SCENE 20


GM:では村瀬……はまだ記憶喪失中なんで,キルスティンのシーンですね。村瀬は強制登場で。
村瀬:てゆーか,俺,今“スリーパー”なんでしょ?
GM:実はね(笑)。
村瀬:本物の俺はどこに行ったんだあ?
GM:まあそれはいいとして。ぴんぽーん♪とベルが鳴るんだけど。
村瀬:仲間って,もう来たの?
キルスティン:……ちょっと早いね。
GM:ぴんぽーん♪ ぴんぽーん♪
キルスティン:はいはい,今開けまーす……じゃなかった! とりあえず覗いてみる!
GM:ちっ。
キルスティン:ちっ,って何じゃあ!
GM:(にやにや)「すみません,神楽と申しますが……」
キルスティン:ぎゃあああああああ!
一同:(爆笑)
村瀬:(のんびりと)キルスちゃん,お客さんかい?
キルスティン:違う違う! 敵! 神楽が来ちゃった! 何で? どうして!?
紫音:そりゃ,アンナさんが会う約束してたからだと思うが(笑)。
キルスティン:ど,どうしよう……。
真:てーか,楓はどうしたかね。俺,ヤツが足止めしてくれると思ってたんだけど。
GM:楓がどこへ行ったかは,また次回。
一同:何ー!?
GM:だってこのまま楓がいたら,出番をヤツにかっさらわれるぜな。
キルスティン:時と場合による! あの男,肝心な時にはいなーい!
一同:まったくだ(笑)。
GM:まあそれはそうと,「アンナさん。アンナさん,いらっしゃらないんですか?」
キルスティン:わあああああああ!
村瀬:よくわかんないんだが,会うとマズイのか。
キルスティン:マズイの。すごくマズイの! ああどうしよう。つまり,真たちが来るまで時間稼ぎしてりゃいいのよね……。
GM:そうこうやってるうちに,かちゃっとドアが……。
キルスティン:わあ! ちょちょちょっと待って待って!
GM:待たないよ(笑)。
村瀬:よくわからんが,裏口とかないの?
キルスティン:あ! そっか! ママ,とりあえずお勝手から逃げるわよ!
GM:マスターとしてもその方が助かる。いや,この家って戦場としては狭いんだわ。
キルスティン:これ以上家壊されたらたまったもんじゃないわよ!(怒)
真:はいはい,いいから逃げるんなら逃げろよ。で,どこへ逃げる?
キルスティン:皆学校から来るんだよね? それじゃ学校の方へ。
紫音:それで,公園とかを通り抜けると近道だったりするんだよね(笑)。
キルスティン:じゃあ公園! そんで走りながら電話かけます!
GM:そーやって電話をかけてるところで,公園を散歩していたおじいさんが,ぱたりと倒れます。
キルスティン:びくう!
村瀬:ああ,おじいさん! どうしたんですか? しっかりしてください!
キルスティン:そういう問題じゃなーい!
GM:(苦笑)すると背後から,「誰に電話をかけているのかな?」と涼しげな声が。んで,アンナさんもがくっと倒れます。
キルスティン:ママ! ママ,しっかりして!と必死に引きずって逃げようとします。
村瀬:でもおじいさんも……。
キルスティン:それはいいからぁ!(泣)
GM:神楽はゆっくりと歩み寄ってきます。ただ,何だか少し苦しそうだ。
キルスティン:……とにかく,ママを背後にかばって言います。直矢兄ちゃん。あなたも戦えるはずよ。手伝ってね。
村瀬:え……?
キルスティン:ううん,ユージン叔父さん! お願い,ママを助けてね!
GM:すると神楽は村瀬を見て,「なるほど,彼が“スリーパー”か。相変わらずだな……よくもまあ節操なく,ころころと姿を変えてくれるものだ」
村瀬:何のことだかさっぱり。
GM/神楽:「まあいい。私が今欲しいのはアンナさんだ。彼女を渡してもらおうか?」
キルスティン:何でよ。ママは普通の人間よ!
GM/神楽:「確かに。しかし,彼女さえ抑えておけば,“スリーパー”は結局彼女のところに帰ってくる。……今回のことでよくわかったが,彼を大人しく手元においておくのは非常に困難なのでね」
キルスティン:まっぴらごめんよ!
