第伍話 招 代(をぎしろ)


如月:で? 説明してもらいたんだがね、潮生くん。
GM/潮生:「え? え? 説明って、何から説明すればいいんだ?」
晴華:あの祭壇みたいなのって、何ですか。
竜深:あの人誰?
如月:沙織ちゃんは何でここに? 君は何でここに沙織ちゃんがいるとわかった?
GM/潮生:「え……いや、だから何から答えたらいいんだ?」(笑)
如月:(コワイ声で)すべてだ。君が僕たちにわかるよう、整理して説明しろ。
GM:そ、そんなこと言われたってっ。
晴華:じゃあ、まず沙織ちゃんがここにいるんですね? どうしてここに? どうしてあなたにそれがわかったんですか?
京一:というか、どうやって来たんだっていう気が。
GM/潮生:「どうやって来たかは本人に訊いてくれよ。何でも、オトモダチが連れて来てくれるんだって言ってたけど……」
如月:オトモダチ?
GM/潮生:「だから俺は知らねーって! 俺と沙織はそもそもここに来るのが目的だったんだ。だから、沙織がこの島に来てるんなら、ここにいるだろうって……」
如月:ここに来るのが目的だったというのは?
GM/潮生:「佐和女のためだよ」
竜深:佐和女さん? あの人? あの人って誰ですか?
GM:誰ですか、と端的に訊かれたばやい、端的に答えると安曇家の末娘。汐里さんの下。潮生ちゃんにとっては従妹。
晴華:では次の質問ですが、何故彼女はこんなところにいるのですか?
GM/潮生:「そこらへんが俺にはよくわからないんだけど、何か儀式のためなんだって」
如月:わかる範囲でいいから。
GM:えーと、如月さんや晴華ちゃんならご存知だろうと思うのですが、阿知女技というのがあるのですよ。歌ですとか、踊りとかで神様をお慰めするという……。
竜深:なるほど。それで彼女は神様のイケニエに!
京一:いわゆる人柱ってやつだな。
GM:(ややビビりぎみ)い、いや……まだそこまでは言ってないんだけど……。
竜深:じゃあなんなのですか?
GM:だからぁ、歌で神様をお慰めするんだってば。
竜深:それだけ?
GM:何を期待しておるのですか。あのね、昔むかーし、安曇家の祖先にあたる人に、奈美さんという人がいたのですよ。その人は貧しい漁師の娘だったのですが、たいそう歌が上手で、いつも浜辺で歌っていたんだそうです。すると、その歌声を聴いて大変お喜びになった安曇磯良という神様が、奈美さんにたくさんの財宝を与えてくださって、それが安曇家の始まりであるとか、まあ、そういう話が伝わっているわけなんだね。
如月:まあ、よくあるといえばよくある話だな。
GM:で、それから安曇磯良神の巫女を代々安曇家の女の子がやってるのですよ。これは長女とは限らなくて、前の巫女さんが巫女さんの資格を失うと、次の巫女さんが選ばれるわけですね。
晴華:資格を失う、というのは……。
GM:いやぁ、それもよくあるヤツで。つまり未婚の人でなきゃダメ。
竜深:いやん。
GM:何が「いやん」かっ。あとは歌えなくなってもダメ。他には特に制限ないんじゃないかなあ、とは潮生くんの談。ただ巫女さんが選ばれるという理由はちょっと変わっていて、ほら、若旦那が前に見た横穴。生まれた子どもに名前つけてくれるってやつ。
如月:ああ。
GM:あそこで初代の巫女さんである奈美さんと同じ名前か、あるいは海の女神さまにちなんだ名前をつけていただいた女の子が長じて巫女さんになるんだそーな。
竜深:じゃあその人たちって皆歌が上手なんですか?
GM:そうらしいよ。
如月:……ん? そうすると那美さんて?
GM:(わざとらしく)ところで佐和女さんなんだけど、彼女の名前は哭沢女尊(なきさわめのみこと)って神様からとられているそうです。で、ここで「オカルト知識」を持っている人、チェック。
晴華:(ころころ)成功しました。威力は17です。
GM:哭沢女尊っていうのは確かに水の女神さまだけど、海の神様ってのとは違うんじゃないだろうか。
晴華:違うんですか?
