#5 Transfigurations
 

 

PRE-PLAY


 その日,会場にて悲劇は起こったという。

GM:あのさ。何か今日,人数少なくない?
一同:…………。
真:えーと……8人ですね全部で……。
キルスティン:てゆーことは? 1卓3人?
一同:…………。
紫音:今日,プレイヤー4人って予定じゃなかった?
GM:予定でした。久遠紫音と大谷とキルスと咲耶榎。……こりゃ予想外だったなあ。どうしよ。
隣の卓のGM:こっち,2人で何とかしてみましょうか?(←『ドラゴンアームズ』だった)
紫音:いや,そりゃまずいでしょ。こっちが1人削りましょう。
キルスティン:削るって,誰を?
GM:とりあえず,紫音はいて欲しいんですよ。あと咲耶榎も。最初から入る予定でシナリオ組んでたし。
真:じゃあ俺かキルスが抜けるんですか?
GM:あっ……大谷がいてくれないと場をまとめあげてくれる人が。
一同:だから人に頼るなというのに。

 しばし議論の末……。

キルスティン:いいよ。私の方が出てる回数多いし,大谷に譲るよ。
GM:うー,ごめんね。ありがとね。
キルスティン:いいけど。次回出してくれるなら。
GM:それは絶対です。
キルスティン:……そうだよね。いきなりママ殺しといて,それで終わり,はないよねえ〜?
GM:だからごめんってー! ごめんよー!
 
 と,いうわけで前回ヒドイ目にあったまんまのキルスちゃんは今回お休み。
 次回予告に偽りアリ。
 だからマジでごめんって……。

GM:というわけで今回の新規投入キャラは……何故か久遠紫音の妹なんだよな(笑)。
紫音:何故だろう(笑)。
咲耶榎:単に紫音にロイス振ったら「兄弟」が出ただけなんですけどね。
紫音:俺,もともと記憶失ってたって設定なんで。
GM:そうだったっけ。
紫音:キャラシートに設定書いてあるやろ!
GM:どうも久遠紫音はただの漫才師というイメージが……。
紫音:漫才師じゃねええええ!
咲耶榎:えーと,私の設定はちゃんと読んでくださいね。
GM:鋭意努力します。で……なんて読むんだ,この名前……。
咲耶榎:しんぐう・さやかです。
GM:好きね,こういう名前……。
咲耶榎:だめ?
GM:いや,いいんだけどな。えーと,咲耶榎は趣味で三流オカルト雑誌社でバイトしてると。ではロイスはバイト先の記者さんである一杉さん。それからこれが重要NPCなんだけど,クラスメートの皆藤歩(かいとう・あゆむ)ちゃんね。あと,紫音と咲耶榎はロイスでつながってるからいいとして……大谷,楓にロイス持ってた?
真:もし必要なら経験点払ってとりますよ。
GM:じゃあよろしく。
紫音:やっぱり友情パワーってことで(笑)。
真:ええ?
GM:自分が楓と友情のスクラムやりたいって言ったんじゃん。
真:…………(いや,そこまでは……)。
咲耶榎:ところで先に訊きたいんですけど,その三流オカルト雑誌って,何て名前?
GM:ひらがなで『んむ』。
一同:うわぁ,誰も読まなさそうだ!(笑)
GM:私もそう思うが。まあ咲耶榎はその取材でシナリオにからんでもらうので,よろしく。
咲耶榎:ちなみに,お嬢さまなんで高級車で取材してもいいですか?
GM:高級車ぁ?
咲耶榎:ちゃんと購入判定はしました。えーと,高級車……リムジンなど,防弾ガラス付きの高級車全般を指す……リムジン。キャデラック。ベンツ。
GM:じゃあフェラーリ。
紫音:フェラーリ・テスタロッサ。
真:俺はBMのスポーツタイプとか渋くていいと思うんだけど。
紫音:それならやっぱカウンタック・ランボルギーニ。
一同:おおー。
咲耶榎:それだったらコブラがいいです。
真:そうか? あれって,ちゃんと現存ので稼動するヤツは少ないんだぞ。
GM:しかし,どいつもこいつも日本の路地裏には不向きそうだなー(笑)。
咲耶榎:ま,適当に決めときますよ。

 

