Stage 12


GM:で,次は土の紋章の部屋ですね。さっそく行ってらっしゃいませ。
一同:…………。
GM:…………。おい。アンタだよ。そこの全然しゃべらないお兄さん。
ティーグル:……ああ。
GM:ほんっとに無口だなー。ヒロインを口説こうという気はあるか? やっぱり昔の女に操立ててるんじゃないのか?
かおる:(ティーグルが何か言うより早く)なにー! そういう設定だったのかー!?
ジーノ:いーなー! いーなー! 彼女いるんだー!
ジョエル:(ぼそっと)彼女がいるから極刑受けなかったんでしたっけね。
ジーノ:あーっ!? 裏切ったなー! ボクの気持ちを裏切ったなー!
一同:(爆笑)
ティーグル:いや……だから,俺はまだ何も言ってない……(笑)。
ジョエル:彼女ってひいじいさんの手記にあるこの人ですよね? どんな人?
GM:んふふー,それは今後の展開をお楽しみにー。ともかく,もう部屋に入ってもらっていいかな?
ジョエル:あ,その前に「気をつけろよ」とか言ってティーグルに友情3点。シリウスだってことがわかったからね。
ティーグル:……では黙って受けとっておく。複雑な感情ながらこちらも友情1点。
かおる:私は「あー……」とか思ってるけど黙ってよ。
ジーノ:いってらっしゃーい。でもさぁ,かおるちゃん?
かおる:何?
ジーノ:俺,この2人(フレイとジョエル)の間に残されたくないなぁ。
一同:(笑)
かおる:ははは。私たちがいなくなったら即座に音楽がかかるな。空気がビリビリしてるな。
ティーグル:いわゆる「気まずい雰囲気」(笑)。(*1)
フレイ:じゃあティーグルに「かおるをよろしく頼むで?」と友情1点。で,かおるに愛情3点。……気をつけるんやで。わい,側におれへんけど……。
かおる:え? う,うん。あの……
ジョエル:かおるなら,これくらい大丈夫だよな? 俺はかおるを信用してるから,と愛情3点。
かおる:え? え?
ジーノ:…………。(GMに)ねえ,何で俺ばっかりこんな試練受けなきゃなんないの?
GM:まぁまぁ。GMから応援の愛情ポイントをあげよう(笑)。
ティーグル:(肩をすくめて)かおるのことは心配するな。これが俺の役目だからな。
ジーノ:ねえ,早く帰ってきてね?
一同:(爆笑)
かおる:おまえなぁ……(笑)。
ジーノ:だって,イヤじゃん! こんなラブバトルのど真ん中で!
GM/ラキ:「多少お気持ちはわかりますが,ジーノ様。一応僕もいるんですからね?」(笑)

 閑話休題。とりあえず部屋に入ったかおるとティーグルの前には黴臭い通路が続いている。そこは地下,それも半ば朽ちた鎖や枷,それらに縛られた白骨が転がっているところを見ると,地下牢であったようだ。