GM:一般には井戸とか川とか、そーゆーのの神様です。
晴華:……えーと、つまり、それは、どういう……。
GM:ふっふ。考えておいてください。
晴華:……それより、なんで彼女がここに閉じ込められているのか、ということのが気になるんですが。
GM:まず磯良神をお慰めする儀式っつーか祭りが、だいたい3年に1回くらい。ところが、巫女さんが佐和女さんに変わってから、それが失敗し続けているんだそうな。おかげで安曇家の家運はすっかり傾いちゃって、なかなかヤバイ感じ。
如月:座敷わらしいなくなっちゃいました状態?
GM:実はそれに近い。潮生ちゃん曰く、今度こそ祭りを成功させるためだとか何とか言って、
晴華:こんなとこに閉じ込めてるっていうんですか?
GM:そう。それももう1ヶ月になるかな、と。しかも見ればおわかりの通り、彼女は薬漬けにされてるらしい。
京一:あ、やっぱり?
晴華:失敗してるって、具体的に何をどう失敗してるんですか?
GM:その辺のところは、所詮部外者である沙織ちゃんや潮生くんにはわかりません。ただ彼らにしてみれば、こんなのはヒドイよー!ってことで、佐和女ちゃんをこっそり連れて逃げるつもりだったのだ。ちなみに、潮生ちゃんが蔵から骨董品を持ち出してたのは、その軍資金のためでね。何でも東京に逃げるらしいよ。
如月:待て。人の多い都会に身を隠すというのはわかるが、何故近場の東京へ逃げる。
GM:潮生ちゃん曰く、「都会っつったら東京だろ!」(笑)
如月:…………。
晴華:スクエアにもほどがありますね。
京一:こいつはおいといて、後は沙織ちゃんに話を聞いてみよう。
GM:ですね。では、さらに奥の方から「潮生ちゃん、こっちこっち!」という声が。
竜深:あれ? 沙織ちゃんですか?
GM:そうです。岩陰からひょこっと顔を出したのは、確かに沙織ちゃんです。「あ、あれ? みなさんどうしたんですか?」(一同苦笑)
京一:いや、どーしたもこーしたも。
如月:君がいなくなったから探しに来たんだ。
GM/沙織:「あっ、すみませんっ。ひょっとして、母さん心配してました?」
竜深:卒倒してた(一同笑)。
GM/沙織:「あ……そ、そうですか……」
如月:君は何でここにいるんだ? それとどうやってここに?
GM/沙織:「あ、それは……」と彼女は少し困っている。
竜深:亀さん、も少し優しく訊かなきゃダメです。
如月:失敬な。僕は極めて紳士的に訊いているじゃないか。
GM:そう思うなら魅力チェックで。
如月:(ころころ)…………。
晴華:99とかいってますけど。
一同:(爆笑)
GM:このお兄ちゃん恐い〜。
竜深:亀さんなのに恐い〜(笑)。
如月:…………。
GM:で、成功した人は?
竜深:あ、竜深は成功です。それと、さめさんも成功です。
一同:おおっ?!
竜深:しかも03で成功です。
一同:おおー。
晴華:何故村雨が。
京一:あ、でも村雨って実は子供の扱いうまそうだよね。
如月:うさんくさいけどな。
村雨:99振った奴に言われたぁないね。
如月:…………。
竜深:あ、わかりました。ご紹介します。(村雨を差し)さめさんです。(如月を差し)かめさんです。
一同:…………。
晴華:(忍耐強く)で? だから?
竜深:面白くありませんか、沙織ちゃん。
GM/沙織:「は、はあ……」と言いつつ、彼女はやっぱり如月を怖がっているようだ。
如月:僕は竜深さんが「かめさん」と言ったとたんに彼女ににっこり微笑みかけているから。
GM:でも目は笑っていないと。
京一:それで怖がってるんじゃないの?
如月:返す返すも失敬な。だいたい、恐いというならもっと恐いのがいるだろう。
壬生:……それは誰のことですか如月さん。
GM:ま、まあ話を進めようか。
竜深:でもかめさん、浮気者です。
一同:はぁ?!
晴華:何をまた唐突に。
竜深:だってきょーちゃん盗ろうとするんですもの。
如月:だから誤解だっちゅーにっ!!
GM:しかもそれは「浮気者」とは違うんじゃないか?
晴華:この場合「浮気者」は蓬莱寺さんですよね。
京一:…………。
GM:つまり、あえて言うなら「簒奪者」?
