#1  Good-bye, Summer
 

 


Ah!  Vanitas Vanitatum!
Which of us is happy in the world?
Which of us has his desire?
or, having it, satisfied?
Come, children,
let us shut up the box and the puppets,
for our play is played out.
 

 

 

  PRE-PRAY


GM:えー,それではダブルクロス第4部「完全封殺都市」第1回,始めさせていただこうと思います。
瑚唄:またの名を,「もういいかげん終わらせましょうこのキャンペーン」。
水限:え? 「オオタニ・ストライクス・バック」じゃないの?
GM:違います。えーと第1回ですので,始める前にキャラの自己紹介からいってみましょう。とりあえずイニシアティブ順で。
直人:では私からだな。上杉直人。シンドロームはノイマン/ソラリス。ギルドのネゴシエーターを務めている。コードネームは「ノースウィンド」だ。
水限:ノースウィンド?
直人:日本語に直すと「北風」だな。
一同:うわ,まんまだ!(笑)
直人:ワークスはネゴシエーターでカヴァーはスナック店主。実は第3部に登場済みという噂もあります。
瑚唄:「北風」のマスターだよね?
水限:ああ,あの人か。実は尚也さんのお父さんだったが,誰もがまったくそうと思っていなかった人。
GM:と,いうより「え? 尚也さんってご両親健在だったんですか?」という(笑)。
真琴:私はあのマスターが尚也のお父さんだということを,ホントについさっき知ったが。
直人:リプレイをよく読むと書いてある。まあそんなことはどうだっていいのだが,そういうわけで双子の息子と犬の孝太郎がいる。
GM:あれ? 直人さん,孝太郎とロイス結んでるんですか?
直人:何か問題が? ちなみにロイスは孝太郎の他,尚也&和也兄弟に結んだのだが。
瑚唄:妻はいいんかいアンタ!
一同:(笑)
直人:妻は……。
真琴:(真顔で)出て行かれたんですか。
直人:……そうかも。
GM:なんだかなぁ……では次。君嶋さん。
真琴:私は続投なので,特に言うこともないのだが……とりあえず君嶋真琴,16歳。シンドロームはエンジェルハイロゥ/ノイマン。ワークスはチルドレンで,カヴァーは高校生からエージェントに変更しました。射撃専門,というか射撃しかできないキャラです。設定をかいつまんで言いますと,魔街出現のごたごたで孤児になり,街をうろついているところをファルスハーツに拉致されました。当時1歳でした。
GM:あ,ちなみに今回ファルスハーツの設定も少し変わってますんで。このへん読んでおいてくださいね。
水限:そうなの?


デモンズシティ(魔街)
 正式名称は『特別隔離実験封鎖区域』。
 東京都南西部,神奈川県北部,山梨県南東部にまたがる区域に存在する。面積としては東京都の約半分くらい(……だといいなあ)。
 総人口200万。 実は岐阜県と同じくらい人がいて,そのうち約半数以上が中央の『市街』に集中している。

司法組織
 デモンズシティは現在『特別隔離実験区域施政管理局』,通称『司政局』と呼ばれる国が派遣した組織によって管理されている。 『司政局』は本国から派遣される「司政官」,UGNから「アドバイザー」,国連から「監査官」,防衛隊からの2名の代表者……等を中核に活動している。 

法律
 基本的には日本国憲法がちゃんと適用されているが,外部との連絡が極めてとりづらいため「この街に来る前」のことは不問となっているのがほぼ現状。
 また,武装に関しても『外』より規制がゆるい。
 どちらかと言えば法律以上に『不文律』が重視されるところが大きい。

治安組織
 ストレンジャーズ,というか防衛隊が治安活動を行っている。
 防衛隊も市内の治安活動を行う『市警部』と『壁』を守る『守備部』の二系統に分類される。
 市警部にはこの街の出身者や元警察官,MP出身者が多く,守備部は『外』から派遣されている防衛隊員が多い。で,当然の如く仲が悪い。
 市警部は予算的にも,装備的にも,さらに言えば人数枠的にもあまり恵まれておらず,市警部はこれを補うためにUGNに協力を求めることが多い。
 また,協力が要請された場合,UGNにはこれに協力する義務がある。
 同じく人手不足を解消するため,バウンティーハンター制度も採用している。

経済
 基本的には日本と一緒だが,市外でのみ通用する海賊紙幣も存在する。
(うーむ,『外貨』はストレンジャーズが落とす奴しかないんだろうなあ……いや,犯罪者がギルドに落とすのもあるか)
 また,食料や日用品などは,『司政局』が日本政府から送られてくるものを市場に開放するという形を取っている。そのため,結局のところ経済の大部分は『司政局』の管理下にある。

医療
 かなり発達している。
 病院は少ないが医療知識を(必要にかられて)身に付けているものが多い。また,登録市民であるオーヴァードは3ヶ月に一度病院で検診を受ける義務をもつ。

生活
 基本的には配給制がとられている。 登録している市民に優先的に物資が配給される。
 市民には,配給された物資をさらに加工したり,交換したりして商売を行うものも多い。

ファルスハーツ
 意外なことに,この街ではFHは危険なばかりの組織ではない。
 中東におけるイスラーム系武装組織と同じく,表だってではないが,非登録市民に対して一種の人道的支援(食料,物資,医療,教育,そして孤児たちの保護がこれに相当する)を行っている。これによって,『市外』の非登録市民たちから大きな支持を集めている。

