#6 Down & Dirty
 

 

SCENE 1


GM:えー,では第3部最終回カッコ決定カッコとじ,をお送りしようと思います。
ユウキ:何ですか,そのカッコ決定って。
GM:つまり未定ではないということで。ええ多分。
晟:(笑顔)終わらせようね,GM。今度こそ。
GM:終わりますよ。
晟:(笑顔)本当だな? 絶対だな?
GM:本当です。終わらなくても終わりですから。
ユウキ:そんな無責任な。
GM:もし終わらなかったら第4部にご期待ください!で済ませるから。
晟:「ユウキたちの冒険は,今始まったばかり!」
GM:次回作にご期待ください!
一同:(爆笑)
ユウキ:あんた「少年ジャ○プ」の回し者ですか!
GM:とにかく,終わらせるよう善処しまーす。えーと,登場時の侵蝕値の上昇は,今回もD5とします。というわけでまずはユウキのシーンから。おっきーの車に山崎くんの遺体を乗せて,UGNに帰還しているところです。あれから全員一緒に行動してるよね?
晟:一緒にいるしかないでしょう。だって,誰も事情を説明してくれないんだもんなぁ。
ユウキ:こいつはいきなりケンカ売るみてえなこと言ってムカつくから,無視だ。
遙:私もまだ炎華状態なので,ひたすら黙ってます。
GM:いいの? UGNに戻るまで2時間くらいかかるけど。
晟:針の筵だな(笑)。じゃあとりあえずぼそっと,ところで,この車は何でこんな余計なものがごてごてくっついているんだ?と呟こう。
GM/紫音:「変形するからだ」
晟:かえってよくわからん。というか答えになってないだろう。
GM/紫音:「そうか?」
晟:おまえは……久遠紫音だよな? ずいぶん老けたようだが。
GM/紫音:「『老けた』はないだろう。フツーに年をとっただけだ」
晟:そうか? しかし,その軽薄そうな顔は変わっていない。
GM/紫音:「うるさいなぁ」
晟:で……やはり状況がわからないんだが。
GM/紫音:「そうか,じゃあ時間もあることだし,説明してやろう」というわけでかくかくしかじかと。
晟:何だその荒唐無稽な話は。
GM/紫音:「だってそうなんだから仕方ないだろ。ほれ」と言って鏡を見せます。
晟:すると,何だかちびっと若返った自分が映ってるわけですよね? ではしばし硬直してます。
GM/紫音:「納得いったか,楓? いや,おまえは晟であり楓でもあるわけだが」
晟:そんな馬鹿なことがあり得るのか,と言いたいところだが……実際そうなっているのだから認めないわけにはいかないな。まだ頭の上に「?」マークがいっぱい飛んでいるような状態だが。
GM/紫音:「で,おまえが何でそんな状態になってしまったかというとだ,覚醒が中途半端だったからだろうな。記憶が混乱して,楓の記憶も17歳時までしかないし,晟のことも思い出せないんだ」
晟:…………? じゃあ覚醒とやらが完璧だったらどうなる?
GM/紫音:「楓の記憶と,晟の記憶が完全に同居することになるな」
晟:つーかGM,それ,プレイヤーがどんなもんだが想像つきませんが。
遙:私と炎華姫みたいなものでは?
GM:そんな感じだな。「というわけで,もっと楽にしてやれないこともないんだが」
晟:断る。信用できん。
一同:(笑)
GM/紫音:「おまえなぁ。まず話くらい聞けよ」
晟:おまえがそういうことを言って,信用に値したためしがあるか?
GM/紫音:「たまには俺を信用しろよ,楓ちゃん」
晟:断ると言っているだろうが。
GM/紫音:「すこぉしは楽になるかもしれんぞぉ?」
晟:新宿界隈の売人もかくや,という台詞だな。
GM/紫音:「ちっ」
晟:「ちっ」って何だ,「ちっ」って!
GM/紫音:「ま,試してみたかったら言いな。時間はそうないかもしれんしな。というわけであまり騒ぐな。眠ってる女の子もいるんだ」ちなみにゆかりちゃんは今も気絶中です。起こさないよね?
ユウキ:当たり前です。
遙:山崎さんの死体がその横にあるわけですし……。
晟:GM,念のため訊くけど,山崎くんの死因についても話は聞いたんですよね?
