SCENE 10


GM:さて扉を開けると,いわゆるOA機器がずらりと並んでいる部屋があります。
一同:おおっ!?
泪:今度こそデータ収集します!(←何故か嬉しそう)
GM:はあ。いいですけど,ちゃんと判定してね。
泪:そういえば〈機械操作〉の技能,ないんですけど。
GM:大丈夫でしょ。プレイヤーと違って機械オンチじゃないんだし。
泪:(のプレイヤー)やかましわ!
GM:はいはい。とにかく,まずは起動させてみて。
泪:はい。スイッチ入れました。で,ファイルを検索してみます。
GM:そうすると,いくつか重要そうなファイルが検出されるね。特に,明日香と磨亜矢の生体データの記録とか……。
泪:それ開くのって,判定必要なんですよね。
GM:目標値15と言っておこうか(にやり)。
泪:高いですが,それ。
GM:もちろん,ファンブルしたらデータがぶっ壊れると言っておこう。
光:……やめといたら?
泪:いや,まあ【精神】なら5つ振れるので,そうそうファンブルってことはないと思いますが……うーん。平目で15はキツイですね(←特にエフェクトが使用できない,という意味)。
GM:じゃあパスコードでひっかかったな。警報鳴ったりはしないけど。
泪:うーん……他に【精神】の高い人は?
光:2。
キルスティン:3。
雨追:それでしたら私が【精神】5ですからやってみましょう。
一同:……えっ?
雨追:(ころころ)15ですよね。ぴったり開きました。
GM:うむ。ファイルを開くことができたな。
泪:…………。
雨追:やりましたよ,相模原さん。
泪:ど,どうもありがとうございます……。
雨追:どうかしましたか?
キルスティン:雨追に知力で負けたことがショックなだけだと思う,たぶん(笑)。
GM:ではデータが引き出される。一応こないだのおさらいということで,内容を説明しておくと,明日香と磨亜矢のレネゲイドウィルスには特殊な因子があり,それを抗ウィルス剤として利用することができる。これを定期的に服用していれば,オーヴァードはほとんど暴走しなくなる。
キルスティン:これがもし成功すれば,スゴイ薬になるのは確かよね。
泪:ざっと見た感じ,本当にそれで間違いはないんですよね?
GM:医学薬学の詳しい知識がないから何とも言えないけど。
泪:じゃあ,専門家に見てもらいましょう。このデータをそっくりUGNに転送します。
GM:いいけど,それには30分くらいかかると思ってください。
泪:ええ? そんなに?
GM:携帯端末で転送してるのと,あとデータ量がやっぱり膨大だからね。
光:そんな時間ある?
泪:でも,やっぱりレネゲイドウィルスの暴走を抑える薬は,欲しいですからね。それに,明日香さんはもう少し休ませた方がいいですよ。
キルスティン:明日香,調子どう?
GM:まだちょっと顔色が悪いですね。
キルスティン:あのさあ,あと1人くらい明日香と泪ちゃんの護衛任せて,他の部屋偵察だけしてみちゃダメ? 時間もったいないし。
泪:ダメってことはないですけど,危険じゃないですか?
雨追:問題ありません。あとはデータ転送だけですから,コンピューターは相模原さんにお任せして,私もキルスティンさんに同行いたします。
泪:(小声で)キルスさんと雨追さんだから危ないって言ってるんですけどね……。
キルスティン:何か言った?
泪:いえ,別に(と光を見る)。
光:光としては,ここを離れる気はないです(笑)。
泪:……ですよね。
GM:そっか。じゃあ別行動とるわけね(にやり)。

 と,いうわけで,OA室には泪と明日香が残り,光は扉の外にて待機。
 キルスと雨追は逆側の,部屋の奥にあった扉から探索を始める。
 特に敵の妨害もなく,すんなり辿りついたは巨大な資料室。壁・壁・壁を埋め尽くすファイルの山に果敢にアタックするキルス&雨追。
 ――結果,専門用語の羅列の前にあっけなく敗北したのであった(そらそーだ)。
 さてさて。
 1人見張りを続ける光だが,それをGMが放っておくわけもなく……。

 