ギルド
 この街における犯罪組織の総称,というかさまざまな犯罪組織の『利益調整』のための会合。互いに縄張りを決め,相互不可侵条約を結び,フリーの犯罪者や技能者への窓口となり,『無意味な殺し合い』を収める(とはいえ,話し合いで解決できない場合は結局抗争が起きるし,ギルドもそれを容認する)ために作られた。言うなれば手打ちのための窓口。
 もともとは南米の麻薬カルテル組織のような色あいが強かったが,現在では中国,韓国,朝鮮などのいわゆるチャイニーズ系も強い。



GM:これはオフィシャル設定にもあると思うけど,ファルスハーツが完璧な悪役でないのがポイントね。実験体に使う,と言ってもマウスは健康体の方がいいですから,拾った戦災孤児とかに対するケアは優秀です。よるべない子供たちに暖かいベッドと食事と教育を与えてくれる,という側面もあるわけで。
真琴:ふむ。そういうわけで,私はファルスハーツの実験体となり,その時に変異種として覚醒した。そしてその後実験施設がUGNに接収された際,大谷ライダーに助けられてUGNのエージェントになったわけだな。
瑚唄:じゃあみーちゃん(水限のこと。後述)のこととか覚えてるんじゃ?
真琴:その可能性はありますね。ノイマンだし。
水限:問題はこっちが覚えてるかどうかだなぁ。大谷ライダーに助けられたのって,いつだ?
真琴:2歳くらいかな。
一同:早えよ!(笑)
真琴:ええ? だって最初からそういう設定だよ? 1歳で拉致されて……。
GM:いや,それはいい。大谷ライダーに助けられたのってそんな赤ん坊のころだったんか?
瑚唄:それでみーちゃんのことを覚えてるってのは明らかに無理があると。
真琴:え? でもノイマンだから……。
一同:いやそういう問題じゃなく!

 一同,しばしモメる。
 というかこの時点で,全然「かいつまんで」じゃない(笑)。

水限:いやいや,つまり大谷ライダーに助けられたのを4歳ぐらいにしてしまえばいいのだ。そうすれば君嶋はみーちゃんのことを覚えてるだろうし,みーちゃんも君嶋のことを覚えている可能性がある。
真琴:わかったよ。じゃあそうするよ。ともかく,その後は大谷さんはじめ,UGNの皆さんに育てられて,かなりまっとうに育ってます。
瑚唄:栄吉ちゃんとか瀞南寺とか泪とか楓とか。
真琴:楓ぇ?
水限:だめだめ,あの男が子供の面倒なんか見るわけないじゃん。
GM:いやいや? 意外に情けなさそうなカオしておしめとか換えてるかもしれませんよ?(笑)
真琴:やー,楓はやめようよ。あと泪も。
水限:泪は楓がからまなければ優しいよ。少なくとも,優しいフリはするし。
GM:ええ,どうせね,犠牲者は大谷1人ですよ(笑)。
真琴:えーと,あと戦闘訓練を受けた師匠がいたんですが,数年前敵との戦闘中に行方不明となりました。黒いデザートイーグルはその現場に落ちていたものです。その師匠は……。
GM:(突然)ダメだ! そこらへんはふせとかなきゃダメなんだ!
真琴:なんで?
GM:そーゆーのは本人が登場した時に明かした方がおいしいからですよ。
真琴:名前くらい言ったっていいじゃん。
GM:ダメです! そうしたら「あっ,あなたは!?」とかできなくなるじゃないですか! あと「あの男は何者なんだ?」「実は……」な回想シーンとか!
真琴:そういうもんなのか?
水限:そうそう。
瑚唄:そういうことにしといてあげなさい(笑)。
真琴:じゃあ声だけ公開しよう。○川光。
GM:多いぞ,緑○光!(笑)

 いや,ですから……緑川氏には何の罪もないっつーか,いやどうも大変なご迷惑を……(笑)。

真琴:だって師匠のモデルが緑川○声の人ですから。
水限:ゴメン,実はみーちゃんも緑○かもしんない(笑)。企画段階のモデルが某自爆小僧だったからさぁ。
真琴:伏線として考えてたんだよね。みーちゃんの声を聞いて,師匠の声と勘違いしてしまうんだ。「はっ,■■■■!?」と思わず振りかえってしまうとか,
GM:だから名前言ってんねんアンタ!
一同:(爆笑)

 えー,このたび次回予告でも使った伏字戦法を使うことにしました。悪しからずご了承ください。
 実際のプレイでは,君嶋はガンガンに師匠の名前をしゃべってしまっています。
 その他の人も……。


GM:なんか男性オーヴァードは緑川○確率がデカイんですかね。
水限:単に緑○さんがいろんなところに出てるからじゃないの。
GM:いいけどさ。じゃあ次。その緑○光声のみーちゃんどうぞ。
水限:えーと,みーちゃんです。名前は水限。それ以外になし。何故なら本名は不明だから。シンドロームはバロール/サラマンダー。ワークスは工作員で,カヴァーはFHエージェントです。君嶋と同じく戦災孤児で,ファルスハーツに拾われたんだけど,大谷ライダーには助けてもらえませんでした。UGNの接収があった際にもちろん逃げたメンバーもいるわけで,その時一緒に連れていかれてそのままってことで。
真琴:ちなみに,私はあなたを覚えてなければいけないのだろうか。
水限:どっちでもいいでしょ。覚えていた方がオイシイってだけで。ま,そういう生い立ちなんで,本名も知らなければ正確な歳も知りません。たぶん君嶋と同い年くらいだけどね。あ,あと一緒に組んで仕事してたパートナーをこないだ亡くしたばかりです。えーと,パートナーの設定はメールで送っておいたんだけど……。
GM:今,PCがイカレてて読めないんですよ(笑)。
水限:じゃあ今言おう。えっとねー,イメージは『ガン○リンガ○ガール』のトリエラでねー,皮肉屋だけど姉御肌なのよ。でも,トリエラと違ってドジッ子属性もあるという……。
GM:正直に言いなさい。アンタそれはどー考えても某遠○凛でしょうが。
水限:い,いや!? ワタシ何もそこまでイッテナイデスヨ!?(笑)
GM:じゃ何か!? 黒ニーソでもはかしときゃいいのか!? 「大丈夫だよ,答えは得た」とか言って笑う気なのか!?
水限:やりませんて(笑)。あ,ちなみにみーちゃんより2つ年上で,名前は江藤慧。みーちゃんとけーちゃんだね。
GM:はいはい。じゃあひょっとしたら今度出すかもしれないんで……。
水限:……マスター。そこで反応しようよ。
GM:は? 何にですか?
真琴:(横から)てっをあわせってみっつめるだけーでー♪
GM:それかい!(一同爆笑)
真琴:いや,私はわかるけどさ,それってちょっと古すぎやしませんか。
水限:何を言うか! ここかとおもえばまーたまたあちらうーわきなひとーね♪ときたらみーちゃーん!と叫ぶのは基本だろ!
GM:何の基本だ,何の!