かおる:わー……。
ティーグル:……嫌な雰囲気だな。
GM:例によって部屋に入ると入り口は消えうせる。(マップを取り出し)君らが立っているのはここね。前方と左右に通路が続いていて,右側の通路には鉄格子が下りている。で,前方にも鉄格子が見えるんだけど,その手前がぼんやり光っているようだね。
かおる:……てゆーか,妙に細かいんですけど,このマップ……今度は何をさせられるんだ?
GM:それは後でのお楽しみとして,どうするね?(4月2日注:このマップは画像があるんですが,とんでもなく重いため,掲載検討中です)
かおる:ひとまず先に進んでみるか。その光が気になるな。
ティーグル:ではかおるをガードするように,先にたって歩こう。離れるなよ?
かおる:じゃついて行きます。
ティーグル:無言で歩く。
かおる:…………。
ティーグル:…………。
かおる:…………。
ティーグル:…………。
ジョエル:(小声で)もしもし,起きてますか?
一同:(笑)
かおる:起きてるけどさ。えーと……あの,ティーグル?
ティーグル:……なんだ?
かおる:そう言えばこの十字架……裏に文字が書いてあるんだけど,何て書いてあるかわかる? この世界の文字なんだよな?
ティーグル:…………。(GMに)で,何て書いてあるんだ?
GM:あ,そうね。どっちがいい? お互いの十字架に相手の名が刻んであるのと,自分の名前が書いてあるのと。
ジョエル:それは相手の名前だと思いますが……(笑)。
ジーノ:てか,自分の名前書いてあるのってかなり悲しいから!
GM:そっか?
ジーノ:そうですよ。まるで
「1年1組しりうす」みたいなっ!
一同:(爆笑)
フレイ:林間学校行った時に下着に名前書きます,みたいなっ。マヌケすぎますな。
ジョエル:いえわかりませんよ? 彼女が無くさないようにシリウスの名前を書いておいてくれたのかも……。
一同:(再度爆笑)
ジーノ:ナニモンですかそれはっ!
かおる:はっ,実はマジックペンで!
フレイ:実は住所も一緒に書いてあるとか。
ティーグル:ドッグタグじゃないんだから……。
ジーノ:迷子札。
一同:(さらに爆笑)
ティーグル:……相手の名前が彫ってあるということで。いいですか?
GM:そうしましょう(笑)。
かおる:(横から)だからぁ,相手のに「愛する○○さんへ」とか彫ってプレゼントしたんだろ?
GM:それはそれでイテぇよ!(笑)
ティーグル:(きっぱりと)名前だけだと思う。
かおる:(←本人は真面目)でもさ,昔戦地に赴く恋人とかに……。
ティーグル:お願いだからやめて(笑)。
GM:あー,時間がないので話を戻すぞ。どっからだよ。……てゆーか「何て書いてあるかわかる?」から先進んでないのかよっ!?
一同:(大爆笑)
ティーグル:……みんなして火がついたように茶々入れてくるからだ。
GM:そういうわけで「何て書いてあるかわかる?」とかおるちゃんが訊いたところからね。
ティーグル:では突然立ち止まる。
かおる:(←背中にぶつかった)あいてっ!? な,なんだよっ!?
ティーグル:……ああ。と,手をさしのべて立ちあがらせます。
かおる:もう,何なんだよぉ。
ティーグル:……すまんな。
かおる:いいけどさぁ,この十字架! これ,読めるんだろ?
ティーグル:ローゼリット。
かおる:え? 何それ? 人の名前か?
ティーグル:…………。
かおる:おい?
ティーグル:…………。
かおる:えーと……ごめん。私,何か変なこと訊いちゃったのか?
ティーグル:いや……気にするな。
かおる:そ,そっか。よくわかんないけど,とにかくがんばろうなっ?
ティーグル:では軽く苦笑している。
かおる:そっ,そう言えばさっ。おまえ普段は何してんだ?
ティーグル:…………。普段,と言われてもな。
GM:(ぼそっと)虎をやっています。
一同:(笑)
ジーノ:そのまんまやんけ(笑)。
ティーグル:だから……この旅に加わるまでは虎の姿でいた。おまえも知っているだろう?
かおる:え? あ,そ,そっか。
ティーグル:…………。
かおる:で,でもっ,あれカッコイイよなっ!? 白い虎だもんなっ!
ティーグル:……そうか?
かおる:そうだよ。私白い虎なんてテレビでしか見たことないよ!
ティーグル:……テレビとはなんだ。
かおる:うっ。て,テレビっていうのは,遠くのものを映す箱みたいなもんだよ!
ジーノ:的確だな(笑)。
GM:しかし,噛み合ってない会話だこと……。
かおる:だっ,だから,私はその箱でなら白い虎は見たことあるんだけどっ,
GM:はいはい。必死に話をつなげようとするその努力は買うのでかおるちゃんに友情3点。話を先に進めます。えー,あなたがたが噛み合わない会話をしていると,奥の方から声が聞こえます。「シリウス……」と。ティーグルには聞き覚えのある,少女の声です。それとともに,大勢のうめき声が反響する。
ジョエル:(BGM担当)おおおおおおおぉぉぉぉぉ……。
ジーノ:(同じく)うううううううおぉぉぉぉ……。
かおる:な,なんだ……?
GM:さらに奥から声が響いてくる。それだけは鮮明な,透き通るような声だ。「シリウス……」と。
ティーグル:……まさか。そんなはずはない。
かおる:え? なんだ? 何のこと?
ティーグル:…………。
かおる:じゃあ下から顔を覗きこんで言う。……なぁ,大丈夫か? 顔色悪いぞ?
ティーグル:……いや,大丈夫だ。先に進もう。
