事?
真:ああ,色々とややこしいことになっててな。それで,俺が指揮をとることになったから。
紫音:ふーん,よかったじゃん。昇進じゃん。
真:昇進たって,給料増えるわけでもないんだけどな……だいたい未だに1人部屋が認められてないのはどういうわけなんだろう。
GM/霧谷:「いやあ,今日も空が青いなあ」
真:局長,給料上げてとは言いませんから,いいかげん部屋をですね。
GM/霧谷:「だって相模原くんのところが空いてるじゃないか」
真:あのですね,女の子と同居するというのが世間的にですね。
GM/霧谷:「大丈夫,彼女気にしないから」
真:いえ,俺が気にするんですというか,彼女にも少しは気にしてほしいというかですね。
紫音:(←電話中)……おーい,もしもし?(笑)
真:あ,ああ,すまん。そういうわけでこっちに来てくれ。
紫音:では,そこで登場します(笑)。
咲耶榎:早っ。
真:またタイミング計ってやがったな。それはそうとして,紫音。
紫音:ん,何?
真:これ,命令書だから。
一同:(笑)
真:死ぬまでこき使っていいそうだから。
GM/霧谷:「何せ人手が足りなくてねえ」
紫音:局長ぉ(笑)。
GM/霧谷:(歌うように)「死して屍拾う者なし♪ 死して屍動けばゾンビ♪ 死して屍食らえばグール♪」
咲耶榎:返事がなければ「ただのしかばねのようだ……」(笑)
紫音:……局長,ボーナスははずんでくださいよ。
GM/霧谷:「そうだなあ。もし大谷にボーナスがでたら,その3分の1をまわしてやろう」
真:おい。
紫音:違いますよ局長。もし大谷にボーナスが出るならその分全部俺にください。
GM/霧谷:「私はそれでも構わないが……」
紫音:だって実行部隊俺でしょ? リスクの高い方に払うのが当然じゃないですか。
GM/霧谷:「なるほど,それもそうだな」
真:(何か反論しようとする)
紫音:大丈夫。大谷に聞こえるところでこんな話してないよ俺(笑)。
真:…………。
紫音:さて,そういうわけだから仕事に入ろうか。それで,何があったんだ?
真:かくかくしかじか。紫音,街の方は騒ぎになってなかったか。
紫音:んー,特には。でも,ワーディングかけながら進むって手もあるじゃん。
真:あ,そうか……。
紫音:でもまあ,まったく誰も見てないってことはないだろうから,道々聞き込みしながら探していくしかないんじゃない?
GM:そこで霧谷さんが口を挟む。「今,追加情報が入ったそうだ」
真:目撃者,いました?
GM/霧谷:「目撃者ってわけではないが,人が突然倒れたという報告があいついでる」
真:やっぱりワーディングか。
GM/霧谷:「そのようだな。ここから南へ,住宅街を抜けて,商店街へ入ったようだが……そこから先,特に変わったことはなさそうだな」
紫音:じゃ,テキは商店街の中? 大分絞れたじゃん。
GM:「そこまではっきりとは絞れない」と地図に丸を書く。その中には商店街のさびれたあたりと,バブル崩壊時に放っておかれてるビル群が。
真:どっちもアヤシイな。
紫音:あのさ。さびれたあたりって,『銀杏横丁』は……。
GM:もちろん入ってます。さて,そんなところでシーンきってよろしいですか? 長くなっちゃったんで……。

 

SCENE 7


G M:さて,お待たせしました咲耶榎さんです。あなたは一杉さんと一緒に銀杏横丁にやって参りました。一杉さん曰く,「とりあえずさ,調べるだけ調べてみて。何もなくても,ここ美味いヤキトリ屋があるからさ。おごってやるよ」
咲耶榎:わーい。
GM/一杉:「(時計を見て)今4時だから……30分くらい仕事してみようぜ。何もでなかったら,

『白い獣がいた!!…かな?

