SCENE 13


GM:さて,さくさく話を進めましょう。ホントはまだ部屋いっぱいあるんですが,今回は楓くんがいますので,すいすい目的地に辿りつけます(笑)。
雨追:おお。便利ですなあ。
光:もう妨害もなし?
GM:ない。楓がいるし(笑)。
泪:では実験室ですか。
GM:そうですね。扉が開くと,そこは3方がガラス張りになった広いブースだ。ガラスの向こうにはいくつものカプセルと膨大な計器類。神楽はガラス壁の傍らで悠然と腕を組んでいる。「ようこそ皆さん。遅かったね」
光:来たぞ神楽! 水上さんを返せ!
GM:神楽は薄く笑って答えない。で,楓に「こういう結末になるとは意外だったな。いや,予想通りというべきかな?」と言い,楓は「裏切ったのは貴様が先だ」と答えている。
泪:神楽さん,あなたは本当に楓を利用しただけなの? あなたがたの理想はどこへいったの?
GM/神楽:「理想ね。楓のあれは理想ではなく夢物語というのだよ。私は違う」
光:ふざけるな! おまえの道具になるのが,理想かよ!?
GM/神楽:「少なくとも彼らに居場所を提供してやることができるのだよ。そうとも楓,私がおまえを拾ってやったようにな」
光:…………。
GM:楓は「言いたいことはそれだけか?」と歩き出す。
キルスティン:ちょっと待ちなさいよ楓。
光:そうだ。俺らにもやらせろ! あいつは絶対ぶん殴ってやる!
GM:と,神楽の方に歩いて行っちゃっていいの? 神楽の後ろからすっと磨亜矢が姿を現わして,こっちに歩いてくるんだが……。
キルスティン:磨亜矢!
泪:キルスさん,ちょっと待ってください。
光:水上さんの様子は?
GM:前回ラストと同じカンジ。
キルスティン:ブラック磨亜矢になったと?
GM:いや,そういうんでもないです。邪気はないんだけどどこか酷薄な感じもするというか。
キルスティン:冷たい感じ?
GM:でもないですね。何と言うか,無邪気に虫の足をもいじゃうような。
雨追:それって,子供返りしているんでは。
GM:うーん。どうでしょう。
キルスティン:磨亜矢って,二重人格だったの?
光:うーん……。
GM:さて,そうこうしていると光の後ろから明日香が飛び出してきて,「磨亜矢!」と叫んで走り寄ります。
泪:そ,それはマズイ!
キルスティン:肩つかんで止めます!
GM:ダメです。今マスターシーンですんで。
一同:……ムービーかいっ!(怒)
GM:(淡々と)明日香が「みんな心配してるんだよ。帰ろう磨亜矢」と磨亜矢に手を伸ばす。で,磨亜矢は優しく微笑んで明日香の肩を抱きしめる。
泪:…………。ま,まずいまずいまずい……(汗)。
GM:ムービーだからダメです。で,きみたちの目の前で,明日香の背中から磨亜矢の手が突き出てくる。血がばっと飛ぶ。
一同:や,やっぱり〜!
GM:磨亜矢が腕を引きぬくと,明日香は言葉も発さずとさっと床に倒れる。
光:その前に駆け寄って抱きとめる!
GM:いや。申し訳ないんだが,そこで戦闘に入ります。駆け寄るのはターン使ってやってください。ところで,松山。
光:はい?
GM:ちょっと,これ(とメモを渡す)。
光:(読んで)……え? これ,何ですか?
GM:主人公特権(笑)。
光:特権というわりには,かなりリスキーな感じがするんですが……。
 

 

