第七話 狭 依(さより)


GM:さて、戦場が静かになったところで、潮生くんが佐和女ちゃんを背負ってよたよたと歩いてくるです。
京一:ああ、いたのかおまえ。
一同:(笑)
GM/潮生:「お、おまえらみんなして、俺に冷たかねーかっ?!」
如月:一応覚えてはいたよ。それより佐和女さんは大丈夫なのかい?
GM:すると、佐和女さんの無表情が少し歪んで、彼女はやっぱり無表情のまま、ぽろぽろと涙を流し始める、んだけど。
如月:(困って)えっ?
GM:潮生くんも慌てている。そこへ沙織ちゃんが駆けてきて、「如月さん、みんなを逃がさないと!」と言っている。
晴華:えっ……ちなみに波は……。
GM:半魚人たちはやっぱり踊っている。そして彼らの眼前で龍がゆらめいているわけだけど、その周囲でだんだん波が荒れてくるね。
如月:沙織ちゃんの言う通りだな。みんな急ぐぞ。
竜深:どうするですか?
如月:まずは濤哉さんと汐里さんを探して、彼らに屋敷の人々を誘導してもらわなければ。2人はどこだろう。
GM:汐里さんなら、向こうから駆けてくるよ。「如月さん、これはいったい……」
如月:(さえぎって)いいですか汐里さん。今は時間がないんです。夜の12時になったら高波が来ます。その前に、皆さんを街まで避難させなければなりません。
GM/汐里:「で、でも……」
如月:事情は後でゆっくり説明します。ご不満の点もその時に伺いますよ。でも今は時間がないんです。濤哉さんはどこですか?
GM/汐里:「え? あ、兄ならさっき離れの方に……叔父や村橋さんと一緒に……」
如月:わかりました。僕たちが濤哉さんたちを連れてきます。あなたはできるだけ急いでください。まだ船はありますよね?
GM/汐里:「え、ええ。でも操縦できる人間はそんなには……」
如月:ピストン輸送でも何でもいい。とにかく急いで!
GM:では、ひとまず舞台を離れへ移す。……でもって離れに入ると……直感チェック、はしなくていいか。基本的に壬生とか若旦那が気づくのが美しいんだけどな。
晴華:あの、そのメンバーにそこはかとなく嫌な予感が。
GM:ええ。血の臭いですね。
一同:…………。
如月:……壬生。
壬生:僕はまだ何もしてませんよ。
如月:いやそういうことでなく。
壬生:わかってます。では僕が先頭にたって、臭いのする方へと。
GM:それではある部屋に入ると、一面血の海だ。
一同:げっ!!
GM:(淡々と)その中央に、男が2人、折り重なって倒れている。上になっているのは纜さん、下になってるのは村橋さんだよ。壬生ちの標的のね。
壬生:(ぼそっと)らっきー。
一同:……待てえぃ!!

 
一気に崩壊する緊張感。

如月:こらっ! 君、今激しく人間性に欠ける発言をしなかったか?!
壬生:でも、「殺る奴リスト」から文字が消えてるんです如月さん。
如月:だから何だだから!
GM:封神演義じゃねーんだぞ!
壬生:ともかく任務終了ですね。
晴華:それでいいんですか壬生さん。いいんですか。いいんですね?
如月:いいわけないだろうが!
GM:(気をとりなおし)2人の身体には、いくつも切り傷がある。大きさからいって、日本刀とかでバッサリやった後ではないだろうか。
竜深:え、きょーちゃん犯人ですか?
京一:はいはい、言うと思った。つーか、俺が持ってるのは木刀だっつーねん。
GM:え? それでいくとアヤシイのは若旦那になってしまうんだが。
如月:…………。
GM:嘘です。嘘ですってば(若旦那が怖い〜)。
壬生:小太刀でこういう傷はつきませんよね。
如月:真面目な話、このシチュエーションだと、犯人は1人しか考えられないんじゃないか。
竜深:え? みかぴー?
京一:そうであってもおかしくない気はする。
如月:僕もその可能性を否定できなかったりするんだが、しかしそうではなくて。
晴華:怪しいのは濤哉さんですよね。……いや、私は会ったことないんですが。