GM:ええ,ちゃんと話しましたよ。サプンクルの肩に乗って勇戦したあたりも。
晟:それってただの馬鹿じゃないか。
一同:(爆笑)
ユウキ:ひでえ……。
晟:いや,だって紫音からそう聞かされれば楓はそう言いますよ(笑)。
遙:だいたい,肩に乗ったのはただの冗談じゃなかったのですか。
GM:いいえ?
晟:だってただの冗談だって言ったじゃん。
GM:ううん。乗ったの。
ユウキ:それじゃ山崎ホントにタダのバカじゃねーかよ!?
GM:乗ったの。だってほら,高いところから撃った方が有利だし。
晟:ものは言い様だな。
GM:原作の彼だって高いところから撃ってたし!
晟:高さが違うわ!
GM:まぁそうとも言いますが。「それで? これからどうするんだ,おまえたち」
晟:どうすると言われても,何がだ。
GM/紫音:「まずは千葉のことだよ。あいつをどうするつもりだ?」
ユウキ:ボコるに決まってんだろ。他に何かあんのか。
GM/紫音:「遙もそうか」
遙:…………。えーとすいません。まだ炎華状態なので,何も答えません。
GM/紫音:「ふむ。晟はどうだ? 千葉を倒すのにはつきあってくれるのか?」
晟:事情がよく飲み込めんな。だが,相手があいつだというのならば協力してやらないこともないが。
GM/紫音:「ふーん,そうか。なら手を借りようか。事情が事情だし,記憶の混乱が回復するまでUGNにいるだろ?」
晟:まぁ,そうせざるを得ないだろうな。
GM/紫音:「大谷は留守だが,面子は色々と揃ってるからな。オリジナルのおまえにも会ってみたかろう?」
晟:……それは,余計話が混乱するような気がするんだが。
GM:きっと会ったとたんにこんな感じですね。「何だ貴様は」「何だ貴様は」
一同:(爆笑)
GM:「誰に断って人の物真似をしている」「誰に断って人の物真似をしている」とか。
遙:ちなみに,今は確か蒼もいるんだよねぇ(笑)。
ユウキ:うぜえ。めちゃくちゃうぜえ。
晟:(咳払い)しかし,背が低いのは仕方ないとして,細いというか,実に普段鍛えてなさそうな身体だな。
GM/紫音:「ああ,晟? 戦闘嫌いなんだってさ」
晟:そんなものか? ま,しかし殴るしか能のない馬鹿よりはマシだろう。
ユウキ:ああ?
遙:ちなみに,おそらくそれは光のことを言っていると思われ。
GM:ユウキにはケンカ売ってるように聞こえるだろうけどな。
遙:そして楓ちゃん,「殴るしか能のない馬鹿」に自分が当てはまるということには。
晟:(ひらひらと手を振って)気づいてない気づいてない。
一同:(笑)
ユウキ:結局てめえが一番バカなんじゃないかよっ。
晟:(無視)そう言えば,松山は元気にしているのか。
GM/紫音:「現役は退いたんだが,ま,非常に元気だ。元気っつーか,相変わらずというか,ますますひどくなった」
晟:…………。そうか。
GM/紫音:「懐かしいだろ? 会いたいだろう?」(笑)
晟:いや,できれば会いたくないので,おまえからお幸せにと言っておいてくれ。
GM/紫音:「そうか? 戻れば絶対顔あわせると思うがな」
遙:きっと「おお晟くん,お帰りー! 元気にしてたかー? 俺はこんなに元気で幸せだぞー?」みたいな感じですよ?
ユウキ:つーか,マジでそんなんばっかりかよ!?
晟:……あのね。こういう設定にもってっといて,今さらなんだけどね。
GM:はい?
晟:ホントにこーゆー面子で,終わるのこの話?
GM:ねえ(笑)。
ユウキ:いや,終わるでしょ。どうせ後はボスをボコるだけなんだし。
晟:つーか,それだけしかないんかい。
ユウキ:当然でしょ。千葉を殺ル! 他に目的がありますか?
晟:いや,私はいいんだけど……遙ちゃんにはあるんじゃないの?
遙:んーと,そうですねえ。炎華は千葉についてどれくらいのことを知っているのでしょうか。彼の動機とか。
GM:え? きっと全部知ってますよ?
晟:多分,炎華が言わないだけだよな。
GM:そうですね。というわけで,そのシーンはこの後にしようと思います。ではいっぺんシーンを変えようと思います。