SCENE 14


G M:では1ターン目。位置関係だけど,君らがいる位置がひとつのエンゲージ。向こうに磨亜矢がいて,さらにその向こうに神楽がいる。で,神楽,ついで楓なんですが,(ざらざらとサイコロを振り)とりあえず殴りあってます。互角のようです。
一同:い,いくつサイコロ振ってる?(汗)
GM:秘密です。で,雨追は?
雨追:うーむ。水上磨亜矢を攻撃するわけにはいきませんし,あの2人がやりあってるのに割りこむのも危険そうです。ひとまず相模原さんのカバーにはいったということで。行動遅らせです。
泪:光さん,明日香さんをこっちへ!
光:わかってる!
GM:でもとりあえず明日香のとこまで走って終わり,だな。
泪:明日香さんをこっちへ渡してもらうくらいはできませんか?
GM:いいことにしよう。しかし何? 投げ渡すの?(笑)
雨追:では自分が受け止めましょう。
光:相模原! 明日香は頼んだ,と言って,ていっ(笑)。
GM:で,磨亜矢なんだけど,彼女は明日香の血に濡れた手のひらをみつめて立ち尽くしている。行動パス。
光:おや? ということは,水上さん,もしかして……。
GM:はいはい。説得は次のターンに回してね。で,キルスは?
キルスティン:神楽に向かって突撃します。
GM:……えっ?(汗)
キルスティン:だって,磨亜矢を攻撃するわけにはいかないし,私接近戦しかできないから近づかないと。
GM:まあそうだけど。いいんだけど……そもそも何のためにあの2人にタイマンやらせてるかというと……。
雨追:バケモノの相手はバケモノに任せておいてはいかがと思いますが。
一同:(笑)
GM:楓が殴り合いつつ雨追をぎろっと。
雨追:あわわのわ。
GM:しかしその通りなんだよなあ(笑)。キルス,本当にいいの?
キルスティン:でもやることないし。もう近寄っちゃったんだけど。
GM:うーん。では神楽とエンゲージできたことにしよう。次ターンがコワイが……。
泪:では私の番ですね。明日香さんに《癒しの水》《ファクトリー》《ポイズンフォッグ》です。24点回復しましたが。どんな感じです?
GM:目覚めない。
泪:ええ? やっぱり昏睡状態から回復させなきゃダメとか?
GM:どうでしょう。傷自体はふさがったが,「回復した」ようには見えない。
泪:どうして!?
GM:さあ,何故でしょう。ちなみにリザレクトも起きていないようですよ。当然ながら。
泪:…………。ど,どうしよう……。
GM:この段階ではどうしようもないんじゃないかな。で? 次ターンなんですけど。
雨追:神楽に突っ込んでいった方がおりましたなあ。
キルスティン:え? え?
GM:うーむ。神楽の攻撃なんだけど,キルスがエンゲージしてきたなら,当然周囲攻撃するよな。
一同:あーあ。
キルスティン:え? え? え? やっぱ,かなりまずかった?
GM:最初からそう言ってるやんけ。
泪:大丈夫ですよ,キルスさん。
キルスティン:え?
泪:まだ侵蝕率100%いってないでしょ? リザレクトかかりますよ(笑)。
キルスティン:す,すでに死ぬの前提?
GM:(ころころ)58。ま,避けられる可能性もないではないから。
一同:(笑)
キルスティン:……ダメージください。
GM:ダメージは振るまでもないよな。
キルスティン:…………。