 
一同苦笑。
 そう言えば竜深&京一&晴華は結局濤哉さんに出会っていない。
 ほとんど出演していないので、皆に忘れ去られていたかも。
 一応、最重要キャラのはずなんだが。
 何故こうなってしまったんだろう(笑)。


如月:濤哉さんを探すしかない、よな。どっちにしろ、いつまでもここにいたら危険だし……。
GM:じゃあもう少し離れを探すわけだよね? そしたら奥の方から、血の臭いに混じってヘンな臭いと、ヘンな音がするな。
竜深:えっ……。
GM:プラスチックとかビニールが燃えてるみたいだ。
如月:よくわからないがその部屋へ行く。
GM:一番奥の部屋だね。するとその中央には、やっぱり濤哉さんが立っている。手には血の滴る日本刀。足元では、半ば溶けかかったフィルムが燃えている。
京一:フィルム? 写真の?
GM:そう、普通の写真のフィルムだよ。
如月:……濤哉さん。
GM:濤哉さんは虚ろな目で如月を見て、黙っている。その足元では、ちょうどフィルムが燃え尽きたところだ。
京一:そのフィルムは?
GM:やっぱり無言。
如月:事情は後で伺います。濤哉さん、もうすぐ高波が来る。ここにいては危険です。
GM/濤哉:「知っている。私は今夜、この波に全てを浚わせるつもりだった」
一同:…………え?
GM/濤哉:「もちろん、この私も例外ではない。どうか放っておいてくれ」
竜深:ええ? でもそれって、かなり勝手じゃないですか?
GM/濤哉:「勝手はわかっている。だが……もう私は駄目だ。随分疲れてしまって、もうこんなことしかできない……」
竜深:何寝ぼけたこと言ってるですか(怒)。
晴華:というか、説明してほしいです。
GM:いや、説明しろと言われてもなあ。彼は床に日本刀を落とすと、君たちの横を抜け、ふらふらと外へ出て行こうと……。
壬生:さりげなく戸口に立ちはだかってますよ。
GM:う、やっぱり?
如月:では、彼の方を見ずに言います。教えてください。当代の巫女は、佐和女さんではなく沙織ちゃんだったのですか?
GM/濤哉:「……何故そんなことを?」
如月:2人のためです。答えてください。
GM/濤哉:「アレが巫女と呼ぶべきものなのかは知らん。が、安曇奈美の力を受け継ぐものという意味でなら……そうだ」
如月:じゃあ、沙織ちゃんはやっぱり、あの洞窟で?
GM/濤哉:「そうだな。沙織が生まれた夜、私はあの洞窟へと赴いた。伝承なぞ八分がた信じていなかったのでね、本当に声が聞こえてきた時にはひどく驚いたよ。……あの時はちょうど産婆が同行していた。それで、私は彼女に怪しまれぬよう、一字だけを違えて名をつけた」
晴華:じゃあ、沙織ちゃんの名前は、本当は何というのですか?
GM/濤哉:「『さより』といった」
京一:さより?
GM:狭依比売。いわゆる宗像三女神のひとりです。有名な海の女神さまだよ。
晴華:それってつまり、まんま、ってな名前ですよね?
GM:だね。
如月:だが、沙織ちゃんは那美さんと藤沢さんとの間に生まれた子だ。今までは、他家に嫁いだ人から巫女は生まれていない。そう聞きました。
GM/濤哉:「ああ……そうだ」
如月:それが事実なら、ですね?
竜深:えっ?
GM/濤哉:「……君は、何が言いたい?」
如月:僕の口から言わせたいんですか?
GM:(困って)……う……それは濤哉さん、黙ってしまうよ。
如月:誤解しないでほしいんですが、僕はこんなことを暴き立てて楽しんでいるわけじゃない。このまま何も知らせずにおくのが一番だと思います。だから決して口外はしません。だが、全てを闇に葬って、あなた自身消えてなくなるつもりなら、それは卑怯だ。
GM:(さらに困っている)う、うわー。