 全然ついてこられない世代の方,ごめんなさい。
(念のために言っておくと,松井もリアルタイムで「みーちゃーん!」とか「けーちゃーん!」とか叫んでいた世代ではありません。さすがに)


瑚唄:ちなみにワタシ,全然ついていけない世代ですが……(笑)。
水限:悪かったね。
GM:えーとじゃあ最後。最年少の人,お願いします。
瑚唄:はい,瑚唄です。シンドロームはブラム=ストーカー/ブラックドッグ。15歳で女性。ちなみにアメリカ育ちで,今回はじめてデモンズシティを訪れるかたちですね。
水限:ちなみに,何で苗字がないの?
瑚唄:ありますよちゃんと。ただ,今はナイショにしておきたいだけ。
水限:(ロイス欄を見て)あー……そういうことか。
瑚唄:そう。だから,苗字は名乗らないの。
GM:ストーリーの途中でバラすのが展開としてオイシイですからね。
水限:でもさ,それって■■■■のフタマタでは,
GM:だからサクっとネタバレすな! それに二股って言うなー!?
真琴:(横から)二股じゃないよ。■■■と■■■■はつきあってるわけではなく,お互い利用し利用されるという関係で,
GM:がーっ!? だからバラしとるっつーねん!
一同:(爆笑)
瑚唄:なんか……この時点ですでに隠しておく意味なくなってきたような……(苦笑)。
直人:(横から)それにあれはお互いが利用しあってるというより,一方が一方を90パーセントがた利用しているわけで,
GM:直人さんまで何言いますねん!(悲鳴)
瑚唄:えー,まぁそういうことですんで。私に関する情報はおいおい明かされていくということで,自己紹介はこのへんで終わりです。あ,コードネームは「愛しき双子」と書いてダブルクロス。
水限:それタイトル名だぞ? 使っちゃっていいのかなぁ(笑)。
GM:オイシければなんでもいいんじゃないでしょうか。ちなみにみーちゃんってコードネームはないの?
水限:ないよ。だって「水限」がそもそも本名じゃないんだから,必要ないじゃないか。
真琴:我輩は水限である。名前はまだない。
水限:そんな感じ。だから水限って呼んでくれればいいのだ。
真琴:あ,私もコードネームを言い忘れていた。「魔弾の射手」です。
水限:言いにくいよねそのコードネーム。
真琴:そうか?
水限:「シャシュ」ってあたりがさ。
瑚唄:「シャシュ」って10回言ってみて?
水限:え? ……シャア少佐は車窓を掃除する車掌さんだった?(笑)
GM:いやそうでないから! えーと最後になりましたがGMです。そんなところで本編をはじめさせていただきます。よろしくお願いします。
一同:お願いしまーす!

 

  SCENE 01


 彼はただ黙って,ゆっくりと渦を巻くコーヒーの表面を見つめていた。メンバーが揃ってから少なくとも3分間。空調の唸り声だけが続き,それがよけいに泪の苛立ちを募らせた。
「……大谷さん。それで,いったい何の用なんですか」
 大谷真は答えなかった。
 泪はその面上に視線をさまよわせ,次いで両隣をうかがった。右には久遠紫音。彼も異常な雰囲気を察してか,不機嫌に押し黙って高い背もたれに身を預け,両手を腹の上で組んでいる。左は伊達栄吉。彼は紫音と対照的に身を乗り出し,飲みもしないコーヒーをむやみにかき回している。
 支部で大人しくしていることが滅多にない紫音と,会議に参加することが滅多にない栄吉と,そして自分と大谷。そもそも,このメンバーで話をしようということ自体が妙だった。居心地が悪い。泪はもう一度「大谷さん」と促した。
「新条泪,久遠紫音,そして伊達栄吉」
 彼は「他人行儀」と言うより,まったく感情の伺えぬ声で言った。
「数々の背任行為により,君たちを解任する」
 4人はしばらく黙っていた。沈黙を破ったのは,ドアが叩きつけられるように開く音だった。複数の足音がそれに続き,部屋はあっという間に黒い戦闘服の集団で埋め尽くされた。
「……どういうことだよ」
 低く紫音が呟く。彼はつきつけられたM76ではなく,大谷を見つめていた。大谷はやはり無言。彼の右手が上がると,泪の背後にいた男が彼女をひきずり上げた。
「――な」
 一言も残せず,彼女は会議室から連行された。
「どういうことだ」
 やはり大谷だけを見つめて,紫音が尋ねた。
「どういうこと?」大谷が静かに応える。「『どういうこと』も何もない。おまえらが俺に何をしてきたか,忘れたわけじゃないだろう」
「それが理由か?」
「そ,そんなのワケわかんないっすよ,所長! 俺らがいったい何をしたって――」
「ああ,そうだな。おまえの場合は,俺に『何もしてない』つもりかもな」
 抑揚のない声に,かすかに皮肉が混じった。立ちあがりかけた栄吉を目線だけで抑えさせ,
「でも,『何もしない』こともまた罪だと思うよ。役に立たないこともな」
 栄吉も黙った。絶句している。紫音は,もはや何も言わなかった。