SCENE 1


 そこはどこかの路地裏である。
 夜。月のない夜。静かな夜。
 苦しげな息遣いだけが聞こえる。
「で? 私にいったい何の用ですか?」
 黒いコートを着た男が,言った。その足元にうずくまる影は,本来ならば,彼より心持ち背の低い少年だったはずだ。
 『それ』は苦しげに身体を丸め,黙って男を見上げていた。
 男は少し待った。穏やかに言う。
「見たところ,随分苦しそうですが……」
「……黙れ……2人はどこにいる……」
 今度は応えがあった。
 しかし意味がよくわからない。
 男はしばし夜空を見上げ,
「……もしかして,神楽に何か言われましたか」
 相手の返事を待たずに,吹きだした。
「あなたも馬鹿だな。……いや,失礼。よくよく人がいいとでもいいましょうか。私は彼らに何もしていませんよ。そんなのは,神楽の苦し紛れの嘘に決まっているじゃありませんか」
 返事はない。くぐもったうめき声は,しかし,了解していないようだとは思える。男は苦笑して,彼の上にかがみこんだ。
「本当ですよ。私は何もしていません。今も病院にいるはずですよ。……少なくとも,今はまだ」
 男はそう言って,さっと差し出した手を引っ込めた。爪の先をかすめて,何かががちりと音をたてる。
「……落ち着いて。困った人だな」
「…………」
「私はね,これでもあなたを心配しているんですよ。あなたは何と言うか……無理をしすぎだ。実に人間らしい。私はそういうのは嫌いではないんですが……」
 男は優しく語りかけながら,性懲りもなく手をさしのべる。指の先で,彼は懸命に起きあがろうと,いや,頭をもちあげようと足掻いていた。だが男は知っている。それにはまだ時間がかかる。
 やがてそっと頭に触れた男の手を,目だけは炯々と光らせ,彼は必死に睨みつけた。
「……こんな言葉を知っていますか? 動物は生に疑問を持ったりしない……生きている理由が生そのものだと」
 喘鳴。低く轟く唸り声がそれに続く。
「『何が言いたいんだ』ですか? つまり……」
 その声すら,だんだんとか細くなっていくことに気付いて,男は微笑んだ。
「……あなたはもう苦しまなくていい,ということですよ」
 すでに返事はなかった。
 男がそっと『それ』を抱きあげた時,男はその,人ならぬ獣の呟きを聞いた。
「すまない……『また今度』はありそうにない……」

 

SCENE 2


GM:実はキルスのオープニングがあったんだけどね。雨の中,アンナさんのお葬式があるという……。
一同:ほー。

 だから次回予告に偽りアリ(笑)。

GM:でもこういうことになっちゃったからねえ(笑)。
キルスティン:(隣の卓から)まったくだー!
真:はいはい,いいからいいから。
GM:ま,そゆわけで,久遠紫音くん,久遠紫音くん,またの名を漫才師久遠紫音くーん♪
紫音:違う! またの名も何もねえ,俺はただの久遠紫音だ。
GM:「漫才師」が苗字,「久遠紫音」が名前(笑)。
紫音:だから漫才師じゃねーつんだよ。
咲耶榎:ただの芸名にそこまでツッコまなくたっていいじゃん。
紫音:芸名じゃねえええ!
真:源氏名。
一同:(笑)
紫音:お兄ちゃんは悲しいよ……。
GM:まあそういうことで。で,アンナさんのお葬式も無事終わり,千葉の新たなちょっかいもなく,3日が過ぎました。で? 久遠紫音はどうしてんの?
紫音:どうしてるって,千葉桂子がどうしてるかによる。まだ彼女の監視は続行中でしょう。
真:結局あの人,UGNに協力する気になったんですか?
GM:曖昧に協力中。常駐じゃないし,無条件で頼ってもらっても困るけど。とりあえず光くんのことは面倒見てくれてるみたいだし。
紫音:あ,そうなんだ。
真:で,松山は?
GM:あれから少しもちなおしてる。ウィルスの増殖も大分収まってきてるみたいだと。で,紫音,言い忘れたんだけどさあ。昨日も学校でジャームがでたんだよね。
一同:何ィ?
GM:面倒だから戦闘は割愛するけどね。それ倒したのはキミだったわけ。幸い騒ぎにはなってないんだけど,ジャームがまた溶けちゃった。
紫音:またスライム?
GM:そう。
真:また“フィーヴァー・ドリーム”?
咲耶榎:なんでそんなにでるの?
GM:それは何故かと言いますと。
咲耶榎:言いますと?
GM:実は今まで説明していなかったことに気がついたのだった! はっはっは!
紫音:はいはい。
真:威張って言わないように。
GM:(無視)そんなわけでそれも今回のシナリオのネタだから。今回は前回広げすぎた大風呂敷のフォロー編でいくのだ。
紫音:まあそれはともかく,“フィーヴァー・ドリーム”がでたんなら桂子さんに訊きにいくよ。どうせまた回収してるんだろうし。
GM:では,毎度の生物準備室だ。
紫音:ちわーす先生。昨日のジャームについて教えて欲しいんだけどー。
GM/桂子:「教えて欲しいって,何を?」
紫音:アンタって,いっつもそうだよね。
GM/桂子:「は?」
紫音:どうせなら知ってることを全部ぱーっと教えてくれてもいいだろうに。
GM/桂子:「…………」
紫音:まあどうせ突っ込んだこと訊いても答えてくんないだろうから,いいんだけどね。
GM/桂子:「……私の知ってることね。まず,アレは“フィーヴァー・ドリーム”に侵されたジャームね」
紫音:そんなことはわかってるよ。
GM/桂子:「じゃあ次。私は,もともとあれが京介の撒いたものなんじゃないかって調査してたの」
紫音:……そうなの?
GM/桂子:「そうよ。でもこの間調査の結果がでたわ。京介と“フィーヴァー・ドリーム”はまったくの無関係よ」
紫音:それは信用するとして,えーと,その「キョウスケ」さんって先生の弟さんの方だよね? じゃあ殺し屋サンな狂介さんは?
GM/桂子:「あの男が何者で,何を企んでるかなんて,私が訊きたいわ」
紫音:じゃあウチらが持ってる情報と大差ないんだ。
GM/桂子:「悪かったわね。そんなことより,ちょっと言わせてもらいたいんだけどね」
紫音:何?
GM/桂子:「いつまでアナタに監視されてなきゃならないわけ?」
紫音:そりゃ,桂子サンが素直になるまでさ。
GM:…………。「素直に」って……。
真:なんか,すっげえイヤラシイんですけど。
紫音:何がですか!(笑)
咲耶榎:(ぼそっと)……身も心も捧げてくれるまで……特に身を……。
紫音:違うでしょう。ってゆーかドサクサにまぎれてもっと危ないこと言ってるんじゃありませんよ!
GM:あのね久遠紫音くん。この人は45歳,しかも子持ちだが?
紫音:でも外見は20代後半なんだよね?
GM:うん(笑)。
紫音:じゃあ問題ないじゃん。
GM:ないかな。
真:正気に返れアンタら。
GM:(無視)いや,てゆーかこの人ひっかけると,もれなく「あの」息子がついてくるぜ?
紫音:楓はついてこないっしょ。不仲なんだし。
GM:うん。そう言えばそうか。
紫音:しかも責任とるなんて誰も言ってないし。
GM:そっか。ならいいのかな。
真:だぁら,正気に返らんかいアンタらわッ!