かおる:本当に大丈夫か? 無理するなよ? 私もついてるからなっ!
ティーグル:…………。
GM:えー,そうやって進んでいくと,正面に四角い部屋が見える。部屋っつーか,牢獄なんですけどね。その入り口に,何故か錆びもせずピカピカなままの鉄格子が下りている。で,手前に赤く光る魔方陣と,青く光る魔法陣が並んでいるわけだ。
かおる:これ,なんだ?
GM:〈魔力感知〉で判定かねえ? ……ない? じゃあちょっとわかんないかな。
ティーグル:これまでのパターンでいくと,即座に死に至らしめるような罠はないんだろう。……おまえはここにいろ。
GM:と,赤い魔方陣に触れてみるわけですね? すると何も起こらない。
かおる:なんだ? 大丈夫そうだな? じゃあたたたっと前に進んで……。
ティーグル:待て。と襟首ひっつかんで止めます(笑)。
かおる:わあ,何すんだよ!
ティーグル:おまえは無用心すぎる。もっと考えて進め。
かおる:う……ごめん。わかったよ。でも何もなさそうだし……。
ティーグル:か,どうかはまだわからん。……もう一歩前に進んで,青い魔方陣に足を踏み入れてみる。
GM:はい。するとがらがら……と音をたてて,目の前の鉄格子が上がります。
かおる:……?
ティーグル:……なるほど,何となくわかった。もう一度赤い魔方陣に乗ってみる。
GM:では赤い魔方陣に足を踏み入れた瞬間,鉄格子が下がります。
かおる:これって,青に乗ると鉄格子が開いて,赤だと閉じるの? それだけ?
GM:まぁ,それだけです。ただ,鉄格子が開閉する音は目の前だけじゃなくて,背後でもしているみたいだけどね。
ティーグル:ふむ……。
かおる:(その横で)ちょっと遊んでみよ〜♪ 赤乗って,青乗って〜♪
ティーグル:もう一度襟首ひっつかんで,ぶら下げていきます(笑)。
かおる:うわい!
ティーグル:おまえはな。遊んでいる場合か?
かおる:う。ちょ,ちょっとぐらいいいじゃん。
GM:つかGMから言わせてもらうとだな,話を進めさせてくれよ(笑)。
ティーグル:じゃあかおるをぶら下げたまま部屋に入って,それから下ろします。
GM:はい。えー,その部屋には白骨死体がごろごろと転がっています。みな重い鎖に手足を縛られていたようです。周囲の壁とかを見るともうかなりの年月がたっているようだが,鎖は鉄格子同様,まったく錆びていない。何か魔法の力が働いているように思えるが……。
ジーノ:(BGM)うおおおぉぉぉ……うらめしいぃぃぃ……。
ジョエル:(BGM)ぅぅおおおぉぉ……く,くるしいいぃぃぃ……。
GM:はいそこ,BGMはもういいから。ともかく,少女の声は細く,「シリウス,どこ……?」と呟いているぞ。
かおる:(ふと)……あ? そう言えばジョエルとエヴァが言ってた。「シリウス」はティーグルのことだって……。
ティーグル:……そうか。それは間違ってない。かつてそう呼ばれていたこともある。
かおる:え? つまり,それっておまえの本名なのか?
ティーグル:…………。この場合,「本名」というんだろうか。
GM:さあねえ(笑)。かつての名,とかじゃないの?
ジョエル:でもシリウスが本名なんだよね? じゃあティーグルってのは?
フレイ:芸名。
ジーノ:源氏名?
ジョエル:街の灯りがとてもきれいねヨコハマ……♪
一同:(爆笑)
ティーグル:(強く)と・お・り・な・です。
ジーノ:でもよく考えると,何でわざわざ本名隠してんの?
GM:シナリオの都合上(笑)。というか,一応叛逆者の名前だからなぁ。そうそう名乗ってもらっても困るんだけど。
ティーグル:別に捨てた,とか名乗りたくない,とかじゃないけど,もう百年近く前の話だからな。今の世界にもう「シリウス」という名の人間はいないわけだからな。
かおる:え,えっと……じゃああの声はあんたを呼んでるのか?
ティーグル:…………。
GM:ちなみに,ふと見ると一番奥につながれた白骨の首に,あなたが持っているのより少し小さめの十字架がかけられている。
ティーグル:歩み寄る。
GM:すると,そこにぼんやりした影が浮かび上がる。歳のころは16,7,淡い微笑を浮かべた長い黒髪の美少女だ。……ちなみにツインテール黒ニーソ,ではない。(*2)
一同:(笑)
ティーグル:ミニスカ黒ニーソはあんまりだ(笑)。一応18世紀のフランスから来たことになってるのに。
GM:だそうです。ま,白いシュミーズドレスとか,そんな感じで?
かおる:な,なんだ……? 幽霊?
GM:じゃないですかね。しかし幽霊はあなたを無視して,ティーグルに微笑みかけます。「来てくれたのね,シリウス……ずっと待っていたのよ。あなたが迎えに来てくれるのを……」
ティーグル:……ロゼ。
GM:ちなみに霊体にも何故か鎖がからみついているようで,彼女がゆっくりとあなたに歩み寄ってくるたびに,しゃらん……しゃらん……と音をたてる。そしてそっとあなたの腕に触れようとするように手を伸ばす。
ティーグル:囚われているのか……。
かおる:お,おい? おまえの知り合いなのか?
GM:気がつくと,辺りの白骨死体の上にもぼんやりとした影がゆらめいている。その多くは,戦場で果てたであろう傷だらけの騎士や魔術師たちだったりする。何人かは粗末な衣服で,首から血を流している。恐らくは刑死したんではないかと。
かおる:う,うわっ……。
GM:彼らはとりたてて意味の通る言葉を発しない。うつろな表情のまま,
ジーノ&フレイ&ジョエル:ぅぅぅぅぉおおおおおううううぅぅ……。