 

SCENE 2


GM:ではユウキのシーンです。ちなみにこれ,夢の中なんですが。
一同:は?
GM:あなたがたはあの後,体力温存ということで眠りについたのです。そこで,三者三様の夢を見るのがこれからのシーンです。
ユウキ:あー。そう言えば,こーゆーシチュエーション久しぶりだなぁ。
GM:というわけでユウキくん。君は見たことのない,しかしどこか懐かしいと感じられる草原の中に立っている。
遙&晟:らんらんらららんらんらん♪ らんらんらららんらんらん♪
ユウキ:いや,それ草原の中には立ってないと思うんですけど。全部蟲でしょ?
一同:(笑)
晟:その者,蒼き衣をまといて〜。
ユウキ:まとっとらん。だいたい,蒼き衣をまとわなきゃいけないのはアンタだ。
晟:ぐっふう!
ユウキ:楽しみだなぁ。聖闘士○矢みたいなカッコすんだよな。なぁ晟くん?
晟:いやー! 青い甲冑はいやー!
GM:大丈夫,今回は時間の都合上,青い甲冑はオミットされました。
晟:うう。本当に?
GM:本当です。いや,鎧は出てきますが,青じゃありませんし,着るのは君じゃありませんし。
ユウキ:それってつまり俺じゃねーかよ!?
一同:(爆笑)
GM:えーと,話を戻させてくださいませ。とにかく草原です。あなたはデモンズシティ生まれなので,本とかメディアでしか見たことのないような,見渡す限りの草原ですね。
ユウキ:モンゴルとか?
GM:いえ……一言で言うと,関が原です。
ユウキ:と言われても,見たことがないのでわかりませんが。
GM:イメージで結構ですので。しかも,そこには大時代な甲冑を着た鎧武者たちがずらーりと。
晟:鉄砲あるん?
GM:種子島ですけどね。しかし,そんな知識はおそらくユウキにはないので。
遙:ないない。
晟:絶対ない。日本史の授業受けてないしね。
ユウキ:ええ,まぁそれは認めますが,だから何なんですか。
GM:ちなみに,そこでの君の名は御剣厳馬という名前でした。
ユウキ:はあ。
晟:マジでどんどん『異能使い』になっていくんですけど?
GM:さて,時は戦国時代。まわりの武士たちは戦に夢中になっておりましたが,あなたは違いました。あなたは,そういう世界に紛れ込んでくるこの世ならぬ者を,密かに狩り出すことを生業としていたのです。当然,人ならぬ力を持っていたわけでして。
ユウキ:はあ。
GM:さて,その時代に鳴神と呼ばれる能力者がおりました。
ユウキ:はあ。
GM:これ……またもや読者様からのクレームが怖いんですけど……。
ユウキ:はあ?
GM:えー,この時代,第六天魔王と呼ばれる方がいらっしゃいましてですねえ。
一同:おい!(爆笑)
ユウキ:それはどっかの有名な武将さんの異名だった気がするんですけど。
GM:ええ,まあ俗に織田信長と呼ばれる人だったりするわけですが。
晟:大丈夫だ,すでに突っ込む気も起こらん。きっと読者様も同じだろう。
GM:えー,そういうわけで信長公は裏社会では鳴神と呼ばれ,恐れられていたわけなんですよ。
ユウキ:ええ,もう何でもいいですが……俺はそれをこれからぶっ倒しにいくとこなわけですか。
GM:いえ,その人はその時点から数えて13年前に死んでいます。しかし,その後継を名乗る集団が時代の裏で暗躍をしていました。あなたは,そいつらを狩っていたところで,ヤマトと言われる男と出会いました。
ユウキ:ヤマト? 大きいに和ですか?
GM:いえ,耳におおざとの耶に,魔物の魔に北斗の斗!
晟:あのさGM……。
GM:ええ,我ながらあったま悪い名前っつーかもう何とでも言ってくださいって感じなんですけど!
晟:つーかゾクのチーム名か何かかそれは。
ユウキ:で? その耶魔斗くんが,何なんですか? 戦ってたんですか? それとも仲間だったんですか?
GM:協力を求められたということですね。彼も鳴神の残党を狩っていたんです。で,さらにぶっちゃけたことを言いますと,こいつが千葉さんです。
遙:(首をかしげて)チバ・ヤマト?
晟:それって何? どこかのガン○ムイロット?
GM:ヤマト少尉ちゃいますっ。
晟:おまえなんかイスカンダル目指して飛んでっちまえ!
GM:そのヤマトでもないものー! この人いぢめっこだー!(泣)
ユウキ:(真顔)いや,ヤマトは良いものなのですよ?
GM:いや,あの……とにかく,あなたと耶魔斗,つーか千葉は協力して敵を殲滅することに成功しました。ところが,その直後御剣厳馬の名は完全に表舞台から消え去ります。あなたは自らのうちに生まれた虚無の力を以って敵と戦っていたんですが,その力を制御するのが大変になってきたので,霊峰にこもったわけなんです。
ユウキ:霊峰? 恐山とかですか。
GM:富士ですよ。
ユウキ:それは当然不死山って書くわけですか。
晟:当然でしょう。
GM:と,当然?
晟:そして最後には火口に沈むんだ。やったー!
GM:あんたの言ってることもよくわかりませんがなっ。とにかく,あなたの記憶はそこで途切れるのですが,問題は千葉ですね。耶魔斗であった頃の千葉は,今とは少し違うようです。今みたいにひねくれた感じではなくて,使命に忠実で真面目な熱血漢だったような感じでした。
ユウキ:…………。へええ?
GM:と,いうわけでユウキの回想終わりっ。次のシーンにいきたいと思います。