で済ませればいいことだし」
咲耶榎:(頷いて)ヤキトリヤキトリ。
真:すでにやる気なっしんぐだし。
GM:ところでホントに車で来てんの?
咲耶榎:来てますよ。何か問題が?
GM:いや,道幅が狭いから……。
紫音:10円玉でき〜〜とかやられても知らんぞっ。
咲耶榎:その時は修理すればいいことです。
一同:うあっ。
紫音:これだからイイトコのお嬢はっ。
真:こっちは雀の涙なボーナスを奪い合いさえしているというのに……。
GM:ま,そんなような話をしながら銀杏横丁を歩いていくとですね。
咲耶榎:蛍光ピンクのワニが。
GM:そういうのは下水道だ(笑)。ちょっとサイコロ振ってみてくれる? 平目で。
咲耶榎:4ですね。
GM:あ,そう。すると30分たってしまったね(笑)。
咲耶榎:……でも,ヤキトリ屋で話を聞くという手もありますし。
GM/一杉:「ヤキトリ屋か」
咲耶榎:ヤキトリ屋ですね。
真:あーもー,こいつらわ……。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「すんませーん,お客サン,まだ準備中なんすけどね」でもおいしそうな匂いはしてる。店は小さくて汚いけどね。
咲耶榎:気にしません。物珍しそうにあちこち見てます。
GM:これが下々の生活というものか(笑)。
咲耶榎:そうそう(笑)。
真:この女わ……。
GM:そんなことを言われてるとは露知らず(笑),「はいお通しでーす」と。
咲耶榎:何?
GM:野菜スティックにキャベツに味噌と塩。
紫音:結構豪華じゃん。
咲耶榎:ところでおじさん,キャベツの芯って食べられたんですか。
一同:(笑)
真:…………。
紫音:あのー,ここでひとり殺気を放ってる人がいるんですけど(笑)。
咲耶榎:(無視)ところでおじさん。私たち,こういう雑誌の記者なんですけど。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「はん? 聞いたことねえ名前だなあ。どういう雑誌なんだ,これ」
咲耶榎:(いきなり目を輝かせる)前号の特集記事は,

『世界に満ちた神秘!
 逆さアタマのドラえ○んを見た!!
…か?

でした。
一同:(爆笑)
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「…………」
咲耶榎:面白そうでしょ?
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「いや……まあ,ひょっとしたら面白えのかもしんねえけどよ……」
咲耶榎:面白いですって。それはそうと,ここいらに白い獣が現れるって話をきいて取材しに来たんですけど。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「ああ,その話ね」
咲耶榎:ご覧になったことあります?
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「俺はねえけど,見たって話は聞いたな。この近くに,ヤっちゃんが経営してる『ゴールドスター金融』ってサラ金があってだな。そこの三下が爪か牙かでズタズタにされてたって話だ。もう3人目じゃねーかな?」
咲耶榎:3人ですか。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「俺の知る限りじゃな。……おう姉ちゃん。トリ皮せんべいな。レモンかけて食うんだぞ」
咲耶榎:こくこく。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「……うまいか?」
咲耶榎:(激しく頷く)
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「それとウチの特製つくねな。あー……何の話だったかなァ。そうそう,そのゴールドなんちゃらの三下って,正直いけすかねえ連中でさ。一本入ったとこにボロいアパートがあんだけど,そこに昼夜関係なく押しかけてきてよ。近所迷惑だってんだよ」
咲耶榎:ところで,そのアパートって,歩ちゃんの家ですか。
GM:そうですね(にやにや)。
咲耶榎:……おじさん,このつくね,美味しいです。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「おう,そうだろ。砂肝は塩かけて食いねえ」
咲耶榎:(また激しく頷く)ところでおじさん,その獣って,詳しく見た人はいないんですか。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「さあ,どうだろうなあ。何でも動きがやたらに速いそうなんで……でかくて白っぽかったってのは,聞いたけどな」
咲耶榎:なるほどなるほど。と,頷きながら,手もとのメモには妙にかわいい白クマさんがいたりして。
GM/一杉:「なるほど……次回は,

『銀杏横丁に恐怖の殺人白クマ現わる!!…のかな?