一同:(爆笑)
如月:……君たち……僕に喧嘩を売るとはいい度胸だな……(←コワイ)。
京一:いやそれは壬生。
如月:(咳払い)悪いが、僕にそんな趣味はない。そんな非生産的な。
GM:「子供も生まれませんしね」と天から御門の声が。
一同:来るな!
竜深:ああ、御門さまの降臨が近い……。
晴華:(凍りつきそうな声で)来なくていいです。

「そうですか? 結構期待なさっている方も多いと思うのですが」(御門さま談)
……それはともかくとして、話を進めよう。

GM:では、誰がしたんだか知らねーけど沙織ちゃんを説得し(笑)、案内されてやってきたのは、洞窟のさらに奥。ぱあっと光が差し込んできます。眩しいです。目の前に広がっていたのは、青い空とうねりを繰り返す波。この洞窟は海に面した崖の途中に開いていたのだ。
如月:……『八○立つ』……。
GM:……って、元ネタはバレバレでしょうがっ!
如月:それはおいといて、これ……人が登って来られるんですか?
GM:登ってくること自体はそれほど困難ではないと思われる。泳ぎ着く前に岩にぶつけられる可能性が高いので、そっちのが危ない。
如月:で? 沙織ちゃんはまさかここから?
GM:と、君たちがそうやって下を見ていると、波間にちゃぽーん、ちゃぽーんと何かが浮いているのに気づくのだ。
京一:……もしかして……。
GM:そうですねえ。君が出会った半魚人さんですねえ。
竜深:やっぱり沙織ちゃん、お友達だったですか。
GM:ただ、京一の足を掴んだヤツとは違って、この半魚人くんは耳に大きな銀の耳飾りをしているのですよ。えーと、晴華ちゃんは「オカルト知識」でチェック。若旦那も平目で知力チェックしていい。まあ想像つくと思うんですが(笑)。
晴華:成功。
GM:あ、もう威力やんなくていいです。あれはいわゆるオリハルコン(笑)。
一同:おおー。
GM:「あれを売れば大金持ちですよ晴華」と天の御門の声が。
晴華:だから来なくていいです。
如月:(ぼんやりと)あれって空に浮くんですよねー。
京一:耳だけ引っ張られて持ち上がりそう……。
GM:とりあえず天の御門の声はおいといて。
晴華:それは最初から真に受けてません。
GM:(晴華ちゃん冷たい……)す、すると彼はぺったらぺったらと上まで登ってきました。
京一:意外と敏捷なんですねえ。
竜深:それともやっぱり足がねばねば?
GM:それはどうでもいいんだけどさ。えーと……どうやってしゃべろう。
一同:はぁ?
GM:(妙な身振り)こ……こ、こに……ちわ。
如月:……ひょ、ひょっとして、発声器官が人と違う?
GM:うん、ちょっとね(笑)。
如月:よくわからんが、挨拶されているようなのでこちらも頭を下げておこう。
GM:潮生くんはこのへんでびっくらこけてます。すると沙織ちゃんが「潮生ちゃん、大丈夫よ。私のお友達なの」
一同:お、オトモダチ(笑)。
GM/沙織:「みなさん、結構平然としてるんですねえ」
如月:うーん、そりゃま、これくらいなら見慣れてるし。
京一:水属性のお仲間だし。
如月:黙れ蓬莱寺。
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)あ……あ、す……の、……る」
一同:る?
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)……よる」
竜深:(妙な身振り)ああ、明日の夜?
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)な、な、み……くる。この、しま」
竜深:(妙な身振り)この島に大波が来る。
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)わ、わた……し、たち、」
如月:あなたたちが波を起こす?
GM/謎の半魚人:(違くてっ、のポーズ←どんなんや)
竜深:そうじゃなくて?
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)わた、し……たち、まつ……り、する。この、しまの、かみ……さま、」
如月:磯良さま?
GM/謎の半魚人:(首を振る)
如月:え? 違う?
晴華:えーと、じゃあ、この島の神様がどうしたんですって?
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)まつり、して、いい……か、きいた」
如月:で?
GM/謎の半魚人:(指でおっけー!のマーク)
一同:…………?
