SCENE 11


GM:では次は……あ,このあたりでマスターシーンとなります。
水限:誰が死ぬかな♪ 誰が死ぬかな♪
真琴:イヤなサイコロだな……。
GM:時刻は午後12時34分。場所は……。

 午後12時30分。
 台所にはキャラメルが焦げる甘い匂いと,明るい笑声。
 なお,その家では昼食時にもケーキを食べる。
「ほら,コウくん! コウくんが食べたいって言ってたオレンジケーキだよ!」
「やあ,美味しそうだなぁ!」
「端っこのとこ,少し焦げちゃった……でも,オレンジケーキはこういうところが美味しいのよ?」
「明日香のケーキだったらなんだって美味いさ。やあ,オレンジ色が綺麗だなぁ! まるで明日香の俺に向ける愛情みたいさ,なーんてな!」
「やだなぁコウくんたら! ボクのコウくんへの愛は,もっと真っ赤だよっ,なーんてね!」
「はっはっは,明日香ってば,テレるじゃないか!」
 明るく笑いあう恋人たち(と言っても結婚15年目だが)。
 それを「平和ボケ」と笑ってすませられるものか。彼らは,その瞬間まで「それ」に気づかなかった。

 蜘蛛を思わせるそのシルエットは,しかし,人の背丈をはるかに超える。午後の太陽を浴び,不吉に光る黒いボディ。赤い炎のマーキング。2本の「腕」が上がり,同色のランチャーを構える。
『起動は』
『完了』
『よし』
 感情のない,錆びた声が,
『やれ』

 閃光。
 次の瞬間,その家は蒼い炎の中に消えた。

『アイオーンは撤収。2名残って死体を確認せよ』
『了解』

 午後12時34分。松山家炎上。2名が死亡。


瑚唄:ちなみに,娘はどうしたんだ。
水限:遙ちゃんとあきちゃんは,そもそも学校です。
瑚唄:ちっ。
直人:……大丈夫だ,位置は掴んでいる。
一同:(爆笑)
直人:作戦は,1800時……。
水限:あのですね,まずは第1部第2部のキャラから殺していきましょうよ。第3部はその後に……。
直人:いや,あの,今のはただの冗談ですが。
水限:あ,そうなの? マジじゃなかったの?
瑚唄:アンタなぁ……(笑)。
真琴:いつからGM一派に加わったんだ。そして何を企んでるんだ。
水限:いや,別に? 私は自分のキャラ殺していいって最初っから言ってるし。
瑚唄:でも,泪も晟も死なないんだよね。
水限:おや,そうなの?
真琴:そうみたい。私もキルス殺していいって言ったんだけどなぁ。
水限:ねえ。
GM:泪とキルスは殺しにくいポジションにいやがるんですよ。
水限:よりによってその2人がかよ? 全然復讐になってないじゃん。
GM:だから,復讐だなんて一言も言ってませんよ!
一同:違うの?
GM:そうですっ。復讐だったら,栄吉っちゃんとか殺す必要ないじゃないですか。
真琴:は! そう言えば,私栄吉っちゃんにロイスをとっているぞ!?
瑚唄:事情を知ったら即タイタスですね。
真琴:あー!? しかも,大谷さんにもロイスとってるんですけど!?
水限:それもタイタス決定だな。けけっ。
真琴:た,大変だ。がんがんロイスを結ばなければ,ヤバい。
GM:それは後でやってください! とにかく,これでマスターシーンは終了です。
水限:(歌うように)次は誰が死ぬかな〜?

 