 大谷真,今宵もツッコミ戦線。
 気の毒に。

咲耶榎:ところで,前回で楓くんは行方不明になったんですか?
GM:というわけでもない。いつの間にかふらりといなくなってただけ。連絡とろうにも携帯持っとらんしあの男。
紫音:世話のやけるヤツだねえ。
GM:ホントにね。でも今回は大谷が友情パワーで面倒みてくれるだろうし。
真:アンタら……。
紫音:(無視)あ,それじゃ一応桂子さんにも訊いてみよう。あのさ。新条楓の動向って,アンタで抑えてる?
GM/桂子:「抑えてるわけないでしょう」
紫音:そっか,そりゃ残念だな。でも少しは気にしてやった方がいいんじゃないの?
GM/桂子:「向こうで母親と思ってないんだからいいのよ」
紫音:ふーん,そうか。向こう「で」ということは,アンタは息子と思ってるわけなのね。
GM/桂子:「…………」
紫音:にやりと笑って外へ出ます。
GM:何で桂子さんにケンカ売りたいわけよ?
紫音:(へーぜん)この親子はからかうと面白い。
GM:あ,そう……で? 結局どうすんの?
紫音:桂子さんはまだ出てこないみたいだよね。
GM:そうっすね。
紫音:帰るまでにはまだ間があるよね。
GM:あるね。
紫音:それじゃ,適当に校舎まわって。
GM:うん。で?
紫音:今日は1年の女の子にちょっかいかけてみようと思う。
GM:あ,そう……。