 

SCENE 3


GM:次,晟。君も夢を見ているわけですが。
晟:夢を,見ていました。夢の中の私は,
ユウキ:……だからそのネタはもういいちゅーねん。
GM:えー,夢の中の君は,赤レンガの倉庫が立ち並ぶ通りを歩いていました。
晟:ほう,ひょっとして横浜か? 大正?
GM:いや,明治の,鹿鳴館時代でした。で,君はこの夢の中で新条秋(しゅう)という名前なんです。
晟:はあ……。
GM:君も御剣厳馬と同じような立場でありまして,人ならぬ力を持ちつつ,この世ならぬものを狩っていたのです。さて,君の時代には海を渡って帝都に闇のものが侵入していました。そこでもちろん君はそいつらを狩っていたわけなんですが,そこで一緒に戦っていたのが,この頃から千葉と名乗るようになった千葉でした。
晟:その時のちーちゃんはどういう感じだったの?
GM:今とあんまり変わらない。
晟:ほう?
GM:かなりひねくれた物言いをするようになっている。少なくとも,耶魔斗とはだいぶ印象が違いますね。あ,そうだ。さっき言い忘れてましたが,厳馬とともに戦っている時,耶魔斗は彼に緑の石を手渡しています。
ユウキ:え? じゃあアレ,千葉にもらったものなんですか?
晟:で,私は青かい?
GM:そう,千葉から青い石を渡され,その力を借りて魔のものを滅ぼすことに成功したのです。ちなみに,厳馬は死ぬまでその石を体内に融合させていたのですが,秋は戦いが終わった後,石を身体から取り出すことに成功しました。
晟:ほほう? それはかなり有益な情報とみたぞ。いったいどうやって?
GM:それこそが君が持つ特殊な力なわけなんですが。
晟:わけなんですが?
GM:後述。
晟:おい。
GM:後でちゃんと話すから。で,秋は取り出したその石を他人に託したのですが,その男の名は久遠成正といいます。
一同:(爆笑)
晟:んなヤツには絶対渡さねー! 渡してたまるかー!
GM:えーとその成正さんは久遠家の創始者ですが,紫音と違って性格はまともなので安心してください。
遙:でも久遠なんだ。
GM:久遠ですが?
晟:久遠って源氏名じゃなかったのか。
GM:違わいっ!
遙:え? 違うでしょ? コンビ名でしょ?
GM:漫才師でも芸名でもなーいっ!
遙:はいはい。とりあえず続けてなのです。
GM:えー,で,ですねえ。
晟:でもやっぱり漫才師に聞こえるけどな。
GM:……とにかく,この成正さんは本人も能力者でしたが,それ以上に金と権力を持っていて,研究資金も施設も豊富だったので,
遙:グループくおんしおん……。
晟:え? グループサウンズ?
GM:そうじゃなくてえっ!(泣)
ユウキ:アンタら,いぢめは大概にしなさい。
遙:いぢめといいますか,久遠紫音という企業グループがあったのかと。
ユウキ:おかしいだろその名前は! どう考えても!
