Stage 13


GM:では,そんなとこでかおるちゃんのところに戻ってきたということで。
かおる:え,えっと,もう話は済んだのか?
ティーグル:ああ。待たせてすまない。
かおる:いや,それはいいんだけど……あのさティーグル。
ティーグル:なんだ?
かおる:まだちょっと飲み込めてないとこがあるんだけど,訊いてもいいか? おまえとジョエルのひいじいさんって……。
ティーグル:エドワードか? ……先に俺と,ローゼリットと,メルクリオという男が協力して「門」を開けようとした。ジョエルの曾祖父はエドワードといって,メルクリオの弟子だった。あいつが王国軍を手引きしたおかげで,俺やロゼは捕らえられた。ロゼは王宮に幽閉され,俺は呪いをかけられて……あとはおまえの知っている通りだ。
かおる:そ,そうか。大変だったんだな。で,でもさ,ジョエルはさ。
ティーグル:ジョエルが俺のことで気に病む必要はないだろう。あいつには何の責任もない。
かおる:うん,そうなんだけど。ジョエルはひいじいさんのこと,すっごく気にしてるから……。
ティーグル:ふむ。エドワードを恨んでいない……というと嘘になるが。あいつもあいつなりに悩んだんだろうとは思っている。メルクリオというのは,とかく言葉の足りない男だった。
GM:そのへんは虎さんに言われたくありませんが(笑)。言葉が足りないというより,わざと誤解されるような回りくどい言い方する人なんだよね。
かおる:好きね,そういうキャラ。ちーちゃんとか。
GM:どっちかっつーと嫌いだよ(笑)。好きなんじゃなくて,やりやすいからっつーかぶっちゃけ演技力の問題だ。あまりつっこまんでくれ。
ティーグル:とにかく,だ。あれはもう過ぎたことだ。ロゼもいずれは解放されるだろう。おまえのおかげだ。
かおる:え? えっと,私,何かしたか?
ティーグル:…………。ではくすりと笑いつつ黙っていよう。
かおる:え,えっと? だからどういう意味?
ティーグル:……ああ。かおる,これを持っておけ。
GM:と言って,十字架を渡すわけ?
ティーグル:質問はさりげなーく無視ですね(笑)。
ジョエル:で,渡すってどっちを?
一同:(忍び笑い)
ティーグル:……いや,それは……男物の方を。
一同:ほほぉ〜?(笑)
ティーグル:……かおる。これを持っていてくれ。おまえの身を守ってくれるだろう。
かおる:え? で,でもこれ,おまえのだろ? というか……ローゼリットとの,想い出の品,なんだろ……?
ティーグル:いや,いいんだ。おまえが持っていてくれ。
ジョエル:(その横で)そりゃ,自分はロゼちゃんの持ってますからね。
ジーノ:(横で)ね。
ティーグル:で! 十字架を半ば無理やりかおるの首にかけます。
かおる:え,えっと,いや,そりゃさぁ? 持っていてくれって言われるのは嬉しいんだけどさぁ?
ティーグル:そうか。なら,持っているといい。
かおる:で,でも,ローゼリットって,すごくおまえのこと好きなんだぞ,あれ! それを他の女にあげちゃったりしたら,やっぱり悪くないかっ。
ジョエル:まぁ,良くはない(笑)。
GM:アレのよーだ。「ありがとう。私もいつもカヤを想う」とか。
ジーノ:わーお,そりゃさいてーだっ(笑)。
フレイ:でも,結局ロゼちゃんのはあげてないわけですからね?
ジョエル:結局どーなの,虎さん?
ティーグル:どーなのって……。
一同:(いっせいに)どっち?(笑)
かおる:じーっ(笑)。
ティーグル:(←遠い目になっている)……確かに,俺はロゼが大切だったし,ロゼも俺のことを大切に想ってくれた。
かおる:そ,そっかっ。ロゼってかわいいし,美人だしなっ。
ティーグル:そうか?
かおる:そうだよ。それに,ちょっとキツイけどいいヤツだしなっ。
ティーグル:ふむ。まぁ,「ちょっと」ではない気もするがな。
かおる:でも,いいヤツだよ。……うん。
ティーグル:そうか。しかし,おまえもなかなか悪くはないぞ?
かおる:はい? ……そ,それどういう意味!?
