SCENE 10


GM:はーい,瑚唄のシーンですが。
瑚唄:では,ロクデナシの猪熊さんを探して体育館へ。いらっしゃいますか?
GM:いますよ。割烹着着てアイパッチつけた30がらみの兄ちゃんが!(だんだん口調が妙になる)オラオラ,カレーがもうねえぞ! シチュー食うか!? 食うか!? ああ!? 食え! ブタのように食え! これ以上俺様が働くようならおまえらみんなブタだ! ブタのように食えええええッ!?
一同:…………。
瑚唄:……で,あなたがロクデナシの猪熊さんですか。
GM/猪熊:「ああ!? そーだ俺様がロクデナシの猪熊! ちくしょう父ちゃんミンナが俺をロクデナシって言うよ,ああそうかい俺をロクデナシと指差して笑うがいいさ! 高笑いをしろそこの美少女!」
瑚唄:(棒読み)はははははははロクデナシ。
GM/猪熊:「……えー,なんてーのかな。一生に一度あるかないかの体験をさせてもらいましたありがとうございました」
瑚唄:おめでとうございます。
GM/猪熊:「ありがとうございます。大盛りですか」
瑚唄:いえ普通盛りで。
一同:…………。
真琴:……ゴメン,この人たちの会話って意味わかんないんだけど。
水限:いやいや,本人たちがそれでいいならいいんだよきっと。
瑚唄:ちなみに田上さんという方からあなたのことを伺ったのですが。ロクデナシの猪熊さんならこの街について色々なことをご存知だと。
GM/猪熊:「ああ!? 田上!? ありゃ俺を2乗したロクデナシだ。で,何が訊きたいって?」
瑚唄:そうですね,私,この街に来てまだ日が浅いものですから……ちなみにあなたは市警部の方ですよね?
GM/猪熊:「ああ,一応俺が責任者だ」
瑚唄:あら,そうなんですか。
GM/猪熊:「あくまで実働部隊の責任者だけどな。……あー,で,何を訊きたいって?」
瑚唄:大谷真さんのことなんですけど,ご存知ですか。
GM/猪熊:「大谷さん? ああ,知ってるよ。俺が市警部に入ったころからの知り合いだから,もう10年になるかなぁ」
瑚唄:どんな人ですか?
GM/猪熊:「どんなって……いい人だよな」
瑚唄:いい人,ですか。どのように?
GM/猪熊:「いや,どのようにって言われても……なんつーのかな,ツライところを替わってくれるっていうのかな。何度か助けられたよ」
瑚唄:(肩をすくめ)そーゆーのが好きな人みたいですから。
真琴:マゾだからな。
水限:マゾだからね。
GM:…………。
瑚唄:で,最近はどんな感じですか。
GM/猪熊:「最近か……最近は会ってないんだよな。何でも半年前に,お母さんが病気で亡くなったらしくてさ。あの人ってほら,母子家庭だろ?」
瑚唄:そうなんですか。
GM/猪熊:「ああ……その,精神病院に入っているとか何とか……」
瑚唄:そうですか。よくご存知ですわね。
GM/猪熊:「あの人なー,飲むとけっこうよくしゃべるってか,叫ぶんだよな」
瑚唄:叫ぶんですか。
GM/猪熊:「叫ぶんだよ。『うるせえよバナナ!』とか」
一同:(爆笑)
水限:「俺は男キラーじゃなーい!」とか「俺の冷蔵庫は俺の冷蔵庫だ!」とか。
真琴:「人ん家で寝てんじゃねーよ,おまえカミさんいるだろ!?」とか。
直人:哀れよのぅ。
GM/猪熊:「……えー,何の話だったかな。まぁそういうわけで半年くらい前から人が変わったみたく働きだしてさ。会ってないんだ」
瑚唄:何故にそんな忙しいわけですか。
GM/猪熊:「さあなぁ。やっぱおっかさん亡くなったせいじゃないかな。ほら,それで肩の荷が下りって楽になるのも許せない性分の人だろ?」
瑚唄:なおさら働きまくるようになったわけですか。
GM/猪熊:「だなー。働いて働いて働いて,もう大変」
水限:働いて死ねって?