だな」
真:それはもぉええから。
咲耶榎:何事もディテールが大事ですから。
GM:さて,そんなことをやっているとだね。
咲耶榎:おじさん,この梅しそ味,ぐーですぅ。
GM:……外で男の悲鳴があがるんだが。
咲耶榎:おや,何でしょう。と言って見に行きます。
GM:「オヤジ,勘定は後で払いに来らぁ」と一杉さんもついてきました。
真:あのー,大谷出ていいですか?
GM:いや,ちょっと待ってください。さて,2人が悲鳴の聞こえた方へ走っていくと,男女の話し声がする。
咲耶榎:おや,先客(←野次馬さん)ですか?
GM:女は「またですか? なんか,下手な鉄砲数撃ちゃ当たる,みたい」と言っている。
一同:は?
GM:それに対して甘い男の声が,「残念ながら,その通りなのさ」と答えています。ちなみに女の子の声はあなたに聞き覚えあり。歩ちゃんです。
咲耶榎:2人に気付かれないようにこっそり覗いてみます。〈隠密〉で判定ですか?
GM:一杉さんが一緒なので難しいような気もするが,とりあえず達成値出してくれ。
咲耶榎:(ころころ)28です。
GM:そりゃ高いな……(ころころ)うーん。それでも気付かれたな。
咲耶榎:(驚いて)えっ? 歩ちゃんが?
GM:いや,連れの方。とりあえず情景描写だけしておこうか。まず,路面に多摩神鳴高校の改造制服を着た……。
真:クールでいなせなあの男が。
GM:違います。ってーか,なんでやねん。
真:え? 違うの?
紫音:楓は制服の改造とか絶対にしないよ。
GM:転がってるのはいかにもなヤンキー兄ちゃんだって。頭スキンヘッドにタトゥーの。
真:(←何か深読みをしたらしい)あ,あれ?
GM:そいつが血塗れで転がってるんだけど,歩ちゃんがそのそばにかがみこんでキスしようとしている。
咲耶榎:はいぃ?(笑)
紫音:それは,なんかヤな状況だなぁ。
GM:ヤな状況はさらに続くぞ。その傍らに立っているのは,背の高い黒いコートの男だ(笑)。
真&紫音:う,うあっ。
咲耶榎:でも私はカオ知らないからなあ(笑)。とりあえずコレ,事件ですよね?
GM:写真撮るの? 隠れたまんまで?
咲耶榎:うん(笑)。
GM:じゃあ,まあ,ホントにしちゃいますね,キス。でもってそこで男が歩の肩を叩いて,「どうやら邪魔が入ったようだ」と言います。歩ちゃんが顔を上げて,君と目が合う。
咲耶榎:…………。
GM:彼女は困ったように笑うと,男とともに路地裏へと去っていきます。追いますか?
咲耶榎:うーん,それも何だか危なそうだし。とりあえず,ヤンキーさんの方は?
GM:虫の息,というところかな?
咲耶榎:では,携帯で救急車を……。
GM:はい,それではここから大谷と久遠紫音は登場OKとします。
一同:は?
GM:君の背後で,獣の唸り声が……。
咲耶榎:えっ?
GM:のっそりと姿を現わしたのは,メタリックな灰色の毛並みを持つ獣。まあ異形なんだけど,雰囲気としてはライオンに似てる。大きさも普通のライオンくらいね。
咲耶榎:それってけっこデカいですよね。
GM:近くで見ると迫力でしょうね。ちょうどその時,あなたの隣にいた一杉さんがくずおれる。
咲耶榎:…………。
GM:さて,登場したい人,いないの?
真&紫音:はいはい,登場します!
GM:では,路面にはいまだ血塗れの学生,倒れている壮年の男,その隣には美少女が巨大な獣と対峙している,と。
真:咲耶榎と獣の間に割って入ります。
紫音:同じく。でもって,獣の目を見て,こっちに対して敵意があるか察知できる?
GM:うーん,ちょっと難しいかな。ああ,《天性のひらめき》使えばOKです。
紫音:(ころころ)あや……7だ。
GM:そりゃよくわかんない。でも敵意はある気がする。
紫音:そうなの?
GM:そうすると,獣は君をじろりと睨みつけ,身を翻す。
真:逃がす気はない。《伸縮腕》で殴ります。
GM:イニシアティブはこっちが上だと思うんですが。逃げる場合って〈運動〉で対決でしたっけ。
真:あー,それは逃げられるなあ……19です。
GM:こっちは26。逃げられましたね。
真:逃げ足の速いヤツだな……。
GM:ところで,遺留品があるんだけどさ。安物のペンダント。
真:ペンダント?
GM:言い忘れてたけど,前足に光るものがくっついてたんですよ。それが逃げる時に鎖が切れて落ちたわけ。紫音と咲耶榎には見覚えがないはず。大谷は……あったっけ。
真:相模原さんがつけてたヤツですよね。見たことあります。それが楓にもらったものだってことも知ってます。
紫音:それって今,楓が持ってたよね?(←3話で泪が楓に渡している)
GM:と,いうのを大谷が知ってるかなんだけど,ま,知っててもいいよな。
真:……楓?
紫音:何? 楓がどうかしたの?
真:……いや……。
真二:(いきなり隣の卓から)やった! とうとうアイツも向こう側の世界へ!
一同:(爆笑)
真:だぁら,他所の卓の邪魔してんじゃねーよてめーわっ!