  SCENE 12


GM:では次。……直人さんですかね。美貴さんと会うシーンをやっとかなきゃなんで。
瑚唄:私はまだお留守番ですわね。早く直人さんに「十全ですわ,お友達(ディアフレンド)」とか言いたいんですけど。
水限:……あのさ。それって,ゲーマーズフィールドでもう使われてたよ?
瑚唄:…………。マジ!?
水限:うん。確かN◎VAだったと思うけど,「○○ですわ,お友達」っていうキャラおったもん。N◎VAだから「お友達」と書いて「ディアフレンド」ではなく「バディ」って読むんだけどね。
瑚唄:……が,がーん。
GM:く,くそう!? もっとマイナーなとこからネタ持ってこなきゃダメか!?
水限:予測はしておくべきだろ? だってエンギアのセラピアがアレだぜ?
GM&瑚唄:い,言ってはならないことをーっ(笑)。
直人:で,続けていいのかな。
GM:あ,はいはい。それと,君嶋とみーちゃんは登場しますか?
真琴&水限:はーい,登場しまーす。
瑚唄:一応,〈隠密〉と〈知覚〉でチェックしますか? お互い面識がないんだし。
直人:いや,こんなところで誰かが聞き耳をたてているとも思わないだろうから,構わんだろう。
瑚唄:おお!? あなたにしては珍しいご発言。
直人:尚也だったら警戒に警戒を重ねるかもしれんが,私は尚也じゃないんだ。
瑚唄:やっぱりヘンですよ,尚也さんの性格って。
直人:そうか? どこがヘンだ?
GM:(咳払い)えー,ではあなたが中庭で待っていると「すみません,遅れましたーっ」という声とともに,1人の看護士が全力疾走で走ってきます。もう遅刻寸前,目の前で校門が閉まるよママン!?な高校生もかくやという勢いですね。
直人:いやお嬢さん,そんなに焦る必要はないのだがね。
GM:ちなみにミニスカですので,かなりスゴイことになってます。
直人:ゆっくり歩いてきたまえ。構わないから。
GM:……それだけですか。
直人:は?
GM:ミニスカナース服で全力疾走,ですよ!? 他にもっと言いようってもんが! ねえ!
水限:って何故私を見るんだ。
GM:何かありません? こう「萌え〜」なものが。
瑚唄:28歳じゃこの人喜びませんよ。ねえ?
水限:28歳? ダメダメ。却下。
GM:…………。
水限:はい次。ほら,早く話進めて。
GM:ああン!? ふざけんなよこんちきしょうッ!?
水限:(妙な声音)は〜ん? 28さ〜いでミニスカナース服で全力疾走〜? そんなので萌えるかってんだよ。けっ!
GM:あなたの趣味はいい。別に,いい。だいたいナース服っていうのは,
直人:ねえ,話聞いて。
一同:(爆笑)
GM:ああ,ごめんなさいごめんなさい! シーンプレイヤーはあなたでしたね。
直人:そうなのだ。……で,あなたが楠山美貴さんですね? 上杉直人と申します。私の素性は,もうご存知ですね?
GM/美貴:「は,はい。ギルドの方と伺っています」
直人:単刀直入に伺います。あなたが爆破事件のあった日に見たという男について教えていただきたい。
GM/美貴:「市警部の方に詳しくお話ししたと思うんですが……」
直人:いや,何か見落としがあるかもしれない。改めて,あなたに直接伺いたいのですが。
GM/美貴:「わかりました」では,まぁ復習ということで。まず事件のあった日の昼間,怪しい男が地下をうろついていたんだそうです。地下にあるのは貯蔵庫やボイラー室や,まぁ見舞い客には用のない施設ですから,おかしい,と思って問いかけたところ,男は身を翻して逃げてしまった。そして,その夜の9時ごろ,爆発があったというわけです。
直人:9時ごろ。それは,どの程度正確な時間ですか?
GM/美貴:「消灯直後でしたから,9時を……そうですね,10分は過ぎていないと思います。間違いありません。引継ぎも終わって,私は上の階を見まわっていました。その時爆発があって,慌てて下りてみたらもう大惨事になっていました」
直人:消灯時間後とおっしゃいましたね? では患者さんはあまりいなかった?
GM/美貴:「そうですね。基本的に地下に用のある方はいらっしゃらないと思います。あと,先生方も看護士も,当直の人以外は」
直人:なるほど。つまり,あえて人のいない時間帯を狙った,か。殺傷目的ではないということだな。