真琴:byキルス。ってキルスが言うのか。
直人:言わないで働かせそうだが。
水限:言うのは泪の方が似合うよな。(地の底から響いてくるような声で)大谷さんは働いて働いて働いて死ぬのよ……でなきゃ許さない……。
GM:あああ泪さん俺がいったい何したってんですかつーかアンタもいつまで俺をいびり続ける気ですか,つーか少し黙っとれおまえらわああああ!?
水限:したじゃんか。幽閉とか。
GM:あーっ,だからそれはですねーっ!?
瑚唄:(咳払い)GM,気持ちはわかりますが少し落ち着いてください。てゆーかシーンきりますか?
GM:(ぜえはあ)ええと,他に訊くことはないですか?
瑚唄:できればアブドルさんに話を訊きたいのですけれど,今携帯が通じなくてどこにいるかわからないのですよね……。
水限:直人さんに話つけりゃいいじゃないですか。
瑚唄:その直人さんはどこにいるのでしょう。
直人:私は水限くんを探して体育館へ向かっている。
GM:えーと,じゃあ瑚唄は直人さんのシーンに登場してもらうということで,一度シーンをきります。

 

  SCENE 11


GM:では直人さんお願いします。
直人:私は水限を探しに体育館へ来たところだが。水限と君嶋を発見してよいのだろうか。
GM:ですね。なんだか珍しい組み合わせでイモ剥いてますが。
直人:……君ら,何をしているのだね?
水限:皮剥き。
直人:それは見ればわかるが。
真琴:炊き出しの手伝いをしろと言われたのです。
直人:そうか。……しかし君,これはジャガイモの皮かね? 異常に厚いようだが。
水限:それは俺じゃない。君嶋。
真琴:う,どうもこのピーラーという道具は……。
直人:(聞いてない)いいかね君たち,ジャガイモというのはだね,とおもむろに皮を剥き出します。
GM:はあ? 直人さんまで何をやって,
直人:見ているがいい,このジャガイモさばき!(とサイコロを振る)
瑚唄:ぱ,パパンが壊れた!?(笑)
GM:ああっ,しかも0が出てるよ! 回ってるよ!
直人:何を言う,この8と9も回っているだろうが。
GM:……もしかして,《天性のひらめき》使ってるんスか?
直人:ふふ,達成値は38だ!
一同:この人バカだーッ!?(爆笑)
GM:てゆーかこれはすでにイモじゃねえ! おイモ様だ!(笑)
直人:ふっ,どうかね君たち。これがイモの皮剥きというものだよ。
水限:(ころころ)ちなみに私も何故か2回0が出ました。27です(笑)。
直人:うむ。水限くん,君はなかなか筋がいいぞ。
水限:…………。(←微妙に得意げらしい)
真琴:(弱々しく)あの,3なんですけど。
一同:(笑)
直人:君嶋くん,君には基本から教える必要がありそうだな。
真琴:は,そのピーラーの使い方が……。
水限:ちなみにあんた,何の用なの。
直人:おお,そうだったそうだった。水限くん,仕事の話なのだがね。
水限:……ああ。(君嶋を指して)……いいの?
直人:うむ,彼女なら構わんだろう。それよりこんなところで立ち話もなんだから,中に入ろうか。このイモも厨房に持っていくのだろう?
