G
M:では,エンディングです。神楽は……もはや何もわかっていないようだ。その目が虚ろになったかと思うと,彼の岩のような装甲にぴしぴしとひびが入り,やがて砂になって崩れていく。
キルスティン:ママ! ユージン叔父さん!
GM:ふふふ。
キルスティン:え?
GM:ふふふのふ。
キルスティン:な,何,その笑いは?
GM:ふふふふふ。気付くと,下僕に抑えつけられているユージンが低い笑いを漏らしている。
一同:げーっ!
GM:力ずくで振り払わせてもらおう。えーと,これ,判定は?
真:俺の能力値と対抗判定じゃないですかね。〈運動〉で。
GM:こっちは71。
真:無理だっつーの!
キルスティン:ゆ,ユージン叔父さん!?
GM:あなたがたが見守る前で,ユージンがゆらりと身を起こす。そして,黒いコートに包まれた肢体はそのまま,顔と髪の色が変わっていくわけだが。
キルスティン:きょ,きょ,きょきょきょ……。
GM:その通り! お待ちかねの千葉狂介さんだ! 彼は狂ったように哄笑したあと,「いや助かりました。あなたがたのおかげで,やっと目覚めることができましたよ」と。
キルスティン:ど,どういうことよ!
真:まさか,最初から?
キルスティン:あんた,叔父さんをどうしたのよ? 叔父さんはどこ?
GM/千葉狂介:「さあて,どこでしょうね?」
村瀬:まさか,おまえの体内に取りこまれたのか?
GM/千葉狂介:「いえいえ,そんなんじゃありません。私とユージンはある意味同一の存在。しかし,私にとって彼はどうも目障りですがね」
紫音:まさか,多重人格か?
GM/千葉狂介:「そんな単純なものでもありませんよ。ま,それよりもっと大切なことがあるでしょう? 例えば……」と彼はアンナに向けてすっと手を伸ばす。
キルスティン:…………! 身体はってかばいます!
真:こっちもカバーに入る!
GM:ぶー。ここはマスター裁量なので。
キルスティン:そんなんありかー!?
GM:(淡々と)アリです。それがダメなら全体攻撃というまでだ。
キルスティン:ひ,ひっでえー! ママぁ!
GM:千葉の放った光が,あなたの肩を撃ちぬいて,アンナの胸に吸い込まれる。心臓の近くを撃ちぬいてる。致命傷だね。
キルスティン:…………。
真:ええと……絶対死ななきゃダメ?(とGMにメモを見せる)
GM:ああなるほど。でもこの時点では,死んだことにしてくれ。話進まないし。では,倒れ伏したアンナさんが君を見上げているが……。
キルスティン:……ママ……。
GM/アンナ:「……き,キルスティン……?」
キルスティン:ママ……やだよ,ママ,死なないで……ママがいなくなったら,私……。
GM/アンナ:「キルスティン……ごめんね……私の……ために……」
キルスティン:ママ!
GM/アンナ:「ママは……ごめんね……でも,私は,いつまでも,あなたを……愛して……」
キルスティン:私もママが大好きだよ! お願い,私をおいて行かないで……。
GM:アンナはかすかに微笑み,それから目を閉じる。次いで,あなたの手から彼女の手が力を失って滑り落ちる。
キルスティン:…………。
GM:そこで後ろから声がかかるんだが……「私が憎いですか?」と。
キルスティン:千葉……。
GM:千葉は君に向かって,赤い液体の入ったアンプルを投げてよこす。
紫音:それは……?
GM/千葉狂介:「私が憎いですか,キルスティン?」
キルスティン:…………。
GM/千葉狂介:「憎いでしょうね。でも,だからと言ってあなたに何ができます? 何の力もないあなたに……」
キルスティン:……どうして……あんたは……。
GM/千葉狂介:「私はね,それでは面白くない。だからあなたに戦うための力をあげよう。もし,本当にお母さんの仇を討ちたいというなら,それを使いなさい」
紫音:そういうことか……。
真:“フィーヴァー・ドリーム”!
GM/千葉狂介:「あなたとまた会うのは,その答えを出してからにしましょう。……それでは……」と,千葉はここで背中を向けます。
紫音:どうせ無駄だろうけど,一応クリムゾン・レイジを撃ちこむ。
GM:うん,エンディングだからね。判定は省かせてくれ。彼の姿は迫っていた夕闇の中に溶け込んで消えていく。紫音の一撃もまた同様だ。
キルスティン:…………。
真:キルス……。
キルスティン:その薬をがっと掴む。それで即座にうちこもうとするけど……そこで手が止まる。で,もっかいママを見る。
GM:アンナさんは眠っているような穏やかな顔をしている。さて,彼女のためにその薬を使うかどうかは,次回決めていただこう……。
「……すまない……『また今度』はありそうにない……」
雨の中,棺の蓋が閉ざされる。
だが,悲しみに沈む暇などない。
キルスティンにつきつけられた選択肢は,この現実に屈服するか――
あるいは,悪魔の差し伸べた手をとるか。
そして雨の中,血に飢えた獣が街を疾る。
彼の名は――
Next, “Transfigurations,” see you later.
|