GM:(しくしく)ともかく,青い石はそうやって久遠家に預けられ,研究が繰り返されてきたのです。その研究の成果が,紫音や咲耶榎に活かされてるんですね。
遙:じゃあ青い石はずっと久遠家にあったってことですか?
ユウキ:どういう経緯で北極海に移動したんだろう……。
晟:ねえ。
GM:そのへんは私考えてないんですよ。
一同:おい!
GM:わざとアキを作っておきましたので,そのうち誰かがそのネタでシナリオを作れるかと。
晟:嘘だ! それは嘘だ! 白状せんか貴様!
遙:だいたい,北極海に行くシナリオなんて誰がそうそう作るかと……。
GM:うーん,そうねー。あれは俺も記憶から抹殺したいんだよねー。
晟:悪いことは言わない,永遠に抹殺しておけ。
GM:そうだね。澄んだ目とかね。さて,話を戻すと,秋は石を久遠家に預けた後は,ふつーに年をとって死んでいます。意外に平穏な晩年でありました。
ユウキ:ストーカーみたいな嫁さんもできなかったのか。
GM:結婚はしましたが,嫁さんは大変によくできた方でした。ほら,よくできた人でもないと,あの性格にはついていけんから。
ユウキ:それは確かに。
遙:とゆーか,やっぱりあの性格なんだ。
晟:まーね,明治の頃はよかったんじゃない? 家帰るとさ,奥さんが割烹着着てご飯用意してあって,さらには三つ指ついてさ。あなた,ご飯になさいますか? それともお風呂になさいますか?
GM&晟:それとも私?(笑)
ユウキ:ねーよ!
遙:だって明治なんでしょう?(笑)
GM:そんなことはない。いつの時代でもオールオッケー!
ユウキ:おーい!
GM:それは冗談として,本当によくできた嫁さんでした。ふつーの人間ではなかったけどね。
遙:で,そのよくできたお嫁さんの性格は子孫に受け継がれなかったんだ。
GM:いわゆる劣性遺伝というヤツでして。
晟:おーい。いや,なんかもう否定できねーが!(笑)
GM:秋の記憶で重要なのはそんなとこかな。千葉と共闘したことと,青い石のことと,その石を自力で取り出せたということ。
晟:うん,その方法はかなり重要だと思う。
GM:あとは……秋は本当に幸せに,平穏に暮らしたんだよね。
晟:あれが,平穏にねえ?
GM:何故かというとですね。嫁さんができた人だったってのもありますが,その頃の帝都にはまだいっぱい魔物がいたんですよ。
遙:なるほど。つまり,家族をほっぽらかしてあちこち出歩かなくても,獲物は近場にいっぱいいたと。
GM:そうそう。憂さ晴らしの相手にはこと欠かなかったからね。わざわざ失踪しなくても,近所でいい感じにストレス解消して,後は嫁さんとよろしくやってればいいわけだから。
晟:へ,平穏……?
ユウキ:聞けば聞くほど,バリバリの社会不適合者だな。
晟:だーから,ユウキさんには言われたかないですよっ!(泣)
GM:ま,そういうことで晟は終わり。次,遙です。

 

