「ここは俺の部屋だ。出てけ」
「えー,いいじゃん。静かに飲んでるぜ?」
「うるさい。飲むなとは言わんから,他行ってやれ」
だいたい,この支部には紫音が個人で使えるスペースもちゃんとあるんだ(ほとんど支部にいないのに,何で?と思うが,こいつも一応役員だからなぁ)。何で俺の部屋に侵入してくる必要がある。
「だってあそこ,コンロがないんだもんなぁ……」
とか言いながら,紫音はわりと素直にソファから立ち上がった。酒瓶とグラスを持って彼が出ていってしまうと,俺はウィスキーを舐めながらため息をついた。
ふう。これでやっと眠れる。
そう思ってソファに勢いよく腰を下ろしたら,
ぱぷ。
妙な音がした。
「…………」
少し腰を上げ,自分が座っていたあたりを見下ろした。何の変哲もない,イエローオーカーのクッションだ。もう一度腰を下ろしてみる。
ぱぷー。
「…………」
俺は立ち上がり,しゃがんでクッションを持ち上げてみた。
葉書大の白いカードが木枠の上に置いてあった。自然に挟まるとは思えないから,誰かがわざと置いたんだろう。引っ張り出してみると,中央にぷくぷくした立体シールが貼ってあった。蛍光ピンクのずんぐりしたワニである。
試しに指で押してみると,
ぱぷぱぷ。
音がした。
「……いったい何がやりたかったんだ,あいつは……」
謎のひとひねり。
姫宮咲耶榎というのは,なんつーか「女はわからん」を体現しているヤツだと思う。(泪さんはある意味わかりやすい人だし,キルスは……わからんと言えばわからんが,「女はわからない」という微妙なニュアンスにあれほど不向きな女も珍しい)
置手紙一本残して去っていった,謎な女。その彼女のメッセージは,
ダナ。ツヲワンノヨスン。テモア/サイサイミノミイウ。カチイノズ/イデガシヨタギチシシラバマヲカ/☆クサン。ナガバツリデサスシリ
「…………」
いや,あの,咲耶榎サンや。
こーゆー小児病的な「ひとひねり」はどうかと思うんだけど俺。
⇒ 給湯室へ行ってみよう。
⇒ 資料室へ行ってみよう。
⇒ 医務室へ行ってみよう。
⇒ もう少し部屋を探してみよう。
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