SCENE 06


GM:はい,次のシーン……って瑚唄ちゃん,何してんの。
瑚唄:だから例によって登場人物をホワイトボードに書いてるんですよ。えーと木村美沙。イモ剥き少女。
GM:イモ剥き少女言うな。せめてウサギのヌイグルミ少女言え。
水限:どう違うのよ。
GM:ピーラー師匠でも可。
瑚唄:はいはい,何でもいいですけどね……あとむねむねと,リヒターと,……GM,一ノ瀬「りか」ってどう書くんですか?
GM:カタカナ。リカ先生だから。
水限:(甲高い声で)モシモシ,アタシリカチャン! オデンワアリガトウ!
真琴:(同じく甲高い声で)ワタシ,イマ,ふぁるすはーつニイルノ!
水限:アナタモワタシトイッショニてろカツドウヲシテミナイ?
瑚唄:どういう電話だ,どういう!(笑)
GM:(ぼそっと)電話って言えば,電話をかけている人の後ろにそっと立って,「もしもし,あたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの……」は基本ですよね……。
瑚唄:何の基本だ,何の!
直人:何というか,どんどん会話がシュールになっていくな。
GM:はいはい,どーでもいいですが瑚唄のシーンなので席に戻ってきてください。……えー,というわけであなたは学校を利用した避難施設の中にいます。
瑚唄:で,このメモで何か他にわかることあるんですかぁ? 「字が汚い」以外に(笑)。
GM:えー,ですから大谷の居場所が書いてあります。汚いからわかりにくいですけど。そうやって探していると,向こうから眼帯つけた30くらいの兄ちゃんがやってきますね。
瑚唄:もしもし,市警部の方ですか? 大谷氏を探しているんですけど。
GM/猪熊:「ああ,大谷さん? それならこの廊下を突き当たりまでいって右だ。あの人に何の用だ?」
瑚唄:ちょっとした私用ですわ。
GM/猪熊:「……まぁいいんだが,あの人も忙しいからな。あんまり邪魔すんなよ?」
瑚唄:あら,そんなにお忙しいんですの?
GM/猪熊:「何でも部下に造反されたとか……半年前から入った連中が全部裏切ったらしいぞ。瀞南寺って人が数少ない部下連れて,ここまで突破してきたらしいけどな」
水限:瀞南寺がやってるの?
GM:あとは鷹村とか……いや,アレはいるのかなぁ(笑)。
水限:いやあ……(笑)。
瑚唄:それはともかく,造反ですか。穏やかではありませんわね。
GM/猪熊:「正確には,UGNアクシスから命令があって,連中はそれに従ったってことらしいけどな」
瑚唄:でも,大谷さんはそれに反抗されたんですね。ふーん。
GM:それはそうと,現大谷さんの部屋って校長室ですけど。
瑚唄:偉い人とバカは高い……。
GM:高くないですっ。2階ですっ。
瑚唄:(無視)というわけでドアをノックします。もしもし,失礼いたしますが。
GM/大谷:「はい,どうぞ……ん? 君は?」
瑚唄:……今,「君は」とおっしゃいまして?
GM:……まぁ,そうですね。
瑚唄:そうですか。(にっこり)はじめまして。
GM/大谷:「はあ」
瑚唄:突然ですが,姫宮咲耶榎とユージン・エヴァレットの娘,瑚唄と申します。
GM/大谷:「……はあっ!?」
瑚唄:(さらににっこり)入ってよろしいですか?
GM/大谷:「あ? ……あ,ああ。ともかく汚い部屋だけど,そのへんに座ってくれるか?」ちなみに元は広い校長室だったんですが,内部はうずたかく積まれたバナナ,じゃなくて書類で埋まってます。「ちょっとたてこんでてお茶も出せないけど……」