SCENE 4


GM:では遙です。
遙:はにゅにゃ。
GM:遙が見るのは,当然ながら炎華の記憶ですな。
遙:はにゅにゃ。
GM:で,時代は戦国なんですが,
遙:はにゅにゃ。
ユウキ:はにゅにゃはやめなさい!
遙:はにゅにゃ。
GM:……何なの,この人。
晟:退屈だったんじゃないの?(笑) それはそうとGM,炎華って鎌倉から室町にかけての人じゃなかったん?
GM:うん,間違えたんだ。
晟:アンタそんなあっさり……。
GM:いやぁ,シナリオに「400年前」って書いてあってさ。よく考えたら,400年前って戦国時代だよね。
晟:正確に言えば江戸時代だが……つーか「一郎さん,あれが天下の家康公」とか知らないの?
ユウキ:俺も知りませんよ,そんなの(笑)。
GM:問題だったら600年前くらいにしちゃう?
遙:それでいいんですかー!
ユウキ:信長さんが出てこられなくなりますよ?
GM:あ,それは困ります。
晟:いや,もう400年前でいいから……そのかわり,もう「鎌倉・室町」をアップしちゃったんだから,GMの間違いだったってことはしっかり書かせてもらうけど……。
GM:ではそういうわけで,信長さんが生まれた数日後ぐらいに君も生まれたのでした。んで,あなたはどういうわけか,鬼のように強い信長さんが本当に人ではなかったことを知り,さらには信長さんは実は信長さんですらなかったことを知ったのでした。
遙:ほほう? つまり,誰かが入れ替わっていたわけなのですか。
GM:そう,信長の影がね。それが鳴神であり,強大な能力者であったわけだ。
ユウキ:じゃあひょっとして,厳馬と炎華って一緒に戦ってたの。
GM:一緒ってほどでもないですけど,まぁ,同志ではありましたね。それよりも重要なのは,耶魔斗と炎華が2人で石を作り出したってことなんですよ。
遙:3つの石をですか。
GM:いえ,赤いのだけです。
遙:はにゅにゃ?
GM:もう忘れ去られているかも知れませんが,炎華には異界の門を開く力がありまして。
晟:ああ,あの門だの鍵だの言ってたヤツ?
GM:それはつまりどういうことかと言いますと! 「向こう側」から力を持ってきたりその力で物質を再構成してみたりするという!
ユウキ&晟:だーかーらー!(爆笑)
晟:ちょっと,ねえ,殴っていいかこの人?
GM:だってずーっと前から考えてた設定だもん!
晟:ずーっと前から考えててそれかよっ!?
GM:えー,ちなみに向こう側から力をもってくる場合には代償がいります。
晟:それは何!? つまり腕1本もっていかれたり足1本もっていかれたりとか!?
GM:身体全部もってかれたりねー。それでしょうがないから魂鎧に定着させてみたりねー。
ユウキ:どういう等価交換ですかそれは。
遙:真面目な話,何をもってかれるのですか。寿命とかですか。
GM:それは場合によって異なります。とにかく,その力を使って炎華は赤い石を作ったわけですが,耶魔斗にも同じ力はあったのですね。それで,彼は独力で緑と青を作ってます。
遙:類似品ですか。
ユウキ:改良強化版と言え!
GM:デッドコピーではないですよ。ちゃんと千葉さんテイストなコピーです。
ユウキ:それはもっと嫌だが!
一同:(笑)
GM:話を戻しますと,とにかく石は炎華と耶魔斗によって作られたということ。それから炎華の死因なんですが,彼女は鳴神との戦いの中で命を落としています。ただし,耶魔斗をかばって。
遙:はにゅにゃ?
GM:ほら,当時ちーちゃんは真面目でいい人だったから。
遙:きっとちーちゃんに惚れてのですね。
GM:うん,その通りなんだが。てか,恋人だったんだが。
遙:はにゅにゃ……。
晟:…………。
ユウキ:何か,ヤな感じ……。
GM:あ,でも炎華が耶魔斗に惚れた時点で,すでに結婚して子供もいたんだけどね?
ユウキ:なお悪くないか。それ,ようするに不倫だろ。
遙:はにゅにゃ?
ユウキ:ひょっとしてあの気の多さのルーツは,このへんにあったわけか。
遙:いやあ,そんなことはないですけど。
晟:…………。本当に?
遙:あははははー。
GM:いや,ほら炎華には当然親の決めた婚約者とかいたわけで,そこに愛があったかはまた別問題なわけで。
晟:(遠い目)きっとその旦那ってのが,晟みたいなダメ男だったんだな……。
ユウキ:すげえ因果の巡り方だな。
GM:まぁ,炎華はそこで死んでるんで,記憶はそんなところです。では,3人が目覚めるあたりでシーンをきります。

 