真琴:そうですね。
GM:では厨房,つーか体育館の中の仮設厨房に来たわけですね。中では猪熊さんが割烹着着てシチュー作ってますが(笑)。
水限:イモ。持ってきたんだけど,
GM/猪熊:「ああ!? おっせえよ! イモ剥くのにどれだけかかってんだ!」
水限:……俺が遅かったわけじゃ,
GM/猪熊:「……ああ!? てか何だよこのジャガイモいきなり使えねえッ!? 芽がとれてねえじゃねえか!」
水限:……だからそれも俺のせいじゃ,
GM/猪熊:「うるせえ! 口答えしてるヒマあったらとっとと次剥け,次!」
水限:…………。(←微妙にむっとしているらしい)
真琴:あ,あの……それは私のせいなのですが。
GM/猪熊:「ああ?」
真琴:すみません。どうもピーラーの使い方がよくわからなくて……。
GM/猪熊:「…………」
真琴:…………。あ,あの?
GM/猪熊:「美少女は許ゥすッ!」
真琴:は!?(笑)
水限:…………。(←相当にむっとしているらしい)
GM/猪熊:「あ,しかもなんだ!? 中に突然おイモ様があるぞおイモ様が!?」
直人:あー,ちょっといいかね。私は,
GM/猪熊:「はっ!? あなたがこのイモを剥かれたのですね!? 名も知らぬダンディ,今日からあなた様のことはイモマスターと呼ばせてください!」
直人:呼ばないでくれ。というか彼岸にイッちゃってないで話を聞いてくれ。
瑚唄:またもやGMの必死のボケが痛々しいですわね。ここいらで私も登場します。
直人:おや瑚唄くんじゃないか。何をしているのだね。
瑚唄:見ての通り食事中ですわ。皆さんこそ,大量のジャガイモを抱えて何を?
真琴:炊き出しの手伝いです。これも一応任務ですので。
瑚唄:そう言えば,あなたはUGNの方だったんでしたわね?
真琴:今は立場が微妙ですが。
瑚唄:微妙,ですか。今UGNは2つに分かれているのでしたっけ?
真琴:…………。
直人:あー,いいかね。ちょうどいいから瑚唄くんにも聞いてほしいのだが。
瑚唄:あら,なんですか?
直人:今,電波封鎖されてるのは知っているだろう?
瑚唄:そのようですわね。せっかくネットオークションで欲しいカッパが手に入りそうだったのに……。
水限:カッパって何?
直人:(無視)実は,責任の一端は私にある。十数年前,私がまだ防衛隊にいた頃の話だ。当時,デモンズシティ攻略のシミュレーションが繰り返されていてね。まず電波封鎖して,それからアイオーンを投入。その作戦立案を行ったのが,私だ。
水限:でもそれって,別にあんたのせいじゃないと思うけど。
瑚唄:でも直人さんは責任を感じていらっしゃるみたいですわね。
水限:ふうん?
瑚唄:ここは責めてさしあげるのが筋かと。
直人:おい。
瑚唄:(棒読み)オマエノセイダー。
水限:…………。(直人に)と,言えばいいわけ?
直人:誰がそんなことを言ったか。というか瑚唄くんも真面目に話を聞きなさい。
瑚唄:はあい♪
直人:別に全責任が私にあるなんて言ってないぞ。私が言いたいのは,だ。私が立てた作戦なのだから,どこで何をやればどういう結果になるか,よく知っている,ということなのだ。
瑚唄:(挙手)はい。
直人:はい?
瑚唄:でも,向こうも直人さんがこちらにいらっしゃることはご存知なのでは? まるっきり同じようなことはしないんじゃないでしょうか。
直人:それはそうだな。が,使っている機材が同じである以上,だいたい同じ作戦をとらざるを得ないだろう。いくら偽装したって,モノの射程も出力も変わらん。
瑚唄:直人さんがそうおっしゃるなら,そうなんでしょうけどね。すでにアイオーンという例外が出てきたわけですし?
直人:多少の計算外はつきものさ。それに,だからと言って何もしないわけにもいかんだろう?
瑚唄:逆に言いますと,直人さんは何故こんな話を?
直人:まぁ聞きなさい。私は一ノ瀬リカという女性から,電波封鎖の解除を依頼された。電波を妨害しているのは恐らく巨大なEAと思われるが,それを爆破せねばならん。
瑚唄:ずいぶん危険な役を引き受けられたんですわね。
直人:確かに危険だ。だが,成功すれば見返りも大きい。ヤツらの思うままにもさせておけんしな。で,どうだ?