GM/神楽:「君は,前回のことで懲りていないのかな?」
キルスティン:うるさーい! 例え死んだって,ママは渡さないから!
GM:神楽はまた嘲おうとして,いきなり咳き込む。
キルスティン:何よ。あんた,何げほごほ言ってんのよ。
GM:はい,そのタイミングで後続組登場していいよー。
真:よっしゃあ!
紫音:(のんびりと)やっこさんが神楽かい?
鷹村:何だか,妙にやつれてるな。
GM:すると桂子さんが「そろそろ限界ね」と。
キルスティン:限界?
GM:あー,いや待て! ワーディングかけてるからしゃべれないんじゃないかこの人!?
一同:(爆笑)
真:マスクしてることにすればどうです?
GM:あれ,カッコ悪いんだよねえ……でも背に腹は変えられんか(泣)。とにかく,彼女はキルスティンに向かって,「“フィーヴァー・ドリーム”の増殖に,身体が耐えられなくなったのよ」
キルスティン:それって……。
GM/桂子:「ええ。ジャーム化が始まるわ」
真:神楽……。
GM:神楽は小刻みに震えている。どうやら,桂子の話も耳に入っていないようだ。それはそうと,注射はどうする?
紫音:さっき桂子がくれたアンプルっしょ? そりゃもちろん,するに決まってるよ。
GM:あ,そう……村瀬は後ろにいるんだよね。じゃあ桂子さんが「ちょっとおとなしくしててね」と首に圧縮型の注射器を。抵抗する?
村瀬:事情がのみこめてないですからなあ。
GM:では,素直に注射された,ということで。そうすると,村瀬は苦しんで頭を抱える。やがて身体の輪郭がぐにゃぐにゃと動き出して,一瞬閃光を放ったと思ったら,そこには2人の人物が倒れている。村瀬と,黒いコートを着た金髪碧眼の白人男性だね。村瀬はここで記憶を取り戻していいよ。
村瀬:わーい。でも,今まで何があったか状況がつかめてないんですけど(笑)。
キルスティン:それはどうでもいいわ。
村瀬:いいのか!
キルスティン:(無視)ユージン叔父さん,大丈夫?
GM/ユージン:「……ね……姉さ……ん?」
キルスティン:違うわ。私,あなたの姪よ。アンナの娘です。ママはあっちにいるわ。
GM/ユージン:「……姉さん……」
キルスティン:叔父さん,ママをお願いね,と言って神楽の方へ……。
真:え? それって危なくないか?
鷹村:危ないと思う。
キルスティン:え? そうかな?
紫音:だって,まだ夢の中にいるみたいな感じじゃん,この人?
GM:そんな感じだね。
紫音:素直に桂子さんに見ててもらえば?
キルスティン:叔父さんは,何言ってもぼーっとしてるんですか。
GM:そうだってば。
真:あー,じゃ,こうしましょう。俺が血で下僕つくって抑えつけときます。
紫音:そこで使っちゃうか(笑)。
真:俺にとっちゃ攻撃手段もがれたも同じなんですけどね(泣)。
GM:はーい,じゃあいいですか? 神楽がとうとう頭を抑えて絶叫した。で,その身体がぼこぼこと波打ち,顔が歪んでいく。
真:うわ。とうとうジャーム化か?
紫音:強酸スライムか?
GM:いや,スライムにはなんない。自分の能力に適した姿に変わるから。もっとも,ジャーム化して暴れた後は自壊して終わりだけど。桂子さん談。ちなみに神楽の場合,フジツボびしびしな外見になってしまわれました。
キルスティン:ふ,フジツボ!?
真:急にザコっぽくなったよな。
紫音:哀れ神楽……。
GM:哀れむのはいいんだけど,そこで局地的な地震が襲います。
紫音:神楽さんお得意のアレ?
GM:そうそう。(ころころのころころ)では侵蝕率160パーセントでしかもマスター裁量版《アースシェイカー》! ただしジャーム化して弱体化はしてるのだ。……全然低い! 〈運動〉で24以上!
キルスティン:それ,全然低くない!
GM:失敗した人は?
キルスティン&鷹村:はーい。
GM:はい,では失敗した人は全ての行動に6個ぶんのペナルティね(笑)。ではいいかな? 戦闘開始するからね!
村瀬:それはいいけど,俺に誰か状況を説明してくれー!(笑)