 と,いうわけでダラダラとナンパを続ける紫音。
 戦果報告……それなり。
 久島真二よりはマシと言っておこうか。 

紫音:アレと一緒にしないでくんない? 一応美形という設定なんだしさぁ。
GM:はいはい。ところで,そろそろ日も落ちかかってきた。校舎にはあんまり人気がない。君は一通りナンパも終えて,そろそろ桂子さんの様子を見に帰ろうかな,などと思っていたころである。1年の教室の中から,男女の話し声が聞こえてくる。
紫音:ほほう?
GM:てゆーか,一方的に男が女を怒鳴りつけているみたいな感じだ。ちなみに,前述の通りあたりには人気がない。
紫音:とりあえず,様子を見てみる。何て言ってんの?
GM:んー。いや……参ったなぁ。難しいなぁ。
紫音:何が。またシリアスシーンとかラブラブ〜とか?
GM:んにゃ。純粋ヤンキー語東国地方方言。
一同:(笑)
真:それは「コルァ,ァに見てンだてめ,アァ?」みたいな?
咲耶榎:巻き舌が重要(笑)。
GM:そうそう,それがうまくできないの(笑)。
咲耶榎:南部アフリカ系の原住民か,みたいな。
真:顔面の筋肉に障害がありますみたいな。
紫音:首かしげて頭上に「!?」とか浮かんでるみたいなノリやね。
GM:ドアを開けるときっとそういう光景が目に入ることであろう。で,ヤンキーAさんは「アレはてめえのせいじゃねーのかよ,あァん!? 黙ってねーでッンとか言えってんだよ,コラ」とかなんとか。
紫音:とりあえず,覗いてみる(笑)。
GM:どうやって覗くの?
紫音:窓から。
GM:廊下側に窓ないんですよ。
紫音:なら,覗けるようにするまでさ。
咲耶榎:……ぷす(人差し指を突き出すジェスチャー)。
紫音:それは障子だっつーのよ。そうじゃなくて,普通にがらがらっとドアを開けます。
GM:え,開けちゃうの? そしたらねえ,男が振り向きます。えーと頭に「!?」マークつけて,顔面を民族的なピアスで装飾して,前衛的な顔面神経痛を患ってる人ですね(笑)。
真:わけわからんス(笑)。
紫音:つまりはいかにもな人なんですね?
GM:そうそう。んで,教室内の椅子と机はがったがた。その合間に,衣服を乱された女の子が仰向けに倒れてる。
一同:…………。
真:あの,乱されたって,どの程度?
GM:何とか最後の一線までは保ってるというか。制服,後で繕うのが大変だろうというか。
咲耶榎:破棄して新しいのを買ったほうがいいんじゃ。
GM:そうね。そうかもね。でもって,彼女は床に倒れたままぼんやり天井を見ている。代わりに男の方が,えー……。
真:「あァ!? ……に見てんだてめ,ッとと失せやがれコルァァ!」(笑)
GM:はい,ご協力ありがとう。で,紫音さんはどうしてんの?
紫音:入り口のところに寄りかかって腕を組んだりしてみる。
GM:ええ? するってーと,
真:「ッけっつってんだろコラ,コロすぞコラァ?」(笑)
GM:はいはい。と,そのように言って……。
紫音:……普通に歩いていって,いきなり蹴り倒す。
GM:ええ?
真:ケンカの基本は先手必勝ですよ(笑)。
紫音:ちなみに爪先で,ちゃんと急所を蹴る。普通の人間なら気絶する程度に。
咲耶榎:違うでしょ? 「気絶しない程度に」でしょ。
紫音:あ,そうね。気絶させちゃったらつまんないもんね。
GM:おいおい……(笑)。
紫音:(無視)で? 気絶させないどいたんだから,タワゴトくらい聞いてあげるよ?
GM:えーと……ヤンキーくんは苦しんでいるので聞き取りづらいんですがぁ(笑)。「……ッ,テメ,オレに向かってンなことして,タダで済むと思ってンのかァこら……お,オレサマをナンだと思ってやがる……」
紫音:どうって……。……虫?
一同:ひでえ!(爆笑)
真:この,毒虫が!(笑)
紫音:人を勝手に楓にしないでください。
GM:いやぁ,さすがの楓ちゃんも毒虫までは言わないと思うが。