竜深:(妙な身振りで踊りながら)つまり、この島の神様に、ここでお祭りをやってもいいですかって訊いたら、いいよって言われたんですね。
GM/謎の半魚人:(ぱちぱち)
京一:何でわかるんだろう。
如月:レベルが一緒だからじゃないのか。
晴華:あのー、それより竜深さんが身振り手振りで話す必要はどこに?
竜深:(聞いていない)ところで、そのお祭りすると、大波が来て島が沈んじゃうってことなんですか?
GM/謎の半魚人:「(妙な身振り)しず……ない。でも、おま、え……たち、みず……なか、いき、ない。あぶ……ない」
竜深:(やはり妙な身振り)だからその前に逃げてくれってことなんですね。
GM/謎の半魚人:「(ピースサイン)ゆーあんだすたんど?」
晴華:何故いきなり英語。
如月:(眉間に皺)つまり、高波が来てしまうから、ここに人間がいると生命の危機は免れない。その前に早急に避難しろということなんだな。
竜深:亀さん、駄目です。その日本語、難しすぎます。
GM/沙織:「あ、大丈夫ですよ。ミギワは言葉を聞き取る方は上手なんです」
京一:ミギワさんつーの、この人?
GM/ミギワ:(こくこく)
如月:えーと、じゃあミギワさん。僕はもちろんあなたの言うことは信じるんだが、この島の人たちにそれを信じさせるのは難しいな。何か方法はないだろうか。
GM/ミギワ:(首をかしげる)
晴華:ああ、えーと、そのお祭りはいつやるんです?
GM/ミギワ:「(背後を指差し)おひ……ま、しずん、だら。それ、で、つき……みなみ、な、たら、なみ、くる」
如月:……お日さまが沈んだら祭りを始めて? 月が?
GM/ミギワ:「みな、み」
京一:ひょっとして、真夜中? そうしたら大波が来る?
晴華:それって、今日の夜ですか?!
如月:……タイムリミットまで、あと何時間だ?
GM:今が夕方だから、あと7時間ってことにしておこうか。
晴華:(乾いた笑い)つまり、私たちも危ないですね。
如月:この島っていったい何人ぐらいいるんだ?
GM:使用人とか? うーん、潮生ちゃんも沙織ちゃんも正確には知らないけど、十数人というとこじゃないのかね。
晴華:ちょっと待ってください。あなたたちは何でそのお祭りをやらなきゃならないんですか? 中止はできないんですか?
GM:それについてはミギワくんは首をかしげるばかり。彼らにしてみれば、「何故」と言われても困るのではないだろうか。
晴華:えーと、じゃあどうしてその大波は来るんですか?
GM/ミギワ:「わた、した……ち、うたって、おど……て、なみ、くる」
竜深:(さらに妙な身振り)歌って、踊って、海混ぜちゃうから津波が来る。
晴華:(ため息)ああ、それですんじゃうんですね。
GM:待てい。勝手に決めんなっ。
竜深:違うの?
GM:ううっ、ここでそれを言わすなよキミ。とにかく違うんだ。後のお楽しみだけど。
竜深:わかったです。とにかくみんなでお祭りするんですね? 仲間って何人いるんですか?
晴華:1、2、たくさん、とか言いそう……。
GM:(苦笑)延々指折り数えてますが。
如月:ああ、それはいい。つまりいっぱいいるんだね。
竜深:ところで、何で足つかんだの?
一同:は?
竜深:きょーちゃんの足。
京一:それは本人じゃないからわからんのでは。
竜深:(首をかしげ)いじめる?
GM:いじめないよぉ。
一同:……………………。
如月:わ、わからん。
竜深:だから、「あなたたちは人間に危害加えますか」って訊いて、ミギワくんが「そんなことしません」って言ったの。
一同:わかるかっ!
竜深:でも、人間に危害加えないなら、どうしてきょーちゃんの足つかんだろうね。
晴華:いや、あれは足掴んで沈めようとかじゃなくて、単に掴んでみただけじゃないんですか?
如月:沙織ちゃんじゃない人間がいる、とか。
GM:ちょっと待った。えーと、彼女を指して「沙織ちゃん」と言いますか?
如月:え?
竜深:(沙織を指差し)沙織ちゃん。って言ってますけど、それが何か?
GM:「沙織」と言うと首をかしげる。
一同:は?
如月:沙織さん、だろう? 彼女は。
GM/ミギワ:「なみ、さん」
一同:は?
竜深:……ああ、なるほどです。
晴華:竜深さん、わかったんですか?