GM:はい,ありがとよ(笑)。で,彼らに囲まれながら,少女は言う。「彼らを覚えているでしょう,シリウス?」
ティーグル:ああ……忘れられるわけがない。
GM/少女:「あなたにとっては一時の夢だったのかしら……気が遠くなるほどの長い,長い間,私たちはここで待っていた……あなたが助けに来てくれるのを……」
ティーグル:……助けに,か。俺は,
ジーノ&フレイ&ジョエル:ぅぅぅぅぉおおおおおううううぅぅぉぉおおお……?
一同:(爆笑)
GM:だぁら,BGMはもういいつっとろーに! ティーグルがしゃべれないだろ!
ティーグル:…………。(←期を逸してしまったらしい)
GM:はいはい。ティーグルさんもがんばってしゃべる!
ティーグル:あー……「助ける」とはどういうことだ?
GM/少女:「見て,この鎖を。ここは,この王国が生まれた時より存在する,恨みの牢獄。悲しき魂の囚われる場所。私たちは,何年経とうとここから出ることはできない……」
ティーグル:だったら,どうすればいい?
GM/少女:彼女は腕の鎖を掲げてみせます。「見える? この鎖は,新しい肉を,体を,命を欲しがっている。そして,望みがかなうまで私たちを解放することはない……」
かおる:(ぼそっと)なんかイヤな予感が……。
ティーグル:何か不穏なものを感じるので,かおるをかばうように前に立ちます。
GM/少女:「ふふ……あの女王に踊らされ,こんなところまでやってきた愚かな娘。でも生命の輝きに満ち溢れている。眩しいくらいに。……あの娘を,捧げて。私たちの身代わりにするの。そうすれば,この牢獄もきっと満足するわ」
かおる:はあっ!? ど,どういうこと!?
GM/少女:彼女は花が開くように微笑みます。「シリウス。共に戦った私たち全員と,そこの子1人と,どちらをとるの? ……考えるまでもないわよね?」で,そこであなたの首に腕を投げかけようとします。
かおる:や,やめろっ。ティーグルに何するんだよっ!?
ティーグル:かおるが前に出ようとするなら,片腕で押し止める。……らしくないな。非常にらしくない。
GM/少女:「……シリウス?」
ティーグル:それは何の冗談だ,ローゼリット。
GM/少女:「冗談? 冗談でこんなこと,言えやしないわ」
ティーグル:そうか。だが,放棄するのか?
GM/少女:「放棄?」
ティーグル:もっと貪欲に,両方をとる。そういう奴だったはずだ,おまえは。
GM/少女:「そう? だって,この子は私にとって,大切でも何でもないもの。そうでしょ?」
ティーグル:違う。自分の幸せを求めながら,人が不幸になるのを嫌うのがおまえだった。
かおる:だ……だいたい,おまえ誰だよ!
GM/少女:「それに答える必要はないと思うけど……いいわ,教えてあげる。私はあなたと同じく,この世界の生贄になった女よ」
かおる:い,生贄……!? 私と同じって,も,もしかして,おまえも「異世界の少女」ってヤツなのか!?
GM/少女:「そうよ。かつて『門』を開こうとして,エドワードの裏切りによって志半ばにして果て,今こうして生贄として苦しんでいる……」
かおる:え,エドワードって,ジョエルのひいじいさんだよな? く,苦しむって……?
GM/少女:「本当に愚かな娘。あなた,何も知らないのね」
かおる:(思わず)知るヒマがなかったんですけど。
一同:(爆笑)
GM:……わかったよ。それに関しては私が悪いよ。だから話の腰を折るな! いいとこなんだから!
かおる:(←即座に復活。えらい)そ,それは仕方ないだろ! 女王がちゃんと説明してくれないんだから!
GM/少女:「女王が説明するはずないでしょう? そんな都合の悪いことを」
かおる:ええ? そ,そうなのか?
GM/少女:「『異世界の少女』というのは,滅びに瀕した王国を救うために,新しい血を捧げる存在。そんなことを正直に告げて,協力してくれる子がいるとでも?」
かおる:う……さ,血を捧げるってどういうことだよ。それって死ねってことなのか?
GM/少女:「そうじゃないわ。でももっと悪いかもしれないわね。ほら,私たちの世界でも,近親婚は罪悪とされてきたわね? それはもちろん倫理的な問題もあるけど,血が濃くなることによる障害を防ぐことでもあるの。それと同じ。『異世界の少女』は新しい血を入れるための,母となるのよ」
かおる:え,それってつまり……え,えーーーーーッ!?
GM/少女:「だから世界の生贄。……もっともこんな小娘に『母』になれるとは思わないけどね?(にやりとヤな笑い)」
かおる:え,いや,その,あんたは?
GM/少女:「私? 私は捕らえられ,しばらくの間は『母』として使われた。それから殺されたわ。その後は……ずっとここよ」
かおる:そ,そんな……。
GM/少女:「わかるでしょ? あなたの末路もどうせ同じよ。『母』としての使い道がなくなったら,捨てられるだけ。そしてこの世界が滅ぶまで,ここで苦しみ続けるのよ。だから……」
ティーグル:……昔話はそれくらいでいい。
GM/少女:「……そうね。話はここまでにしましょう。彼女がいなくなった後,ゆっくりと……」
ティーグル:俺は,おまえをロゼとは認めない。
GM/少女:「――――」
ティーグル:おまえがローゼリットなら,どうせかおるを殺すなんてことはできやしないだろう。
GM:少女はすっと表情を消します。その手に,ぼんやりと光るナイフが現れます。「もう一度訊くわ。あなたはこの子をとるの? それとも,私たちをとるの?」