SCENE 5


GM:えーと……誰のシーンでもいいんですけど,とりあえず全員目を覚ましてください。
遙:閉じた瞼から,一筋の涙が流れるのです。
GM:だばー。
遙:それは一筋じゃないですぅ!
晟:聖闘士星○ばりの滝のような涙とか。だだー。
ユウキ:もしくは男塾のような涙とか。ぐあー。
遙:何でだ!
ユウキ:月っ光おおぉーッ!(男泣き)
遙:だから,何ですかそれは! 一筋ですよ! 何故無理やりにギャグにしたいんですか!
晟:そこでちーちゃんとの間に愛が芽生えるような展開は,納得いかないからだぁ。
遙:別に,そんなことはないですけど。
晟:本当に?
遙:えーと,一筋の涙を流しながら,もう一度千葉さんと話さなければと決意を固めてます。
晟:…………。ちなみに,私の夢に出てきたちーちゃんは,やっぱり今みたくヤなヤツだったんだよね?
GM:そうだね,耶魔斗みたいな感じではないね。
遙:じゃあ厳馬はいい人だった頃のちーちゃんを知っていたわけで,
ユウキ:ああ,全然関係ない。
遙:はにゅにゃ?
ユウキ:そのへんの事情がどうあれ,俺があいつをボコる!という基本方針には,何ら変更はないからな。
遙:はにゅにゃ!? でも若干の違和感は感じたりとか。
ユウキ:昔のあいつがどうであれ,今のあいつがやってることに関して何の言い訳になるってんだ?
遙:…………。
GM:さて,そろそろ車が支部に着きます。「おい,おまえら。起きろ。着いたぞ」
遙:では「耶魔斗……」と呟いてから目を開けよう。
GM:ユウキはそれに対して何か反応しますか?
ユウキ:あ? ま,そういうこともあるだろうな,くらいだな。
GM:そうですか。では話を進めます。沈痛な面持ちのスタッフによって山崎くんの死体が運び込まれ,火葬にふされるわけですが,ちなみにユウキ。その時になってもゆかりちゃんは目を覚ましません。
ユウキ:え? それはそろそろおかしくないか?
GM:呼吸とかは正常みたいですけど。
ユウキ:でも気になる。医者に連れて行こう。
GM:では,医務室とかで診てもらえます。それで診断結果なんですが,身体的にはとりたてて異常はないようです。
ユウキ:そうか。ならいいが,だったら何でまだ眠ってるんだ?
GM/医師:「外部からの衝撃によっても目を覚まさないようですので,何らかの力によって眠らされている可能性があります」
ユウキ:何だと? いったい何でだ?
GM/医師:「わかりません。科学的には説明がつかないので」
ユウキ:ちっ,千葉かよっ。いったいどうしたらいいんだよ!
GM:ひとつには遙の力を使うという手もありますが。
遙:はにゅにゃ?
晟:ああ,例のエフェクト打消し技?
ユウキ:だけどそれって,遙の侵蝕値が100超えないと使えなくなかった?
GM:そうとも言います。
ユウキ:じゃあどうすんだよ!
GM/医師:「とりあえず眠らせておくしかないでしょう。根本的な解決策としては,影響を及ぼしていると思しき人物を倒すとか……」
ユウキ:つまり,千葉をボコればいいってことじゃねえか。
晟:短絡的だな。
ユウキ:この場にいねえ人間がぐちゃぐちゃ言うんじゃねえ!
GM:あ,ちょっと待って? 今この場にいるのは?
晟:私は登場していない。だって山崎くんのお葬式に出る義理もないしね。
遙:私は出てるのですよ。気になりますから。
ユウキ:何が。
遙:ゆーちゃんの大事な彼女が大変なのです。
ユウキ:そこがわかんねーって言ってんだよ!
遙:基本的に友達は大事にするのですよ。
ユウキ:俺とおまえはいつ友達になった? ああ?
GM:まぁまぁ。それはそうと,ユウキって何でゆかりちゃんと一緒に暮らしてたんだっけ?
ユウキ:え? 特には決めてないけど,小さい時に拾ったんでしょ。
晟:雨の中,建物の蔭でパンをかじっていたら,ユウキが雨宿りにしに飛びこんできたんですよ。
ユウキ:そうそう。それで2人でパンを分け合ったんです。