GM/美貴:「そうですね……でも,やっぱり小さい子とかが寂しくなってナースステーションに下りてきたりしたんで……あの死んでしまった子も,そうですけど……」
直人:ふむ,かわいそうにな……ちなみに,あなたが不審な男を見たのは何時ごろでしたか?
GM/美貴:「昼間……ですね」
直人:昼間の何時ごろ? お昼時ですか?
GM/美貴:「いえ,昼休みを終えて,もう仕事に入っていたので……2時ごろじゃないかと思います。はっきりとは言えませんけど」
直人:なるほど。だいたい設置から爆発まで7時間おいていると見ていいですね。では次の質問ですが,その爆発が終わったあとに,こんなものを見ませんでしたか。……そう言って,例のロボットの絵を見せます。
GM:〈知覚〉。
直人:なに? ……では《天性のひらめき》を使おう。
GM:こちらは〈隠密〉で判定します……(ころころ)お? 回りまくったぞ? 29!
直人:(ころころ)……む? まずい,失敗だ。
GM:では「すいません,わかりませんね……てゆーかそれ,SFですか?」みたいなカンジ?
直人:SFなどではない。米軍ではすでに実戦配備が検討されています。
GM/美貴:「はあ……でもアメリカ軍がこんな効率の悪そうな機械,使いますかね」
直人:はは。彼らは効率悪くても平気で使いますからね。
一同:(爆笑)
瑚唄:切り替えし方がイヤだよこの人ー。
直人:(平然と)ははは。何せ1人の人間を殺るのに気化爆弾を使うくらいですからね。
真琴:ま,「誤爆」で済ませばいいんだしね。
一同:(再度爆笑)
瑚唄:おいこら,そこ!
水限:瀞南寺が余計なこと教えるからじゃないの? それはともかく,私たちはそれを隠れて見ているわけですが,判定は可能ですか?
GM:うーん? それは直人さんが見せている絵も見えないと意味がないですからね。そこまで見えるかな。
真琴:《水晶の眼》使ってもダメですか?
GM:あ,それがありましたね。ではOKとしましょう。
瑚唄:しかし,例のロボットについては何も知らないですよね。それで何かわかりますか?
直人:後でロボットを見た時に,「あ,あの時これを見て反応してたな……」ということがわかるかもしれんぞ。
水限:じゃあ一応やってみるか……あ,君嶋。悪いけど先判定してくれる? 私HP減らさなきゃならないから(笑)。
真琴:では《水晶の眼》《天性のひらめき》で……えとゴメン。結局何の判定だっけ?
水限:だから,お父さんがヘンなお姉さんにロボットの絵を見せて,
真琴:お父さんって誰? 直人さんのこと?
直人:む,「お父さん」だとどうしても瀞南寺になってしまうな。
瑚唄:じゃあパパ。
直人:パパは勘弁してくれ。
瑚唄:ではパパン?
直人:パパンって何だ!(笑)
GM:いや,だから話を戻すと! 直人さんや瑚唄を襲ったロボットおるでしょ? あのフ○コマかタチ○マみたいな。あの絵を直人さんが美貴さんに見せたんだけど,美貴さんは表情を隠そうとしてるの。それを見破れるかどうかの判定。OK?
真琴:わかった。(ころころ)……しかし,判定は失敗だ。23。
水限:ではHP減らしましょう。《炎神の怒り》を使って……お,46〜!
GM:む? では,明らかに何かを知っているようだ。それも見たことがある,程度ではなく,かなり詳しく。46ならさらに気づいていいけど,彼女は何か訓練を受けているのではないだろうか。例えば,こういう時に感情を抑制するような。
水限:MSFでそんな訓練は……いらないとは言わないが,普通はしないよな。
GM:ぶっちゃけ軍事訓練だと思う。というか,あなたがたが受けた「羅式RC法」に近いのではないかと。
水限:何それ。
GM:あるんですよ,そういうのが。とにかく,一般人ではないんじゃないかと。
水限:ちなみに,直人さんが見せた絵っていうのは私も見えてていいのかな。
真琴:《水晶の眼》って風景を投影するらしいから,いいんじゃないか?
水限:ふむ。……で,このロボットに見覚えは?
GM:〈知識:軍事〉ですね。ない? なければ判定不可。なんかのアニメで見たな,くらいかな。
水限:(ぼそっと)……『攻○機動隊』に,こんなのがいたな。
真琴:なるほど。
水限:うん。
真琴:…………。
水限:…………。
GM:だーーッ!? 今さらだが,どーしてそうなんだおまえらわーーーッ!?