瑚唄:どうだ,と言いますと? 私たちにもつきあえということですか?
直人:別に無理にとは言わんぞ? ああ,水限くんには無理にでもつきあってもらうがね。
水限:……俺は別にいいんだけど。
直人:何か?
水限:別にこの2人を巻き込まなくてもいいんじゃないの。
直人:巻き込むとは言っていない。どんな選択をするにせよ,事前情報は必要だろう?
瑚唄:聞いてしまったらおしまい,という気もしなくはないのですけどね。いいですよ,直人さんには借りもありますしね。おつきあいしましょう。
真琴:……人手が,足りないのですよね。
直人:でなくてはこんな話はせんさ。
真琴:わかりました。私もUGNにかけあってみます。
水限:……やめた方がいいと思うけど。
真琴:何故だ?
水限:何故でも。
真琴:それではわからんだろう。何故だ?
水限:…………。
GM:あー,ちなみに一ノ瀬リカはUGNに,つーか大谷にこの作戦を打診してます。でもリスクが高すぎるということで協力を拒否されました。今は市民の保護を最優先にすべきだ,とね。
水限:じゃ,なおさら君嶋は参加できないんじゃ?
真琴:……ん? ちょっと待て,私が今与えられている任務ってなんだ?
GM:イモ剥き?
真琴:じゃなくて。
GM:そりゃ拠点防衛でしょう。ここを守って,市民を守れと。
真琴:じゃあ動けないじゃないか。
GM:そうでしょうね。
真琴:……申し訳ない。お手伝いしたいのは山々なのだが,私にはここを守るという任務があるのです。
直人:そうか,残念だがしかたがない。それでは君嶋くん,元気でな。
真琴:はい,皆さんもお気をつけて。

 

  SCENE 12


GM:はい,では君嶋のシーンで……あ,いや,マスターシーンなのかな?
瑚唄:あ,やりますかマスターシーン? (嬉しそうに)ほらほら,ちゃんとホワイトボードに1部2部のキャラクターが書いてありますよ? 死んだら×。重傷は△ですから。ね?
GM:「ね?」って何だ「ね?」って。
真琴:あと残り何人いるの?
瑚唄:えーと久島と磨亜矢が死んだでしょ? 残るはキルス,ユージン,泪,楓,鷹村,千葉桂子。
真琴:あっ,ちょうど6人だ! 誰かD6を!
一同:(爆笑)
GM:いらねえ。
瑚唄:よーし,D6振れ,D6!
水限:(手拍子)誰が死ぬかな♪ 誰が死ぬかな♪
GM:だぁら振らんでええわッ!? ……と,とにかくマスターシーンやめ。君嶋のシーンにしましょう。
君嶋:はーい?
GM:君嶋が体育館から本部に戻るとですね,すげえ怪我人が運び込まれてますよ。
君嶋:何? 何かあったのか? 大谷さんを探しますが。
GM/大谷:「(せかせかと)ああ? どうした君嶋。悪いけど今忙しいんだ。手短にな」
君嶋:何かあったのですか。
GM/大谷:「キルスが重態だ。大怪我して戻ってきた」
君嶋:キルスティンさんが?
GM/大谷:「ああ。片目と片腕が,もう使えなくなったそうだ」
瑚唄:(ホワイトボードに何やら書いている)はい,「キルス:△」と……。
君嶋:(無視)しかし,キルスティンさんはオーヴァードでしょう。何故回復しないのですか。
GM/大谷:「わからん。……一緒についていった誘導部隊もやられた。大半がオーヴァードで構成されていたにも関わらず,だ。ユージンも死んだ」
水限:(瑚唄に)だって。
瑚唄:(書き書き)はい,「ユージン:×」ですね。
直人:早くも3名死亡,1名重傷か。
瑚唄:マスター,がんばってますわねー。
君嶋:(忍耐強く無視)……そんな。そんなことがあり得るのですか。いったい何が起こったのですか。
GM/大谷:「だからわからん。わからんが,生き残った者に言わせると,リザレクトが効かなかったそうだ。これからその件について総員に説明する。体育館だ。おまえもすぐに向かってくれ」
君嶋:わかりました。そこで待機します。……他にお手伝いできることは?