泪:はいはい,いいからリザレクトしましょうね(笑)。
キルスティン:うう……じゃあ吹き飛ばされてガラス壁につっこんで,血まみれでぴくぴくやってます。
GM:そこまでソーゼツ?(笑)
泪:ところで楓は?
GM:(ころころ)楓は避けてます。
光:やっぱバケモノじゃねーか。
GM:だから,そうなんだよこの2人は(笑)。では楓くんは無謀なキルスちゃんに向かって「足手まといだ,下がっていろ!」と一喝。
キルスティン:あの……一応血まみれで倒れてる女の子に,それ?
一同:(爆笑)
泪:「大丈夫か」の一言もないし(笑)。
雨追:ひ,ひでえ……(笑)。
キルスティン:下がれも何も,吹っ飛ばされてるんですけど……。
GM:無視無視。2人でどっかんばっこん殴りあってるよ(笑)。
キルスティン:…………。
光:キルスティン,とりあえずほっとけ,あの2人は(笑)。
泪:問題は磨亜矢さんですよ。
キルスティン:(急に元気)そうだ! 磨亜矢を助けなきゃ!
GM:説得するなら1ターンかけて帰ってね。
一同:(笑)
キルスティン:鬼ですかあんたわ……。
GM:(無視)はい,で,雨追は?
雨追:私ですか? しかし水上さんを何とかしろと言われても,どう何とかするんですか相模原さん。
泪:いや私に訊かれても……説得,なのかなやっぱり……。
雨追:はあ,しかし,私に水上さんを説得しろと?
泪:…………。いえ,いいですやっぱり(笑)。
GM:雨追の説得。「無駄な抵抗をやめて投降しろ!」とか?
光:お母さんは草葉の陰で泣いているぞー(笑)。
雨追:(淡々と)そもそも私,水上さんと面識ないんですよねー。行動遅らせます。説得は主人公にお任せするということで。
光:はあ〜?
一同:よっしゃあ,行け主人公!(笑)
光:ええ? それ,アリですか?
GM:アリです。ここが見せ場だからがんばってね主人公。
光:ええ?
GM:マジな話,説得内容如何によって,判定にボーナスつけるからね。
光:ええー?(と泪を見る)
泪:私はパス。そーゆーのは光さんにお任せします。
光:さ,相模原〜? それ,アリか〜?
泪:アリです。
光:おーい。
キルスティン:友だち甲斐というのはなし?(笑)
泪:(のプレイヤー)……何故かというと,もうシリアスシーンはやっとられんわ。疲れた。
一同:(爆笑)
キルスティン:本音が出やがったか!(笑)
光:俺だけに恥ずかしいシーンに耐えろっていうの!?
泪:冒頭のラブシーンだけで十分ですこんなの。……いや,マジな話,泪と磨亜矢はあんまりカラミないんで。光に任す。
キルスティン:やっぱ恋に血迷って友情を見失ってる……。
泪:ヒロインキャラにはありがちですね(←そりゃ偏見だ)。
GM:ひでえ女だ(笑)。それはそうと,雨追が行動しないなら,次は磨亜矢の番なんだけど。
一同:ぎく。
GM:(ころころ)……うーん。ま,攻撃は仕掛けてこないんですが……その表情はめまぐるしくいれかわり,自分に言い聞かせるように何かぶつぶつ呟いている。
キルスティン:磨亜矢……。
雨追:ほら,松山さん。説得です説得。
光:おーまーえー,他人事だと思ってるだろー!(笑)
GM:で,光の番だけど? あるいは,必殺技早めに使っておいた方がいいかもよ?
光:いや,それは磨亜矢を説得してから使いたいな……。
GM:では早よやるべし。
光:う……。