紫音:ま,年上だか先輩だか知らないけど,女の子に乱暴するヤツぁ見逃せないな,と言って手を貸します。で,かわいい娘なんでしょ?(笑)
GM:うん,まあ,はかなげ系の美少女。ただし無表情にぼーっと天井を見たままで,反応しないけど。
真:意識はあるんですか?
咲耶榎:単に放心状態なんじゃないですか。
GM:放心状態……ってのもあるんだけどさ。
紫音:ん? まあいいや。とにかく上着脱いで,抱き起こしながら肩にかけてやります。で,男をわざとらしく無視して,「大丈夫かい」と。
真:ダメでしょ,「大丈夫かい子猫ちゃん」くらい言わないと(笑)。
紫音:いや,それは他のPCがいる時でないと。
咲耶榎:誰もツッコんでくれる人がいないと,寒いだけ(爆笑)。
GM:まあ何だっていいんだけどさ。ちなみに,抱き起こされても女の子はやっぱりぼーっとしている。で,ややあって,「……大丈夫です」と呟く。で,着せられた上着を脱いで。
紫音:え?
GM:床にずたずたになって転がってる上着を羽織って,脱いだ上着を袖たたみして君に差し出す。「はい。ありがとうございました」
紫音:えー……上着,大丈夫なの?
GM:大丈夫じゃないんじゃないか。下着まで見えてる。
紫音:だったら改めて上着かけなおして,いいから着てなよ,と言う。
GM/少女:「はあ」
紫音:で,まあ,そこで後ろの顔面神経通な人に向かって言う。わかってると思うけど,次にこういうの見かけたら,殺すよ。
GM/ヤンキー:「…………」
紫音:生徒手帳……は持ってないか。財布の中に運転免許証とか,ある?
GM:免許証はあります。3年生。名前は生富宣行。紫音はひょっとしたら知ってるかもしんないけど,このあたりをナワバリにしてる暴走族『ブリッツクリーク』のヘッドだね。
真:うぁ,アッタマわるっ。
咲耶榎:暴走族? 暴れたり走ったりする人?(笑)
紫音:(つまらなそうに)ふーん? じゃ,こいつはもらっとくよ。
GM/ヤンキー:「あっ,テメ……」
紫音:そうそう,俺に仕返しにくるならまだいいけど,この娘にあたるようなことがあったら……わかってるよな?
GM/ヤンキー:「…………」
紫音:ん? 何? まだ何かタワゴト吐きたいのかな?
GM/ヤンキー:「こっ,この女は人殺しだぞ!」
紫音:あん?
GM/ヤンキー:「この女のせいで,俺のシャテイが何人も死んだんだ!」
紫音:ふーん? 穏やかじゃない話だね。
GM:それだけ?
紫音:寝言は寝てから言えって感じ?
GM:いや,ホントにそれだけなの?(笑)
紫音:じゃあわざとらしく手元の免許証を確認して,じゃ,ちょっと待っててくれるかな,宣行センパイ?(←「センパイ」にアクセントをおいてみましょう)
GM/ヤンキー:「…………」
紫音:ええと,ところで,君……。
GM/少女:「1年の皆藤歩といいます。ところで先輩。今月はクリーニング代を出してる余裕がないのですが」
紫音:……はあ? ああ,いや,いいよそんなこと気にしなくて。
GM/少女:「そうですか。わかりました。それじゃ先輩,どうもありがとうございました」
紫音:ああ。じゃあ,気をつけて帰んなよ。
真:あれ,送っていかないの?
紫音:彼女が出てくのを見送ったら,また教室に引き返します。で,センパイ。話を詳しく聞こうか?
GM/ヤンキー:「んだよ。なんだってんだよ,てめーは」
紫音:……ところで,この免許証って結構高いんだよね?
GM/ヤンキー:「ば,バカ,曲げるなぁ! テメ,俺に何の恨みがあって……」
紫音:はぁん? 女の子にああいう真似をするヤツは,無条件でいたぶっていいと相場が決まってんだよ(と,蹴る)。
真:い,いぢめてるいぢめてる(笑)。
GM:ええと,長くなってきたのでここでシーンを切るかな?(笑)
紫音:わかりました。後でたっぷり痛めつけてやりましょう。