ティーグル:それは決まっているだろう? 貴様はあの世でアレに可愛げというものを習ってくるといい。
GM:では,彼女はすっと後ろに下がります。で,まったく別の女の声で「……馬鹿な男」と呟きます。それと同時に,部屋じゅうが恨みの声を上げる亡霊で埋め尽くされたようになります。まぁ触れられないからとりあえず大丈夫なんだけど,
かおる:で,でも気持ち悪いんですけどっ!?
GM:だねえ。「本当に馬鹿な男。おまえにかけられた呪いが,ただ姿を変えるだけのものだと思っていたの? さあ,その心まで獣に堕とすといい。すべての声は届かぬまま,なす術もなく想う者をその手にかけよ。それがそなただ」
ティーグル:…………!
GM:で,亡霊の怨嗟の声が高くなると……もう判定なしでいっちゃいますね。ティーグルが苦しみはじめます。
かおる:ちょ,ちょっと待て! ティーグルに何かしたら許さないって言っただろ!
GM/女:「ここはこの王国と共に在り,死んでも死にきれぬ者が囚われし恨みの牢獄。おまえ1人に何ができよう,愚かな異世界の少女よ」
かおる:そんな……! とにかくティーグルに駆けよって,
ティーグル:……来るな!
かおる:え!? で,でも……。
ティーグル:入り口の方に向けて,思いきりかおるを突き飛ばす。
かおる:うわっ!?
GM:うむ,よい判断だ。次に立ち上がった時には,あなたはすでに変貌を遂げている。白い巨大な虎の姿。ただし,本来青いはずのその目は,血に飢えたように赤く光っている。あなたに向かって牙を剥き出し,一歩,また一歩と……。
かおる:そ,そんな……! ティーグル! ティーグルってば!
GM:あ,ティーグルさん。虎状態の時はDXが+3,IQが−4ね?
ティーグル:……はーい(笑)。
かおる:……おーい。まさか,戦えとか言わないよな?
GM:いえ,追いかけっこをしていただきます。
かおる:それでこのマップかー!?(一同笑)
GM:そうだよーん。で,その時背後から女の子の声がします。「何やってんのよ!? 早くこっちに来なさい!」
かおる:ほえっ!?
GM:振り向くと,さっきのと同じ姿の幽霊が腕を組んで立っています。「死にたいの!? 早く来いって言ってるでしょ!」
かおる:あ,あんた,もしかしてローゼリットか!?
GM/ローゼリット:「そうよ,ていうか何わかりきったこと言ってんの!」
一同:怖ええっ!?
かおる:いや,カッコイイ!
フレイ:ええ!?(笑)
ジョエル:た,確かにカッコイイかもしれませんが……(笑)。
かおる:GM,友情ポイントあげていいですか?
GM:いいけどさ。……とりあえず逃げたら。
一同:(笑)
かおる:わかりました。とりあえず友情2点。
GM:(友情ポイントを受け取りつつ)はいはい。ではルールを説明します。(マップを示して)この牢獄はこのような形になっています。1ターンごとに〈運動神経〉で判定して,あとはさっきの水泳と同じね。S評価だと15マス,以下Aで10マス,Bで7 マス,Cで5マス,Dで3マス進める。E評価は転んで1ターンお休み。で,ティーグルさんをかわして,元の部屋に戻ってください。
かおる:戻ってどうすんの。
GM:それは走りながらローゼリットが教えるんだけどね(笑)。実は,単に十字架を2つ揃えればいいのだ。今あなたがひとつ持っていて,もうひとつはティーグルさんの背後にあるよね?
かおる:ふーん,まぁいいや。(マップを見て)ちなみに鉄格子や魔方陣って他にもあるの?
GM:ある。視界が開けた時点でどこに鉄格子や魔方陣があるか教えます。なお,ティーグルさんは現在理性を失っているので,魔方陣と鉄格子の相関関係は理解できないものとします。鉄格子が閉まっていたら,魔方陣を探したりしないでぶっ壊そうとするってことね。ひたすらまっすぐかおるちゃんのいる方向へ走ってください。鉄格子は蓄積ダメージが50点を超えたら破壊されます。では,この地点からスタート。かおるちゃんは赤い魔方陣を踏んだとみなすので,現在鉄格子は閉まっています。
ティーグル:じゃあまずは鉄格子をぶっ壊せということ?
GM:そう。ただし,かおるちゃんが他で青い魔方陣を踏んだら,やっぱり鉄格子は開くよ。
かおる:く,くそう。ティーグルのやつ〜。
ジョエル:ま,いざとなったらナウシカ方式で?
一同:(爆笑)
ジョエル:「大丈夫よ,怖くない……」
ジーノ:で,がぶっとな?
かおる:いってえーーーーーーッ!?
GM:噛んでない噛んでない。いいから早くダイスを振らんか(笑)。
かおる:うー……(ころころ)おや? クリティカル。
GM:いきなりかい(笑)。ではまず2歩進んでと,十字路ね。右に鉄格子。左に青い魔方陣。
ジーノ:ここで青を踏んじゃうと,虎さんの前の鉄格子が開いちゃいますよ。
かおる:じゃあ直進。
GM:スタート地点まで戻ったね。では左に鉄格子が見える。右に10歩進んで終わりかな? では虎さん。ちなみに虎の姿なので爪攻撃で。攻撃回数は2回。
かおる:げー!
ティーグル:そのぶん1発のダメージは多くないよ。(ころころ)あ,しかも1回目E評価だし……。
GM:じゃあもう1回。
ティーグル:(ころころ)今度は成功。ダメージは21点。
かおる:ほほう。逃げ切れそうかな?
ジョエル:単純に逃げきってもしょうがないんだよ? 元の部屋に戻らなきゃならないんだから,ある程度こっちにひきつけないと。
かおる:あうー!?