 光くん,思わず咳払い。

光:(優しい声で)水上……もういいんだ。戻ってこいよ。
泪:(ぼそっと)あ,磨亜矢さんまで呼び捨てになった。
光:外野,うるさいよ!(笑)

 どうも泪プレイヤー,シリアスシーンに耐えた反動がきているようだ(笑)。

光:(気をとりなおし)みんな心配してる。わかるだろ? みんな,おまえを取り戻すために来たんだ。
GM/磨亜矢:「みんな……?」
光:そうだよ。おまえは俺たちの友だちだから,絶対連れて帰る。
GM/磨亜矢:「帰る……どこへ……?」
光:おまえのいるべき場所はここじゃない。俺たちのところだ。
GM/磨亜矢:「…………」
光:明日香も,俺も,キルスも,モガミバラも,雨追も,みんなおまえのために来たんだ!
泪:(いきなり)モガミバラじゃねーつーねん。
光:……へっ?
一同:(一瞬の沈黙ののち,大爆笑)
キルスティン:はいカットカットカット!(笑)
光:ぎゃ〜っ! せっかく恥ずかしいシーンに耐えてたのにー!
泪:あたしゃサガミハラだ! モガミバラって誰だ!(笑)
GM:ナイスタイミングなボケをありがとう,松山(笑)。
雨追:何をどう読み間違えているかはよくわかりますな(←「相模」と「相撲」を混同しているせいらしいです)。
光:ご,ごめんなさーい! だって〜!
GM:今ので拍子抜けたから,このターンの説得は失敗ということで(笑)。
光:えー!
キルスティン:この馬鹿者ー!
光:ぎゃー! ごめんなさーい!
GM:いえ,それは冗談ですけど(笑)。ちなみにキルスティンは?
キルスティン:仕方ないから,すごすご下がりますよ。
一同:(笑)
キルスティン:くそぉ。あたしだって磨亜矢の説得したかったのに。
GM:それは次ターンでやってください。で,泪ちゃんは?
泪:……やっぱ《癒しの水》は無駄なんですよね?
GM:単純にHPの減少による昏倒ではない,とだけ言っておこう。
泪:しまった,そういえば《中和剤》も《ヨモツヘグリ》も持ってない……あの,GM。楓に《アクセル》かけるのって意味ありますか?
光:あれってイベント戦闘じゃないの?
GM:いや,実は大いに意味がある。今のところ楓と神楽の戦闘力は拮抗してるので,援護の如何によってはその均衡を崩せるかもしれない。
泪:あれって均衡崩すと何かいいことあるんですか?
GM:さあ,どうでしょう(にやり)。
泪:どうもGMの罠を感じるんですが,とりあえず楓に《アクセル》を。
キルスティン:……ん? 私に《癒しの水》をかけてくれりゃよかったんじゃないか?
泪:あー,それは無駄だから。
キルスティン:何で!?
泪:どうせ攻撃をくらえば一撃で死ぬレベルなので,回復してもあまり意味がないんですよ。
一同:(笑)
キルスティン:泪ちゃん……やっぱアンタってそういう女ね……。
GM:で? 雨追どうする? 何もしないなら楓のセカンドアクションに進めちゃうけど。
雨追:(考えて)ひょっとして,同じエンゲージ内に入らなければ神楽の攻撃はくらわないんですか。
GM:射撃攻撃があるからくらわない,とは限らないけど。
泪:でも今は楓でいっぱいいっぱいのはずですからね。わざわざこっちのエンゲージを攻撃してくる意味ないと思いますよ。
雨追:ですね。では《光の弓》《全知の欠片》と……。
泪:《ピンポイント・レーザー》を組んだ方がいいです。ボスは装甲値が高いものですから。
雨追:ではそれで……17だと当たらないですな。
GM:うん,当たらない。
雨追:やっぱり無駄ですか?
泪:いえ,クリティカル値が下がってるから,ダイス目如何によっては十分通用しますよ。
GM:では楓のセカンドアクション。(ざらざら)うむ。今度は結構ダメージを与えたな。3ターン目。神楽と楓はやっぱりタイマン勝負。
一同:はいはい。
雨追:ではその隙に後ろから撃ちます。《光の弓》《全知の欠片》《ピンポイント・レーザー》で(ころころ)今度は高いです。36では?
キルスティン:これはいったか?
泪:高い。確かに高いけど,神楽相手だと厳しいかも……。
GM:だー,避けられん!
一同:よっしゃあ!
雨追:しかし《ピンポイント・レーザー》はいってるのでダメージは低いですぞ。たった12点です。
GM:いや,装甲値が高いので,無視はイタイです。実ダメージはいってしまいました。では,磨亜矢ですね(と,サイコロを振る)。うーん。彼女は震えながらがくりと膝をつく。そして,倒れたままの明日香をじっと見ている。小声で「明日香ちゃん……明日香ちゃん……私が……」と呟いているようだ。