直人:いいから話を進めようよ。シーン・プレイヤーは私だから。で,最後の質問ですが,……この穴はなんですか?
GM/美貴:「あ,ですから,爆破事件の犯人……『時計屋』っていうんですか? 顔を見られたせいだと思いますけど,その人に狙われたんです。で,えーと,『従者』っていうんですか? そいつが追いかけてきて,爆発したんです」
直人:なるほど。よく無事でしたね。
GM/美貴:「その時助けてくれた子がいたんですよ。バウンティ・ハンターで,江藤くんっていうんですけど」
直人:……ちなみに,その名前に心当たりは?
GM:えーとみーちゃん。その名前,何度か名乗ったことあります?
水限:あります。けーちゃんと組んで仕事をする時は,わりとその名前だった。
GM:じゃあ〈情報:裏社会〉でどうぞ。みーちゃんは,正体知られたくない場合〈隠密〉で抵抗。
直人:(ころころ)19だな。
水限:(ころころ)ん,無理ですねそれは。
GM:では,「江藤光彦」という名前のバウンティ・ハンターはいません。ただしそういう名目で活動しているヤツがいて,そいつはもしかしてファルスハーツかもしれない。
直人:ファルスハーツとギルドの関係は?
GM:お互い不可侵。商売はしないでもないけど,積極的には関わらない。
真琴:狂信的なテロリストと,金目当てのマフィアの関係だな。
直人:つまり,この一件にファルスハーツがかんでいるということがわかればいい。私は何をする気もない。……ちなみにお嬢さん,あなたはオーヴァードかな?
GM/美貴:「……え? あ,ああ,すいません。私は非発症者なんです」
直人:と,いうことは時計屋はワーディングもかけずにあなたを襲ったということかな?
GM/美貴:「え,ええ。そうですね。私も変だと思うんですけど。あ,それと私この錠剤使ってるんで」
直人:錠剤?
GM/美貴:「はい。うちの病院で試験的に使っているものです。これを口に含んでいると,レネゲイドウィルスが散布された場所でも普通に行動できるんです」
直人:ほほう。そんな製品が。
GM/美貴:「まだ発売はされてませんよ。その,あまり大きな声では言えませんが,製薬会社と契約して試験をしているところなんです。うちの病院,オーヴァードが多いですし」
水限:……ちなみに,ライトさんとこの商品なんじゃねーの。
GM:そうですよ。だからあの人,ワーディングかけられてても平気で動いてるわけで。「もしこの薬が製品化したら,この街の人は皆助かると思います」
瑚唄:非発症者には暮らしにくい街ですからね。
直人:ま,それと彼女が真実を話しているかどうかは,まったく別の話だがな。……さてお嬢さん。まだ時計屋があなたを狙っているかもしれない。じゅうぶんお気をつけください。
GM/美貴:「あ,はい。ところで,私はこれで失礼してもよろしいんでしょうか?」
直人:結構ですが,あなた,この病院にお勤めなんですよね?
GM/美貴:「はい。ただこういう状況ですから,他の病院に応援に行くこともありますけど」
直人:そうですか。では申し訳ないが,連絡先を教えていただけますか。携帯の番号が一番いいが。
GM/美貴:「はい,携帯……」(黙る)
直人:? 何か?
GM:……携帯って言うたびに,何かが俺の心臓を刺す〜! ダメになっていく気がする〜!?
一同:(笑)
瑚唄:だから,市街でしか通用しない電話なんでしょ。いいじゃないですか(笑)。
直人:(←まったく動じていない)では,私の番号もお教えしておこう。何かあったらご連絡ください。
GM:では,彼女は「失礼します」と立ち上がるわけですが……直人さん,あなた,元防衛隊ですよね。〈知覚〉してみていただけますか。〈情報:軍事〉でも可です。
直人:〈情報:軍事〉なら8個振れるな。さらに《天性のひらめき》も使おう。(ころころ)31。
GM:では,動きにわずかに防衛隊の癖が見られます。
直人:左足から立ち,右足をぺったり地面につけない。そんなところか。お嬢さん,あなた看護士をなさる前のご職業は?
GM/美貴:「え? ああ,MSFに入ってソマリアに行っていましたが」
直人:ほう。それは素晴らしい。
GM:「いえ……」と彼女は何故か口ごもる。
直人:ふん。まぁここで訊けるのはこんなところだろう。では私は彼女と別れて時計屋に会いに行く。
GM:では,ここでシーンをきりますね。