竜深:お兄さんだ。
一同:…………は?
GM:わ、わからん。
如月:君の言っていることの方が半魚人くんよりわからない。
竜深:あれ? 違いますか?
京一:違うという以前に、何を言いたいかがわからない(笑)。
GM:ひょっとして、那美さんが倒れた時の「お兄様」のこと? 那美さんのお兄さんは正真正銘濤哉さんだよ。
竜深:あれ? あれ?
如月:竜深さんの発言はひとまずおこう。それは、ミギワさんが沙織ちゃんを一番最初の巫女さんと勘違いしてるってこと?
GM:うん、まあね。
如月:2人は似てるんですか?
GM:いや、そういうわけじゃない。
晴華:ひょっとして、時間の感覚がおかしいんですか?
GM:ぴんぽーん。彼にとって、巫女さんは全て「奈美さん」で、代替わりしてるという意識がないみたい。
如月:女の子をみんな巫女さんだと思ってるわけじゃないよね?
GM:さすがにそれはありません。たとえば汐里さんを見ても、彼は「なみさん」とは言わないと思う。
如月:でもそれだと、沙織ちゃんが当代の巫女さんだってことになっちゃうじゃないか。
GM:(にやにや)そうねえ。
竜深:じゃあ佐和女さんは?
晴華:さっき、佐和女さんの名前が海の神様じゃないとか言われましたよね。
如月:……それは、何? 間違えられたってこと?
竜深:「沙織」の名前は誰がつけたの?
GM:ん? 那美さんがお嫁に行った先の娘さんですからねえ。そこんちのお父さんがつけたんじゃないの? 藤沢和祐さんって人だけど、もう亡くなってるから気にしなくておっけーです。
竜深:じゃあ彼女は神様に名前つけてもらったわけじゃない?
GM:(にやにや)多分ねえ。
晴華:彼に佐和女さんを見せて識別させたらどうです?
如月:うーん………。
GM:とか悩んでいると、ミギワくんが、「だれか、きた」と言って、崖の方に歩いて行ってしまいます。君たちの耳にも足音が聞こえてくる。
晴華:えっ? 誰が、どこから?
GM:入り口の方から。君たちが来たんじゃない方よ。もちろん。
如月:まずい、隠れろ!
GM:ちなみにミギワくんは海の中にちゃぽーんと飛び込んだ。
竜深:え、えーっと。
如月:海に飛び込んでも仕方ないだろ。横穴の方へ行こう。沙織さん、潮生くん、君たちもだぞ。
GM:波の音もうるさいし、判定はしないでOKということにしよう。しばらくして、角を曲がってやってきたのは汐里さんだ。手にお盆を持っている。で、それを佐和女さんに食べさせると、佐和女さんは機械的にぽそぽそ食べている。
京一:うっわー……。
晴華:やばやばですね。
GM:(ふと)ちなみに、じゃあトイレとかどうしてるんだとか、突っ込まないでね。
一同:(苦笑)
如月:それは美少女にはトイレは必要ないという例のお約束でおっけーなんじゃないですか? 問題は汐里さんですけど。食事が済むと帰って行くんですか?
GM:帰って行きますね。
一同:(思わずため息)さて、どうしよう。
GM:どうしようね。

 
ちなみに現実の時刻は午前3時近く。
 そろそろGMのアタマも、プレイヤーのアタマも限界に近い。


GM:えーとね、何もないなら強制的に状況の方を変えてしまいますけど、おっけーですか?
如月:(考えて)えーと、ちょっと待って。沙織ちゃんに彼と知り合った状況と言うのを教えてもらいたいんですが。
GM/沙織:「えーと、私が浜辺で歌を歌ってたら、ミギワが泳いで来たんです。最初はびっくりしたけど、すぐにミギワが優しい人だってわかったから。そんなにいっつも会えるわけじゃないけど、いつも綺麗な貝殻をくれるんですよ」
竜深:そー言えば、私、沙織ちゃんが歌っているの聴いてたんでした。
一同:何を今さらっ(笑)。
竜深:ふらふら〜と引き寄せられるような声でした。セイレーンみたいでした。
京一:セイレーンはやめなさい。
如月:……うーん。決まりのような気もする。
竜深:セイレーン?
如月:じゃなくて。
晴華:佐和女さんじゃなくて、沙織ちゃんが巫女さんなんじゃないかってことですよね。
如月:で、どうなんです?