瑚唄:いえいえおかまいなく。
GM/大谷:「……で……何。ホント?」
瑚唄:はい。アメリカからちょっとした所用で来たんですけど,妙なことに巻き込まれてしまいまして。
GM/大谷:「はあ……大変だねえ」
瑚唄:いえいえ。大谷さんほどではありませんわ。
GM/大谷:「……あ,で,さや……姫宮さん,何か言ってた? 彼女,どうしてるの?」
瑚唄:さあ,母とは入れ違いになりましたもので。
GM/大谷:「そうか。……ああ,でも君のお父さんはすぐにこっちに来ると思うよ。今,キルスが迎えに行ってるから……」
瑚唄:…………。
GM/大谷:「? どうかした?」
瑚唄:いえ。
GM/大谷:「……あのさ,悪いんだけど,今ちょっと……」
瑚唄:ええ,わかってますわ。今日はご挨拶に伺っただけですから。お忙しいところお邪魔して申し訳ありませんでした。
GM/大谷:「……悪いね」さて,そんなところで白衣を着た若い男が入ってきます。「大谷さん,いいかげんにアレ受けてくださいよ」「悪い,今ちょっと時間がないんだよ」とか言ってます。んで,「ホントに後で来てくださいよ!」と言い捨てて男は出て行きます。
瑚唄:それでは私も失礼いたします。……ちょっと,すみませんが?
GM/男:「ん?」
瑚唄:失礼ですが,いったい何のお話で?
GM/男:「んー? というか,君は誰?」
瑚唄:おかまいなく。最近ひょっこりと発生した者ですわ。
GM/男:「…………。まぁいいけどさ。いや,単にね。この街じゃ,登録してるオーヴァードは3ヶ月に1回,検診受けなきゃなんないんだよ。それをあの人ときたら,ずるずると半年も!」
真琴:(ぼそぼそ)ついでに人間ドックも受けなきゃいけないのに。
水限:(ぼそぼそ)いつ胃に穴が空くかわからんもんなぁ。
真琴:(ぼそぼそ)それが怖くて逆に受けられないのかもしれんぞ。
水限:(ぼそぼそ)ああ……そうかもね。実は円形脱毛症なのに気づきたくないとか。
GM/男:(←かたくなに無視)「……オーヴァードというのは,結局のところ病人だからなぁ……あ。ひょっとして,君も発症者か?」
瑚唄:(再びにっこり)はい,病人です。
GM/男:「ああ,いや……ともかく,医者の管理は必要なんだよ。忙しいのはわかるんだけどさぁ」
瑚唄:……ところで,お名前を伺ってもよろしいですかしら?
GM/男:「ああ,俺? 田上ってんだ。で,君は? 見ない顔だけど,どこの人?」
瑚唄:瑚唄と申します。最近ひょっこり発生したものですので,お気になさらず。……というわけでこの街は不案内ですし,突然こんなことになって困ってるのですけど。……田上さん,お忙しいですわよね?
GM/田上:「んあ? ああ,俺はね。もしよければ俺の知り合いに猪熊ってロクデナシがいるから,そいつに案内とかしてもらったら?」
瑚唄:猪熊さんというロクデナシですわね。わかりました。
水限:おかみさんたちが〜♪ 白い目でにらんだ〜♪ まるでこの私を〜♪ 泥棒みたいに〜♪
真琴:ろく〜で〜なし〜♪ ろく〜で〜なし〜♪ ……ちなみにこの歌歌いながら鼻からピーナッツ飛ばす人いたよね。あれ誰だっけ。
直人:知らん。
水限:何それ。
真琴:知らない? お笑い本舗のさぁ……。
GM/田上:(←さらに無視)「とりあえず体育館で配給やってたから行ってみたら?」では,そんなところでシーン終了します。