 いつになっても久島をツッコミ続ける大谷であった。
 どうして隣の卓で聞き耳たててるんだろう……(笑)。

真:ところで,そこの女性なんだが……。
紫音:で,咲耶榎を見て,おや?という顔になります。
咲耶榎:紫音を見てやば!という顔になります(笑)。
紫音:何でおまえがここにいるんだ?
咲耶榎:そこのヤキトリ屋でお食事を。
紫音:いや,そーゆーことを訊いてるんじゃなくて。てゆーか今ごまかしただろおまえ(笑)。
咲耶榎:え? 別にごまかしてません。つくねがすごく美味しいんです。
紫音:だからごまかすな。おまえ,こういう危ないことに首突っ込むなって言ってるだろ。
真:えーと……。
紫音:ああ大谷,紹介する。こいつは俺のマイスウィート☆シスターだ。
咲耶榎:「俺の」と「マイ」がかぶってますお兄様(笑)。
真:……つまり何か? やっぱり脳がアメーバだと?(笑)
紫音:失敬な。つまり,記憶操作する必要はないぞと言いたいのさ。
真:そうじゃないだろ。(咲耶榎に)あんた,UGNに協力してくれるのか?
咲耶榎:銃殺はイヤです。
一同:(笑)
真:アンタにまで命令権はありませんって(笑)。むしろ,こうやって巻きこまれたら後が危険なんで,安全のために一緒に行動して欲しいってのもあるんですが。
紫音:だってさ。
咲耶榎:はあ,まあ,今回だけならということなら構いませんが。
紫音:で,結局何でここにいるわけさ。
咲耶榎:バイトなんです。
紫音:まだあのアヤシイ雑誌やってんのかよ。
咲耶榎:アヤシイとはなんですか。あの獣が今回のネタなんです。ところでお兄様,さっき妙な2人連れが……。
紫音:2人連れ?
GM:(横から)あの……ちょっといい?
一同:はい?
GM:そろそろ,ヤンキーくん息ひきとっちゃうけど,いいの?
一同:(爆笑)
咲耶榎:おにーさま,忘れてましたけどこの人死にそうです。
紫音:ああん? そんな顔面神経痛その4のことなんてどーだっていいんだよ。
咲耶榎:よいのですか。ふーん。
真:おまえらなあっ!
咲耶榎:(あくまで平然と)ちなみに救急車はすでに呼んでます。そろそろ来てもいいころですね。
真:…………。とりあえず,今のうちにこいつらの身元も確認しておこう。
GM:学生の方は,ま,名前はどうだっていいんだけど,『ブリッツクリーク』のメンバーだね。男は……そうだなあ。ポケットを探ると,『んむ』の名刺が出てくるね(笑)。
真:(紫音を見る)
紫音:まあ,何の因果かコイツ『んむ』編集部でバイトしてるらしくってな(笑)。
咲耶榎:何故かそれを聞いてオオイバリしてます。
真:……あー。今のでおまえの位置付けはだいぶ決まった。
一同:(笑)
GM:さて,そんなとこでシーンをきるか。