 

SCENE 21


GM:では,第1ターンですが。一番最初に神楽ですね。でもこのターンはそっちの前衛にエンゲージして終わり!
キルスティン:あの,《戦いの予感》使いたいんだけど……。
真:だって,行動したって近づいて終わりですよ。だったら向こうから近づいてきてもらった方が得でしょ?
紫音:では必殺のクリムゾン・レイジ〜。〈射撃〉《炎神の怒り》《ブレイン・コントロール》《炎の加護》で。
村瀬:やばい。そんなカッコイイ名前つけてたのか。俺なんて「全力パンチ」だったのに。
一同:それはそれでカッコイイ(笑)。
紫音:ところで……(ころころ)全部で52だけど?
GM:避けられんわーい。ダメージおくれやす。
紫音:わりと低いかな? 32点。
GM:まだまだ。
キルスティン:《ガラスの剣》《全知の欠片》《主の右腕》《マシラのごとく》で。
GM:マイナス6個よ。わかってる?
真:どういう下限値になると思ってるんや。
キルスティン:あ,あれ?
GM:1個しか振れないと思うんだけど。
キルスティン:それでも何とか……32!
GM:1個振りで32か。すごいな。じゃあ32,31,30で避け,と……1回目避け。2回目アタリ。3回目避け。
キルスティン:でもダメージが……22点。
GM:ちびっとね(笑)。
鷹村:これって使える? 《イオノクラフト》。
GM:ああ,いいんじゃない? でも6個のペナルティだからね。
鷹村:俺もサイコロ1個しか振れない。
GM:《MAXボルテージ》を足して……あ,いや。《イオノクラフト》だけでいいでしょ。それだと1個振りで4以上だせばいいから。
鷹村:……3。
GM:それは知りません。
キルスティン:鷹村,やる気ありません。
村瀬:《完全獣化》して終わり。
真:下僕に威力10点の剣作らせて渡させます。で,マイナーアクションで受け取って,《伸縮腕》《血族》《ブラッドバーン》で……うわ! 10個振って19ってどういうことだ!
GM:だから知らんって。避けた。ではクリンナップ。
真:HP回復します。
GM:了解。では,キルスと鷹村はまた地震回避判定〜。

 しかし,ここでも2人は回復できず(マスターが32なんて出すからだが)。 
 2ターン目,神楽は《達人の業》《オウガバトル》《急所狙い》でキルスティンを狙う。地震&《達人の業》でマイナス11個という鬼のようなペナルティ。基本的に防御専門の大谷がカバーに入り,ダメージ21点をくらうも,必殺の《ウェイク・オブ・ザ・デッド》を使い,ダメージなし。
 紫音はコンスタントな目を出し続けるが,マスターの出目が爆発して避けきる。そして相変わらず戦闘になると目が爆発する村瀬が高いダメージを叩きだすも,致命傷にはまだまだ。
 そしてマイナス6個のペナルティがあるというのに,しつこく《マシラ》を使いたがるキルスは,

キルスティン:あ……7。
GM:だからあ! それは下限値以下だと言うとろうが!
村瀬:では指……じゃなかった肉球をちっちっち,と振ってあげよう。
鷹村:……どうやって?
 
 さらに,紫音や村瀬に勝るとも劣らない攻撃力を持つはずの鷹村は,

鷹村:あ,とりあえず浮いた。

 それだけか(笑)。

GM:はい3ターン目〜。おなじみの《アースシェイカー》は30! 自分で作っておいてなんだが,面倒くさいなコイツ!
キルスティン:(←半泣き)10とか言ってみる。
真:大人しくこけてろ。
GM:では今度は目の前のケダモノを狙うか。46。
村瀬:20個ダイス振れるけど……。
一同:何じゃ,そりゃ!
真:《炎神の怒り》が強すぎ。しかも何やっても《ブレイン・コントロール》がついてくるし。
村瀬:あれ? 34!
GM:36というと?
村瀬:倒れた!
GM:あれ? リザレクトは?
村瀬:侵蝕率100パーセント超えてます。
GM:うえ? それじゃ,昏倒しててくれ。
村瀬:きゃいんきゃいん。

 記念すべき死亡(←死んでない!)第1号。しかし,多すぎるダイスの数にすっかり混乱する松井には喜んでいるヒマもない(ちなみにすでに残り時間も少なかった)。
 紫音の攻撃が当たり,これで神楽はそろそろ瀕死。
 そしてキルスティンの攻撃はやっぱり当たらない……。
 
鷹村:《雷の槍》《MAXボルテージ》《雷の加護》! 34!
GM:(ころころ)当たった! そろそろ終わらせてくれ!
鷹村:ダメージは……32点。
GM:死んだ! 終わった! それでは駆け足でエンディングいきます!
村瀬:(小声で)わんわん……(←訳:誰か俺を治してください……)。

 