「理由が何にせよ,おまえらが知る必要はない」
 それが合図だったらしい。サブマシンガンが唸りを上げた。


「ああ……無理はしない方がいい」
 大谷は呟いた。広がってゆく赤い染みは,もともと赤茶けた絨毯の上では,それほど見苦しくなかった。
「この『聖炎の庭(セイクリッド・フレイム・ガーデン)』の中ではウィルスが活性化しない。動けば苦しむだけだ」
 床で蠢く2つの身体からは,特に応えはなかった。彼は拳銃を引き抜き,2発ずつ撃った。顫動はそれで止まった。
 頃合を見計らい,背中へ声がかかった。
「終わったか」
「はい」
「結構。では次だ」
 大谷は頷いた。頭部を吹き飛ばされた無残な屍体を,黒服たちが手際よくシートで覆っていく。友の横顔が完全に隠れてしまう前に,
「カルネアデスに板しか与えなかった神を,呪え」
 彼は口の中で呟いた。



真琴:……はい。かるねあですってなんですか?
水限:だからね。大谷さんとキルスさんが海で溺れていたとします。そこへ救命胴衣が投げられました。
真琴:ふむふむ?
水限:キルスさんが大谷さんを蹴飛ばして救命胴衣を2つとも奪ってしまったので,大谷さんは溺れてしまいました。これを「カルネアデスの板」と言います。
真琴:なんで?
GM:こらこら! ウソを教えるな,ウソを!(笑)
瑚唄:昔,カルネアデスって人が海難事故にあった時,流れてきた板につかまったわけね。そしたらもう1人の人が板につかまろうとしたんで,板が沈みそうになりました。で,カルネアデスさんはその人を突き飛ばして溺れさせちゃったわけだけど,自分の命を守るためにはしかたなかったってことで,罰は受けなかったんです。そういうことです。
直人:緊急避難の例として,よく使われる言葉だな。
GM:そうですね。では,そんなわけでこのシーンは終わらせていただきますが……何かありますか。
水限:何かあるって言うか,今さら何を言えっていうか……(笑)。
真琴:冒頭から2人も殺すとは思わなかったねー。
水限:何で紫音と栄吉っちゃんなわけよ? 栄吉っちゃんはマジでいいヤツなのに,かわいそうじゃない。それより何で泪を殺さないの? アレ一番の加害者だぜ?
GM:色々とね,事情があるんですよ。泪は金握ってますからね。
真琴:殺しやすいとこから殺すんだよねー。
瑚唄:大谷さ。よかったね,人気投票終わった後で。
一同:(爆笑)
真琴:アレってどうなの? これ読んだあとで「やっぱり投票取り消します」とかアリなの?
水限:時期的にはナシだけど,お申し出があれば受けつけますよ(笑)。でもどうかなー。その前に「あの大谷は偽物では?」って声があがるんではないでしょうか。
直人:「よくやった大谷」って声があがると思うけど。
一同:(再度爆笑)
真琴:なるほど。
水限:否定できね〜!(笑)
GM:白オオタニには毒がある〜♪みたいな感じでがんばります! 応援ヨロシク!(笑)
直人:はいはい,そういうがんばり方しなくていいから先へ進めなさい。
瑚唄:あ,それとさ。今さらなんですが,これって第3部が終わってからどれくらい経ってるの?
GM:数日しか経ってませんよ。
水限:あ,そうなんだ。ゴメン,私数ヶ月とか勘違いしてたや。
GM:そんなに間あけると,逃げられちゃうんですよ。
真琴:誰に!?
GM:(白々しく)えー,ではマスターシーンはこれで終わりです。

 