 お,おいおい……。

 

SCENE 3


GM:次,大谷だ。大谷はアンナさんのお葬式に出た後は,特にすることもないねえ。どうする?
真:(考えて)えーと,松山はどうしてます?
GM:桂子さんの助けもありますしねえ。段々持ちなおしているようです。でもまだ絶対安静だけど。
真:じゃあ松山も千葉桂子も問題ないんだな。……すると,まずは鉄砲玉したまんまのバカを探さにゃならんか……。
紫音:愛しの愛しの楓ちゃん。
真:誰が愛しなんですか。
紫音:違うの?
GM:違うの?
真:だから,何でそういうことになるんだ!
咲耶榎:違うの?
真:おまえら……いや,てゆーかアンタ! 楓にラブラブなのは泪でしょうが!
GM:(←泪プレイヤー)それはともかくさー,局長から電話なんだけどさー。どーせまた面倒ごとだろーけどさー(笑)。
真:……いっそ出ないことにしちゃうっていうのはどうだろう。
GM/霧谷:「おや? 出ないのかい? 実は相模原くんと松山くんが大変なんだが……」
真:はぁ!?
GM/霧谷:「出ないんだね? そうかそうか。それじゃ仕方ないな。じゃっ」(笑)
真:ってふざけてる場合じゃないでしょうがアンタわ!
GM/霧谷:「おや,出てくれるのかい?」
真:はいはいはい! すいませんでしたそれで何ですか俺は何をすればいいんですかてゆーか何をさせたいんですかまた貧乏くじですか!?
GM/霧谷:「うん,実はそうなんだ」
真:…………。
GM/霧谷:「いやあ,君は本当に協力的で助かるよ」(笑)
真:…………。で? 相模原さんと松山がどうしたんです?
GM/霧谷:「ああ。実は,病院を脱走したんだ」
真:はあ!? 脱走したって何ですか,いったい!?
紫音:はい,そこで登場します。で,最後の部分だけ聞こえてたらしくって,「何,カケオチ?」とか軽い口調でツッコんであげます(笑)。
真:殴るぞ。
咲耶榎:でも2人で脱走したっていうと普通駆け落ちですよね。
真:…………。確かに。てゆーかマジで脱走したんですか?
GM/霧谷:「うん,脱走したというのは正確じゃないかもな。私としても少々説明しにくいんだが……まず,松山くんの病室から失神した相模原くんをくわえた獣が飛び出してきたんだ。
真:はあ? 獣ってなんですか?
紫音:キュマイラじゃないの?
GM/霧谷:「たぶんそうなんだろうな。で,その後をまたもう1匹の獣が追いかけて出て行って,結局そのまま行方不明だ」
真:それは「脱走」じゃなくて「誘拐」って言いませんか。
GM/霧谷:「かもしれんな。ただ……ああ,いや,とりあえず本部に来てくれないか?」
真:つーか,来いっつってんでしょ。行きますよ。
紫音:何? 何かあったの? 俺も行こうか?
真:いや……とりあえずは俺が話を聞いてくる。
紫音:わかった。んじゃ俺は桂子サンの方を抑えとくよ。
真:ところでケンカでもしたのか,おまえ?
紫音:は? なんで?
真:上着着てないから。
紫音:ああ,それね。気の毒な女の子に貸してあげたんだよ。
真:おまえ……一体何をやってるんだ。
紫音:何をって,ホントに上着貸しただけだって(笑)。
GM:単に耕しておいただけだよね。
咲耶榎:だけだよね。
紫音:種を蒔く前に耕す。これ基本(笑)。
真:だから,正気に返れつってんだよアンタらわ!

 

SCENE 4


GM:では,お待たせしました。咲耶榎です。
咲耶榎:はーい。
GM:『んむ』の編集部です。実はですね。あなたがたはある事件を調べてたんですよ。
咲耶榎:どんな?
GM:えーと,フツーの住宅街なんですけどね。そこで原因不明の爆発があって,その直後ではないんですが,そこの主婦が原因不明の死を遂げてるんですよ。しかも,それだけ妙な事件なのに,捜査の手はどうもユルいです。
咲耶榎:誰かが邪魔してるんでしょうか。
GM:そうみたいです。あなたがたの場合も,いきなり上から取材中止命令がでました。で,一杉さんは「納得いかないっすよぉ!」とか編集長に詰め寄ってる。ああ,ちなみにその死んだ人の名前はアンナ・アストリッド・ビョルク。キルスティンという娘さんがいたり。咲耶榎は独自の情報網を持ってるんですよね? それだったら,つまりUGNの圧力がかかってるってことがわかります。
咲耶榎:なるほど。で,一杉さんと編集長はどうなんです?
GM/編集長:「そんなこと言ったって,しょうがないデフよ。できないものは,できないデフよ」
一同:デフ!?(笑)
咲耶榎:それは,常にトロとか食ってるわけ? 体型丸いのね?
紫音:最悪だー(笑)。
GM/編集長:(構わず)「それでデフね。今度は別の事件を調べて欲しいデフよ」
咲耶榎:別の事件?
GM:ちなみに次回特集の見出しはこう。

『うらぶれた飲み屋街に,血に飢えた獣が出現した!!…か?

一同:どこのスポーツ新聞じゃ!(爆笑)
真:なんつーお約束な……。
紫音:このデブはっ。
咲耶榎:……編集長。毎回それなんですけど。たまには『……かな?』に変えませんか?
GM/編集長:「うーん,ボクちゃんとしては,『……か?』にこだわりがあるんデフけど」
咲耶榎:じゃあ『……かなぁ〜?』とか。
GM/編集長:「語尾を伸ばすというのはちょっとニューウェーブ♪デフね」
真:いや……その,問題はそこじゃないと思うんですけど。つーか,ツッコまれるのを待ってるだろアンタら!
GM&咲耶榎:あっはっは。
真:…………。
GM:「ま,そういうことで,この写真を見て欲しいデフけどね〜」と,編集長が見せてくれたのはとある男の写真だ。クリーム色のスーツに赤いシャツに,ぶっとい金鎖して冬なのにグラサンしてパンチ,みたいな。
咲耶榎:かなりいかにも,ですね。
GM/編集長:「何でもこの男が惨殺死体で発見されたそうなんデフよ」
咲耶榎:ほおお?
GM/編集長:「で,そこいらの飲み屋のおばちゃんおっちゃんたちの話では,白い巨大な獣に襲われたってことらしいデフよ」
咲耶榎:白い獣……。
GM/編集長:「そうデフ。何か心当たりがあるデフか?」
咲耶榎:……北極熊?
真&紫音:だから,何でやねん!(笑)
GM/編集長:「惜しいなァ〜。惜しいなァ〜。ん〜? でも,次回の見出しはそれでもいいデフかな?」
咲耶榎:

『謎の惨殺死体!
 犯人は突如日本にやってきた北極熊!!
……なのかしら?