GM/大谷:「今のところは,な。……ちぎれた腕を,もう一度つけなおすことができるなら,話は別だが」
君嶋:…………。
GM:そういうわけで体育館へと話を進めます。そこにはUGNのみならず,ギルドや市警部,ファルスハーツのメンバーも集まっているようです。
直人:ふむ,まさに呉越同舟だな。(いっころ)私も登場しよう。
瑚唄:(いっころ)では私も。
GM:体育館は暗幕が下ろされ,スライドが上映されています。そこには荒い画像で多脚戦車が映されているようです。「この機体は通称アイオーンと呼ばれている。内部機構にオーヴァードの脳が使われていることが先日確認された。 今のところ目撃されているのは2機種。小型のものが弐式。大型が参式だ。参式のうちKタイプと呼ばれる1体は,先日撃退されている」と,ここでスライドが変わり,赤いアイオーンが映し出されます。「これが誘導部隊を襲ったアイオーンだ。すでにご存知の通り,オーヴァードが全員,リザレクトを行えずに敗退した。未確認だが,このアイオーンにはリザレクトを抑制するような『何か』を有していると思われる」
真琴:大変じゃないか,それ。
GM:そらもぉ大変ですよ。オーヴァード最大のアドバンテージが封印されるわけですからね。ちなみにルール的には一般エフェクトがすべて無効となります。
水限:なるほど。それはつまり《マインドエンハンス》も《ショックアブソーブ》も使えないのね?
GM:そうですね。ただ,やっぱり一番大きいのはリザレクトの封印だと思いますが。で,UGNの技術部研究員が変わって発言します。「『リザレクト』の機能に関して改めて説明させていただきます。リザレクトはオーヴァードの体内にあるレネゲイドウィルスが活性化し,宿主を蘇生させる機能です。何故このような現象が起こるのでしょうか。もし宿主が本来持っている遺伝子の通りに細胞を形成していくならば,例えば肥満や近眼・遠視,あるいはその他の遺伝子的欠陥も,元通りに復元されるはずです。何故そのような劣性遺伝子は引き継がれないのでしょうか。……この疑問はかなり長い間我々の間で議論され,そして我々は今,ひとつの結論を導きだしています。レネゲイドウィルスは遺伝子とは別の方法で宿主のステータスを推測しているのではないでしょうか。つまり,宿主の健康状態を常に監視し,一定以上のダメージを受けた場合,記憶していた最良の状態に保つべく,活動しているのではないでしょうか。この赤い参式が使った奇妙なエフェクトは,この『現在ステータス』を書き換えるのでしょう。レネゲイドウィルスは常に情報を交換しあう性質があります。そのために,知らないオーヴァードやジャームが接触すると,アージが起こったりウィルスが活性化して侵蝕値が上昇したりするわけですね。この 情報交換を阻害する方法があれば,リザレクトも行われないものと推測されます」
一同:…………。
水限:……理屈はわからんでもないけどさ,グレッグ・イーガンかよ(笑)。
真琴:いや,というより……だからどうしろというんだ?
直人:具体的にどう手を打てばいいのかを教えて欲しいのだが。
GM/研究員:「コレに遭遇したら,すぐに撤退してください。現在では対抗のしようがありません」
直人:……対応策か,それは?