ティーグル:そのままの意味だろう。と,先にたってすたすた歩きます。ちなみに本人,多少動揺していなくもありません(笑)。
かおる:そうなのか。じゃあそろそろみんなのところへ戻ろうかっ,……とか言いながら足を滑らせて転ぶ。
GM:何故だ(笑)。
かおる:私も私なりに動揺しているのですよ。顔赤いし。
ティーグル:一応転ぶ前に腰をさらって受けとめるが。
かおる:あ,そう? じゃあ,「あ,ありがと……」とか言ったあとで,手の位置にハタと気づく。……ど,どこ触ってんだよぉ!?とか。
ティーグル:ええ?(笑)
GM:……いや,いいんだけどさぁ。どんどん演出があざとくなってない?(笑)。
かおる:何とでも言え。私はがんばってローゼリットを越えてやるのだ。何故なら! そこにローゼリットがあるからさ!

 ……なんつーか本末転倒っぽくないか,それ(笑)。

かおる:(突然真顔で)つかGMが虎ロゼ路線に肩入れするからいけないんじゃないですか?
GM:な,なぁんのことですかっ。ぜんぜんわかんないですからっ(笑)。
かおる:この公私混同GMめ。
GM:(あらぬ方を見ながら)それはそうと虎さんの反応は? 「すまんがそういう意図はない」とか言ったりしないの?
ティーグル:弓の人そのまんまならね(笑)。私はくすりと余裕たっぷりに笑いながら,「ああ,すまない」と言います。
かおる:あっ,何笑ってんだよ!? おまえなんか今バカにしなかったか!?
ティーグル:……さぁな?
かおる:がーっ!? なんだよ,なんなんだよーっ!?
GM:(苦笑)はいはい,そろそろいいかな? では,みんなのところへ戻ってきたということで……。
かおる:あ,ちょっと。
GM:まだあるのか!
一同:(笑)
かおる:転んで足くじいたことにしていいかな? さっきファンブル出したしさ。
GM:いいけど,何故だ。
ジーノ:は! お姫様抱っこか!
一同:そこまでする(笑)。
ティーグル:……いいけどね,別に(笑)。
フレイ:あのー。やっぱりこの人,虎さんに狙いを定めたように見えますが……(笑)。
ジーノ:てか,あれだけ尽くした和兄ちゃんの立場はどこだろう(笑)。ねえ?
フレイ:とほほー。わいってかおるから見ると,ホンマ「兄ちゃん」やったってことなんやろうなぁ。
ジョエル:まだ勝負は決まってませんよ。ジーノも控えてるし。
ジーノ:あ,いいの。俺は最初から圏外だから。
一同:(爆笑)
GM:っておい,ジーノ……(笑)。
ジーノ:俺のことはどうでもいいからぁ。お姫様だっこはぁ?(笑)
ティーグル:おまえら……(笑)。
一同:だっこはぁ?(笑)
かおる:では顔を歪めて(細い声で)あいてて……とか。
ティーグル:どうした。足が痛むのか。
かおる:うん……なんかさっきくじいたみたいでさ……はは,ドジだな……。
ティーグル:……じゃあそうか,と短く言ってそのまま抱き上げる。
一同:おおー!(拍手)

 …………。
 冷静になってMD聴いてるとホント馬鹿みたいなんだが(笑)。
 なんつーか,萌えに走ったTRPGプレイヤーの集団なんて,こんなもんだな。
 いや,マジで。

かおる:な,なんだよぉ! 歩けるから下ろせよぉ!
ティーグル:足が痛いんじゃなかったのか。
かおる:痛いけど,歩けないほどじゃないし,てゆーか,これ恥ずかしくないかっ!?
GM:(手を叩いて)はいはい,大変萌えさせていただきましたが。いいかげん先に進んではくれまいか。そんな感じで部屋から出てきたっつーことで。外では相変わらずフレイとジョエルが睨み合いをやってるわけだが。
ジーノ:そこへお姫様だっこして出てくるわけなんだね。わーい(笑)。
フレイ&ジョエル:…………。
かおる:あっ,たっ,ただいま! 何とかうまくいったぞっ。
フレイ:かおる! 足に怪我しとんのか!? 大丈夫か!?