  SCENE 02


GM:トップバッターは君嶋です。君は今,地下の射撃練習場にいる。
真琴:あ,そんなのあったんだ。
GM:昔は駐車場だったんだけど,そんなに車の台数必要ないんで,半分潰したんですよ。で,ですね。今の君の直属の上司は,村崎純介さんって人だ。この人はチルドレンの監督官で,君みたいなチルドレンあがりのエージェントに対しても,たまに監督役を命じられてるんですよ。年齢は38歳くらいですね。
直人:私と同い年か。
GM:そう。俺とおまえは同期の桜♪みたいな感じ。それはともかく,彼は射撃練習をじーっと横で見てます。
水限:(小声で)クロスしてから撃ち始めるんだぞ〜♪
真琴:それはおいといて,いつものように二丁拳銃をばんばん撃ってます。
GM/村崎:「君嶋,練習の時は片方で撃った方がいいぞ」
真琴:何故ですか?
GM/村崎:「そういうのは野外練習でやれってこと」普通の撃ち合いでは,遮蔽をとりつつ片手で撃った方が有利だろ,ということです。
真琴:エフェクトを使用すれば,遮蔽のない撃ち合いというのもあり得ると思うのですが。
GM/村崎:「なるほど,そういう考え方もあるのかな」と彼は苦笑します。ちなみにこの人,オーヴァードじゃないんですよ。
真琴:そうなの?
GM:元防衛隊で,射撃の腕を買われて監督官になった人なんです。まだ着任して半年たってないので,オーヴァードの戦い方に慣れてないのかもしれませんね。ああ,ちなみに半年というのはですね,そのあたりで大きな人事異動があったんですよ。泪とか紫音とかがいつも忙しい忙しい言っているのは,その引継ぎがうまくいってないせいもありますね。
真琴:じゃあ指揮系統も入れ替わったりしてんの。
GM:してます。新人教育のせいで人手が足りなくなっちゃって,それでユウキみたいなイリーガルを多く採用してやってるわけですね。
直人:どこもかしこも,非正社員が増加してるわけだな。
水限:うわい。世知辛いよぅ(泣笑)。
真琴:末端の人間としてはやりづらいなぁ。
GM:ただし射撃は本当に上手ですよ。何せ技能レベルが20。
水限:ナニソレ。
GM:必ず達成値が20以上ってことです(笑)。「それはそうと,そろそろあがらないか。さっき大谷さんが呼んでたぞ」
真琴:わかりました。ではさっさと後片付けをして向かいます。
GM:では,あなたは大谷さんが待っている例の執務室へとやってきました。
真琴:入ったものが必ず洗濯ロープの幻影を見るという,例の執務室だな。
直人:もしかしたら,これは何かのサブリミナル効果か?という。
真琴:あるいは泪さんがソラリスの能力を使って何か撒いているのかもしれん。まぁそれはともかく。
GM:では,例によって困った顔をした大谷さんがいますね。
水限:何をそんなに困ってるの。
GM:そりゃもう色々ですよ。主に予算とか。
真琴:予算とか泪さんとか泪さんとかキルスとか予算とかキルスとか楓とか泪さんとか。
水限:……ちなみに,今人気投票のオマケSS書いてるんだけどさぁ,キルスと楓は大谷んちの合鍵持ってて,しょっちゅう家にあがりこんで勝手に寝たり冷蔵庫のもの食ったりして,さらにはキルスなんか酔っ払って裸で寝てるとか。
瑚唄:あははははは!
真琴:なに,そこに楓が来ちゃったとか?
水限:いや,そうじゃなくて。楓がソファで寝てて,大谷の背広布団がわりにしちゃったんでとり返そうとしたら,楓が転がり落ちてきて抱き合うような格好になっちゃったという。
真琴:そこにキルスが?
水限:うん,それと泪がね。
GM:(じっと水限を睨みながら,哀しい声で)そろそろ辞めちゃおうかな〜♪ もっとがんばってみようかなーんて〜♪
一同:(爆笑)
GM:(哀しい声)あ〜あ♪ あ〜あ♪ あのそーらーに♪ こいとか〜しーながら〜♪
真琴:こいつら,みんな殺しちゃおかなーんて♪
水限:そうか,動機はそれだったか大谷よ(笑)。
GM:違いますよ(笑)。とりあえず続けます。
真琴:何かご用ですか,所長。
GM/大谷:「ああ……調べてもらいたいことがあるんだが,構わないか?」
真琴:どのようなことでしょうか。
GM/大谷:「今,市街で爆弾テロが連続して起きてるのは知ってるな?」えーと,〈情報〉で振ってください。
真琴:え,振るの!?
GM:当たり前じゃないですか。あ,皆さんレコードシートにですね,〈情報:魔街〉1レベルと書いてください。これはシナリオ情報技能として差し上げます。ただし,瑚唄は別です。〈情報:?〉としておいてください。
瑚唄:でた,はてな!
真琴:(妙な声音で)はてにゃ?
水限:……の,仮面だ。
GM:って違うだろうが! えーと,この情報技能の使い方を先に説明しておきますね。この技能は,基本的にあらゆる情報技能の代わりにすることができます。また,GMが必ず目標値をオープンにしますので,失敗した際も誤った情報を信じてしまうことがありません。ただし,目標値はだいたい20前後になります。
瑚唄:びみょーに使い勝手がいいんだか悪いんだか,わからない技能ですね。
真琴:(やはり妙な声音で)はてな?,の情報だ。これを,おまえに,託そう(笑)。
水限:いらない。こんな情報いらない。こんな……!(笑)
GM:だぁらガマ師匠ネタはもういいつーねん! とにかく,早く判定して!
真琴:……しかし,これって判定する必要あるんですか? 大谷さんに聞けば済むことなんでは?
GM:そうですけど,何で判定するのがイヤなんですか?
真琴:だって侵蝕値が……。
水限:オーヴァード10人と戦わされるなんてことふつーはないから,積極的に振っていいんでは?
真琴:でも《天性のひらめき》で4も上がるし……。
GM:いや,そうじゃなくて。フツーに振って,失敗したら大谷に聞けばいいじゃないですか。
真琴:(しばし考え)あ,そうか。ついつい判定のたびにクリティカル低下系エフェクトを使ってしまうビョーキが……。
直人:何がビョーキかと言えばだな,そもそも〈情報〉の達成値なんて7か8あれば充分なんだ。
一同:(笑)
真琴:そうか! そうだよな! ふつーのダブルクロスでは,それで充分なんだよな!(笑)
瑚唄:麻痺してる。やっぱり麻痺してるぞ。
水限:そら,侵蝕値228とかサイコロ30個超の世界で暮らしてりゃな(笑)。
真琴:じゃ《生き字引》だけ使って……10です。
GM:充分知ってます。今,市街では爆弾テロ,それも病院ばかりを狙ったテロが相次いで起こっているのです。
真琴:病院? それはマズイな。
GM:ちなみに,何か思想があって行うテロは,普通病院を狙いませんね。世論を敵に回してしまいますから。
真琴:でも,病院ばっかりなんだね?
GM:そうですね。市街には大きい総合病院が6つあるんですが,そのうち3つがすでにやられています。ただし,死者数はそれほど多くはないです。入院棟ではなく,非常電源用のダイナモとか,ボイラーとか,そのあたりを狙ってるみたいですね。「実は防衛隊市警部から,協力要請がきてるんだ」
真琴:それで私が?
GM/大谷:「君と,サポートとして村崎くんがつく。実は容疑者がいるんだが……」と,1枚の写真を渡されます。年齢は60歳前後,きれいな栗色の髪をした男です。「この男は『時計屋』と呼ばれている。有名な爆弾屋だ。彼を探し出して,捕らえるのが君の仕事」
真琴:わかりました。写真の他に,その男に関する情報がないんですか。
GM/大谷:「これが,手がかりがほとんどなくてね。とりあえず,現場に行ってみてくれないか」ちなみに一番最近爆破されたのは,青梅総合病院と言う病院ですね。では,そんなところでシーンをきります。