SCENE 22


G M:では,エンディングです。神楽は……もはや何もわかっていないようだ。その目が虚ろになったかと思うと,彼の岩のような装甲にぴしぴしとひびが入り,やがて砂になって崩れていく。
キルスティン:ママ! ユージン叔父さん!
GM:ふふふ。
キルスティン:え?
GM:ふふふのふ。
キルスティン:な,何,その笑いは?
GM:ふふふふふ。気付くと,下僕に抑えつけられているユージンが低い笑いを漏らしている。
一同:げーっ!
GM:力ずくで振り払わせてもらおう。えーと,これ,判定は?
真:俺の能力値と対抗判定じゃないですかね。〈運動〉で。
GM:こっちは71。
真:無理だっつーの!
キルスティン:ゆ,ユージン叔父さん!?
GM:あなたがたが見守る前で,ユージンがゆらりと身を起こす。そして,黒いコートに包まれた肢体はそのまま,顔と髪の色が変わっていくわけだが。
キルスティン:きょ,きょ,きょきょきょ……。
GM:その通り! お待ちかねの千葉狂介さんだ! 彼は狂ったように哄笑したあと,「いや助かりました。あなたがたのおかげで,やっと目覚めることができましたよ」と。
キルスティン:ど,どういうことよ!
真:まさか,最初から?
キルスティン:あんた,叔父さんをどうしたのよ? 叔父さんはどこ?
GM/千葉狂介:「さあて,どこでしょうね?」
村瀬:まさか,おまえの体内に取りこまれたのか?
GM/千葉狂介:「いえいえ,そんなんじゃありません。私とユージンはある意味同一の存在。しかし,私にとって彼はどうも目障りですがね」
紫音:まさか,多重人格か?
GM/千葉狂介:「そんな単純なものでもありませんよ。ま,それよりもっと大切なことがあるでしょう? 例えば……」と彼はアンナに向けてすっと手を伸ばす。
キルスティン:…………! 身体はってかばいます!
真:こっちもカバーに入る!
GM:ぶー。ここはマスター裁量なので。
キルスティン:そんなんありかー!?
GM:(淡々と)アリです。それがダメなら全体攻撃というまでだ。
キルスティン:ひ,ひっでえー! ママぁ!
GM:千葉の放った光が,あなたの肩を撃ちぬいて,アンナの胸に吸い込まれる。心臓の近くを撃ちぬいてる。致命傷だね。
キルスティン:…………。
真:ええと……絶対死ななきゃダメ?(とGMにメモを見せる)
GM:ああなるほど。でもこの時点では,死んだことにしてくれ。話進まないし。では,倒れ伏したアンナさんが君を見上げているが……。
キルスティン:……ママ……。
GM/アンナ:「……き,キルスティン……?」
キルスティン:ママ……やだよ,ママ,死なないで……ママがいなくなったら,私……。
GM/アンナ:「キルスティン……ごめんね……私の……ために……」
キルスティン:ママ!
GM/アンナ:「ママは……ごめんね……でも,私は,いつまでも,あなたを……愛して……」
キルスティン:私もママが大好きだよ! お願い,私をおいて行かないで……。
GM:アンナはかすかに微笑み,それから目を閉じる。次いで,あなたの手から彼女の手が力を失って滑り落ちる。
キルスティン:…………。
GM:そこで後ろから声がかかるんだが……「私が憎いですか?」と。
キルスティン:千葉……。
GM:千葉は君に向かって,赤い液体の入ったアンプルを投げてよこす。
紫音:それは……?
GM/千葉狂介:「私が憎いですか,キルスティン?」
キルスティン:…………。
GM/千葉狂介:「憎いでしょうね。でも,だからと言ってあなたに何ができます? 何の力もないあなたに……」
キルスティン:……どうして……あんたは……。
GM/千葉狂介:「私はね,それでは面白くない。だからあなたに戦うための力をあげよう。もし,本当にお母さんの仇を討ちたいというなら,それを使いなさい」
紫音:そういうことか……。
真:“フィーヴァー・ドリーム”!
GM/千葉狂介:「あなたとまた会うのは,その答えを出してからにしましょう。……それでは……」と,千葉はここで背中を向けます。
紫音:どうせ無駄だろうけど,一応クリムゾン・レイジを撃ちこむ。
GM:うん,エンディングだからね。判定は省かせてくれ。彼の姿は迫っていた夕闇の中に溶け込んで消えていく。紫音の一撃もまた同様だ。
キルスティン:…………。
真:キルス……。
キルスティン:その薬をがっと掴む。それで即座にうちこもうとするけど……そこで手が止まる。で,もっかいママを見る。
GM:アンナさんは眠っているような穏やかな顔をしている。さて,彼女のためにその薬を使うかどうかは,次回決めていただこう……。



「……すまない……『また今度』はありそうにない……」

 雨の中,棺の蓋が閉ざされる。
 だが,悲しみに沈む暇などない。
 キルスティンにつきつけられた選択肢は,この現実に屈服するか――
 あるいは,悪魔の差し伸べた手をとるか。
 そして雨の中,血に飢えた獣が街を疾る。
 彼の名は――

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