 第2ターン。
 かおるちゃんはC評価で5マス進み,通路の角を右へ。


GM:前方に青い魔方陣。(数えて)その直前で止まったかな?
ジーノ:ぐえっ。これを踏むと……。
GM:当然鉄格子は開く。飛び越すこともまぁ不可能ではないが,結構大きいんでね。判定はしてもらうよ。失敗したらコケてもらうし。
ティーグル:これって素直にかおるが開けてくれるのを待った方がよいような……。

 と言いつつサイコロを振るティーグルさん。ここで目が走り,鉄格子はあえなく破壊。

 第3ターン。
 かおるちゃんはさらに5マス前方へ。
 ティーグルさんは2マス進んだ時点で赤い魔方陣を踏んだので,また鉄格子が閉じる。


ティーグル:これは……また鉄格子のある方向へ行かなきゃならないと?
フレイ:いや,匂いを追っていくということならまっすぐじゃないかな?
かおる:入れ知恵するなー!?
フレイ:いやいや。撒きたいということなら外側の通路を通ってもらった方がいいと思うよ。
GM:まぁ,そうだろうな。
かおる:うえーん! 何で私がこんな目に〜!

 ヒロインだから。(←そうか?)
 さて第4ターン。
 かおるちゃんはD判定。3マス進めるのだが……。


GM:1歩進むとT字路だね。えーと前方に赤い魔方陣。右に短い通路が通じていて,その先も左右にわかれているみたい。どっちに進む?
かおる:えーとえーと,じゃあ右!

 ティーグルさんは淡々と5マス。匂いに従い(笑)通路を右へ。

GM:これは,追いつかれそうにないな。問題は,かおるさんがいつ鉄格子に阻まれるかなんだが。
かおる:あー!? そ,そう言えば私,武器って持ってないよな!?
GM:ないよ。鉄格子に追い詰められたらジ・エンドだな。
かおる:(ころころ)と,とりあえずまたさらに3マス〜。
GM:あ,そう。ちなみに2マス進むとT字路の分かれ目ですね。……左に鉄格子,右に赤い魔方陣。
かおる:(一瞬絶句)そ,それはどうしろと!?
GM:さぁね〜? 戻る?
ジョエル:……いや? 右行って,左に曲がれば鉄格子があるでしょ? その前で待てばいいんじゃないかな?
かおる:え? どうして?
ジーノ:あ,そっか。このまま行けば虎さんが青い魔方陣踏んでくれるんだ。
ティーグル:そうなるな。……飛び越すってのは,ダメだよな(笑)。
フレイ:ただ,かおるちゃんが赤い魔方陣を踏む前に虎さんが青を踏んじゃうと……。
ティーグル:(ころころ)あ,A評価,かな?
一同:おーい!?
ティーグル:(数えて)大丈夫。直前で止まりました(笑)。

 ギリギリセーフ。
 いやぁ,まったくバランスを計算してなかったわりには盛り上げてくれましたなぁ(笑)。
 で,こうなるとよほどのダイス目が炸裂しない限り問題はない。続く第6ターン,かおるちゃんが駄目押しでA評価を出し,鉄格子の前までイッキに進む。


GM:これで勝負は決まりましたね。あとは……。
かおる:(ころころ)ファンブル。
一同:おい!
ティーグル:(苦笑しつつ)こっちはB評価。
ジーノ:(数えて)あ,もう目と鼻の先。
かおる:ひ〜!?
GM:ここでまたファンブルすると,追いつかれる可能性がありますね。まぁ大丈夫でしょ。一度くらい襲われたってダメージ打消しがあるんだし。
かおる:襲われるのはイヤだ! いくら男に襲われるのが乙女ゲーの常とはいえ,
一同:どういう常だ!(爆笑)
GM:(遠い目)ちなみに『アンジェリーク』ってさ,「男と逢っては寝る生活」とか言われてたよね……(笑)。(*3)