SCENE 11


GM:さて,シーンは光に戻す。君は今,部屋の外で見張りをしているんだよね?
光:一応扉にぴたりとくっついて,目は正面の扉に向けてます。
GM:それでは,正面の廊下の方から足音が聞こえてくる。
光:まさかまたアイツらが……(笑)。
GM:いや,違うね。かっかっか……と規則正しい,そして非っ常にエラっソーな足音だ。
雨追:……うぁ。さらに厄介なヤツが。
泪:ちなみに私はデータに没頭してますので。
GM:逃げたな(笑)。では,正面の扉がぷしーと開いて,すでにお馴染みとなったあの人が。
キルスティン:胸に楓ちゃん人形を忍ばせて。
GM:ないない。楓はじろりと部屋を見渡して,「おまえ1人か」
光:……ああ。まあ,そんなところだ。
GM/楓:「そうか。……茶山明日香はどうした」
光:ああ? 知らねーよ。
GM/楓:「嘘だな。おまえが茶山明日香から目を離すわけがない」
光:おまえこそ,水上さんをどうした! 彼女はどこにいる!?
GM/楓:「俺の質問に先に答えろ」
一同:うぁ,偉そっ!(笑)
光:それが人にものを訊く態度かおまえ(笑)。
GM/楓:「時間がない」
光:時間がない? 何だよそれ。
GM/楓:「だから,説明している暇がないと言っている。茶山明日香の居場所を教えろ」
光:おまえ,俺が言うと思ってんのか?
GM:じゃあ,じろりと光を見て呟く。「ふん……馬鹿だ馬鹿だと思っていたら本物の馬鹿だったとはな」
一同:(爆笑)
光:む,ムカつくぅ〜!(笑)
雨追:こいつってナニサマ……(笑)。
泪:何様俺様楓様(笑)。
キルスティン:泪ちゃん,なんでこんなヤツが好きなの?
泪:顔と家柄(笑)。いやそれは冗談だけど。
光:単に恋は盲目なんじゃないの?
GM:楓もひでえ言われようだな(笑)。とにかく,「まあいい。今はおまえに関わりあっている暇はない」とあくまでも偉そうに仰せになった楓くんは,君の横を通りすぎて奥のドアへ……。
光:前に回りこむ。
一同:おおっ!?
GM/楓:「……貴様と遊んでいる暇はない。そこをどけ」
光:そっちこそ,ちゃんと説明していけよ。だいたい,おまえが何でこんなところにいるんだよ?
GM/楓:「貴様には関係のないことだ」
光:ああそうかよ。それなら俺もどけねーな。
GM/楓:「……どうしてもと言うなら,力ずくで押し通ることになるが」
光:おう,やってみろよ!
一同:お,おーい(笑)。
キルスティン:歩みよりってもんがないのか君らは。
光:歩みよる気が全くないのは向こうさんだと思います(笑)。
雨追:でも楓と一騎うちはやめた方がいいんじゃ……。
GM:前回62ダメージ跳ね返した人だからねえ。
光:プレイヤー的には相当ヤバいと思ってます(笑)。でもキャラクター的にはなあ。ひけんわなあ。
キルスティン:え,えーと,そろそろ戻って来られませんか私ら?
GM:まだダメ(笑)。
泪:私は聞こえてちゃダメなんですか?
GM:隣だから,誰かが言い争ってるな,というのはわかる。会話までは聞こえないけど。
泪:じゃあ明日香にここにいてくださいね,と声をかけてから,光に訊く。光さん,どうしたんですか? そこに誰かいるんですか?
光:相模原,来るな!
GM:すると楓は少し顔色を変えて,「……泪もそこにいるのか?」と。
光:だったら何だよ。また相模原を泣かせる気か?
GM/楓:「……何だと貴様……」
泪:(慌てて)ねえ,誰かいるんですか? 何やってるんですか,光さん! (GMに)あれ? ところでこっちからドアは開けられます?
GM:開けられます。しかもスライド式なので押さえるの不可。
泪:じゃあとっとと開けますよ。
光:あっ(笑)。
GM:じゃあドアを開けた瞬間目に入ったのは,背を向けてすぐ目の前に立っている光と,こちらを向いて立っている楓だ。
泪:……楓? どうしてこんなところに!?
GM/楓:「……おまえこそ何でこんなところにいる」
光:水上さんを助けるために決まってんだろ。
GM/楓:「貴様には訊いていない!」
光:何だとこの野郎!