 

SCENE 8


 ヤンキーくんとついでに一杉さんを救急車にのっけてトンズラした一行は,とりあえずさっきのヤキトリ屋へと。

GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「おう,どうだった姉ちゃん」
咲耶榎:んー,見たような,見ないようなです。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「あれ? 人数が増えてんなあ」
咲耶榎:というか,減ってしまったのですが(笑)。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「一杉のダンナは?」
咲耶榎:それが,酔っ払ってしまったようなのです。お代は私が払いますのでどうぞご心配なく。
紫音:これで足りますか,と言ってカードだすんだよな(笑)。
咲耶榎:ちゃんと現金も持ってます。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「かー,しょうがねえなあのオヤジは! てゆーか姉ちゃん,もう食わねえのか?」
咲耶榎:いえ,お任せコース3人前お願いします。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「おしゃ,毎度ありっ。まずは銀杏に鳥皮,ミニトマトのベーコン巻きね!」
咲耶榎:わーいわーい。
真:あの……場末の飲み屋にしちゃ,妙に芸が細かいんですけど……。
紫音:昨日この人がヤキトリ屋いったんだよ(笑)。
GM/ヤキトリ屋のオヤジ:「ちなみに酒は枡がオススメだな。塩を端っこにくっつけて飲むんだぜ」(笑)