 

  SCENE 07


GM:……で,そこのヒマそーなみーちゃんだけどさ。
水限:はーい,ヒマなみーちゃんですがー?
GM:……とりあえずリカ先生のところへ向かうわけですね。ちなみに,君がいるのも避難施設の中。
水限:あ,そうなの。
GM:そう。異例中の異例ですけど,現在防衛隊という大きな敵を前に,市警部,UGN,ファルスハーツが手を組まざるを得なくなってるんですね。
水限:呉越同舟と言うヤツね。で,何か用ですか。
GM/リカ:「……何かしら,この報告書は」
水限:報告書。
GM/リカ:「先生言ったわよね。村崎に気をつけろって」
水限:…………。
GM/リカ:「なに?」
水限:…………。いや困ったなぁ。「あれはプレイヤーのミスです」とは言えんわなぁ(笑)。
真琴:言うのか,水限が。
水限:いや言わない。しかたないから黙ってますけどね。
GM/リカ:「ま,やってしまったことはしかたないんだけどね。今度から気をつけてね。今度があればだけど」
水限:(頷く)
GM/リカ:「じゃ,次の仕事ね。さっき,市警部の偉い人と,大谷真と,ギルドの怪しい金髪チャイニーズと話してたのね。アブドル・アル・ハザードとかいう……」
水限:なんでチャイニーズなのにアブドルなの。
GM/リカ:「さあねえ。とにかく,私たちはここに避難民を集めて防御体制をしこうと思ってるの。水限くん,今携帯が通じないのわかってる?」
水限:え? ……あ,ホントだ。
GM/リカ:「電波封鎖をされてるみたいなの。……今がチャンスだと私は思うのよね」
水限:チャンス?
GM/リカ:「そう。今,色々な部隊を外に出してるでしょ? 誘導のために。向こうさんは当然そこを狙うわよね?」
水限:……まぁ,そうですね。
GM/リカ:「で,このあたりに恐らく電波封鎖のための施設があるわ。手薄なうちに,これを壊しに行って欲しいの」
瑚唄:つまり,市民とそれを誘導してる市警部をオトリにして,その間に少数精鋭がこそーりと?
水限:……それはわかるけど。
GM/リカ:「何?」
水限:でも,何で俺なんですか。あまり向いてないと思うけど。
GM/リカ:「ああ,それね。希望任務と適性の問題」
水限:適性?
GM/リカ:「そう。生き残りたいと思う子には,生き残れる確率が高い任務を回すの。でも水限くん,別に死んじゃったって構わないんでしょ?」
水限:うん。
GM/リカ:「そういうこと。よろしくね」
水限:(黙って頷く)
GM/リカ:「まだ装備とか全部整ってないから,少し時間があるわ。呼びに行くまで,どこかそのへんぶらついてて」
水限:了解。……あ,それと1人でやるわけじゃないですよね。
GM/リカ:「ええ,だから後で接触してくると思うわ」
水限:じゃ,その時になったら呼んでください。
GM:はい,じゃここでシーンを変えます。

 