泪:あとヒトオシってとこでは?(と,光を見る)
キルスティン:あ,ところで《先手必勝》使ってもいい?
GM:あれはセットアップに使うモンだが……まぁいいか。何すんの。
キルスティン:光より先に磨亜矢を説得する!
一同:(爆笑)
光:キルスティン……おまえなあ……。
GM:いいから,2人でやんなさい2人で。
キルスティン:じゃあ磨亜矢に言います。帰ろう,磨亜矢。また一緒に学校に行こう? 光も泪ちゃんも,もちろん明日香も一緒だよ。
GM/磨亜矢:「明日香……明日香ちゃん……? 私がやった……? 私,どうして……?」
キルスティン:しっかりして! 負けちゃダメだよ,磨亜矢。明日香は,磨亜矢を助けようとしてがんばったよ? だから,今度は一緒に明日香を助けよう。
GM/磨亜矢:「助ける……私が……でも,殺したのも,私……」
キルスティン:まだ死んでないよ!
光:一緒に明日香を助けるんだ。おまえもだ,水上磨亜矢。
GM/磨亜矢:「え……?」
光:もう1人の磨亜矢。おまえだよ。俺たちの知ってるおまえも,知らないおまえも,みんなおまえだ。
キルスティン:磨亜矢。そうだよ。あなたは,私たちの友達だよ。
光:だから戻ってこい。
GM/磨亜矢:(ころころ)磨亜矢は泣き濡れた顔をあげる。その顔は,あなたたちが知っている磨亜矢のように思える。「でも明日香ちゃん……明日香ちゃんが……」
光:明日香は大丈夫だ。俺たちが必ず助ける。
GM/磨亜矢:「お願い……お願い,明日香ちゃんを,助けて……」
光:ああ,任せとけ。
キルスティン:だから,磨亜矢は安心して帰ってきていいんだよ。
GM/磨亜矢:(さらにころころ)では,磨亜矢は弱々しく微笑んで頷く。
泪:えーと説得中にすみません。光さん,ここらで行動したいですよね? 《アクセル》いりますか?
光:いや,こっちは《狼牙》があるから。楓にかけて。
泪:では楓に《アクセル》続行。
光:キルスティン,明日香と水上を頼む。
キルスティン:え? アンタ,大丈夫なの?
光:ああ。とっておきがあるからな。
キルスティン:よくわかんないけど,言ったからには必ずやるのよ。ここでコケたら承知しないわよ。
光:わかってる。あの野郎は必ず俺がぶちのめす! ここで《狼牙》を宣言します。それと,《大蛇の尾》を使えば神楽に届きますよね。
GM:なるほど,うまいな。それでは演出として,一気に突進して攻撃できたことにしよう。
光:では,《狼牙》と《大蛇の尾》と《鬼の一撃》と……それから初公開の必殺技を使います!
GM:うん。ちなみにこれ自動命中だから。
一同:おおー!?
雨追:そんなんあったんですか?
泪:主人公特権だから(笑)。
光:でもこれ,鬼のように侵蝕率上がるんですよ(泣)。
GM:必殺技とは総じてリスキーなものです。とりあえず,カモン。
光:では,「神楽ァ!」と叫びながら突進!
GM:えーとどういう技かといいますとね,拳の周囲の空間がぐにゃりと曲がっていくのですよ。
泪&雨追:おおー。
キルスティン:磨亜矢……明日香,みんなあなたたちのために戦ってるよ。だから,大丈夫だよ。きっと助かるよ。
光:(と,キルスが言っている横でころころ)……あれっ?
キルスティン:おい。
一同:(爆笑)
キルスティン:光ちゃーん? なあに,その沈黙は?
光:…………。
キルスティン:まさか,まさかここで失敗したのかー!?
光:いやあ,これだけ(←なんと13コ!!)サイコロ振って,36はなかったかなーと。
一同:この馬鹿者ぉ!!
雨追:主人公の面目丸つぶれですぞ!
キルスティン:何をどうすればそうなる!
光:だって1とか2ばっかでるんだもん!
GM:(計算して)う,うーむ。それだとさすがにまだ死んでない。あと光,その10分の1のダメージがフィードバックしてくるからね。
泪:3点?(笑)
光:うん。
キルスティン:10分の1と言わず丸ごとくらってしまえ!(笑)
GM:頼みは楓のセカンドアクションか……(ころころ)うむ,やっぱり削りきれんな。
キルスティン:次でしとめなさいよ,アンタ!
光:これ以上やったら戻ってこられなくなるって!(笑)
GM:まったくね。そもそも,ここで戦闘をきらせていただくんだわ。
一同:はああ!?

