*** SCENE 13 ***
 



「ここは俺の部屋だ。出てけ」

「えー,いいじゃん。静かに飲んでるぜ?」
「うるさい。飲むなとは言わんから,他行ってやれ」
 だいたい,この支部には紫音が個人で使えるスペースもちゃんとあるんだ(ほとんど支部にいないのに,何で?と思うが,こいつも一応役員だからなぁ)。何で俺の部屋に侵入してくる必要がある。
「だってあそこ,コンロがないんだもんなぁ……」
 とか言いながら,紫音はわりと素直にソファから立ち上がった。酒瓶とグラスを持って彼が出ていってしまうと,俺はウィスキーを舐めながらため息をついた。
 ふう。これでやっと眠れる。
 そう思ってソファに勢いよく腰を下ろしたら,
 ぱぷ。
 妙な音がした。
「…………」
 少し腰を上げ,自分が座っていたあたりを見下ろした。何の変哲もない,イエローオーカーのクッションだ。もう一度腰を下ろしてみる。
 ぱぷー。
「…………」
 俺は立ち上がり,しゃがんでクッションを持ち上げてみた。
 葉書大の白いカードが木枠の上に置いてあった。自然に挟まるとは思えないから,誰かがわざと置いたんだろう。引っ張り出してみると,中央にぷくぷくした立体シールが貼ってあった。蛍光ピンクのずんぐりしたワニである。
 試しに指で押してみると,
 ぱぷぱぷ。
 音がした。
「……いったい何がやりたかったんだ,あいつは……」
 謎のひとひねり。
 姫宮咲耶榎というのは,なんつーか「女はわからん」を体現しているヤツだと思う。(泪さんはある意味わかりやすい人だし,キルスは……わからんと言えばわからんが,「女はわからない」という微妙なニュアンスにあれほど不向きな女も珍しい)
 置手紙一本残して去っていった,謎な女。その彼女のメッセージは,

 ダナ。ツヲワンノヨスン。テモアサイサイミノミイウ。カチイノズイデガシヨタギチシシラバマヲカ☆クサン。ナガバツリデサスシリ

「…………」
 いや,あの,咲耶榎サンや。
 こーゆー小児病的な「ひとひねり」はどうかと思うんだけど俺。


 ⇒ 給湯室へ行ってみよう。
 ⇒ 資料室へ行ってみよう。
 ⇒ 医務室へ行ってみよう。
 ⇒ もう少し部屋を探してみよう。