 

  SCENE 13


GM:では次のシーン。みーちゃんのシーンです。すっかり日も暮れて,夕食時ですね。ちなみに君嶋は登場しますか?
真琴:登場するけど……あ,その前に,一度本部に帰って状況説明をしたいな。
GM:それは自分のシーンでやってください。てか,帰ってみるとみんな死んでいる,というイヤーなシーンをやりたいんですけどね?
真琴:……今,ひどいことを言わなかったか。
瑚唄:(歌うように)い・や・な・よ・か・ん・が・し・ま・す♪
真琴:ならば連絡をするだけでも……。
水限:連絡しても誰も出ないんだろ。
GM:(にやり)でませんね。
直人:『か○いたちの夜』みたいだな。
瑚唄:実は『かまい達の夜』だったりして(笑)。
水限:おお,私の名前はカマーイというんですよ,って違うから!(笑)
GM:はいはい。それはともかく,「よーしみーちゃん,仕事終わったよー」と美貴さんが来ます。
水限:あれって仕事だったのか。
GM/美貴:「いやそうじゃなくて,看護士の仕事だよ」
水限:ああ。
GM/美貴:「ナースだよ,ナース! ナースのお仕事!」
水限:だから?
GM/美貴:「……ほんっと,反応が薄いよね」
水限:何の?
GM/美貴:「だからさー,なんてーの? 人間としてのお約束があるじゃんよ。みーちゃん,もっと笑わないとひからびてミイラになっちゃうよ?」
水限:にこっ。(と笑う)
GM/美貴:「…………」
一同:…………。
水限:(無表情に)……笑ってみたけど,だから何?
GM/美貴:「…………。いや,もういいよ。とにかくご飯食べに行こう。奢るから」と,いうわけでどこぞの居酒屋です。「やー,みーちゃん飲んでるー?」
水限:俺,未成年だし。
GM/美貴:「あんたさっき25って言ったじゃんよー」
水限:そうだっけ。
真琴:確かに25と言っていた。
水限:……ああ,いたのか。
真琴:さっきからな。
水限:…………。
真琴:…………。
GM/美貴:「え,えーと。真琴ちゃんだっけ? まぁキミも飲みなよ」
真琴:私は正真正銘16歳ですが。
GM/美貴:「じゃ,オレンジジュースね。だったらいいでしょ」
真琴:わかりました。ではいただきます。
GM/美貴:「:…………。
水限:…………。
真琴:…………。
GM/美貴:「(咳払い)……いやー,いいよね,この街は」
水限:何が?
GM/美貴:「なんてーかさ,食料いっぱいあるっての? 配給制ではあるけどさ,それって,金も出さずになんでも食えるってことでしょ」
水限:それが何か悪いのか?
GM/美貴:「別に悪くないけどさ。この食料がどこから来てるのかとか,みんな考えたことあるのかなー,と思って」
水限:俺にはないな。
GM/美貴:「そう? だって,みんなが働いて食べ物作ってるわけじゃないんだよ?」
水限:だから何? 食い物は食い物だろ。
GM/美貴:「いや……いいけど。でもさ。そういうのってみんな考えないけどさ。人の命を無料で食べてるようなもんだよね」
水限:……人間はみんなそうじゃないか?
GM/美貴:「そうかな。普通は働いたり戦ったりして手に入れるもんだよ。何もしないで手に入ったりはしないよ」
水限:…………。
GM/美貴:「この街ってさ。建前上は『ない』ことになってるじゃない? それに,何の生産性もないよね? なのに,みんなが食べていけるだけの食料が,いったいどこから来るんだろう。誰がそのお金を払ってるんだろう」
水限:知らない。誰か得するヤツがいて,そいつが払ってるんだろ。
GM/美貴:「それもあるだろうけどさ……」
水限:あんた,それで何か不満なのか?
GM/美貴:「……私がいたところではさ。一生懸命働いても食べるものが何にもなくて,飢えて死んじゃう子とか,いっぱいいたからね。だから,ここっていいとこだなー,と思って」
水限:…………。
真琴:…………。
GM/美貴:「……みーちゃんさ,この街が解放されない理由とか,知ってる?」
水限:いや。
GM/美貴:「ちゃんと理由があるんだよ。……機を逸したんだよ。だから解放できなくなっちゃった。きっと,これから先もずっとね」