GM:(意地悪く)それを誰に訊くの? 佐和女さんは今満足に口も聞けないし、潮生くんだって沙織ちゃん本人だって、巫女さんが何なのかってことは知らないからね。
如月:この儀式については、磯良うんぬんよりも、巫女さんが歌を歌って、半魚人たちを引き寄せるのが目的のような気がする。
京一:それで贈り物もらってたんじゃないか? あの支離滅裂な蔵の財宝とか。
GM:ふふふ。それが正解だ。
竜深:それがもらえなくなったから没落したですか。
如月:じゃあ、佐和女さんが巫女さんになった途端に半魚人が来なくなったのは、やっぱり本来の巫女さんじゃないから?
GM:(うーん、そういうわけでもないんだけど)か、どうかは私の口から教えない。知ってそうな人に訊いてくれ。
竜深:ミギワくん行っちゃったです。
GM:(がくう)い、いや、ミギワもそうなんだけどさ。
如月:ことの真相について知ってそうなのは、濤哉さんか、汐里さんか、あるいは潮生くんのお父さんだな。
京一:俺らあの人たちとは何も話してないもんな。
GM:実はそうなんだ。下田組はともかく、若旦那たちもあまり会話してないんだよね。
如月:こそこそしてたからな。特に約1名、殺しに走ろうとした奴もいたし。
壬生:…………(←しつこいようだが京一プレイヤー)。
GM:それはともかく、これからどうする? ここから出る?
竜深:そりゃ出るですよ。
GM:どうやって?
竜深:汐里さんルートが楽そうですね。
如月:こらこらっ。そんなことしたら大騒ぎだろうが。
竜深:でも他にどうするですか? あの竪穴、ロープなしで登るですか?
如月:……潮生くん、ところで帰り道はどうするつもりだったんだ?
GM/潮生:「え? えーと……」
如月:……わかった、もういい。
竜深:マジメな話、沙織ちゃんルートから帰りますか?
晴華:それって……つまり、泳いで帰れと。下田まで。
一同:…………(眉間にシワ)。
GM:ま、まあやってやれないとは言わないが、こっちの3人はどうする? 特に薬漬け状態の人。
一同:うーん……。
GM:……みんな、そろそろ思考能力がないだろ?
一同:うん。

 
真夜中のTRPGってツライよな。
 しかもこの時はホテルの部屋で、声を殺してやってたからなおさらね。


GM:じゃあ少々強引に話を進めさせていただこう。ちなみに、そろそろ日没ですな。
一同:あ。
GM:表の方から、人間の悲鳴と怒号、そして銃声が聞こえてくる。
京一:銃声?!
如月:あ! そう言えばいたな、黒服の連中が。
GM:ちなみによくわからない、人間じゃないような声もする。
如月:……それは、つまり。
GM:(甲高く)ギャアギャアギャア!ってな叫び声と「何だこいつらは!」って怒声と、それから銃声。さあどうする。
如月:よし、どさくさにまぎれて脱出だ。
一同:(笑)
如月:何故笑う。……いや、もちろん助ける気だぞ、僕は。
竜深:誰をです?
如月:誰を? と言われても。
GM:黒服の皆さんは、壬生ちのお仕事対象だし。
壬生:お仕事対象の、手下、だけどね。
竜深:そうですか。紅葉はどさくさにまぎれて殺りに行くですか。
一同:(笑)
如月:それはもぉ止めない。止めないけど。そうだな、とにかく沙織さんと佐和女さんを助けなきゃな。
GM:潮生ちゃんは?(笑)
如月:そこまで甘ったれないでもらおう。彼には佐和女さんを背負って来てもらう。いいね、潮生くん。
GM/潮生:「お、おう。まかせとけ!」
京一:とゆーか、潮生には佐和女さんと沙織ちゃんを連れて、洞窟の入り口あたりで待機してもらった方がいいと思う。
GM:ところで、そうやってしゃべりながら走っていくと、入り口のところで汐里さんと鉢合わせるんですが。「如月さま? どうしてここに? これは一体何の騒ぎなんですか?!」
如月:今はそれどころじゃない。無視だ。
一同:(笑)
如月:だから僕は大真面目だというに。何で笑うんだ。
京一:いやー、如月もだんだんなりふり構わなくなってきたな、と(笑)。
如月:ほう? じゃあ君には汐里さんにこの事態を説明する気力と時間があるか?