泪:ちょ,ちょっとやめて楓! 光さんも!
GM/楓:「茶山明日香はその奥だな! いいからそこをどけ! 邪魔だ!」
光:理由話すまでどけねーっつってんだろ!
GM/楓:「だから話している時間がないと言っている! ぼやぼやしていて茶山明日香に何かあってもいいのか!」
光:どうしてそこで明日香が出てくるんだよ!
泪:だから,やめてってば! やめなさーい!
キルスティン:(ぼそっと)こいつら……バカ?
一同:(笑)
雨追:すでに会話が平行線になってますな。
泪:他人事のように言わないでください(泣)。と,とにかく楓。事情を説明してちょうだい。
GM/楓:「何度も言わせるな。時間がないんだ」
泪:こんなところで話すの話さないので言い合ってる方がよっぽど時間がかかるでしょう? 光さんだって明日香さんや磨亜矢さんのことが心配なんだから,そんな説明じゃ納得できなくても仕方ないわ。
GM/楓:「…………」
泪:それに,事情を話してくれたら私たちだって協力できると思うし。
キルスティン:(またもやぼそっと)私らまで勝手に協力することになってますな。
一同:(爆笑)
泪:じゃあどうすりゃいいんですかあっ!(笑)
キルスティン:いや,別にいいんだけど。また恋に血迷ってるのかと思って(笑)。
泪:そんなんじゃありませんよっ。
雨追:問題ありません。何であろうと,私は上官の命令に従うつもりですから。
泪:…………。と,とにかく,ここは落ち着いて話し合いましょう。光さんも,ね?
光:じゃあこれだけは訊いとくぞ。おまえ,明日香に危害を加えるつもりじゃないんだろうな?
GM/楓:「そんなんじゃない。俺は神楽の手から彼女を守るために来た」
泪:え?
光:……いきなり何だよそれ。おまえ,神楽の仲間じゃなかったのかよ?
GM/楓:「事情が変わった。奴の目的を知ったからな。今の奴は俺の敵だ」
キルスティン:(いきなり)はい,GM。
GM:何?
キルスティン:そこの「俺の敵だ」とか言ってる人が説明始めるころには戻って来てていいの?
GM:あ,そうだったねえ。じゃあ戻って来てもいいことにするけど……。
キルスティン:けど,何?
GM:今は重要な説明をしているので,極力場をひっかきまわさないように(笑)。
キルスティン:……例えば?
雨追:私ら入って来ますな。すると新条楓がおりますな。
キルスティン:え? 新条楓? 何コイツ,敵じゃなかったの? 何でコイツが一緒にいんのよとっとと説明しなさいよ光それともまさか泪ちゃんが血迷ったのどうなのよええっ!? 
一同:(爆笑)
光:…………。
泪:あああ……せっかく光さんと楓がおさまったとおもったら……(泣)。
雨追:まあまあ相模原さん。説明していただけますか? こちらの御仁はどなたですかな?
泪:え……あ,彼は新条楓といいまして。ええと,あの,
雨追:はっ,然様ですか。どうぞよろしくお願いいたします,新条さん。
光:……それだけ?
雨追:は? 他に何かありますか?
泪:…………。いえ,あなたがいいならいいんですけどね私は。
キルスティン:いいわけないでしょぉ!
泪:わあ! な,何ですかキルスさん。
キルスティン:何ですかじゃないわよ泪ちゃん。コイツって敵じゃなかったの?
泪:いえ,ええと,事情が変わりましてですね。
キルスティン:(楓に)事情が変わったって何よ?
GM:すると楓は光の方を向いて,「つまり,例の茶山明日香と水上磨亜矢の特質のことだが」と。
キルスティン:……無視ですか。
GM:無視です(一同笑)。
キルスティン:こ,こいつわ(怒)。
泪:どうしてそこで煽るのどうして(泣)。
光:時間がないと言いつつわざとケンカ売ってないかコイツ。
GM:いや,ケンカ売ってるわけじゃないっしょ。これが地だから(笑)。
キルスティン:なお悪いわっ。
GM/楓:「で? 俺の話を聞く気はあるのか」
一同:…………(こ,こいつ……)。
光:あ,楓のロイス決めた。ポジティブが「好奇心」でネガティブが「敵愾心」。
一同:当然表は「敵愾心」(爆笑)。
光:当然です。