 その時日本酒飲みながら今回のシナリオ考えたというのは,ナイショだ。

紫音:それで,何があったって?
咲耶榎:あの獣が来る前ですけど。2人連れの男女がいました。女の子は神鳴高校の生徒で,男の方は背が高くて黒いコートを着た……(笑)。
紫音:だー。またヤツかよぉ。
咲耶榎:そいで,女の子があのヤンキーさんにキスしてました。
真:はあ? なんだそれ?
咲耶榎:よくわかんないけど,女の子が男に「またですか?」とか言ってたみたい。
紫音:アイツ,女子高生に一体何をやらしとるんじゃあ(笑)。
GM:ちなみに,女子高生の素性については,黙ってる?
咲耶榎:よく覚えてないんです,とか言ってます。
紫音:背格好とかも?
咲耶榎:だから,よく覚えてないんです(笑)。
紫音:本当か! お兄ちゃんにウソはいかんぞ!
咲耶榎:(紫音の目を見て)ほ・ん・と・う・です。
GM:イヤな兄妹だなあ……(笑)。
真:(例によって頭を抱えている)ところで,その男女が立ち去った方向は覚えてる?
咲耶榎:覚えてますが。(GMに)えーと,獣が去っていった方向と同じですか?
GM:同じです。
真:すると,グルって可能性が高いな……しかし何で楓がヤツに……。
紫音:さっきも言ってたけど,なんで楓がでてくるわけ?
真:ああ,おまえは知らなかったんだな。さっきのペンダント,ヤツが相模原さんにプレゼントしたものなんだ。相模原さんは楓にいったん渡したって言ってたから……。
紫音:ふーん。
真:しっかし,相模原さんには言えんな,こんなこと。
紫音:言えないも何も,彼女を探して助ける方が先じゃないの。で,どうする?
真:……今思ったんだが,相模原さんの携帯にかけてみりゃいいんじゃないだろうか。
紫音:そんなの,とっくに壊されてんじゃないの?
真:ダメもとでやってみる価値はあるだろ。確か彼女の端末って,GPSとか使えたよな?
GM:泪の持ってる端末はすげえ高性能だったはずや。本人が機能把握してない可能性はあるけどな。
紫音:(ぼそっと)いや,機械オンチなのはプレイヤーの方で,泪自身は別に……。
GM:うるさい黙れやかましい。
真:はいはい。ま,それは最後の手段だけどな(と咲耶榎を見る)。
紫音:で,わが妹よ。
咲耶榎:(ひたすら食事していた)はい?
紫音:ちなみに俺は手持ちの情報は洗いざらい話しちゃうぞ(笑)。
真:おいおい。
咲耶榎:お兄様,それは聞いたからには協力しろって言ってませんか?
紫音:いいじゃないか。面白そうな事件だろ?
咲耶榎:それはまぁ,確かにそうなんですけど。でも目当ての写真も撮れたことですしねえ。
紫音:そのデジカメか? 何撮ったんだ?
咲耶榎:えー? 何のことですかー?(笑)
真:(横から)おい紫音,俺が言いたいのは,情報交換ってのは手持ちのカードを効果的に使って行うもので……。
GM:大谷,それ微妙にN◎VA思考(笑)。
真:だってこれじゃ情報渡し損じゃないですか!
咲耶榎:これで私が黙っていたら楽しいことになりますねっ。
紫音:黙ってるの?
咲耶榎:くすくす。くすくす。
真:(紫音に)ほら!
紫音:咲耶榎,お兄ちゃんに隠しごとはいかんぞっ。
咲耶榎:だって「情報は金になる」は常識じゃないですか(笑)。
GM:……N◎VAならその通りなんだが,ダブルクロスでそれはやめてほしいなあ(笑)。つーか,君金ならいくらでも持ってんでしょ?
咲耶榎:仕方ないなあ。じゃあこっちも洗いざらい話してしまいますよ。デジカメでさっき撮った写真も見せちゃいます。
GM:うん,するとヤンキーさんにキスしてる歩ちゃんと,その傍らに立つ千葉が写ってますわな。
真:しまった,さっきのヤンキー,発症してんじゃないのか? ブラム=ストーカーのエフェクトとかで。
GM:(ブラム=ストーカーではないんだけどね……)発症と言うか,感染。感染はするだろうなあ,この状況だと。
真:ちょっと外出て霧谷さんに連絡します!
GM/霧谷:「はい,霧谷だが?」
真:局長,マズイことがおきました。さっき銀杏横丁から救急車で運ばれたヤンキーがですね……。
GM/霧谷:「ああ,あの顔面神経痛ね」
真:何で顔面神経痛なのかがよぉわかりませんが(笑)。とにかくご存知なら話は早いです。彼をUGNで抑えておいてください。レネゲイドウィルスに感染した可能性が非常に高いです。
GM/霧谷:「ほぉ,どうして?」
真:少々説明しづらいんですが,オーヴァードと思われる少女が,マウス・トゥ・マウスでキスしてます。
GM/霧谷:「ほおおおぉ。それはそれは」
真:あのね,楽しんでる場合じゃなくてね。
紫音:てーか大谷。端末貸してみ,といって咲耶榎の撮った写真を転送します。
GM/霧谷:「ほぉ。千葉か。あんまり見たくない顔だなあ」
真:それで済まさないでくださいよね局長。
GM/霧谷:「桂子さんに借りつくるのヤなんだけどなあ。まあいいか。保護しておくよ」
真:あ,それとですね。相模原さんの端末,GPSで把握できません?
GM:え? あー……いや。私がGPSってどうなってんだか,よく知らんのだがね(笑)。