壬生:……壬生は……プレイヤーとしてはわかってるんですけど(笑)、ここは何も言わないでおきます。黙って見返してやりましょう。
晴華:同じく。
竜深:……あ。あー。なるほど。
如月:はいはい。とりあえず竜深さんは黙っててね。場がぶち壊れるから(笑)。
竜深:かめさんひどいです。
如月:(構わず)濤哉さん。残された那美さんの気持ちを考えてください。あなたは彼女に全て背負わせる気なんですか? 今まで犠牲になった佐和女さんは? それに沙織ちゃんは? このまま父親として何もしてやらず、死んでいくつもりなんですか?
一同:うわっ! 言っちまうのか、それを!
如月:だって仕方ないでしょ。この人だんまりなんですもん。
GM:(非常に困っている)う、うーん……。
晴華:罪は償うべきですよ。警察に行けって意味じゃなくて、これからあの人たちに、できるだけのことをしてあげるって意味で。
GM/濤哉:「(壬生に)……頼む、そこをどいてくれないか?」
壬生:黙ってガンつけてます。
一同:こ、怖っ!
壬生:壬生としては、自分が後ろ向きだという自覚がありますので。逆に腹がたつんです。
GM:(ものすごく困っている)い、いやぁ参った。もう打つ手なし?
京一:追い討ちかけていい?
GM:え……(汗)。
京一:てめえさえよけりゃ、それでいいわきゃァねえだろッ!(殴る)
GM:お、おいおい。
竜深:きょーちゃんきょーちゃん。
京一:ん?
竜深:惚れ直しました、もっとやっちゃうです。
GM:おいおい。
如月:(すごく怖い口調で)観念して那美さんと沙織さんの面倒見りゃいいんですよ。
GM:あ。みなさんご立腹なのね?
一同:当たり前です。
GM:いやあ……一応濤哉さんには濤哉さんの事情があるんだけど……その辺ツッコまなかったからねえ(笑)。
晴華:だいたい、佐和女さんは何なんですか? まさか沙織ちゃんのカモフラージュで、あんなとこに閉じ込めておいたんじゃないでしょうね?
GM:い、いやあ……そうだったりして……。
晴華:同情の余地なし、とか思いませんか?(←怖い)
如月:結局、佐和女さんは巫女じゃないんですね?
GM/濤哉:「それは私にはわからない。というより、磯良神を呼ぶ巫女というのはまやかしだ。君たちがどこまで知っているかは知らんが……」
竜深:呼ぶのは龍くんじゃなくて、ねばねばさんたちで、それでお宝もらって私腹を肥やしてたってことでしょ?
GM/濤哉:「…………え?」(笑)
如月:だから竜深さんは黙っててくれ(笑)。つまり、巫女というのは、歌によってあの半魚人たちを呼び寄せることができる人のことですよね? 佐和女さんにはその力がなかったのか、ということを訊きたいんですが。
GM/濤哉:「いや……そうでもない」
一同:え?
GM/濤哉:「何度も言うが、私は巫女などというものを信じていなかった。それで、佐和女をカモフラージュのつもりで洞窟に連れて行き、歌わせた。その時、確かにあの半魚人は来た……らしい」
晴華:どういうことです?
GM/濤哉:「わからない。ただ、佐和女はうわごとでそう言っていた。だから私は、またアレを呼ぶことができるのでは、と思った」
竜深:それで閉じ込めたですかぁ?
GM:説明してなかったけど、佐和女ちゃんって最初5歳の時に神事をやって、失敗したのね。で、東京に出されてて、藤沢さんに育てられたんよ。
晴華:藤沢さんって、沙織ちゃんのお父さんじゃありませんでしたっけ?
GM:うん、形だけね。実際はずっと東京にいたのよ。
竜深:そうだったっけ?
GM:だって那美さんともその辺の話してないんだもん(笑)。旦那がどうしてるのかとすら訊かなかったじゃん。
如月:いやぁ、僕らいったい何をしてたんだか。