 

  SCENE 03


GM:次は上杉さんのシーンです。ある晩,カウンターの中でグラスを磨いていると,ドアベルが鳴ります。入ってきたのは,60歳くらいの男です。彼はあなたに「よう」と手を挙げます。「時計屋」と呼ばれるギルドの爆弾屋ですね。
直人:時計屋?
GM:そうです。職人肌の爆弾作りとして知られています。あなたの知っている限りでは,比較的信用のおける人物ですね。彼はスツールに腰掛けると,「何か作ってくれないか」と低く呟きます。
直人:そうだな,何がいいんだ?
水限:やっぱりドライマティーニじゃないの? 安直?
GM:トワイスアップという手もありますよね。
真琴:えー,何が安直なのかさっぱりわからないんだけど?
GM:いやいや,オトナの会話なら,「歯に染みるほど冷えたドライマティーニ」ってのは定番なんですよ。
瑚唄:オトナの会話なんだ。
GM:そうですよ。直人さんにはあらかじめそうお願いしてありますから。さて,彼はしばし黙って酒を飲んでから,ぽつりと言います。「上杉。おまえ,子供がいたよな」
直人:ああ,息子が2人な。それがどうかしたか?
GM/時計屋:「もしそいつらがグレたりしたら,どうする?」
直人:さあ,考えたことがなかったからな。
GM/時計屋:「やっぱり,この街じゃしかたないのかな。そう思うか?」
直人:(しばし考え)いや,うちの子に限ってそんなことは……。
一同:親はみんなそう言うんだよな!(爆笑)
真琴:ねえ,オトナの会話って,これなの? 確かにオトナだけど,何か情けないよ?
水限:だいたい,和也くんは誰がどう見てもグレてるじゃないですかアンタ。
直人:そんなことはない。あれは尚也が即座に更正させたからいいんです。
GM:そ,そうなんですか?(笑)
直人:そうなのだ。で,俺の子供がなんだって?
GM/時計屋:「あ? ああ……俺にも娘がいてな」
直人:そうなのか? それは初耳だな。
GM/時計屋:「誰にも言ったことがないしな。それに,この街ができてから一度も会ってないんだ。で……どう思う。責任はとるべきだよな。もしそいつがグレてたら」
直人:親としてはな。で,それを訊きにきたのか?
GM/時計屋:「いや,酒を飲みに来たんだよ」
直人:そうか。
GM/時計屋:「ああ,それとな,たぶん二,三日経ったら,ギルドから俺に追っ手がかかる」
直人:何かやったのか?
GM/時計屋:「……娘のことで少しな。ともかく,俺はやつらに娘のことを知らせるわけにはいかない。それに,俺の爆弾を妙なことに使われるのも気にくわん。だから逃げることにする」
直人:そうか。
GM/時計屋:「たぶんおまえのとこにも誰かが訊きにくるだろうな。あるいは,俺の捜索を依頼されるか……そしたらどうする? 引き受けるか?」
直人:さてな,話を聞いてみないことには何とも言えん。用件はそれだけか?
GM/時計屋:「いや,単に酒を飲んで馬鹿な話をしたかっただけさ。……さて,ごちそうさん。今度はコーヒー飲みにくるよ」
直人:ああ,またな。
水限:(ぼそっと)ああ……オトナの会話だ……。
瑚唄:オトナの会話なのはいいんですが,どうしてこう自虐的なオトナしかできないんですかね,このGMは。
一同:(爆笑)
水限:いぢめられすぎておかしくなったんでしょ。
真琴:哀れなことだ。
GM:放っといてください。……さて,その数日後。〈情報:魔街〉を行っていただけますか。
直人:(ころころ)15だ。
GM:時計屋があなたを訪ねてきた晩から,爆弾屋が何人か殺されてますね。そしてギルドが時計屋を探しまわっているらしい,という情報も入ってきます。あなたのところにもギルドからの使者がやってきました。外見は中華系。でも名前はアブドル・アル=ハザードとか名乗っちゃっているとゆー,あからさまにアヤシイやつですね。髪の毛も金に染めたりしているし。
瑚唄:それは「はっ! おまえはアブドル!」とか言われて「イエス・アイアーム!」とかVサイン出しちゃいそうな勢いですね。
GM:オウイェース! ちっちっち,とか指振っちゃいますよ!?
瑚唄:わーダメっぽーい。
GM:ダメっぽい言うな。これでもギルドの代表だ。(アヤシイ口調で)「上杉サーン,お久しぶりデース!」
直人:(←でも冷静)お久しぶりです。ご注文は何になさいますか。
GM/アブドル:「エスプレッソを1つお願いしますネ。で,仕事もお願いしたいんだケドネー」
直人:それはギルドの正式な依頼とみていいのかな。
GM/アブドル:もちろん,キャッシュでバリバリはらっちゃうヨー」とかいって50万ばかりぽんと出してきますよ〜。
水限:それはいいが,通貨はなんだ。
GM/アブドル:「あ,元? 元じゃダメ? 元強いヨー? え,オーストラリアドルがイイ? あれはヤメた方がイイよ〜?」(笑)
直人:私はまだ何も言っていない。まずは依頼の内容を聞こうか。
GM/アブドル:「あ? あ,ソーネ。時計屋って知ってるデショ? 実は,アレを探して欲しいノよー。例の爆弾テロ,知ってル?」
直人:知っているが,それが何か?
GM/アブドル:「ドーモ,ヤツの手口っぽいのよネ」
直人:ほう。何か証拠でも?
GM/アブドル:「解体に行ったヤツがネ,手も足も出なかったんダモノ。あーんナ爆弾作れるなんて,ヤツしかいないっしょ」
直人:そうかね。ずいぶん短絡的に決めつけたものだな。
GM/アブドル:「だって癖あるもノ。もしかしたら弟子かもしれないけどサ。ま,アヤシイ奴から調べてくしかないっしょ? で,どうなの。やってくれるのくれないノ?」
直人:あいつを捕らえてどうする気なんだ?
GM/アブドル:「まずは話を聞くダケヨ。アイツの仕業なら,思いとどまらせなきゃならないからね。いろんなイミで」
直人:ふん。しかたがないか。で,奴を捕らえたらどうすればいいんだ。
GM/アブドル:「連絡ちょーだいナ。もちろん,アナタが説得してくれたっていいのヨ? ワタシは爆弾テロさえ収まれば,ソレでいいんだからサ。ホント頼むヨー。防衛隊に目つけられちゃ,商売あがったりなのヨね。アナタ,連中の手口はヨク知ってるでしょ? 昔とった何とヤラで」
直人:はるか昔の話さ。防衛隊もずいぶん変わった。
GM/アブドル:「じゃあヨロシク頼むよ。そうそう,青梅病院の看護士が奴を見たって話だから,まずはソコからあたってみて」では,そんなところでシーンをきりますが,ロイスを時計屋にとってください。