 GPS。ぐろーばる・ぽじしょにんぐ・しすてむ。
 そんな文明の利器,松井が知るわけないだろ(笑)。
 すったもんだの挙句,白い獣が泪を連れて逃げた経路だけはわかった,ということになった(いーかげんな……)。泪は銀杏横丁のあたりにいる,らしいのだが……。

真:やっぱこの辺と,あとビル群のあたり,探ってみますかね。あ,それと局長。例の獣なんですけど。灰色のはどうも新条みたいです。
GM/霧谷:「は? それはどういうことだ?」
真:いや,灰色の獣が落としたペンダント,新条の持ち物なんですよ。
GM/霧谷:「ふーむ。しかしそうなると,白い獣はなんなのかな?」
真:千葉がからんでるんですよね。松山は千葉が別の手段で連れ去ったって可能性もありますよ。白い獣は千葉の配下にあるオーヴァードだとか。
GM/霧谷:「それを楓くんが追っていったってことか?」
真:はあ。
GM/霧谷:「どうでもいいが,根拠がぜんぜん無くないか?」(笑)
真:はあ,まあ,そうですね(笑)。こういう仮定の話はさておき,あとこの少女,皆藤歩って名前で,多摩一校の生徒なんですが,この娘について情報集めといてくれませんか。
GM/霧谷:「ああ,わかった。じゃ,後は頼むよ。がんばってなー」
紫音:それと,千葉狂介どうにかしろよ。
一同:(笑)
真:スペシャルチームくらいよこせ,とか。言いたいよな(笑)。
GM:人手が足りないからねえ。
真:イイワケそればっかですね局長。
咲耶榎:ところでねえ。
紫音:うん?
咲耶榎:皆藤歩さんなら,ここのすぐ裏手に住んでるよ。
紫音:それを早く言えーっ!(笑)
真:…………。
咲耶榎:(へーぜんと)ちなみに彼女の家庭環境についてもある程度話しておきますよ。お父さんがロクでなしで,お母さんはとっとと出てっちゃって,今は生活保護を受けて暮らしてる,とか。
紫音:うん,俺もそういう噂は聞いてるな。
真:噂?
紫音:悪い噂ばっかりたっちゃってる娘でさあ。これから口説き落とそうと思ってたんだが,これじゃちょっと二の足踏むよな〜(笑)。
真:この外道がっ。
咲耶榎:ちょっと冷たい目で見ちゃいますよ。
紫音:ま,この写真見る限り,噂は半分本当で半分嘘ってカンジだね。
咲耶榎:つまり?
紫音:んー,だから男に声かけられたら誰にでもついて行く,じゃなくてさ。千葉に言われて男ひっかけてんじゃないかってこと。
真:……まあ,言いにくいんだが,ひっかけた男に,その……。
紫音:どーん!ってカンジだね♪
真:そーゆー手つきやめんか!(←さて,どういう手つきでしょう)
GM:接触感染というか,粘膜感染?(笑)
真:アンタも事細かに説明せんでいいっ!
咲耶榎:で,どういうことなんですか?
紫音:レネゲイド・ウィルスを感染させるにもっとも確実な方法ってことかな。
咲耶榎:はあ。
紫音:上か下かは知らんけどねー。
真:だー! おまえは嫁入り前の妹の前で何言うとんじゃ!
咲耶榎:医学的に言うと別に騒ぐほどのことじゃないような気もしますが。
真:…………。
GM:……おーい大谷,戻ってこーい(笑)。

 その時,大谷は柱に頭をつけてたそがれていた。

紫音:冗談はさておき,どういう経緯でそういうことになったのか,調べなならんでしょ。
GM:では,皆藤さんの家に行ってみるということで。ここでシーンをきります。

 