 さてさて。
 「獣に襲われるのはイヤ〜♪」と非常に失礼なことを言いながら,かおるちゃんは続く2ターンで鉄格子の前に辿りつき,追いかけっこは無事終了したのでした。


GM/ローゼリット:「ほら,あの十字架とあなたが持ってるのを一緒に首にかけるのよ。早くしなさい!」
かおる:(ぜえはあ)わかってるよー! これでも一生懸命なんだよ!
GM/ローゼリット:「……トロいわね」
かおる:う,うるさいなぁ! これでも100メートル10秒台なんだぞ!
一同:早過ぎるわ!(笑)
GM:おまいはオリンピック選手か(笑)。14秒くらいにしとけ。
かおる:もとい,100メートル14秒台なんだぞー! えーん!
GM/ローゼリット:「……まぁ,よくがんばったわ。見なおしてやってもいいわよ?」
かおる:な,なんだよその態度はー!?
GM:彼女はぷいっと横を向いてしまいます。どうも照れているようです。
一同:(小声で)も,萌え〜……。
かおる:……愛情5点。
GM:おいおい。
かおる:ちなみに,ロゼエンドもありですか?
GM:もちろんアリですけど,って真顔で何言うとんのじゃ! ともかく,十字架を揃えて白骨の首にかけることに成功しましたね? では,そこからふわりと仄かな光が広がっていきます。あたりにうごめいた亡霊ズが,悔しそうな声を上げつつも退散していきますね。ティーグルも正気に戻っていいよ。
ティーグル:人間の姿に戻っていいですか?
GM:OKです。
ジョエル:(ふと)……ちなみに服ってどうしてるんですか?
ティーグル:そこんとこは突っ込まないでください(笑)。
かおる:(真顔で)キューティーハニーみたいなもんじゃないの?
一同:なんで!?(爆笑)
かおる:え? だからいくら破れても気がつけば元に戻ってる。
GM:虎さんのキューティーハニーは怖すぎるからやめてくれ。いや,てゆーかいいんだよ魔法の世界だから! 不条理なんでもアリなの! シナリオ矛盾もなんでもアリ! ね!?
ジョエル:開き直ってどうしますか(笑)。
フレイ:まぁ,魔法で姿が変わる時は服もついてくるんですよきっと。
ジーノ:美少女と美少年はトイレにいかないの法則。
GM:そういうことにしといてくれ(笑)。てゆーかまた話が進まねー!
かおる:で,どうしたんだっけ。
GM:だから,光が広がって,亡霊が消えて……あ,でもってその光は例によってかおるちゃんの体に吸い込まれていきます。
かおる:じゃ,これでクリア,と。
GM:はいな。で,そこはまたただの部屋に戻ってる。
ティーグル:……ローゼリットは,そこにいるんですか?
GM:そうですね,まだおりますね。彼女はじっとあなたを睨みつけた後,ぷいっと顔をそらします。
一同:(小声で)も,萌え……。
GM/ローゼリット:「……何よティーグル。何か文句でもあるの?」
ティーグル:……いや。確かにロゼだな,と思っただけだ。
GM/ローゼリット:「どういう意味よ。てゆーか何笑ってんのよ。……何よ,あんな偽者なんかにちょっとふらっときてたくせに」
フレイ:(小声で)か,かわい〜い……。
ジーノ:(小声で)すごい,GMポイント獲りにきたゼ〜!?な感じですよぉ?
ジョエル:(小声で)というか,すっかり虎ロゼ路線に走ってませんか? かなり萌えですよ?
かおる:……おまえら,仲いいな。
GM/ローゼリット:「な,仲良くなんかないわよっ。だいたい,私はもう死んでんだからね!?」
かおる:……あ,ごめん。
GM/ローゼリット:「べ,別に謝らなくてもいいわよ。そういうつもりで言ったんじゃないし」
ティーグル:…………。
GM/ローゼリット:「……だから! あんたもいつまで笑ってんのよぅ!?」
ティーグル:いや? 別に笑ってなぞいないが?
GM/ローゼリット:「目が笑ってるわよ!」
かおる:(小声で)あのー。いいですか?
GM/ローゼリット:「え!? あ,えっと,それで何の話だったかしら!?」
かおる:あ,えっと……だから,無神経なこと言ってごめんって……。
GM/ローゼリット:「あ,だからそんなのいいのよ。私はある意味自分の選択してこうなったわけだし?」
かおる:そ,そうなのか?
GM/ローゼリット:「それよりあなたこそ気をつけなさい。あの女の言ったことはある本当よ」
かおる:……あの,「母」がどうのって話か?
GM/ローゼリット:「そうよ。まぁ,物理的に性交して妊娠して,っていうのとはちょっと違うけど」
かおる:そ,そんなの……。
フレイ:(真面目に)でも,20人から30人が限度ですよね。
かおる:そういう問題!?
フレイ:(聞いてない)いや? うまくやれば40人は……。
ジョエル:この世界でも十月十日かかるかどうかが問題ですが。
ジーノ:……いや,1人とは限らないな。確か5人くらいまでは1回の出産でいけたはず。
GM:排卵誘発剤とか使えばな。
かおる:この世界にあるのか,そんなんっ!?
GM:そこはそれ,魔法のアレとかソレとかで?
かおる:みんなわかりやすい解説,ありがとうよ。
一同:(笑)
GM:いや,まぁそこまで生々しいことは考えてないですよ。あくまで魔法の世界なので(笑)。
かおる:しかし,やっぱり相当悲惨だと思うんですけど。
GM/ローゼリット:「ま,そうなりたくなかったら,うまく立ち回りなさいってことよ」
かおる:う,うん……でも,おまえはさ……。
GM/ローゼリット:「……心配しなくても,そんなひどいことにはならなかったわよ。ほら,捕らえられた時にもう結構な怪我だったからね。子供生めるほど,体が保たなかったのね」
かおる:……おまえを,ここから出す方法はないのか?
GM/ローゼリット:「あるけど……今は言いたくない」
かおる:どうして?
GM/ローゼリット:「まだあなたは全てを知ってはいない。あなたの選択を強制するようなことは,できないわ」
かおる:全てを,知る……?
GM/ローゼリット:「先に進めばわかるわよ。ほら,いつまでもこんなとこにいないでさっさと行きなさい」
かおる:でも……。
GM/ローゼリット:「……その,別にありがたいと思ってないわけじゃないわよ。その気持ちだけは受け取っておくわ。……ありがとう」
かおる:……うん。わかった。私,行くよ。でも,必ず助けに来るからな。
GM:「期待しないで待ってるわ」と,彼女は完全にあなたがたに背を向けてしまいます。しかし,その肩が震えているのがはっきりとわかる。
ティーグル:…………。
かおる:あ! あのさぁ,あたし,ちょっと……。
ティーグル:なんだ?
かおる:……ちょっと……なんだろう。タバコを吸いに,じゃないな。と,トイレ! トイレ行ってくるから! じゃ!
ジョエル:どこに行く気だ(笑)。
フレイ:あからさまに気を使われてますな(笑)。
ティーグル:……その姿がかわいかったから愛情ポイント。
GM:GMからもあげよう。じゃあかおるちゃんは一時退避ということで。ではロゼちゃんは後ろを向いたまま,「……何してんのよ。あんたもさっさと行きなさいよ。まったくぼやっとしてるんだから」
ティーグル:……おまえはどうなる?
GM/ローゼリット:「私? 私は仕方ないわよ」
ティーグル:この王国がある限り,か。
GM/ローゼリット:「べ,別になんてことないわよ? みんなもいるし」
ティーグル:どうだかな。だったら,こっちを向いて話したらどうだ?
GM/ローゼリット:「ほ,ほんっといちいちうるさいわねあんたはっ」
ティーグル:ロゼ,メルクリオはどうした? あいつもここにいるのか?
GM/ローゼリット:「メルクリオ? 彼はうまく逃げおおせたわ。私が捕らえられた後のことは知らないけど……あいつのことだからね。たぶんまだしぶとく生きてて,どこかで暗躍してるわよ」
ティーグル:…………。
GM/ローゼリット:「古の魔道師メルクリオ。彼の望みは今もなお,歪める世界の破壊。そしてその後の再生。全てを原初に還すこと。自らが創り出した,古き頚木を打ち砕くこと。望みがかなえられるまで,彼の魂は滅することはない……」
ティーグル:そしてそのために,今度はかおるを利用するというわけか。
GM/ローゼリット:「『今度は』ってね,私は利用されたつもりはないわよ。あいつの望みは,私の望みでもあったんだから。たまたまだったけどね」
ティーグル:ああ。知っている。
GM/ローゼリット:「でも,あの子の望みがそうとは限らない……」
ティーグル:…………。
GM/ローゼリット:「だから,さっさと行ってよ。あの子を守ってあげて,シリウス」
ティーグル:ローゼリット。
GM/ローゼリット:「……何よ」
ティーグル:あいつに選ばせていいか?
GM:すると彼女はしばらく黙って,それから涙声で言います。「そんなの当たり前じゃない。そうじゃなきゃ許さないわよ……」
ティーグル:…………。(GMに)ちょっと質問なんですけど。
GM:はい?
ティーグル:霊体ってやっぱ,すり抜けるよな。
一同:(笑)
ジョエル:それはそれで美しいんじゃないですか?(笑)
GM:いや,いいんじゃないか? FF10のラストシーンのように,何故かそこだけ都合よく抱きしめられる!
ジーノ:うお,そこまでするか!(笑)
GM:乙女ゲー法則は物理法則(←?)より優先されるから,おっけー。
かおる:あんた何でもそれで片付けてない?
ティーグル:いや……まぁ,すり抜けるのがわかっていつつも抱きしめる。
フレイ:やっぱり後ろからですな。
ジーノ:前に回りこむという手も。
フレイ:いや,後ろから。
ジョエル:そっと手を伸ばして,うつむく彼女を抱きしめるんだ!
かおる:ギャルゲーは前から。乙女ゲーは後ろから。何となくだけど。
GM:何となくか。妙に説得力があるな(笑)。……アレだね,ロゼと虎は身長差が萌えだね。
ジョエル:いいですね。胸くらいの高さに頭が来るんですね。
ティーグル:…………。