京一:…………。
晴華:(おっとりと)ところで、外ってどうなってるんですか?
GM:外の岩場ね。黒服の男たちがチャカを片手に右往左往。それに混じって半魚人のご一行様が、やっぱり右往左往しながら歌って踊っている。
一同:踊っている?!(笑)
GM:君たちには踊っているように見えるということで、実際はどーか知りませんがね。で、混乱した人間の皆さんがマジで発砲してる。ほとんどはあさってだけど、当たってる弾もある。そりゃもう大騒ぎさ。
村雨:このまま隠れてようか。
GM:そうしたいならそうしてもいいけど、大変よ。だんだん波が高くなっていって、そこから山のよーにでかいものが姿を現す。水でできた……巨大な……うーん、なんだろうなあ。とにかくでっかいものが。
一同:な、何っ?!
GM:何、と言われましてもねえ。
如月:ま、まさか磯良さん。
GM:そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ここは便宜上磯良さんにしときますか。えーと、磯良ってメガテンだとでっかいエイみたいなんだけど、鰐みたいなって説もあるんだよね。
晴華:で、具体的には?
GM:龍みたいな、にしとこうか。絵的なモンダイで。
如月:そんないい加減な……。
GM:……巨大な電気ねずみの方がよかった?
一同:何でじゃっ!!(爆笑&怒号)
GM:というわけで龍にしておこうね(笑)。
竜深:どれくらいデカイんですか?
GM:家の2階くらい。
晴華:龍って日本系? 西洋系?
GM:そりゃ日本系だろう。
竜深:(ぼそっと)……なんか今、劉ちゃんが日本系なのかと思ってしまった。
一同:(笑)
GM:「ワイ実は大阪生まれなんやー」って。
京一:実は「中国人」の方がエセだった。って、え?(笑)
如月:え?(笑)
晴華:はいはい、逃避してないで目の前の状況に集中しましょうね。
竜深:晴華ちゃん、アレと戦うですかぁ?(と、踊っている)
晴華:必要とあらば……って竜深さん、何故踊っているのですか。
竜深:ねばねばさんたち(←半魚人のことらしい)、楽しそうです。一緒に踊ってます。
一同:やめんかいっ!
GM:銃弾とか飛びかってますんで、危ないですよー(笑)。
如月:きっと弾が飛んでるあたりにはいかないで、その辺で真似して踊ってるんだよ。
GM:そゆことしてると、頭のあたりをちゅいーん!とかいって掠めるよ。
晴華:ハゲシイ突っ込みですね。
京一:(遠い目)でも竜深って何事もなかったように踊ってるんだろーなー。
竜深:ひらひら〜(←踊っている)。
GM:それはともかく、ふと見上げると、岩場の上の方でミギワくんがやっぱり踊ってる、というか妙な仕草をしている。
如月:あれが彼のいう祭りなんだろうか。
GM:とか言ってると、銃声がして、ミギワくんの肩から緑色の血が噴き出す。
竜深:あっ!
GM:彼はもんどりうって岩場から転がり落ちる。その側に仲間たちが心配そうに駆け寄るが、しばらく起き上がれそうにない。
晴華:……嫌な予感がするんですけど。
GM:そうねえ。ありがちな展開で悪いんですが、そうすると龍の姿がびくりと揺らいで。みるみるうちに形が変わっていって……。
晴華:ああ、やっぱり。
GM:……巨大なピカチ○ウに。
一同:(爆笑)
晴華:(冷たく)何でそうなるんですか。
GM:うそうそ。ピカ○ュウにはならない。形はあんま変わらないんです。ヤバイ状況には違いないけど。
如月:みんな、マズイぞ。制御を失って暴走したみたいだ。
竜深:暴走して、巨大亀さんです。
GM:アレか? 火を噴きながらぐるぐる回る亀になったと?
一同:(大爆笑)
如月:…………。
GM:ご、ごめん若旦那。私今日はテンションが変みたい(←今日「は」?)。
如月:……人が真面目に話を進めようとしているというのに……(怒)。

 
さて、頑張る若旦那の努力を嘲うかのように大ピンチだ!
 暴走した水の劉、もとい龍を相手に、次回こそ決戦か?
 若旦那に明日はあるのか?
 というわけで、続く。