かおる:う,うん,ちょっとくじいて……。
フレイ:ああティーグル,すまんかったな,とか言いつつ腕からかおるを奪おうとしますが……(笑)。
ティーグル:ではさりげなーく身を引いて,「すまないが,治療してやってくれ」と言いつつ床に下ろします。
フレイ:ではちょっとムッとしつつ,待っとれ,今手当してやるさかい……。
ジョエル:あ,俺が治療するよ。魔法使えるし。
フレイ:…………。じゃあわかった。任せるけど。と言いつつ,彼女の側からは離れません。
GM:真面目にヒロイン争奪戦をやってる2人にはGMからポイント。で,ジーノ……(笑)。
ジーノ:うんうん。大変だよねぇ。
GM:……まぁ,いいけどな。ジョエルくん,判定してくれる?
ジョエル:(ころころ)ひいじいさんの手記がありますからね。何とかB評価です。
GM:うむ,ではきれいさっぱりと治りましたな。
かおる:わー,楽になった。ジョエル,おまえ本当にすごいよな。ありがとな。
ジョエル:えっ? えっと,こんなことなんでもないよっ(と,うつむく)。
一同:うぁかぁいい〜。
ジーノ:(ぼそっと)ああ……やっぱりぎゅってしたい……。
GM:それはもういいから(笑)。で,次の部屋に進んでいいんだろうか?(と,ジーノに目配せ)
ジーノ:(こくこく)はぁい。では行って参ります。いこっか,かおるちゃん。
かおる:ん,そうだな。がんばろうな,ジーノ!
ジーノ:うん。
ジョエル:じゃあジーノに言います。ジーノ,俺,色々言ったけどさ。あとはおまえががんばらなきゃいけないんだから。しっかりな。かおるのこと,よろしく頼む。
フレイ:そうやで。おまえ,初めて会うた時,わいらのこと助けようとしてくれたな。おまえホンマに優しいヤツやから。わい,信じてるで。
ジーノ:…………。
フレイ:? ジーノ?
ジーノ:ん……そう。ありがとう。
GM:と,微妙に暗い微笑みを浮かべるジーノくんなのであった。
ジーノ:ですね。
かおる:え? なんで?
GM:(しらじらしく)えー,では,とうとう最後の部屋になりました。2人で部屋に入るわけですが……。
ジーノ:……あのさ,かおるちゃん。ちょっと先行っててくれる?
かおる:え? 何で?
ジーノ:だいじょぶ。すぐ行くから。
かおる:ふーん? いいけど,すぐに来いよ?
ジーノ:(頷いて)じゃあかおるちゃんが中に入ったら,後ろ手にドアを閉めながら,後の人たちに言います。……俺が仕えてるのは,女王陛下だから。
ジョエル:え? 今なんて……。
ジーノ:で,ばん!とドアを閉めます。
GM:……ふむ,なるほどな。
かおる:……ジーノ? 今何か言ったか?
ジーノ:(にっこり)ん? 何が?
かおる:え,だって今……。
GM:あー,で,いいか? 君たちは気づくとどこかの狭い一室にいる。すごいボロ,というか廃屋で,饐えたような臭いがする。ドアや窓は閉めきられているが,ガタがきているので外の光が漏れ入ってきているね。それで室内の様子がぼんやりと見えるわけだが……あちこちに死体が転がっている。
かおる:うわっ,また……!?
GM:ただし,さっきのような白骨死体ではなく,腐乱死体。まわりには蝿が飛びかっている。その肌は奇妙にどす黒く,青黒い斑点がいくつか浮かんでいる。
かおる:う,うわ……何だこれ。病気かなぁ。
ジーノ:…………。
かおる:ジーノ?
ジーノ:ここは,小屋か何かの中ですよね? 他に何かありますか?
GM:死体のほかには特にめぼしいものはない。あー,君はもちろん気づいているけど,これはごくたまに王国で流行る……まぁ,疫病だよね。で,どうする。外に出ますか?
かおる:そうだな。ジーノ,とりあえず外に……。
ジーノ:うん,行ってきていいよ。
かおる:は?
ジーノ:俺,ここで待ってるから。
かおる:えっ? つ,ついて来てくれないのか?
ジーノ:うん,だからドア開けてって,何かあったらすぐに行くよ。大丈夫,守ることは守るから。
かおる:? ま,まぁ別にいいけど……。
ジーノ:(にっこり)うん,じゃあ行ってらっしゃい。
ジョエル:(ぼそっと)さっきからこの人,発言が微妙に黒くないですか?(笑)
フレイ:ねえ。
ティーグル:でも俺たちには手出しできないしな……。
GM:だね。……あー,ではそんなとこで悲鳴が上がる。外から。
かおる:えっ!?