GM/編集長:「いいデフね〜。いいデフね〜」(笑)
紫音:このデブはっ。
真:てゆーかこんな雑誌つぶした方が世間のためだっていいませんか?
GM:いやあ,そこはそれ,この雑誌を楽しみにしているカルトなファンもいるんだしさ。
咲耶榎:カルト以外にファンっているの?
紫音:いるわけねーよ(笑)。
GM/編集長:「ま,そゆわけで一杉く〜ん。取材を頼むデフよ。それからバイト」
咲耶榎:咲耶榎です。
GM/編集長:「咲耶榎ちゃんねー。キミもよろしく頼むデフよ」
咲耶榎:はーい。それで,結局見出しはどうなるんですか?
GM/編集長:「惜しいなァ〜。惜しいなァ〜。キミはまだまだトゥスッウィート★デフね。見出しはキミたちが撮ってきた写真によって決まるデフよ」
咲耶榎:なるほど,それもそうですね。
GM:納得されちゃった(笑)。ええ,まあ,キリがないのでそんなところで。ええとね,一応地図を貰えます。T市でも人気(じんき)の悪いあたりなんだけど,『銀杏横丁』という飲み屋街があるわけね。件の男なんだけど,その辺の地廻りの『金星会』の一員らしいね。
紫音:濁点抜いただけじゃねーか!
GM:あははは。
真:……? あ,なんだ。『あぶな○刑事』ね。
咲耶榎:……そうなの? 
GM:このネタに即座に反応できるかどうかは,世代の差だと思う(笑)。
紫音:ほっとけっつーの。
GM:ちなみにこの男は金星会でも下っ端のヤクザらしい。最近はサラ金業に手を染めてたということである。編集長から入る情報はそれくらいかな?
咲耶榎:わかりました。
GM:と,いうわけで一杉さんと取材にでかけてください。ところで,シーン変えたいんだけど,他にすることある?
咲耶榎:他に……一応情報収集してみるとか。〈情報:噂話〉とかで。
GM:OK。振ってみて。
咲耶榎:(ころころ)……6,じゃダメだよね。
GM:『銀杏横丁には,おいしい焼き鳥屋さんがあるらしい』。以上。
咲耶榎:……後で行ってこよ。
GM:はいはい(笑)。じゃあシーンきります。

 