GM:それでええんか(笑)。まぁいいや。じゃあ遙はユウキと一緒に医務室にいるわけね? ではユウキ。あなたの背後でゆかりちゃんが身を起こす気配がします。
ユウキ:え? ゆかり,目が覚めたのか?
GM:しかし,彼女の目は虚ろです。そして口を開き,「やぁ,そろそろお帰りの様子ですね」とゆかりちゃんの声が,そう言います。
ユウキ:……てめえ。
GM/ゆかり?:「こんなところから失礼しますよ。言っておかねばならないことがありましたので」
ユウキ:ふざけんな! てめえ,今どこにいやがる!?
GM/ゆかり?:「そう,まさにそれをあなたがたにお伝えしようと思ったのです」
ユウキ:そうか,じゃあとっととしゃべれよ。今すぐにでもボコりに行ってやる!
GM/ゆかり?:「まぁ,そう焦らないでください。明日の昼頃にでもご足労願いましょう。私は今,ライト氏にお世話になっています。場所は……」と,市外第3ゲートを抜けたところを指定します。
晟:え,ちょっと待って。それは具体的にどこ? 市外というか,デモンズシティの外?
ユウキ:何重にもなってる壁の,一番内側の外?
GM:いや,全部の壁の外。
晟:それはつまり日本本土と言わないか?
GM:そうです。「何でもライト氏が,私たちのために特別の場所を用意してくださるそうですよ」
ユウキ:上等じゃねえか。明日,そこに行けばいいんだな?
GM/ゆかり?:「そうです。もちろん,私はあなたがたがちゃんと約束を守ってくださると信じています。が,もし万が一,約束が破られた場合には……」と,ゆかりちゃんの手がすっと近くにあったメスを掴みます。
ユウキ:行ってやるって言ってんだろ。だからつまらねえ小細工すんじゃねえよ。
GM/ゆかり?:「もしもの時の保険ですよ。ちなみに私はあなたがた3人との戦いを望んでいます。よって,3人揃ってお越しいただけない時は,やはり約束は破られたと見なしますが,よろしいですね?」
ユウキ:うるせえ。これ以上ぐだぐだ抜かすようなら……。
遙:(横から)千葉さん。いえ,耶魔斗。
GM/ゆかり?:「……何ですか,炎華姫。お久しぶりですね」
遙:何故なのですか。何故,こんなことを。
GM/ゆかり?:「何故? そうですね,私利私欲のためですよ。それが何か?」
遙:本当に,そうですか?
GM/ゆかり?:「今さら言うのもなんですが,私は変わったのですよ」
遙:…………。
GM/ゆかり?:「ああ,それから晟くんはどうしました? 念を押しておきますが,彼にも来ていただかないことには……」
ユウキ:ああ,首ねっこ掴んでひきずってってやる。それで文句ねえだろ。だから,その気色悪ぃ真似をいいかげんにやめやがれ!
GM/ゆかり?:「わかりました。それではよろしくお願いしますよ」と言ってゆかりちゃんは目を閉じ,ぱたっと後ろに倒れます。
ユウキ:…………。おい,ゆかり?
GM/ゆかり:「……んー……あれ? ユウくん? ここは?」
ユウキ:ああ……UGNの中だ。
GM/ゆかり:「え? ここって市内だよね? どうして私たち,こんなところにいるの?」
ユウキ:色々あったんだよ。色々。たいしたことじゃねえけどな。
GM/ゆかり:「ふーん……これからうちに帰るの?」
ユウキ:いや,やんなきゃなんねえ仕事があるからな。一晩か二晩したら,迎えに来る。
GM/ゆかり:「……何か,あったの?」
ユウキ:……いや。
遙:大丈夫。
GM/ゆかり:「え?」
遙:大丈夫。私たちもいるから。
ユウキ:いやそれ不安を煽るだけだと思うけど。
一同:(爆笑)

 意外に忘れられている出来事ですが,遙とゆかりちゃんはこれが初対面でした。

GM:じゃあゆかりちゃんはいまひとつ納得してない顔をしてるけど,やがて「わかった。待ってる」と頷きます。「ところで,山崎さんは?」
ユウキ:……山崎は……遠いとこに行ったんだよ。遠いとこに。
GM/ゆかり:「…………」
ユウキ:そういうことにしといてくれ。
GM:じゃあゆかりちゃんは,しばらく黙って,それから頷きます。では,そこでシーンをきります。