 

  SCENE 04


GM:では次,瑚唄のオープニングです。君は,■■■おばちゃんの目を逃れて,飛行機の切符を手に入れ,アメリカから成田へ向かう飛行機に乗りました。
水限:え,誰の目を逃れたって?
GM:だから■■■おばちゃんの……あ。
一同:(笑)
瑚唄:ぴーっ! 教育的指導ーッ!
真琴:それもネタバレ注意報なんだ。多いな今回。
瑚唄:知り合いのおばちゃん! 預けられた知り合いのおばちゃん! そこんとこリプレイで修正しといてくださいね!?
GM:そのへんはお任せするとして,ともかく君は飛行機の中にいるわけだよ。ちなみに生まれてはじめての飛行機だね。ちなみにビジネスですよ? エコノミーではないです。(突然憑かれたような声で)「ほーらコウタちゃーん? コウタちゃんならオジサン安くしてあげちゃうよー?」みたいな感じで切符買いましたんで!
瑚唄:……それはいいんだけど,ダレ。
GM:え? ヒギンズさんですよ。
水限:だからヒギンズさんって,ダレ。
GM:だから,近所の金券ショップのヒギンズさんですよ! ちなみに36歳独身! ゲートボールとか趣味ですよ!?
瑚唄:話進めて。
GM:……はい。えー,というわけで君は飛行機に乗りこんだわけですが,奥の席に座っている品のいい初老の男性が話しかけてきます。「一人旅ですか,お嬢さん」
瑚唄:ええ,そうです。ちょっとした観光と,人探しですわね。
GM/男:「そうですか。お父さんとお母さんはお元気ですか,瑚唄さん」
瑚唄:…………。ちなみに見覚えは?
GM:あなたにはありませんね。
瑚唄:失礼,どこかでお会いしましたっけ?
GM/男:「いいえ。ただ私は君のお父上とは知り合いでね。君の写真を見せていただいたことがある」
瑚唄:……そうですね。母は元気にしていますが,父はどうでしょう。あなたの方がよくご存知なんじゃないんですか,ミスター。
GM/男:「おっと,これは失礼」と,彼は名刺を取り出して君に渡す。
瑚唄:で? ジェームズ・オーブリー・ライト?
GM:そうですね。あなたも母親から名前くらいは聞かされたかもしれません。
瑚唄:失礼ですが,父とどういうご関係で?
GM/ライト:「ふむ……テーブルの向こう側とでも言えばいいのかな。ひょっとしたら戦うかもしれないし,ひょっとしたら手を組むかもしれない」
瑚唄:抽象的すぎますわね。
GM/ライト:「そうですかな。ところで瑚唄さん,あなたはデモンズシティに向かわれるんですか?」
瑚唄:親友を探しに行くんです。
GM/ライト:「一応,父上から,君があの街に入ろうとしていたら止めてくれといわれているのだが……素直に聞く気はあるかね?」
瑚唄:あら,そんな気を回してました? 意外ですわね。
GM/ライト:「親の心子知らずという奴かな。で,どうなんだね。私も正直お薦めはしないよ。平穏無事に生きていきたいならね」
瑚唄:平穏無事ですか。素晴らしい言葉ですわね。でも,それよりも大事なことがありますから。
GM/ライト:「そうかね。では,せめていくつか教えておいてあげようか」と,いうわけで,ここで〈情報:?〉を得るわけですね。
真琴:はてにゃ?
瑚唄:それはもういいから。で,私は日本につくまで10時間以上,この方のお話を拝聴せねばならないのですか。
水限:ほとんど嫌がらせだな。
GM:嫌がらせの一種じゃないですかね(笑)。さて,そんな責め苦を終えて成田につこうとする頃,彼は「餞別だ,持っていきなさい」とトランクをくれます。「人目につかないところで開けてみるといい」
瑚唄:そうですか。ではジェームズのおじさま。私はこれで失礼しますわ。……そうそう,私はお父様にお会いする気はないんですが,できれば黙っていていただけませんか。
GM/ライト:「構わんよ。私はかわいいお嬢さんからの頼みは極力断らないようにしているのでね」
真琴:(小声で)うわっ,怪しっ。
GM:怪しいですよ。いかがわしいんですよこの人は。
水限:存在そのものがうさんくさいからねえ。
真琴:ホテルのスイートルームとか帰ってみると,フリルばりばりのエプロンドレス着た女の子が5人ばかりずらずら並んでるんだぜ。で,いっせいに(カワイイ声で)「おじさま」「おじさま」「おじさま」……
一同:(爆笑)
GM:しませんよ! ってかヤバすぎるからソレ!
瑚唄:で,トランクを開けてみると?
GM:開けてみると!
瑚唄:中に一回り小さいトランクが?
GM:だぁらマトリョーシカじゃねーつーねん! 入ってるのはね,アレですよ。札束がぎっしりと。
一同:おおっ!?
GM:……ちなみにアメリカドルだけどね。
瑚唄:微妙に不親切ですわね。
水限:やっぱり嫌がらせなんじゃないのか(笑)。
GM:それだけじゃないんだけどねー。あ,あと色々とメモが入ってますよ。ギルドとか,防衛隊のお偉いさんの連絡先とかね。街の警備体制に関するメモもある。
瑚唄:……これは,物騒なんてもんじゃありませんわね。
GM:で,それが1週間前のこと。首尾よく魔街への侵入を果たした君は,市街を歩いているところだが……突然,目の前の病院が爆発炎上した。
瑚唄:……どの程度の規模ですの?
GM:かなりデカイ。もっとも全焼する感じではなさそうだがね。
瑚唄:周りは?
GM:もちろん「何だ!? 何が起こった!?」とか叫び声があがってますが,パニックは起こしてないようですね。トラブルには慣れっこなわけです。
瑚唄:中の人を助けに行こうという人は?
GM:まったくいないわけではないでしょうが,公共福祉の概念がほとんどない街ですからね。あ,そうだ瑚唄さん,助けに入るのはちょっと待ってくださいね? あなたの足元には,身体じゅうにガラスの破片が刺さった女の子が苦痛にうめいてますよ。
瑚唄:…………。それは,応急処置ができる範囲ですか?
GM:どうでしょうね。しかしその前に,子供の身体に無数の銃弾を叩きこまれます。気がつくと,煙の向こうに体長1メートル強の歩行型兵器がいます。足は6本。カメラがあなたの方に向きます。
瑚唄:とりあえず遮蔽をとります。それから《血族》《血の従者》を使います。
GM:(ふと)あ,そうだ。トランプ持ってくるの忘れた。
真琴:トランプ?
瑚唄:今回登場している瑚唄は果たして偽者か本物か!?というのをトランプで表そうと思ったんですよ。