 

SCENE 15


GM:神楽なんですけどねえ。実はターン数のリミットがあったのですよ。
一同:えー!?
GM:もうちょっとダメージ与えられていればねえ。
キルスティン:だって突っ込んでったら「足手まといだ」とか言ったじゃん!
GM:だから遠距離から撃つとか楓のサポートをするとかさ。
キルスティン:どっちもできないんですけど。
GM:遠距離攻撃くらい覚えた方がいいと思う。でも今回に関しては,光がなかなか必殺技をださないのが……。
一同:…………。
光:え!? 俺のせいか!?
キルスティン:しかも最後の最後でコケるし。
光:それはダイス目のせいだー!
キルスティン:そのダイスを振ったのはおまえじゃー!
泪&雨追:確かに(笑)。
光:おまえら,俺に恥ずかしい説得を任せておいてそれかー!
GM:まあまあ。そんなわけで,神楽さんの姿はすっと回りの風景に溶け込んで消えてしまった。それを「神楽!」と怒りの咆哮を発した楓ちゃんが追う。
泪:か,楓!? ちょっと,どこへ行くの!?
GM:聞いてないって(笑)。
泪:…………。
雨追:しかし何ですなあ。神楽を取り逃がし,新条氏まで見失ったとなると……。
キルスティン:まさかホントにバッドエンド!?
GM:磨亜矢奪還を果たしたので,完全にバッドというわけではないと思うが。
光:あ! それより明日香は!
GM:磨亜矢が半泣きで「明日香ちゃん,明日香ちゃんしっかりして!」と呼びかけているが,返事がない。
泪:脈はあるんですか!?
GM:んー……ごく微弱,というところですかね。
泪:こ,これはマズイですよ。
キルスティン:とにかく救急車呼ぼう。
雨追:それはマズイです。UGNに迎えに来てもらいましょう。
泪:伊達さん,まだこの近くに待機してるはずですよね。
GM:とか君たちがわたわたしていると,「それじゃ間に合いませんよ」と声がかかる。
泪:誰です? まさかと思うけど……。
GM:黒いコートのあの人だ(笑)。
一同:ま,また厄介なのが……。
GM:でも,この中で千葉に会ったことのある人っていないよね。
一同:あ,そう言えば(笑)。
泪:前回大谷さんと久島さんの前にしか姿現わしてない……。
GM:仕方ないから気障に一礼して名乗ろう(笑)。「初めまして,ですかな? 私は千葉狂介と申します」
光:千葉? え? 明日香の主治医の……。
キルスティン:あのプリンセス野郎? でも,似てないんだよね。
GM/千葉:「あんな小者のことはどうでもよろしい。私の名などもどうでもよいのですよ。肝心なのは,茶山明日香さんが今,生と死の端境にいるというこだ。違いますか?」
キルスティン:じゃあアンタ,明日香を助ける方法を知ってるっていうの?
GM/千葉:「何故彼女が目覚めないかおわかりですか? それは,彼女があなたがたオーヴァードよりヒトに近いからですよ」
泪:それは明日香さんと磨亜矢さんの,例の特質のことですか?
光:だから,どういうことだよ。
GM/千葉:「彼女のウィルスはある一定の侵蝕値に達すると増殖を停止する。すると,どうなるかわかりますか?」
光:まさか……肉体の再生も止まるのか?
GM/千葉:「その通りです。だからもうじき彼女は死にます」
光:……どうすれば助けられる?
GM/千葉:千葉は光を見て愉快そうに笑い,ひとつのアンプルを取り出す。「これを飲ませなさい。そうすれば,彼女は『普通の』オーヴァードとなる。ウィルスさえ活動を再開すれば,あとは傷など勝手に治してくれますよ」
泪:待ってください。それはつまり,明日香さんもまた暴走するようになってしまうということですよね。
GM/千葉:「もちろん。こういうことにはリスクがつきものですよ。で,どうします? 私は無理強いなどいたしません。人として死なせてやるのも,あるいは彼女のためかと思いますしね」
キルスティン:ふざけんな! 明日香のことバケモノみたいに言わないでよ!
光:オーヴァードだろうが何だろうが,明日香は明日香だ!
GM/千葉:「結構。それではこの薬をお使いなさい」
泪:……その言葉,信用していいんでしょうね?
GM/千葉:「これを飲めば彼女は助かる。飲まねば助からない。本当ですよ?」と千葉はにこりと笑って立ち去ろうとする。誰か追う人は?
光:放っとけ,あんなヤツ!
キルスティン:明日香,しっかりして! この薬,飲んで!
GM:だから意識がないんだってば。
光:じゃあどうすんだよ。
GM:それ,本気で訊いてる?(にやり)
光:……え……。
雨追:……なるほど(にやり)。
泪:……そういうわけですから,光さん(にやり)。
光:……お,おまえら,まさか……。
GM&泪&雨追:まさかも何も,お約束でしょ?
光:う……。
キルスティン:ちょっと待った! 何よそれ! 光! 明日香にヘンなことしたら承知しないわよぉ!
泪&雨追:はいはいはいはい,邪魔しないのねー(とひきずっていく)。
キルスティン:だー! 明日香が,明日香がー!
泪:と,いうわけで光さん。キルスさんは抑えときますから。
雨追:心置きなく,どうぞ。
光:おまえら……。
キルスティン:明日香ー!
GM&泪&雨追:はいはいはいはい,静かに静かに。
光:…………。おまえら,向こう向いてろ! いいな!
一同:はーい(笑)。
GM:ところでそこのラブコメ男さんや。ちょっと訊きたいんだけど,侵蝕率はどうなった?
光:えーと……134……?