GM:「一体何をするんじゃ! 無体な!」「うるさい,黙れ! そこをどかんか!」……どしゃーん,がしゃーん,きゃーっ!みたいな。
かおる:な,なんだっ!?と言いながら飛び出します。
GM:では外ですが……活気がないというか,ものすごく寂れた町ですね。ボロボロの服をきた痩せた人々が,何をするでもなく道にうずくまっている。道端に筵をかけられた「何か」があって,そこから手足がはみ出たりしてるわけだが。
かおる:……こ,これは一体……。
GM:疫病とかにやられたんじゃないのかね。すでに死体を焼いたり埋めたりしている気力がないようだが……あ,さっきの悲鳴だけどね。町の人たちと明らかに風体の違う騎士たちが闊歩してるわけ。で,老人がそのうちの1人に蹴り倒されたみたいだ。
フレイ/老人:(いきなり)「ぅあああっ!」
GM:と,君の前に倒れこんでくるわけだが?
かおる:だっ,大丈夫ですか!?
GM:ではおじいさんは咳き込みながら君に助け起こされるわけだが,その腕には布に包まれた幼児が抱かれている。……ただし,明らかに腐りかけているが。
フレイ/老人:「たっ,旅のお方……どうか,どうかこの子に薬を……」
かおる:えっ? え,でも……。
フレイ/老人:「た,頼みますじゃ……」
かおる:そっ,そんなこと言ったって私は薬なんか……あ,あの,お医者さんはいないんですか?
GM/老人:「医者? 医者などもうこの町にはおりませんのじゃ。それに,どちらにしろ薬を買う金など……だというのにあいつらは……」
かおる:あいつら?
GM:すると周りの騎士が,「そこ,何をしている! 見かけない顔だな?」と。ちなみに彼らは口元を布のようなもので覆っているので,ちょっと声がくぐもっていたり。
かおる:なっ,何してるって……このおじいさんが大変なんだよ! というかおまえら王国の騎士だろ! この人たちを助けろよ!
GM/騎士:「この町はもう助からん。おまえもここにいるとこいつらの二の舞になるぞ」
かおる:……って,病気か何かなんだろ? 医者はいないのかよ!
GM/騎士:「もう助からんと言ったろう? 金のムダだ」
かおる:なっ……! 金とかの問題じゃないだろぉ!?
GM/騎士:「ほう? では聞くが,どうやって助ける」
かおる:そ,それは……。
GM/騎士:「(鼻で笑って)まぁいい。ここで死にたいというなら好きにするがいいさ」……と,騎士たちは馬に鞭をあてて去って行きます。後にはうめき声だけが響くわけだが……。
フレイ/老人:「(哀れっぽく)この子だけでも,この子だけでも……げほごほげほっ……がくっ」
かおる:あっ,おじいさん! おじいさん! しっかり!
GM:(しかしノリのいいヤツらだ……)へんじはない。ただのしかばねのようだ。
かおる:そ,そんな……一体ここで何があったんだ……。
GM:と,突然隣から声が聞こえる。「これは未だ来らぬ世界の姿」
かおる:え?
GM:いつの間にか,隣に背の高い金髪の男が立っている。……えーと,君はまだ見たことがなかったな。場違いに真っ白な服を着た,気障ったらしい風体の男だ。
かおる:だっ,誰だよ,あんた!?
GM/アルジェント:「私の名はアルジェント。……もっとも,名前などはどうでもいいことだが」
ジョエル:(横からぼそっと)そりゃねえ。だってそれ,偽名でしょ?
GM:あながち偽名ってわけでもないんだが……虎さんと似たようなもんね。確かに本名ではない。
かおる:……? と,ともかくさ! あんた,医者がどこにいるかわからないか!?
GM/アルジェント:「一応,私も医者だが……どちらにしろ無理だな。症状がここまで進んでは,もう手の施しようがない」
かおる:そ,そんなに重い病なのか?
GM/アルジェント:「そうとも。だから,こうなる前に……手遅れになる前に,君には手を打ってほしいものだね」
かおる:えっ? で,でも,一体私何をすればいいんだ?
GM/アルジェント:「……いいかい,もう一度言うよ。これはこの王国の未来の姿だ。つまり,現実にはまだ起こっていない出来事なんだ」
かおる:え? じゃあこの人たちは……?