 ブラム=ストーカーは《主人への忠誠》と《不死者の人形》を使って「本人そっくりな」従者をシーンに登場させることができます。通常,《主人への忠誠》の使用は宣言しなければなりませんが,今回GMは「本人か従者か」がGMや他のプレイヤーに知らせない方法をとることにしました。
 トランプを数枚用意し,瑚唄の登場の際,瑚唄プレイヤーが裏のままトランプを1枚場に出します。 シーンの終了時か能力値による判定が必要になった場合,トランプをオープンして「本人か従者か」を明らかにします。従者だった場合はその場で侵蝕値を上昇させて従者を作成する,という仕組みです。
 ちなみに何故数枚かと言うと,従者の作成パターンが複数あるので,どのパターンで出しているのかを明らかにしなければ侵蝕値の節約になってしまうからです。 (たいした判定が必要でないとわかったとき,弱い従者を作るなど)

 多少面倒ですが,今までGMにしかできなかったブラム=ストーカーならではのトリック,『本人と従者の入れ替わり』がプレイヤー側にも可能となります。 (なお,今回はトランプがなかったので,裏に「○」「×」と書かれた紙で代用しました)

瑚唄:今回は明らかに本人なので関係ないですけどね。(ころころ)HP46の従者を作成しましたが……。
GM:そうですか。相手は君が従者を作ったのを見ると,ゆっくりと後退し,炎の中に消えていこうとします。
瑚唄:それは追いかけたいんですが……。
GM:オープニングなので,退場したと思ってくださいな。残っているのは,ボロ雑巾のようになった少女の死体だけです。
瑚唄:許せませんわね……と,お父様なら言うのでしょうか。
GM:お父様は「許せませんわね」とは言わないと思う。
一同:(爆笑)
直人:確かに……。
真琴:そうだけど,だからってさあ。せっかくシリアスにやってるのに,マスター自ら茶々いれなくてもいいじゃんか。
水限:そうだよ。今回は私が必死で黙っているのに(笑)。
瑚唄:どうしちゃったんでしょうね。はっちゃけてますよこの人?
GM:いや,ほら,やっぱりボケがいないとね? シナリオが重いぶん,多少は緩衝材が必要です。
瑚唄:そうですか? じゃあ普段ボケない人にボケていただくというのはいかがでしょう。
GM:具体的には?
直人:俺か。
一同:(再度爆笑)
GM:いや,まぁ,よろしくお願いします(笑)。では謎の機体,通称アイオーンにロイスを結んでください。終わったらシーンを変えます。