 思わず静まり返る一同。

キルスティン:それ,ヤバくないの?
光:最後の必殺技でかなり増えちゃったんだもん(泣)。
泪:ロイスいくつですか?
光:7つあったけど,水上をタイタスにしてたんで,6つ。
泪:あ,それなら何とか……。
光:(ころころ)……あ。
一同:……ちょっと待たんかあっ!(笑)
光:…………。
真二:(のプレイヤー,隣の卓から)え,何? また新たなる犠牲者が出たって?
泪:だから,嬉しそうに言うのやめてください!(笑)
雨追:(慌てて)例の新薬,相模原さんがデータ転送してましたよね。あれは利用できないのですか?
GM:えー?
雨追:そこを何とか。
GM:でも,どっちにしろ今回のシナリオは終わりなんだけど。
泪:もしかして,キャンペーンもこれで終わり?
GM:あ,そうだねえ。
キルスティン:だって,神楽は?
GM:逃がしちゃったのはそっちでしょ。
キルスティン:納得いかーん! 続けろー!
GM:えー……俺,いいかげんプレイヤーやりたいんですけど。
泪:……よござんす。私が次からマスターやったりましょう。
一同:おお!?
泪:だって泪ってNPCでもそんなに困らないキャラだし。
GM:それを言っちゃあ……(笑)。

 と,いうわけで,次回からは松井GMでお送りいたします。

光:で,その時俺は入院中なんだろうか……(笑)。

 その通りです(笑)。



「あれは……あの男は,なんだ?」

 原因不明の昏睡状態に陥った光。
 一方,彼のいない学校にも,新たな悪夢が忍び寄る。
 キルスティンが17歳の誕生日を迎えたその日。
 彼女のわずかに残された幸せ。
 舞台の裏で眠っていた男が,それを無惨にも打ち砕く。

Next, “The Sleeper,” see you later.