  SCENE 08


GM:直人さんのシーンです。
直人:ふむ。では一ノ瀬リカとの待ち合わせ場所に向かおう。
GM:わかりました。……しかし,同じ場所にいるはずなのに微妙に出会いませんな。
直人:そうか? 別にお互い用事がないからではないのか。
瑚唄:私は直人さんに訊きたいことがあったんですけど,携帯が通じませんものねえ。
真琴:不便だな。また出会えなかったりしてな(笑)。
GM:いや……まぁ,そのためにデモンズシティでは従者や《ハンドリング》が便利なはずだったんですよ。
水限:ああ。……そうねえ,たまちゃんなんか,ホント何のためにいたんだかわからなかったものねえ。
真琴:愛玩動物だろ?
瑚唄:食玩。
水限:食玩言うなぁ!
一同:(爆笑)
水限:食うな! つーかヤキトリ言うな!
GM:はいはい。次のシーンいっていいですかー?
水限:(しくしく)みんなひどいよ。たまちゃんはこんなにかわいいのに,こんがり焦げておいしいとか言う……。
真琴:たまはこんなに赤いのに,ちよはたまが好きだと言う……。
水限:つか赤くもねえ。
GM:……いっていいのかなー?
直人:泣くなオウム。クラッカーをあげるから。
GM:……直人さんのシーンなんですけど。ってか! あなたまで脱線してどうするんですか!
直人:おお,そうか。それでは待ち合わせ場所に行くぞ。
GM:そうしてください。そこには30代後半の物静かそうな女性が立っています。「上杉直人さんですね? 一ノ瀬リカです。よろしくお願いします」
直人:ええ,こちらこそよろしく。それで,早速ですが依頼というのは?
GM/リカ:「あなたには,戦力を集めて欲しいんです」
直人:ほう? 何のためにですか?
GM/リカ:「我々ファルスハーツはこういう作戦をたてています」と,さっきみーちゃんに言った作戦を説明します。「私は,これが我々の生命線だと思っています」
直人:そうかね? しかし,それは通信網を回復させるだけの作戦にしか見えないが?
GM/リカ:「いえ,その……詳しくは言えませんが,我々はある施設を保有しています。そこからならば,デモンズシティの『外』に通信が可能です」
直人:……ほう。いつの間にそんなものを。
GM/リカ:「15年ありましたしね」
直人:ふん,いずれは誰かが……おっと失礼,これは聞かなかったことにしよう。それで?
GM/リカ:「ウチからも1人出します。面識ありましたよね,水限」
直人:ああ,彼ね。それは別に構わないが……そもそも,どれくらいの戦力が必要なのかさっぱりわからんな。
GM/リカ:「少数精鋭がいいと思いますよ。彼らに損害を与えたいわけではありませんし」
直人:まぁいいだろう,やってみよう。爆弾等は用意してもらえるのだろうね?
GM/リカ:「少々お時間をいただければ……時計屋さんさえ生きていれば,もっと質のいいものができたんですけどね」
直人:過ぎたことを言ってもしかたあるまい。それでは私が人員を集めている間,準備を頼む。
GM/リカ:「そうですね。水限にも会っておいてください。……彼も,色々と問題の多い子ですから。『水限』というのは自分で名乗ってるんですけど,」
水限:(横から)え,ちょっと待って。自分では名乗ってないよ。
GM:……そうだったの?
水限:単に名前がなかったんで,2番目の上司くらいに便宜上つけられただけ。てゆーかみーちゃんにそんな語彙はないと思うぞ。
GM:ちっちゃいころ辞書で引いたとか。
水限:そーゆー気力はないと思うねえ。
直人:で,それ結局どーゆー意味なんだ。
水限:もともとは雨だれを受ける石とかそーゆー意味だけど,今では「ある時点」だね。「ご幼少のみぎり」とかいうでしょ。
GM:「現在だけで過去も未来もない」とかそーゆー意味でつけた名前らしいですよ。
直人:(しみじみと)よくそういううがったことを考えるなぁ。
水限:……放っといてください。

 ちゃんと私の新解さん第三版には載ってるもん(泣)。

GM/リカ:「ともかく,名前の通り問題の多い子でして」(笑)
直人:心配ない。問題児を育てた経験はある。
GM:(頷きかけて)ん? ……心配「ない」のか,それは?
真琴:子育てに失敗して問題児を育てちゃっただけなのでは?
一同:(爆笑)
GM/リカ:「ま,まぁそういうわけで,水限をよろしく頼みます。この学校のどこかにはいると思いますので」では,ここでシーンを終了します。
水限:あんまりよろしくされたくなくなってきたぞ……(笑)。

 