 
それはアナタをいぢめてたんではないかと……(汗)。

GM:話を戻すと、失敗したままずうっと巫女さんが現れないんで、纜さんが色々調べたんですよ。で、巫女さんは他にいるんじゃないかと言い出したんで、沙織ちゃんのことを調べられないように彼女を呼び戻して、あの洞窟に閉じ込めたわけ。
晴華:でも結局バレたんですね? 濤哉さんと那美さんの仲。
GM:そうですな。
如月:とすると写真って……。
GM:どの程度までヤバい写真だったんだろうなあ。まあその辺はツッコまないでやって(笑)。
壬生:……あァ。
GM:え? 何?
壬生:動機はそれだったんですね。
GM:……そういや君ら、殺人の動機すら訊かんかったな。
一同:それどこじゃなかったんで(爆笑)。
GM:普通そこから訊くよな(笑)。
如月:壬生とか、鳴瀧さんにどう説明するつもりだった?
壬生:館長、殺りに行ったら標的がもう死んでました。
竜深:らっきー。
壬生:館長、任務完了です。
一同:(爆笑)
GM:ガン○ムとともに自爆しろ!
晴華:まあまあ。話を元に戻しましょうよ。
GM:(気を取り直し)そうねえ。濤哉さんからは動けないんで……じゃあ、濤哉さんの表情が急に凍りつく。壬生ち。後ろに佐和女ちゃんが来てるよ。
壬生:……黙って彼女を通します。
GM/佐和女:「あの夜のことなら、私が説明します」と言ってる。
如月:君は、もうすっかり正気に戻ったようだね?
GM/佐和女:(頷く)
如月:あの夜のことって、君が初めて神事を行った日のこと?
GM/佐和女:「「はい。……私は小さかったからよく覚えていないのですが、私はあの洞窟で『神』を呼びました。そして現れた『神』を見て、恐ろしさに悲鳴を上げたんです。気を失っていたからわからないけど、『神』は多分、そのまま何もせずに帰った……のだと思います」
竜深:それからもうミギワくん来なくなったですか?
GM/佐和女:「いえ、来たのだと思います。ただし私ではなく、沙織ちゃんのところに」
如月:やっぱり沙織ちゃんの方が力が強かった?
GM:うーん、いや、たまたま。ただね、ミギワくんは結局、佐和女ちゃんと沙織ちゃんを個別認識してないんだよ。だから、最初は悲鳴を上げて追い払われたところ、次に沙織ちゃんと会ったときはそんなことはなかった。だから彼にとっては『奈美さんが機嫌を直してくれた』でしかないわけで。その後ずっと沙織ちゃんのところに来ていたのは、単に場所の方を個別認識してるだけ(笑)。
如月:でも、贈り物が貝殻になったのはどうして?
GM:あ、別に沙織ちゃんだから貝殻ってわけじゃないんです。あれはね、彼らにとって貝殻の方が貴重だからなんだよ。最初機嫌が悪かったから、今度はもっと貴重な貝殻を持ってきてみた。そしたら奈美さん喜んでくれた、わーい、みたいな。
京一:そ、それだけのこと?
GM:うん、それだけ(笑)。
如月:それ……佐和女さんって一番気の毒なのでは。
GM:そうなっちゃうよね。ははは。
晴華:ははは、じゃありません(怒)。
如月:これ……神事がその程度のもんだって彼女に言った方がいいと思う?
竜深:難しいとこですね。
GM/佐和女:「教えてください、お兄様。私は沙織ちゃんの代わりで、偽物でしかなかったんですか?」
一同:うわっ。
竜深:その認識はかなりマズイですぅ。
晴華:(困って)佐和女さん。残酷な言い方かも知れないけど、そもそもこの神事自体に意味がないんです。
GM/佐和女:「意味が……ない?」
晴華:詳しいことは後で濤哉さんに訊いてください。ただ、あなたと沙織ちゃんがどっちが巫女だとか、それは関係ないですよ。そんなこと気にする必要は全くないです。
竜深:こくこく。
GM/佐和女:「……私……私は……」
如月:濤哉さん、何とか言ってあげたらどうなんです?
GM:濤哉さんはさすがに困ってる。
竜深:またそれですかいっ。
京一:でも、沙織ちゃんの出生のことを言えってのは、酷だろう、さすがに。
GM:すると佐和女ちゃんは、思いつめたような顔で濤哉さんを見て言う。「お兄様……私は、あなたにとってなんですか? あなたには、沙織ちゃんしか……那美お姉様のことしか頭にないんですか?」
竜深:え……。
GM/佐和女:「私では、代わりにはなれませんか?」
一同:…………。
如月:こ、この人、薄々気づいてるんでは?
京一:しかも、まさかこの人まで……。
竜深:いんせすとたぶーな……。
GM:いや、彼女はそこまで激しくはないんですが(汗)。
京一:どっちにしろその考え方は不健康だよな、ものすごく。
如月:とにかく佐和女さん。あなたが濤哉さんの犠牲になることはないし、それじゃ彼のためにもならない。それはわかるでしょう?
GM/佐和女:「……私は……それじゃあ、私は、どうすれば……」
晴華:どうすればいいか、なんてことはあなたが決めるんですよ。でもこんなのは絶対にいけません。とりあえずこの島を出て、東京に戻るべきでは?
竜深:でも、どうするですか? まさか潮生ちゃんと?
如月:いや、それはちょっと(笑)。
京一:あれ絶対佐和女ちゃんの方はアウトオブ眼中だぞ。
GM:実は全くその通りだったりする(笑)。さて、その辺で汐里さんの声がする。「お兄様! 佐和女! 皆さん、どこですか?!」
如月:あ、マズイ。あの死体。
竜深:はい?
如月:彼女が知らないで済むなら、その方がいいだろ。
GM/濤哉:「それはどういうことだ? 私を見逃すとでも?」
如月:わかってるでしょうが、あなたのためではありませんよ。沙織ちゃんや那美さんや、佐和女さん、汐里さん、みんなのためです。とにかく、こんなこと悠長に話し合ってる時間はないんですよ。
京一:脱出しなきゃと焦ってたんだよな(笑)。
晴華:きっとムービーシーンで時間は止まってたんですよ(笑)。
GM/濤哉:「……私は……」
村雨:これ以上ぐずぐず言うようなら、「ちっ、面倒くせェなァ」とか言って、腹殴って強制連行。
一同:おおう(笑)。
竜深:佐和女ちゃんは私が手引っ張って行くです。
GM:佐和女ちゃんは大人しくついてくる。あなたの手を強く握り返しながら。でもって、角のところで汐里さんが……。
如月:汐里さん、説明は後です。とりあえず逃げますよ。
一同:(爆笑)