水限:だから?
GM/美貴:「キミたちはどうなの? ずうっとこの街にいて,それでいいの?」
水限:いいも悪いもないな。ここで生まれたんだからしかたない。ソマリアだろうと,デモンズシティだろうと,みんな同じだろ。
真琴:……私は,この街の人々を守るだけだ。
GM/美貴:「この街の人々がどんな人でも?」
真琴:…………。(←黙々と食べている)
GM/美貴:「ふーん。ま,いっか。ね,この街が解放されたらどうなるかとか,考えたことない?」
水限:ない。
GM/美貴:「…………」
水限:ないよ。だから?
GM/美貴:「いや,まぁいいけどね。……あのね。外の世界にこの街があるって情報が流れちゃうとね。オーヴァードの存在もね,バレちゃうんだって」
水限:オーヴァードって,外では秘密にされてるのか。
GM/美貴:「そうだよ。私もソマリア行くまでは知らなかったもの。でね,もしオーヴァードの存在が明らかになると,困ったことになっちゃうんだよ」
水限:…………。
真琴:…………。
GM/美貴:「戦争になっちゃうんだってさ。特に,中央政府の統制がとれてない国では,パニックが起こっちゃうからね。きっと,たくさんの人たちが死んじゃうね。アメリカは,そうなったら最低でも人類の20パーセントが滅びるって言ってる」
水限:…………。ひとつ訊いていいか。
GM/美貴:「ん? なにかな?」
水限:だから何?
GM/美貴:「何って……えーと,だから,君たちは一生ここだね,って。それってどう思う?」
水限:別にどうも?
GM/美貴:「……そう」
水限:というか,そっちはどうなんだ?
GM/美貴:「…………。ん。いや,だからさ。八方塞がりで,困ったねって思って」
水限:だったら,そんなこと言ったってただの愚痴だろう。
GM/美貴:「あー,うん。愚痴だね愚痴。愚痴ってゴメン。でも酔っ払いって愚痴るもんなんだよ。てか,みーちゃんも真琴ちゃんももっと飲みなよ」
真琴:飲んでますが。
水限:……すいません,生中もう一杯。(←結局飲んでいたらしい)
GM/美貴:「:…………。
水限:…………。
真琴:…………。あなたはどうしたいんですか。
GM/美貴:「ん?」
真琴:困ったと,そう思っているだけですか。
GM/美貴:「私が望むことはね……うん,ちっちゃい子が,1人でも多く死なないで済めばいいなあって。妹が1人いるんだ。外にいるから,もう二度と会えないんだけどね,今,重い病気でね。……私,ウチの妹が助かればいいなあって。ただそれだけ」
真琴:つまりは,このデモンズシティに使われているお金で,「外」の人を助けたいと。そういうことですか。
GM/美貴:「この街に,どれほどのお金が使われてるか知ってる? 年間5,000億だよ? それだけあれば,どれだけの人が助かるだろうね」
真琴:…………。
水限:どこかで戦争が起これば,それくらいすぐ吹っ飛ぶよ。
真琴:……まぁ,そうだがな。
GM/美貴:「……ん。そうだね。今日はもう帰ろう」
真琴:いえ。有意義なお話を聞かせていただきました……。
直人/店員さん:(いきなり)「ありがとうございまーす。お会計,12,350円になりまーす」
GM/美貴:「だー!? なんでそんなことに!? お,お姉さん今月ピンチかもー!?」
真琴:ちなみに,私は自分のぶんはすでに払っているのだが。
GM/美貴:「……キミもヤな子供だね」
水限:君嶋,ちなみに俺のぶんはいくら?
真琴:5,365円だな。
GM/美貴:「つか,みーちゃんアンタいつの間にそんなに飲んでるんだよー!?」
水限:ビール好きだから。じゃ,はい。5,365円。
GM/美貴:「アンタは払わなくていいんだよ! 奢るって言ったんだから!」
水限:…………。
GM/美貴:「な,なんだよぅ?」
水限:おまえは慧には似てないな。
GM/美貴:「は? 誰それ?」
水限:…………。
GM/美貴:「なに? なんなの?」
水限:別に。
GM/美貴:「なんなんだよ,もぉ!?」えー,てなところで,シーン変えていいんでしょうか。
水限:いいんじゃないでしょうか。……しかしなぁ。
GM:はい?
水限:暗いねえ。