  SCENE 09


GM:はい,お待たせしました。君嶋のシーンです。君はですね,美沙ちゃんの協力を得て,何と今までの10倍の速度でイモが剥けるようになりました。
一同:おおー(笑)。
水限:でも下手なんだよね。ピーラーってさぁ,細かいところ剥けなかったりするじゃない? 芽がとれないとか。
GM:え? とれますよ? 端のとこで……。
水限:ウチのピーラーはとれない(笑)。それはどうでもいいんだが,君嶋芽とるの忘れてそうじゃない?
GM/美沙:「お姉ちゃん,おイモの芽ってとらないとダメなんだよ?」
真琴:…………。そ,そうだったのか?
一同:(笑)
GM/美沙:「……お姉ちゃん,このまま食べたら食中毒だよ?」
真琴:す,すまない。この芽を全部とればいいんだな?
GM/美沙:「うん。……ごめんね,美沙本当は手伝ってあげたいんだけど,そろそろお母さんのところに戻らなきゃ」
真琴:ああ,そうだな。ありがとう,助かった。
GM/美沙:「こちらこそ。またくるねー」と美沙ちゃんは退場します。
真琴:しかたない,これ全部やり直しか……。
GM:と,ひとりぽつーんとイモ剥き再開してるわけですね? ……さてみーちゃん,出るかね。
水限:あいよ。入れ違いに登場します。(いっころ)というわけでそこにはたぶん,君嶋が使えず放り出した包丁がありますよね? おもむろに取り上げて,隣に座って,黙ってイモを剥き出します。
GM:怖いぞ。
水限:そう? あ,ちなみにワタシ,イモの皮剥きには自信があります。
直人:実は料理上手とか?
GM:じゃなくてですね,けーちゃんに仕込まれたんですよこの人。当番とかで一緒になると,みーちゃんがあまりに何もできないんで「あーもういい! アンタは隅っこ行ってイモの皮でも剥いてなさい!」みたいな。
瑚唄:1日1個必ずイモを剥け! そして生で食え!(笑)
GM/慧:「イモはね,大事な食料なんだからね?」(笑)
真琴:そうなの?
水限:そうらしいね。イモのおかげで飢饉をのりきった例はたくさんある。
GM:アレですよ,ジャガイモ20キロあれば食糧難も乗りきれますからね!
瑚唄:それはガン○レじゃ……。
水限:あれ,30キロじゃなかった?
真琴:いや,40キロ。
水限:40だっけ。……いや違う,60だ。ってそれもどうでもいいんだが!(笑)
GM:すいません,話を元に戻します。君嶋,突然うすらデカい男が隣に座って,無言でイモの皮剥いてますよ?
真琴:(じっと隣を見て)……すごい,薄さが3ミリない……。
水限:君嶋,それは当たり前だ。
一同:(笑)
瑚唄:3ミリって,すげえ厚くね?(笑)
直人:ピーラーで3ミリか。それは一種の才能だぞ。
真琴:で,では薄さが0.1ミリないということで……。
水限:それは薄い。
真琴:そ,そうなのか?
水限:ジャガイモはある程度厚く剥くものです。いやどうでもいいけどね。
真琴:……おまえ,何してるんだ。
水限:皮剥き。
真琴:それは見ればわかる。自分の仕事はないのか?
水限:別に。待機中だから,今のところは。
真琴:待機中?
水限:そう。……まぁ,どちらにしろ,俺もう用のない人間だからなぁ。
真琴:……なんだそれは。
水限:ん,何と言うか……俺はガードが仕事だから……。
真琴:…………。
水限:こないだまで一緒に組んでたヤツがいたんだけど,そいつをかばって,いざという時には盾になって死ねって,そう言われてた。
真琴:…………。
水限:でも,何故かそいつが俺をかばって死んだ。だから,もう用はないみたいだ。
真琴:……それは,変じゃないか?
水限:何が?
真琴:おまえは,何でそんなに自分を粗末に扱うんだ?
水限:粗末に扱ってるか? そうかな?
真琴:私にはそう見えるが? そんなことをしていて悲しくないのか?
水限:でも,俺がそうしたかったら……。
真琴:そうしたかった?
水限:昔読んだ本で……冷害で飢饉が起こって,両親とか死んじゃった少年が,大きくなって農業の研究やって,みんなに感謝されるんだけど。
真琴:うん。
水限:またひどい冷害が起こりそうだっていう時に,火山を爆発させて地面を暖めるためだったかな? ……ともかく,自分が犠牲になってたくさんの人を救うんだ。
真琴:…………。で?
水限:でも,火山を爆発させるのって,他のやつにもできたことなんだ。
真琴:……まあな。
水限:だったら,そいつが死ぬことなかったのにって思った。もし,誰かがそいつの代わりに死ねば,そいつはもっと長生きして,もっと人の役にたてた。
真琴:…………。