 
こんなんばっかやなー、汐里さんって(←恐らく一番の貧乏籤)。

GM:では、時間もないことだし、一気にエンディングといこう。
一同:おー。
GM:では岩場のところで、沙織ちゃんがボートとともに待ってます。
如月:沙織ちゃん、まだ逃げてなかったのかい?
GM/沙織:「はい。ミギワが、私には残ってほしいそうなんです」
一同:えっ?!
GM/沙織:「いえ、そんな大したことじゃありませんよ。あともう少し、私に歌ってほしいそうなんです」
晴華:え? それって危険じゃないんですか?
竜深:まさか沙織ちゃん、エラ呼吸が。
GM:んなわけあるかいっ。「真夜中までまだ2時間くらいあるし、ちゃんと波が来る前に逃がしてくれるって言ってますから。ミギワは今までもボートで島との間を行き来させてくれましたから、大丈夫です」
如月:(眉間にシワ)ま、ミギワくんがついてるなら心配はないだろう。でも君はこれ以上那美さんを心配させないように。いいね?
GM/沙織:「はいっ。母さんにちゃんと帰るから心配しないでって言ってください」
晴華:今ふと思ったんですけど。
GM:はい?
晴華:今、濤哉さんが気絶してて本当によかったですね。
一同:(苦笑)
晴華:だいたい、確かにミギワさんは善意の人かもしれませんが、人間と感覚がズレてるあたりが心配なんですよね。
GM:それを言っちゃあ(笑)。
京一:この子もこの子で、のーてんきなんだよなあ。……ところで竜深。
竜深:はい?
京一:おまえも一緒にお祭りに参加する、とかゆーなよ。頼むから。
竜深:ちっ。
京一:…………。
GM:とりあえずボートに乗せてくれ、とっとと(笑)。
 
 さて、だんだん遠ざかっていく島は、月明かりに照らされている。
 そこではいくつもの異形の影が踊り、波が龍の姿となっては、また水飛沫となって散る。それが月明かりできらきら光っている。
 岩場の上ではミギワくんが手を振り、その隣で沙織ちゃんが歌っている。
 そして、波の音に混じって、美しい歌声が響き渡るのだ。


一同:おおー(拍手)。
GM:最後。遠ざかるボートの中で濤哉さんが目を覚ます。彼は舞い踊る半魚人の群れと龍とを見て、「そう言えば、『神』を見るのは初めてだな……」と呟く。そして佐和女ちゃんは黙って隣に寄り添い、まぶしげに島を見ているのでした。そんなところで今回は終了です。お疲れ様でしたっ。
一同:お疲れさまでしたー。