 ホントにねえ。
 ちなみに「…………」の部分は本当に全員黙っている。何だかね。

 

  SCENE 14


GM:では,瑚唄のシーンです。
瑚唄:とりあえず,ホテルの部屋へ……。
GM/時計屋:「すまん,少し寄りたいところがあるんだが」
瑚唄:はぁ,いいですけど。早くしてくださいね。
GM:市外のほど近くに潰れかけたガレージがありまして,そこに1台のアイオーンがあります。
瑚唄:あら,まぁ。これ,どうなさったんですか?
GM/時計屋:「爆破事件のあった晩にな,こいつらが何機かうろついてたんだ。一機だけ捕獲できたんで,ここに隠しておいたんだ。上杉に渡せば,いいように取り計らってくれる。鍵は渡しておくよ」
瑚唄:それならば直接直人さんにおっしゃればよろしいのに。
GM/時計屋:「あの男には直接言いづらくてね」
瑚唄:そうですか? つまり,これを渡してそのままドロン,ということを考えてらっしゃるわけですね。
GM/時計屋:「……おまえらの手は借りられないんだよ。これは俺の問題だからな」
瑚唄:直人さんがそれで手を引いてくれると思います?
GM/時計屋:「訊きたいことは話す。それで勘弁してくれ」
瑚唄:そう言われましてもねえ。私が直人さんに「逃げられちゃいました」って報告しなきゃいけなくなるんですよ?
GM/時計屋:「……とにかく,だ。次に狙われるのは水上記念病院だな。まずそっちに向かったらどうだ?」
瑚唄:何故そんなことがおわかりになるんですの?
GM/時計屋:「理由は言えない」
瑚唄:あらあら。それなら,時計屋さんは爆破事件の犯人をご存知なのかしら?
GM/時計屋:「俺じゃない。今はそれしか言えないんだ」
瑚唄:訊きたいことは話す,っておっしゃいませんでしたっけ?
GM/時計屋:「…………」
瑚唄:少なくとも,お知り合いの方ではあるようですわね。それは個人なんですか。それとも何らかの組織が?
GM/時計屋:「防衛隊が後ろにいる。ヤツらが何を考えているかは,俺も知らん」
瑚唄:じゃ,このロボットって防衛隊のものなんですか?
GM/時計屋:「多分な。……もう少し先を知りたきゃ,防衛隊にオウスって組織がある。それを調べてみな」
直人:(ぼそっと)いか○や○介……。
GM:それは「オイッス」だ!(一同笑)
瑚唄:パパン,実はヒマですか?
直人:いや,登場するタイミングをはかっているだけだ(笑)。
瑚唄:まぁそれは後で調べるとして。あのロボットと爆破事件に直接の関係はあるんですか?
GM/時計屋:「ひとつには,爆弾を仕掛けてるヤツの護衛だろうな。あとは実験だ」
瑚唄:実験? 稼動実験ってことですか?
GM/時計屋:「ああ,恐らくはな。確証はないが」
瑚唄:で,あなたはこれからどうするおつもりなんですか?
GM/時計屋:「止めるんだよ。あの爆弾は厄介だ。恐らく,俺にしか止められん」
瑚唄:それは大変結構なんですが,お一人で行かれるんですか?
GM/時計屋:「ああ。で,これだけ話したんだから,そろそろ行かせてくれないか?」
瑚唄:あら,素直に行かせるなんて思いました?
GM/時計屋:「約束は守るもんだよ。そう教わらなかったか?」
瑚唄:…………。
GM/時計屋:「そういうことでな。……すまん」
水限:(ぼそっと)あのー,瑚唄ちゃん別に何の約束もしてないと思うんですけど?
GM:…………。
一同:…………。
GM:い,今せっかく言いくるめようとしてるんですよ俺は!?
一同:(爆笑)
水限:知るかそんなの!(笑)
瑚唄:いくらなんでも,それで言いくるめられるほどお人よしじゃありませんわよ。
GM/時計屋:(咳払い)「……時に,お嬢ちゃんはさ。自分の親のこと,どう思う?」
瑚唄:はぁ? ……そうですわね。厳しい人たちだと思いますよ。
GM/時計屋:「そうか。好きか嫌いかで言えば,どうだい?」
瑚唄:好きですよ。
GM/時計屋:「……そうか」
瑚唄:…………。
GM/時計屋:「…………」
瑚唄:(にっこり)で,だから何なんです? それとあなたを行かせるかどうかは全く別問題ですわよ?
GM/時計屋:「…………」
直人:ではそろそろ登場しようか。おや時計屋,こんなところにいたのか。ホテルに帰ったんじゃなかったのか。
GM/時計屋:「ちっ,追いつかれたか。ツケなら待ってくれよ。今は金がないんだ」
直人:ふん,そんなものは後で払ってくれればいいが。勝手に突っ走られるのは困るな。