SCENE 5


GM:では久遠紫音ですけど。どうします?
紫音:一応センパイに話の続きを聞いておこうか?
GM:やっぱいぢめるの?(笑)
紫音:俺はすでにコイツに人権認めてませんから。
GM:えー,ではこいつはエキストラなので泣きながら話してくれますが,こいつのシャテイが惨殺されるという事件が起こったそうです。彼自身は見ていないんだそうですが,なんでも巨大な獣だとか……。
紫音:アンタ,それマジで言ってんの。
GM/生富:「お,俺も聞いただけだからよ……」
紫音:聞いただけなのになんでそれが彼女と関係あるってわかんの。
GM/生富:「……そりゃおまえ,アレだ。あのアバズレと寝たヤツばっかり次々と……」
紫音:とりあえず蹴り倒して蹴たぐりまわしておこう。
GM:おいおい。
紫音:どうせ,それ以上は情報知らなさそうでしょ?
GM:まあ,そうだが。で? その後は?
紫音:センパイは放っておくとして……UGNは大谷に任せたとして,桂子さんが帰るまでは学校に残ってるつもりだけど。
GM:じゃあまだ1時間くらい時間がありそうですね。
紫音:いや,やることはあるんだけどね?
咲耶榎:女の子ナンパするとか女の子ナンパするとか女の子ナンパするとか。
紫音:そうそう。
GM:うーむ(笑)。積極的に動かないならこちらとしても情報だしようがないんだけど。
紫音:積極的に情報集めてるよ?
咲耶榎:名前とか電話番号だとかスリーサイズとか。
紫音:そうそう(笑)。
真:……おい。なあおい。皆藤歩について情報を集めるとか,ないのか?
紫音:え? ……今やらなきゃダメ?
真:俺だけ働かせるつもりかおまえは!
紫音:じゃあ1年の女の子たちとダベりながら,さりげなく皆藤歩ってどんな子?とか訊いてみます。
GM:うーん,どんな子に声かける? 真面目そうな子? カルそうな子?
紫音:(きっぱり)節操なく。20人くらいに。
GM:あ,そう……。総合すると,評判はあまりよくない。
紫音:そうなの?
GM/1年女子:「皆藤さん?」「えー,あの娘,あんまいいウワサ聞かないよねー」「もともとあんましゃべんないしさー。ちょっと暗い?ってカンジあったし」「けどさー,こないだヨーコが言ってたんだけどぉ,あの娘援交とか売春やってるってウワサじゃん?」「えー,ウソ,マジぃ」「でもあーゆー娘に限って,そんなもんなんじゃん?」「だけどさ,あの娘ってさ,家がマジ貧乏じゃん。なんかさー,修学旅行の時とかもさー,すごい集金遅くて大変だったじゃん。だからさ,援交やって金稼いでんじゃん?」「それだと,ちょっとかわいそうかもねー」……って,おい,誰か止めてくれ。
一同:(笑)
咲耶榎:いや,いつまでやってるつもりなのかなあ,と。
紫音:つーかキリないから情報だけくれ(笑)。
GM:はあ。えーとね。まず暗くてあまりしゃべらない,というのがくる。それから,援交やってるとか売春やってるとか。もっとロコツになってくると,暴走族のヘッドの女だとか,声かけてきた男とは誰とでも寝る,とかね。
紫音:その暴走族云々はまあ嘘っぽいけど。あのアッタマわるそーな兄ちゃんが言ってた,「人を殺した」あたりに心当たりある人は?
GM:さあ,それは特に。あとは,家が貧乏と。父親飲んだくれ。生活保護を受けてるみたい。
紫音:家は? どこいらにあんの?
GM:『銀杏横丁』にあります。
紫音:うーむ。
真:……ところでね。俺ちょっと思ったんですけど。
GM:はい?
真:残り1時間で20人って,ひとりひとりがメチャクチャ短くありません?
紫音:そうだよ。ちょっと話してはい次,みたいな(笑)。
GM/1年女子:「てゆーかぁ,紫音センパイ,何しに来たんですかぁ?」
紫音:え? そりゃ,カワイイ女の子と話しにきたのさ。
GM/1年女子:「そんなこと言って,センパイあたしたちがお話しようとするとすぐ言っちゃいますよねぇ」
紫音:え? えーと。
GM/1年女子:「てゆーかぁ,やっぱ誰にでも声かけるってウワサ本当だったんだ」「節操無いオトコってやーよね」「ねー。ちょっとカオがいいと思ってさぁ」
紫音:…………。
真:じゃなくて。そのイタいロールプレイ,いいかげんにしません?(笑)
GM:えー,そうすると,「はい,そこのナンパしてる人」と後ろから声がかかります。
紫音:あれ。そっちからお呼びがかかるとはお珍しい。
GM/桂子:「ふざけてないで。あなたこれから霧谷さんに会うわよね? これ,渡してくれない?」
紫音:何?
GM:レポート。2つあって,それぞれに顔写真がついてる。どれもそれなりに悪そーな顔。そのうちの1人は紫音が倒した“フィーヴァー・ドリーム”だね。
紫音:これって,昨日“フィーヴァー・ドリーム”に感染しちゃったヤツ?
GM/桂子:「感染して,ジャーム化して死亡した子ね。だいたいの分析結果をまとめておいたわ」
紫音:(考えて)あのさ。俺って『ブリッツクリーク』のことはどのくらい知ってるんだろ。
GM:紫音は泪たちより長くここにいるはずだからなあ。結構知ってるんじゃないか。2人とも『ブリッツクリーク』のメンバーだね。あ,ちなみにもう1人は鷹村が倒したアレ。
紫音:なるほど。ねえ桂子サン。『ブリッツクリーク』って知ってる?
GM/桂子:「何,そのセンスのない名前?」
紫音:いやー,俺もそう思うけどね。そういうチームがあって,2人ともそこのメンバーなんだよ。
GM/桂子:「それで? 言っておくけど,そのあたりのことを調べるのはあなたたちの仕事ですからね」
紫音:あーはいはい。わかってますよ。
GM/桂子:「というか,そうやってへらへらナンパしてないで,とっとと働けばいいのよ」
紫音:結構バカになんないんだよ? 情報集まるしさぁ。
GM/桂子:「どういう情報だか」
紫音:そんなことないって。働いてるんだって俺も。
真:(ぼそっと)でも,最終的に働くのは大谷なんですよね。
紫音:うん(笑)。
GM:決まってんじゃん。
咲耶榎:こくこく。
真:…………。
GM:はい,ではここでシーン変えま〜す♪