水限:ないんでしょう,だから。
瑚唄:あるいは,リザレクトを使わずに倒すか,ですわね。難しいけど不可能ではありませんわよ。
GM:まぁ,そうとも言いますね。さて,そこでスライドが終了し,資料が配られます。「先般お話しした通り,アイオーン参式にもそれぞれオーヴァードの脳が使われています。赤い参式の特殊能力も,これに起因するのでしょう。今お配りしたのは,被験者になったと思しき人物のリストです」
真琴:Kタイプには楓の脳が使われてたんだっけ?
水限:楓じゃねえ。楓の複製体じゃ(笑)。
瑚唄:アレって実験材料としてはものすごく使えますよね。
GM:そうだな。問題はどの程度生き残っているかということで……最終的に何体いるんでしたっけ?
水限:わからんな。かなりいっぱいいたはずだけど,ちーちゃんにかなり壊されもしたからね。
GM:きっと千葉がライトに嫌味とか言われたんですよ。「もったいないな。もうちょっと有効利用させてくれないものかね?」とか。それはともかく,君嶋。
真琴:はい?
GM:その被験者の中に,リヒター・グリュンシュトロムの名前があります。衝動判定をしてください。
君嶋:…………。(ころころ)成功です。
GM:じゃあ侵蝕値を2D10上げてくださいね。
君嶋:目をみはったまま硬直している。周りの声も耳に入らない。
GM:では,そんなところでシーン終了します。

 

  SCENE 13


GM:では瑚唄のシーンです。
瑚唄:とりあえずキルスおばさまの様子でも見てきますかね。
GM:では保健室っつーか,医務室へ。怪我人が大量に運び込まれていて,田上さん以下のスタッフが忙しそうに働いています。「あれ,さっきの……何か用かい?」
瑚唄:こちらに金髪の女性が運び込まれてませんか? かなり目立つ人なんですけど……。
GM:「あ,ひょっとしてキルスさん? 悪いけど,今面会謝絶だよ」と,田上が言ったところへ「いいのよ,入れてやって」とカーテンの向こうからキルスの声がします。……あ,そう言えば。
瑚唄:なんですか?
GM:(真琴に)ゴメン,両腕ないかもしんないわ。
真琴:……おーい。
GM:いや,アレですよ。シナリオ終了後にちゃんと片腕が……。
真琴:言っとくけど,大谷の腕はいらないからね。
GM:…………。

 念のため解説。大谷がキルスに自分の片腕をあげる,とそういう予定だったらしい。
 GM曰く,「他PCを殺した代わりに大谷にもペナルティを……」なのだが,


水限:気色悪いよな,それは。
真琴:気色悪いよ。
GM:…………。
水限:だいたい,拒絶反応とかどうする気なんだ?
GM:……そ,それはほら,エグザイルですからなんとでも……。
水限:それが気色悪いって言ってんじゃん。
真琴:あと,それは好意かもしんないけど重くて痛い。私はいらん。
水限:泪の好意と同レベルだな。
瑚唄:あーもしもしお2人とも? 大谷先生がいじけてますからどうかそのへんで(笑)。
GM:(しくしく)……いいです。いいですよもぅ。じゃあ片腕がないということにしましょう。片腕がなくて,顔の半分が包帯で覆われています。
真琴:あ,潰されたのは左目にしてね。
GM:……注文細かいなぁもぉ!?
一同:(笑)
真琴:いいじゃんかそのくらい。
瑚唄:……まぁ,ともかくさすがにそれを見て息をのみます。
GM/キルス:「まったく,こんな大怪我するなんて……新鮮な体験だわ」
瑚唄:人間になった気分,といったところでしょうか?
GM/キルス:「そうかもね」ちなみにキルスはかなり落ち着いてるみたいですね。「これ保険下りんのかしら!?」とか言ってます。
瑚唄:……おばさま,そんな怪我をされてるわりには……。
GM/キルス:「……何よ」
瑚唄:あまりろりろりしてませんわね。私なんかこんなにろりめいていますのに。
GM/キルス:「…………」
瑚唄:…………。
水限:ちなみに「ろりめく」ってなんですか?