GM/アルジェント:「もっとも,このまま放っておけば必ずこれが『現実』となるがね。その時,病み,滅びていくのは彼らだけではない。そもそもこの王国は,生まれ出でたその日より歪められ,少しずつ病み衰えている。このままではだめなんだ」
かおる:じゃ,じゃあ私にいったいどうしろって言うんだよ。
GM/アルジェント:「『門』を開けるんだ」
かおる:…………。
GM/アルジェント:「『異世界の少女』による浄化作用にも限界がある。このまま『門』が閉じられたままだと,いつか必ずこの王国は滅びの日を迎える。……それがいつになるかは,私にもわからないが」
かおる:「世界が緩慢に死んでいく」ってヤツか?
GM/アルジェント:「……おお。君にしては理解が早いじゃないか」
かおる:なぁんだとぉ!?(怒)
GM/アルジェント:「いやいや失敬,今のは冗談(←そうか?)。ともかく,君が先ほどまで見ていたのはその『いつか』の光景ってことさ。あのように弱いものから虐げられ,死んでいく。それは,君の世界でも同じだろう?」
かおる:……それは……。
フレイ:(ぼそっと)和兄ちゃんはそうして死んでいったんだよなぁ。
ジーノ:ああ,そうだねえ。
かおる:それは……でも,私は……。
GM/アルジェント:「火村和希のことなら君のせいではない。気に病むのはよしたまえ」
かおる:でも……!
GM/アルジェント:「私はただ君に知っておいて欲しかっただけなんだ。君はこれから選択を迫られることになる。君はすでに,『門』を開ければどうなるかを知った。ならば,閉めたままにしておけばどうなるかも,知っておかねばフェアではないだろう?」
ジーノ:不必要なことだと思うけどね。
かおる:……えっ?
GM:……と,後ろから言うわけね?
ジーノ:はい。いつの間にか後ろに立ってます。で,アルジェントに言います。あんたこそ,フェアじゃないんじゃないか。こんなもの見せて,これじゃ一方の見方を強制してるのと変わらないと思うな。
かおる:じ,ジーノ?
ジーノ:かおるちゃん。……真実は,常にひとつってわけじゃないんだよ。
GM:(にやり)えー,そうしているうちにだんだん周囲の風景が薄れていきます。で,石造りの殺風景な部屋の中に,あなたとジーノとアルジェントが立っている。
かおる:えっ? もうこの部屋の試練って,終わっちゃったのか?
GM:1つだけこれまでと違うところがある。部屋の奥に祭壇のようなものがあって,その上に火の紋章がゆっくりと回転しながら浮かんでいる。
ジーノ:近寄って手をかざす。
GM:うん,すると火の紋章がぱっと弾け,光の粒となってかおるちゃんの体に吸いこまれる。
かおる:え? え? え?
ジーノ:これで試練は全部終わったね,かおるちゃん。
かおる:え? あの,ジーノ,おまえいったい……。
GM:では,アルジェントが低い声で言います。「それで? 君はいったいどうするつもりだ」
ジーノ:そうだね。俺のすることはひとつしかないよ。
GM/アルジェント:「このまま滅びに身を任せるつもりか」
ジーノ:そんなつもりはないよ。ただ,俺が守るべきなのは今の世界。俺が忠誠を誓っているのは女王陛下だ。
かおる:ちょ,ちょっと待てよ! どういうことだよ!
GM/アルジェント:「どうもこうもないさ。彼も女王も特権階級の人間だ。持つものが多ければ,失うことも怖かろう」
ジーノ:それがそんなに悪いかな。俺は,俺が今まで暮らしてきた世界を守りたい。それは,そんなにいけないことかな?
GM/アルジェント:「……ふむ。ま,いけなくはないが,ね」
かおる:だ,だからちょっと待てって! つまり,おまえは騎士で,女王に仕えていて,だから扉を開けさせるわけにはいかないって,そういうことか!?