GM/時計屋:「……すまん,行かせてくれ。今はそれしか言えん」
直人:どうするかな。果たしておまえを信用していいのかな。
GM/時計屋:「あの事件の犯人は俺じゃない。それだけは確かだ。俺が今まで全部飲んだ酒と,おまえんとこのコーヒーにかけても誓うよ」
直人:……ひとつだけ訊こうか。おまえは,おまえを襲った連中に心当たりがあるんだな? それだけは正直に話していけ。そうしたら黙って行かせる。
GM/時計屋:「俺が今追ってる連中……たぶん,防衛隊だ」
直人:そうか。ならいい,行け。
GM/時計屋:「すまん。……また,おまえんとこにコーヒー飲みに行くよ。その時にでも,全部話す」と,いうわけで時計屋さんは退場します。
瑚唄:いいんですかね。どう見ても死ぬ気ですわよ,あの方。
直人:覚悟を決めた人間をいつまでも引き止めるのも,野暮というものさ。
瑚唄:直人さん。直人さんは,どうして時計屋さんを追っていたんですか?
直人:ギルドは時計屋を爆破事件の犯人だと睨んでいた。だから私にヤツを捕まえるよう依頼をしてきたんだ。
瑚唄:ご本人は,違うと言ってますわね。
直人:ああ,違うさ。犯人ならもうわかっている。今からそいつを追おうと思う。
瑚唄:そうですか。それはよろしいんですけど,時計屋さん,もっと大事なことをおっしゃってましたわよ。何でも,次に狙われるのは水上記念病院なんだそうですわ。
直人:ほう? それならばそこに行こうか。きっとそこで犯人に会えるだろう。
瑚唄:そうですね,時計屋さんにも会えますわね。ところで直人さん,「オウス」ってご存知ですか?
GM:えーと〈情報:軍事〉でお願いします。目標値は非常に高い。20です。あ,それと〈情報:?〉ならば12でいいです。
瑚唄:ならば私が先に振りますね。1個でも回れば……(ころころ)無理ですね。
直人:では《天性のひらめき》を使おう。(ころころ)む? しまった,17だ。
GM:2人とも失敗ですか? じゃあ聞いたことはありませんね。ただ,オウスは「小碓」と書くんです。ヤマトタケルの幼名ですね。
直人:ちなみに,私が知らないということは,かつて防衛隊に「オウス」なる組織は存在しなかったということだな?
GM:そうですね。新しくできたんじゃないですか?
直人:ではしかたない。このロボットはギルドに引き渡して,私たちは水上記念病院に向かおう。
瑚唄:あ。そう言えば私〈機械操作〉を持ってますね。これで何かわかりませんか?
GM:できれば〈知識:機械工学〉か何かで振ってほしいところだけど……とりあえず達成値だしてみてくれる?
瑚唄:ここは《マインドエンハンス》使いまーす。(ころころ)ふ,35!
GM:35か。では壊れたロボットをあれこれいじくっていると,コクピットの一部がぱかっと開きましてですね。シリンダーの中に,人間の脳らしきものがふよふよと浮かんでいます。
直人:…………。
瑚唄:あら,まぁ。
GM:液体の中ではたまに放電が起こっているようです。ブラックドッグの脳のようですね。これで「バッテリー」の問題を解決したのかもしれません。
瑚唄:直人さん,これって持って帰らなきゃマズイですわよね。
直人:そうだな,重要な証拠物件だ。
瑚唄:残念ですわ。こんなものは即座に破壊してしまいたかったのですけど。
直人:我慢してくれ。これはギルドに引き渡す。さて,我々は病院に向かうぞ。
GM:では,ここでシーンをきります。いやしかし,次でもう病院か? 全然PCが合流できないなぁ(笑)。
直人:こうなったらNPCで登場して無理やり取り持つしかない。君嶋がUGNに戻ったら,何故か尚也くんがいたりしてな。
水限:今UGNに行くと殺されるぞ?
直人:いや,殺す側ならば問題ない。
一同:(爆笑)
真琴:犯人はおまえか〜!?
直人:死体の横で,「大谷さん,本当にこれでよかったんですね」とか言ったりしてな。
真二:(←またもや通りすがった)え,「福岡ダイ○ー○ークスが勝った〜!」じゃないんですか?
直人:何でだ!(笑)
GM:それにホー○スってもうなくな……。
直人:…………。
一同:…………。
GM:ま,まぁそういうことでシーンをきろうと思います!
水限:……ちなみに,本当に尚也さん,そゆことしてるんですか?
直人:ただの冗談だが?

 アナタが言うと冗談に聞こえない。そう思うのは私だけか。