水限:俺,自分がその役になれたらいいのにってずっと思ってた。だからけっこう嬉しかったんだけど……やっぱり,思うようにはいかないもんだな。
真琴:…………。
水限:…………。
真琴:……おまえが組んでいたという人物だが。
水限:うん?
真琴:その人は,おまえにとって親しい人間だったのか。
水限:……わりと。
真琴:そうか。だったら……その人は悲しんでいただろうな。
水限:どうして?
真琴:親しい人間が,自分を粗末に扱っている――そんなに簡単に自分を投げ出そうとするのを見るのは悲しいものだ……。
水限:そうなのか?
真琴:……おまえは悲しくなかったのか?
水限:何が?
真琴:その人が,おまえを守るために死んだことが……。
水限:…………。
真琴:…………。
水限:そうか……。
真琴:ん?
水限:いや,そうか……悲しかったのか……。
真琴:…………。
水限:…………。
真琴:……水限。
水限:うん?
真琴:……もし誰かを守りたいと思うなら,まず自分自身を守れなければな。
水限:そういうものか?
真琴:ああ。……自分を投げ出すのは簡単だ。だが,そんなことをしてもその人を悲しませるだけだ……。
水限:…………。
真琴:…………。
水限:……君嶋さぁ。
真琴:え?
水限:例の作戦には,参加するのか?
真琴:例の作戦? 何だ,それは?
水限:ああ,知らなきゃいいんだ。……あのさ,悪いんだけど。
真琴:うん?
水限:これ,預かってくれない?と懐からカメを2匹出してきて,
真琴:懐からッ!?
一同:(爆笑)
水限:え? いや,懐というか内ポケットというか,
瑚唄:いやそうじゃなくて(笑)。
真琴:あー。出すのか? ……生きたカメを,懐から?
GM:ヘンだよ。ヘンだよアンタ!
水限:(へーぜん)ちなみにこれがジョバンニ。こっちがカムパネルラ。
真琴:……は?
水限:だから,名前。ミドリガメがジョバンニ。アカガメがカムパネルラ。
GM:何で銀河鉄道だよっ!?
瑚唄:……片方,溺れて死にそうじゃないか?(笑)
水限:(無視)飼うの簡単だから。エサはパンとかでいいし。
真琴:そうか。私も動物は好きだから……。
水限:そう。じゃ,よろしく頼む。
真琴:……が,その前に,ひとつ訊いておきたいことがある。
水限:なに?
真琴:その「作戦」とはなんだ?
水限:…………。
真琴:こいつらを,私に預けておかなきゃならないほどの作戦なのか?
水限:……たぶん。
真琴:教えてくれないか? いや,話せることならば,ということだが。 
水限:どうだろう……少し困る,のかな。立場的には。
真琴:ああ,ちなみにこれはUGNのエージェントとしてではなく,私個人として訊いているのだが……。
水限:(しばし黙って)……何でも,通信を回復させるために何かを壊しにいくとかなんとか。それ以上は,俺もまだ知らない。
真琴:そうか。でも,困難な任務なんだな。
水限:みたいだな。まぁ戻ってこられないと,こいつらは困るだろうから。
真琴:……水限。
水限:うん?
真琴:おまえ,死ぬなよ。
水限:何で?
真琴:(思わず)……ほら来たぞ。
一同:(笑)
GM:感じ悪いセリフ来たー!?みたいな(笑)。
真琴:おまえその「だから?」とか「何で?」とかやめろ。
水限:何で。
真琴:何と言うか,その……ひどく投げやりに聞こえる。
水限:そうなのか?
真琴:そうだ。……つまりな,おまえが死んだら,私は悲しいぞ?
水限:…………。
真琴:…………。
水限:……そこでまた「何で?」とか言ったら,ぶっ飛ばされるよな。
真琴:バナナ1万本食ってもらおうか。
一同:(爆笑)
GM:なあ……いつからウチでは共通単位がバナナになったんだ。
瑚唄:さあ(笑)。
真琴:1バナナ2バナナ3バナナ。……ってそーでなく! おまえも茶化してないで返事したらどーなんだ!
水限:しかし,そこで何かを言うのも変じゃないですか?
GM:それならそれで黙ってたらどうですか(笑)。
水限:ああ,そうね……あ,そうだ。君嶋さぁ,昔……。
真琴:ん?
水限:…………。ああ,いいや,やっぱり。
真琴:? 何なんだ,いったい。
水限:いや,いいんだ。ホントに。
真琴:……わかった。ならそれは,おまえが帰ってから聞くことにしよう。
GM:はい,じゃあこのシーンはそこで終わりでいいですね?
真琴:いいでーす。
水限:…………。(ぱったりと突っ伏す)
GM:? どないしました?
水限:疲れた。とっても疲れた。ああ,昔楓とやったラブシーンを思い出すよ……(笑)。
真琴:痛みに耐えてよくがんばった。いいんじゃないか,たまにはシリアスで。
水限:……なんだか心がイタいです,所長……(笑)。