ジーノ:ちょっと違うけど,その方がわかりやすいかな。俺の使命は,君を殺してでも扉を開けさせないこと。この世界を壊さないことだ。
かおる:こっ,殺してでもって……。
GM/アルジェント:「そうして,この歪んだ王国にしがみつくのか。私のしたことはやはり誤りだった」
ジーノ:君が,この世界を「誤り」って言うの? 君こそ裏切り者のくせに。
GM/アルジェント:「私が裏切り者? 私は私の犯した過ちを正したいだけだが?」
ジーノ:初代女王と,この王国……君の作品に対する裏切りだよ。自分で生み出しておいて,気に入らなくなったから壊すってことでしょ? 困るんだよね,何千年もたってるのに今さらそういうことされると。
GM:アルジェントはそこで初めて笑みを消す。痛いところをつかれましたな。
ジーノ:……まったく。君が余計なことをしなければ,いつまでも猫かぶっていられたのにさ。
ジョエル:そういう問題か?(笑)
GM:えーと,じゃあアルジェントはまたにやりと笑って,「……ほぉ,かぶっていたかったのかね?」と。
ジーノ:(吐き捨てるように)その方が楽だったんだよ。
一同:黒っ!?(笑)
GM:……はっはは。GMから萌えポイントをあげよう(笑)。
かおる:私もプレイヤーとしてはあげたいとこだけどな。
ティーグル:プレイヤーとしてはね(笑)。
フレイ:まずいだろう,ここでかおるちゃんからあげちゃ!
一同:(爆笑)
ジョエル:つかむしろ,逆友情ポイントとかないのか。
ティーグル:「信じる心」が下がっている……(笑)。
GM:すまん,こういう状況はあんまり想定してなかったもんで(笑)。
ジーノ:あはは。すいませんねえ。

 まぁアレですね。
 ジーノひとりだけイベントが薄くなっちゃったんで,プレイヤーがこーゆー方向に走らざるを得なかったってのはあるんですが……個人的にはこーゆー逸脱プレイは大好きなんだが……。


ジョエル:問題は,乙女ゲーとしてはどうなんだろうという話で?(笑)
ジーノ:うーん,だって俺圏外だしぃ?
フレイ:最初から戦線離脱する気マンマンだよこの人!(笑)
かおる:乙女ゲーの風上にもおけねえ。
GM:まぁまぁ。じゃ,とりあえずそんなとこでこの部屋の審判ことアルジェントさん消えていいかな。この人いると説明台詞が長くてさぁ。
かおる:ま,待てよ。結局,おまえは一体誰なんだよ!?
ジーノ:だから,メルクリオだよ。初代女王の夫で,この王国を作った魔道師。
かおる:し,しかし,話を聞いてるとあいつは「門」を開けたがってるみたいだけど……。
ジーノ:そうみたいだね。あいつに言わせると,この王国は失敗作だったんだって。それで,「門」を開けることによって王国を壊そうとしてるんだ。
かおる:り,リセットボタンを押すようなものか?
ジーノ:りせっとぼたんって何?(笑)
かおる:あーっ,つ,つまり最初から全部やりなおしにするってことか!?
ジーノ:そうだね。……だけどさ。俺らは困るんだ。いきなり失敗作だとか言われてもね。
ジョエル:まぁ,ここで生活してる人間としてはね。
ティーグル:一理あるな。
ジーノ:(冷たく)いきなりこの世界が崩壊するとか言われて,はいそうですか,と見守るわけにはいかないよね。
かおる:だっ,だけどさ……じゃあおまえはどうする気なんだ?
ジーノ:決まってるだろ? 「門」を元通りに閉じる。……というわけだから,そろそろ頼むよ。
かおる:はぁ?
GM:(横から)えー,うまい導入だったのでジーノくんにGMからポイントをあげよう。
ジーノ:いただきます。
かおる:え? え?
GM:で,かおるちゃん。首筋に何かひんやりと冷たいものの感触がある。針のように細いナイフの刃だ。
かおる:……えー,じゃびくっとしてから恐る恐る横目で見てみたりするが。
GM:うん,お察しの通りキ○顔のフェアリーがね。「かおる様。……申し訳ございません」と呟いて,ほんの少しだけ刃を動かす。痛みはほとんどないが,血が細い筋となって流れたり。
かおる:なっ,あ,……えーと,ラキって今どんな顔してんの。
GM:は? どんな顔,と言われても……無表情。目は種割れグラデっぽい。
ティーグル:それで保志○一朗声なわけか……?(笑)
かおる:びっみょー!?(爆笑)

 だから,ラキがこうなったのはあんたのリクエストだ(笑)。

かおる:(ぶつぶつ)だって,ラキにここで裏切られるとはなぁ。
ジーノ:だってほら,「協力者」ってこの時点でもうラキしかいないじゃん(笑)。というわけで言ってあげよう。……遅いよ,ラキ。
GM/ラキ:「申し訳ございません,ジーノ様。機会をうかがっていたものですから」
かおる:ら,ラキ。……まさかおまえ,裏切るつもりか!?