真琴:(GMが何か言うより先に)そりゃ,こんな時にろりろりしてられないわよ。
GM:いやいや,ここは「アンタね,35にもなってろりろりしてられると……」とか,
真琴:それは違う。あんた「ろりろり」がわかってない。
瑚唄:トリ○ア見たことないんですか?
GM:いや俺は知ってるけど! キルスが知ってるわけないんだからよ!
真琴:トリビ○くらい見てるわよ!
GM:そういう問題じゃねえ!
水限:(弱々しく)あのー,だから「ろりめく」って何ですか。
瑚唄:「慌てふためく」という意味の動詞ですわね。15年前のト○ビアでやってましたわ。
GM:見てるかそんなの!
真琴:見てるよ!
GM:覚えてねえよ!
真琴:覚えてるよ!
直人:……どっちだっていいんじゃないか,そんなの。というか何故瑚唄くんが知ってるんだね。15年前だろ?
瑚唄:再放送で見ましたもの。
GM/キルス:「てゆーかまた咲耶榎!? 咲耶榎なの!?」
水限:……ホントにダメなことしか教えねーな,咲耶榎って……。
瑚唄:ほほほ。
GM/キルス:「じゃあ瑚唄,ひとつ今まで誰にも言わなかった秘密を教えてあげるわ」
瑚唄:なんですか?
GM/キルス:「……あたし,実はアヴ○ル・ラヴィ○ンじゃないの」
瑚唄:ががーん!?
水限:だからなんだ,だからぁ!?(笑)

 言ったらしいですよ。瑚唄ままが。「キルスさんの正体はア○リル・○ヴィーンなんです」とか。ちなみに「キルスは実写なら絶対ア○リル・○ヴィーンだ」と最初に主張したのは私だった気がする……どうでもいいんですけどね。

直人:いやホントどうでもいいから。GMもいいかげん彼岸から戻ってきてはくれまいか。
GM:(咳払い)えー,ではキルスはふと真面目な顔になって言います。「瑚唄,よく見ておきなさい。あんたが来たのはこういうトコロよ」
瑚唄:それは,「引き返せ」という意味ですか?
GM/キルス:「私にそんなこと言う権利はないわ。ただ,『覚悟はしておけ』ってことよ」
瑚唄:してますわ。
GM/キルス:「こんな風に死んでも?」
瑚唄:私は死にませんわ。キルスおばさまよりはうまくやります。
GM/キルス:「…………。ちなみに,真には会ったの?」
瑚唄:……いえ,残念ながら。
GM/キルス:「ふん,あいつも冷たいわよね。私が怪我したってのに見舞いにも来やしないし」
瑚唄:ひどくお忙しそうでしたからね。
GM/キルス:「何に忙しいんだか……」
瑚唄:あの人は,いつもあんなに忙しいんですか?
GM/キルス:「どうかなぁ。ま,1週間に1度くらい泪ちゃんのヤツアタリがあって,そうすると忙しくなるみたいだけど」
真琴:それは忙しい。実に忙しいだろうなぁ。ねえ?
水限:あら,私は大谷さんに仕事を強要したりしてませんよ?(笑)
瑚唄:(無視)ちなみに,おばさまがこの前にあの人とお会いしたのはいつですか?
GM/キルス:「ん,真? ええと,半年くらい前かな。何で?」
瑚唄:……いえ。
GM/キルス:「瑚唄,あたしさ。こうなること,前から知ってたのよね」
瑚唄:こうなること? この計画を,ですか?
GM/キルス:「そう。なに,あんたどこで知ったの?」
瑚唄:札束の中から……いえ,別にそれはどうでもいいんですけどね。
GM/キルス:「ま,いいけど。ともかく,私はこんな計画,成功するわけないと思ってた。非感染者がオーヴァードに勝てるわけないもんね。だから気にもとめなかったんだけどね……」
瑚唄:それは,勝てる手段があれば実行にうつせる,ということだったのでは?