 ……やれやれ。
 さて,キリがないので,ひとまず楓くんのお話を謹聴する一行であるが。

 

SCENE 12


GM:楓は,泪が端末をつないでいるパソコンを指差し,「これを見たか?」と言う。
泪:ええ。明日香さんと磨亜矢さんの実験データ……。
GM/楓:「そうだ。茶山明日香,および水上磨亜矢に感染したウィルスはある特殊な酵素を持つ。これを利用すると,レネゲイド・ウィルスの増殖をある程度抑制することができ,つまり,ほとんど暴走しないオーヴァードが生まれるわけだ」
光:ああ。そこまではこないだ聞いた。
GM/楓:「あの厄介な衝動さえなくなれば,オーヴァードは普通の人間として暮らせると……俺はそう思っていた。だから神楽に協力した」
雨追:でも,神楽の目的は違っていた? 
GM/楓:「……そうだ」
泪:楓。神楽は,一体何のために……。
GM/楓:「軍隊だ」
一同:軍隊!?
GM/楓:「ああそうだ。奴は,自分の手足として使えるオーヴァードが欲しかったのさ」
光:…………。
GM/楓:「オーヴァードは普通の人間では太刀打ちできない強力な戦士だ。だがいかに強力でも,安定性に欠けた戦士は優秀な兵士にはならない。それほどにオーヴァードの暴走は厄介なんだ。だが,あの薬を使えばどうなる」
光:多少能力が低くても,命令通りに動く駒が欲しいってことか……。
GM/楓:「そんなところだろうな。このままいくと,水上磨亜矢だけでなく茶山明日香も,神楽の道具にされる。奴の兵隊作りのためのな」
光:……それは,確かなのか?
GM/楓:「俺が信じられないなら,神楽に直接訊いてみたらいい。奴は否定しないだろうな」
キルスティン:そんなことさせないわよ,絶対。
GM/楓:「ああ,そんなことはさせられない。だから,茶山明日香を奴に渡すわけにはいかない。これが理由だ」
光:…………。よくわかった……。
GM/楓:「…………」
泪:あの,光さん。ちょっと落ち着いて……。
光:これが落ち着いていられるかっ!と立ちあがって,怒りにまかせてデータリールをぶち壊します!(笑)
泪:きゃーっ,何するんですかーっ!
GM:そうすると楓もすっくと立ちあがって,「やはりどこまでも馬鹿だな貴様は」
光:何だと!?
GM/楓:「まだやることが甘い。俺ならばこうする!」と手刀でパソコンをずっぱりと(笑)。
泪:きゃーっ,私の端末ーっ!
一同:(爆笑)
キルスティン:……しまった。乗り遅れた。
泪:あのねえっ!
キルスティン:抜いた刀の振るいどころがない。
泪:抜いてたんですかっ!
キルスティン:資料室のファイルでも燃やしてこようかな。
泪:あれも一応貴重な物的証拠なんですよ!? わかってます!?
雨追:しかしあれでは持ち帰れませんからな。いっそ全て燃やしてしまっても。
泪:だからやめなさいって言ってるでしょーが!
雨追:は(←素直)。しかし相模原さん。一番重要なデータはすでにぶち壊れているような気がいたしますが。どういたしましょう。
泪:どうしようもないですよっ。まったく,楓も光さんも,どうしてこういうことをするのっ! 大事な実験データを転送してたんですよ! 端末壊れたらどうしてくれるんですか!
光:言葉を返すようだが相模原。
泪:何です!?
光:俺はデータ室のリールをぶっ壊しただけであって,端末つないでたパソコンを壊したのはアイツだぞ。
一同:…………。
GM/楓:「…………」
泪:……楓……。
GM/楓:「……心配ない。データの転送は終わっているようだ」
泪:そういう問題じゃないでしょっ!?(一同爆笑)
光:まったく,やりたい放題やりやがって。
GM/楓:「……何を偉そうに!」
光:ああ!? おまえにだけは「偉そう」とか言われたくないぞ!?
GM/楓:「データを壊そうとしたのは貴様も同じだろう!」
光:てめー逆ギレか,それは!? 甘いとか馬鹿とか言って自分からパソコンぶった切ったくせに!
GM/楓:「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い!」
泪:ちょっと,いつまでやってるの! やめなさーい! キルスさんも雨追さんも,止めてくださいよ!
キルス&雨追:えー?(←すでに傍観)
光:自分のことを棚にあげて人のこと馬鹿とか言うな! だいたい,元はと言えば,てめえのせいで水上さんがさらわれたんだろうが!
GM/楓:「貴様にまかせておいたら,今ごろ茶山明日香も神楽の手のうちだ!」
光:何だとこの野郎!?
泪:……えーとGM。
GM:はい?
泪:朝方入手しておいた拳銃を,天井に向けて撃ちます!
一同:(爆笑)
光&楓:…………。
泪:2人とも,いいかげんにしましょうね。
光&楓:だけど(だが),こいつが……。
泪:いいかげんに,しましょうねっ!?
光:じゃあ,黙ってそっぽを向きます。
GM/楓:「…………」
光:おい。おまえはマジで気にくわねーヤツだが,この際しょうがない。
GM/楓:「ああ。同じセリフを返すが,この際仕方ない」
光:今だけはおまえのことを信じてやる。その代わり,逃げんなよ?
GM/楓:「貴様こそ,足手まといになるなよ」
光:…………。
泪:そ,そういうわけなんで,行きましょう皆さん。
雨追:はっ。話もついたようですしな。
キルスティン:えー,何。結局,こいつ仲間になったの?
雨追:暫定的停戦条約というところですな。
GM:和平じゃないのがミソ(笑)。ところで泪さんや。
泪:はい?
GM:さっき天井撃っちゃったんで,スプリンクラーから水が降ってくるよ。もうパソコンとか火花散りまくり。
泪:きゃーっ! 端末がーっ!
一同:(爆笑)
光:相模原,おまえも人のこと言えない……。
GM/楓:「泪,銃を持つならもう少し考えて撃った方がいい」
泪:誰のせいだと思ってるんですかあなたたちっ!?(泣)