ジーノ:裏切るも何も,ラキは女王に仕えている。始めから「俺たち」の仲間だよ。
かおる:な……。
ジーノ:ラキ,かおるちゃんは俺が抑えてるよ。他の連中に邪魔をされないうちに,「門」を頼む。
GM/ラキ:「わかりました。後はよろしくお願い致します,ジーノ様」と言って,ラキはナイフを持ったまま飛んで行く。
ジーノ:じゃあかおるちゃんの腕をつかんで部屋の奥の方へと引っ張って行きます。
かおる:なっ……ど,どういうことなんだよ! 説明してくれよ!
ジーノ:だいじょうぶだよ,別に危害は加えない。ただ,ラキの邪魔をしないようにここでおとなしくしていてもらいたいんだ。
かおる:ら,ラキは何をするつもりなんだ?
ジーノ:え? 扉閉めるだけ。
かおる:んなあっさり言うなぁ!?
ジーノ:と,言われてもね。……あのね,「門」のところに行けるのは必ずしも「異世界の少女」だけってわけじゃないの。協力者とともに「試練」をくぐり抜けた「異世界の少女」の血が2,3滴あればいいんだよ。
かおる:あっ,……さっきのナイフ!
ジーノ:そうそう。だから,ラキは君の血がついたナイフを使って「門」に至り,「門」を閉める。わかった? はい,じゃあ解説しゅーりょー。
かおる:なっ,何が終了だぁ! 離せ! 離せよぉ!
ジーノ:離せと言われて離すバカはいないと思うけどなぁ? それに言っただろ? 真実はひとつじゃない,ってね。
かおる:……なんだよ。意味がわかんないよ。
GM:だから,全ての人間にとって「最もいい方法」なんてものはないってことだね。
ジーノ:そう,君はみんな幸せになる方法を,みたいなこと言うけどね? 君が「門」を開けたら困る人は確実にいるんだよ。
かおる:で,でも,このまま「門」を開けなかったら,どっちにしろこの王国は滅びるんだろ!?
ジーノ:いずれ,でしょ? 今すぐに,じゃない。それに,本当にああなるって確証はあるの? メルクリオの言葉が1から10まで全て正しいって,君に言える?
かおる:め,メルクリオだけじゃない,ローゼリットだって……。
GM:えー,ちょっといいですか? そこで,外の会話が聞こえる。誰かがラキに気づいたようだ。
ジーノ:ちっ,本当に余計なことを……!
かおる:え?
ジーノ:かおるちゃんをさらに部屋の奥の方へ突き飛ばして,言います。いいかい,ここから出ないこと。でないと, 俺は君を殺さなきゃいけなくなるからね。
かおる:ジーノ!
GM:はい,ではそんなとこで,ちょっと外の方に話を移させていただきます。

 

  Stage 14


GM:えー,では部屋の外の人々。扉がちょっとだけ開いて,そこからラキがぱたぱたと飛び去って行きます。
フレイ:ラキ? どないしたんやー?
GM/ラキ:「あー,すみません。ちょっとこの先の様子を見に行ってきます」
ジョエル:いや,それよりかおるとジーノは?
GM:答えずにぱたぱた。
ティーグル:(横から)……で,ラキが血のついたナイフを持っているということは,わかるんだろうか。
GM:わかってていいです。ちなみに「シリウス,裏切り者が出たぞ」という子安声がティーグルの耳元でしたりするが。
ティーグル:それは無視。ナイフに気づいた時点でラキ追って走り出す。この先どうなるかわかるから。
GM/アルジェント:「……相変わらず気の早い奴だな」
ティーグル:かおるの意志を無視して事を決められてはたまらない。それはメルクリオ,おまえに関しても同じだ。
GM:ははは。ではジョエルとフレイは?
フレイ:たぶん「?」と思いながらも……
ジョエル:かおるの方が気になりますからねえ(笑)。
ティーグル:一応「後は任せた」くらいは言い残しますけどね(苦笑)。
ジーノ:で,そのへんで俺が飛び出して,ティーグルの後を追います。
フレイ:ジーノ? かおるはどうしたんだ!?