GM/キルス:「『勝てる手段』ね。考えるだにバカバカしいわ」
瑚唄:お母様が言ってましたけど,人間って貪欲なんですよ。
GM/キルス:「貪欲?」
瑚唄:はい。やるならとことんやる。欲しいものが手に入るまで,決して手段は選ばない。人は夢をかなえる動物ですからね。
GM/キルス:「嫌な夢だわね……さて,もう眠いから寝るわ。お休み」
瑚唄:はい,お休みなさい。
GM:で,君が医務室を出るとですね。そこに例の金髪男が待ち構えていました。「はーい,コウタさーン!」
瑚唄:あらこんにちは,アブドルさん。
GM:ちなみにアブドルはヘッドホンで音楽聴きながら踊っています。ちなみにウォークマン。
真琴:それは,ちゃんと肩にラジカセかついでないとダメなんじゃないか?
GM:いや,ウォークマン。もちろんカセットテープ。ソニーです。
瑚唄:(さらっと)ちょうどよかったです。探してたんですよ。
GM/アブドル:「え? ナニ?」
瑚唄:アブドルさんは,大谷真さんをご存知ですか? いえ,知ってはいるでしょうけど。
GM/アブドル:「そりゃ,知ってはいるケどねー。深イつきあいじゃないヨ。てゆーかあんナクソ真面目な男,つきあってられまセンよ。ナに気取ってんの,クライな感じ?」
真琴:まったくだ。
水限:その通りだな。
直人:確かにな。
GM:…………。
瑚唄:(咳払い)調査をお願いしてもよろしいですか。大谷真さんについて。できれば早急に。
GM/アブドル:「え? でもナニを調べルの? デキルこととデキないことがあるからねー」
瑚唄:今から半年前あたりの動向を,特に。あとこのことは,直人さんにも他言無用にお願いします。
GM/アブドル:「ハーン? でも連絡手段がナイからね」
瑚唄:ではこの子に教えてくださいな,と従者がぬらり(笑)。
GM:ぬらり言うな。まあいいでしょう。
瑚唄:ちなみに形態はどうしましょう?
GM:ん? じゃあ赤いスライム。べスとか。
水限:(ぼそっと)個人的には赤いちよ父などいかがなものかと?
瑚唄:おお!
GM:いや,形態はどーでもいいですから,
瑚唄:先生,経験点使って《コウモリの翼》を。
GM:不許可。
瑚唄:だって浮いてないと。
GM:不許可だっつっとろーに。
水限:大丈夫だ,それでも銃弾は跳ね返す。
真琴:しかも頭上半分だけだったり。
GM:だからいいから,それは! ちなみにこっちも用件あるんだけど,言っていいかな?
瑚唄:はい,なんでしょう?
GM/アブドル:「その,君の友人なんだけど,」
瑚唄:見つかりましたか!?
GM/アブドル:「……いや,見つかったは見つかったんだけど,その,もう街からでちゃったんだよね」
瑚唄:…………。
真琴:サマルトリ○の王子みたい。
水限:結局宿屋で寝てたと?
瑚唄:……で,結局どこに行ったんですか?
GM/アブドル:「日本本土の北海道みたいだねー。何故かは知らないけど」
瑚唄:いえ。……行き先がわかったんならホッとしました。彼女がこういうことに巻き込まれてないなら,それはそれでよいことですし。
GM/アブドル:「でさー,瑚唄さんも,出たいよねこの街?」
瑚唄:そうですわね,出られるものなら。
GM/アブドル:「キミの持ってタトランクあるジャない? アレの中身全部と交換だったラ,出してあげられナいこともなイけど」
瑚唄:高いですわね。……いえ,これを渡したくないという以前に,私,ここに残ります。
GM/アブドル:「ふーん? どうして?」
瑚唄:知りたいんですよ。お父様の考えていることとか。
GM/アブドル:「君の父上? 誰だい,それは?」
瑚唄:(にっこり)ヒミツです。
GM:なるほど。……では,ここでシーンをきります。