SCENE 9


GM:では,やっぱり矢面にたてるのは咲耶榎なんだよね?
咲耶榎:歩ちゃんとは友達ですし。
GM:とか言って,さっきしっかり隠し撮りしとらんかった?
咲耶榎:私別に気にしてません。
GM:あ,そう……。じゃあシーン・プレイヤーは咲耶榎ね。歩ちゃんのアパートに行ってみると,これが,表札はがされてたりするんだわ。
咲耶榎:あれ?
紫音:引っ越した?
真:ここ,管理人さんいます?
GM:おるですよ。フツーのおばさんだ。
咲耶榎:あの,すみません。私,皆藤歩さんのクラスメートなんですが。
GM/管理人さん:「え? ああ,歩ちゃんの?」
咲耶榎:はい,そうです。彼女,引っ越したんですか?
GM/管理人さん:「おや,学校に知らせてないのかね,あの娘。(声をひそめて)それが,皆藤のオヤジさん,とうとう蒸発しちまってね」
咲耶榎:蒸発,ですか? それで歩ちゃんは?
GM/管理人さん:「うん,それでアタシもどうすんだろうと思ってたんだけどさ。なんでもオヤジさんの古い友達だって人から連絡があったんだってさ。歩ちゃんと早馬(はゆま)くんが施設に行くの行かないのでモメてる時に……」
紫音:ちょっと待て。もう1人いるの?
GM:あ,咲耶榎なら知ってる。皆藤早馬くん。歩ちゃんの弟さんで,現在小学6年生。わりと活発タイプ。
咲耶榎:姉弟仲はいいの?
GM:うむ。父親がかなりアレなもんで,やっぱ残る姉と弟は支えあって生きてきたんだって感じです。歩ちゃんは普段からちょっと暗めなんで,早馬くんがいっつも励ましてるとか。
咲耶榎:(管理人さんに)それで誰に引き取られたんですか? 引越し先わかります?
GM/管理人さん:「ああ,引越し先の住所なら聞いてるよ。引き取った人は,ええと……ああ,そうそう。大谷真とか言ってたね」(笑)
一同:(爆笑)
真:…………。
GM/管理人さん:「どうかしたのかい?」
紫音:いえ,面白い名前だなぁと。
GM/管理人さん:「そぉ? 普通の名前じゃない?」
真:…………。
紫音:ま,それはともかく,その大谷真さんなんですけど(笑),どんな人でした?
GM/管理人さん:「どんなって,うん,わりといい男だね。まだ若くて。すごく背の高い……」
真:はいはい,もぉいいです。わかりました。
咲耶榎:あ,すみませんねえ。そゆことなんで,住所教えていただいていいですか?
GM/管理人さん:「いいけど……このすぐ近くだよ。ここの商店街抜けて,国道一本挟んだ先にビル街があるだろ?」
真:それって,例のさびれたビル街ってヤツ?
GM/管理人さん:「まあね。あのあたりの高級マンション」
紫音:入居者はめっちゃ少ない,という。
GM:まさしくその通りですな。
咲耶榎:わかりました。じゃ,そっちに行ってみます。ありがとうございました。
GM:じゃ,みんなで歩ちゃんのマンションに向かうということで。シーンきっていいんだろうか?
咲耶榎:あ,待ってください。一応この部屋も調べなくていいんでしょうか。
紫音:引っ越したんなら全部とっぱらってるんじゃないの? ……オヤジの遺体とかでてきたらヤだなあ。
GM:せいぜい「借金を返さねえヤツは人間じゃねえ!」とかいう貼り紙とかじゃないのか(笑)。
真:多分千葉って,こういうとこでは騒ぎ,というか問題行動起こさないと思うんですよ。一般人にはあんまり迷惑かけたがんないというか。
紫音:というか見向きもしないというか。俺たちは迷惑かけられっぱなしだけどなー。
GM:それは君らだからだ(笑)。それはともかく,シーン変えます。