ジーノ:どうもしないよ! 俺は俺の目的を果たすだけ!
ジョエル:で,かおるは!?
一同:(爆笑)
ティーグル:とりあえずジーノはどうでもよかったらしい(笑)。
かおる:いいぞジョエル。プレイヤー的に愛情ポイントをあげよう(笑)。
ジーノ:私もちょっとあげたかったりして。ちなみに,「かおるは!?」と訊かれた時点で「ごめん,壁!」と答えてますが(笑)。
フレイ:扉は開いてるんですよね? じゃあ慌てて中を覗いてみますけど。
GM:さっき思いきり突き飛ばされて,壁に叩きつけられたりしたんでしょうな。かおるちゃんが倒れこんでいたり。
フレイ&ジョエル:(ハモる)かおる!?
フレイ:どうしたんや,いったい何があったんだ!
ジョエル:しっかりしろ,誰にやられたんだ!
かおる:いや……ジーノが……。
フレイ:くそぉ,ジーノがついてて何でおまえにこんな怪我させるんや!
ジョエル:待ってろ,俺がすぐ治してやるからな!
フレイ:わい,ここに薬草持ってるで!
かおる:いや……そうじゃなくて……。
ジョエル:薬草なんて後にとっとけよ! 俺が治癒魔法使うよ!
フレイ:治癒魔法だって回数制限あるやろ! というかまずはこのたんこぶを冷やさんと……。
ジョエル:ってかおる,首にも怪我してるじゃないか! あっ,さっきのナイフ! もしかしてラキがやったのか!?
フレイ:何や,一体何が起こったんや!?
かおる:……ラキが……そうだ! ラキを止めなきゃ!
ジョエル:だから,何でラキを止めるんだ?
かおる:あいつ,扉を閉めちゃう気なんだ!
フレイ:扉って,「世界の門」のことか!? 一体どうして!?
かおる:わっ,わかんないけどぉ,とにかく行かなきゃ!
フレイ:わかった,とりあえずおまえは無理するな,と言ってお姫様抱っこ。
かおる:う,うわぁ!?
ジョエル:じゃあちょっとムッとしつつ,今はそれどころではなさそうなのでぐっとこらえます。……俺っ,先行ってるからなっ。
ジーノ:(突然)ああ〜,ジョエルかわいい〜!? 愛情ポイント〜!?
かおる:確かに今のジョエルかわいいけどっ,ってジーノ,それは何か違うぞ!?
GM:(机を叩いて)……いいからおまえら,とっとと先に進めよっ!?

 今聴き返してみると……この会話は……微妙に成立しているような,していないような……(笑)。

ティーグル:私は先に進んでますよ?(笑)
GM:ええ,ええ,あなたはそうでしょうよ(笑)。
かおる:では私もさくさく進めよう。かくかくしかじかこういうわけなんだ!
GM:今度はそうくるかい!
かおる:ダメですか? だからあの部屋で起こったことのあらましを……。
GM:……いや,もうそれでいいけど(笑)。で,ジョエルとフレイは?
ジョエル:そんな,ジーノが実はそんなに黒かったなんて……(笑)。
かおる:あんーなにまっしろだったのにー♪ はーらーのなーかーはちーがーういーろー♪
ジーノ:そういう問題なんかい!?(笑)
フレイ:(冷静に)はいはい,話を元に戻します。……で,かおる。おまえは結局どうしたいんや?
かおる:……私は……私は,扉を開こうと思う。ダメかな,和兄ちゃん?
フレイ:そんなこと訊くな。おまえがそうしたいならわいはそれでええ。わいは何があってもおまえの助けになりたい。それだけや。
かおる:うん……ごめん,和兄ちゃん……。
フレイ:謝ることなんか何もないで。それより,おまえはそれで本当にええんやな?
かおる:それが和兄ちゃんのためだと思うし……ローゼリットも救えるし……ジョエルのじいさんには悪いかもしんないけど……。
ジョエル:そんなことないよ。じいさんは真実を知りたくて苦しんでただけだ。俺たちはその真実を知った。俺もかおるの選択が正しいと思うよ。
かおる:ありがとう,ジョエル……でもジーノは……あいつ……。
ジョエル:とにかく,俺たちも早く追いかけよう。ジーノにもちゃんと理由を訊かなきゃな。
GM:はい,とりあえずここでシーンを変えますよ。次はティーグル対ジーノですね。