 気がつくと萌え談義に花を咲かせる人々。
 口を挟みづらそうな当人(笑)。


ティーグル:……あの,いいですか。
GM:え? ああ,ごめんごめん。どこからだっけ。
ジーノ:だから後ろから抱きしめたとこからでしょ。
GM:ではロゼちゃんはうつむいたまま,「……早く行けって言ってるでしょ」と細い声で呟きます。
ティーグル:もう少し,待っていてくれるか。
GM/ローゼリット:「いいから私のことは放っといて,あんたはあんたで幸せになりなさいよ。わかってるでしょ? 私はもう死んでるのよ」
ティーグル:おまえはまだここにいるんだろう。
GM/ローゼリット:「そんなの,……それこそもうどうだっていいわよ」
ティーグル:かおるが『門』を開けることを選べば,おまえは解放される。もし,そうでなかったとしても……。
GM/ローゼリット:「そういうこと言うのやめて」
ティーグル:ふむ?
GM/ローゼリット:「やめてよ。(細く)……期待するじゃない」
一同:(しばし黙る)
フレイ:……も,萌え〜!?
ティーグル:……いかん。ツボきたかもしんない(笑)。
ジーノ:めっちゃ萌えです。ってかGM狙いすぎです。
ジョエル:ここで彼女を受けとめられなきゃ男じゃない!な感じですね,虎さん。
かおる:おっかしいなぁ。やっぱり虎ロゼ路線になってるなぁ。私の立場ないじゃーん?
ジーノ:あなたがロゼを奪っちゃえばいいんですよ。
かおる:なるほど!
一同:(爆笑)
ジーノ:いっそみんなしてロゼちゃん争奪戦はいかがでしょう?
GM:そらまぁ,遙時でも蘭ちゃんエンドはあるけどよぅ(笑)。それはともかく,そろそろこの終わらせていいかな? どうも虎ロゼ路線をやりすぎてしまったようなので(笑)。
ティーグル:では微かに微笑んで,そのまま背中を向けて歩みさりましょう。
GM:了解。……しかしなぁ。
ティーグル:なに?
GM:あんたそれは,やっぱり「おまえを助けるために,俺はここに戻ってくる」ってイミじゃないの。
かおる:(ジト目)……私にもそう聞こえたぞ。
ティーグル:いや,そんなことはないよ。戻ってくるかどうかは今後の展開次第だから,
かおる:ひでえ! それはなおさらひでえ!
一同:(爆笑)
ティーグル:ひ,ひどいですか?(笑)
GM:ヒドイ。それはかおるちゃんにフラれた場合,じゃあロゼんとこ帰るか,ってイミだろう。
ジーノ:つまりキープ?
ティーグル:いや,だから……そうじゃなくて(笑)。かおるが門を開けるにしろ閉じるにしろ,彼女の行く末にちゃんとつきあって,それから戻るってことだから。
ジョエル:じゃあティーグルさん,かおるちゃんのこと恋愛対象としては見てないんだ。
ティーグル:んー,そうだね……今のところはね。人としては好きだけど,という感じで。
ジーノ:あなた,それはいわゆる「良いお友達でいましょう」では。
一同:(再度爆笑)
かおる:ははははははは……(怒)。
フレイ:いや,やっぱり妹? 兄妹なんだ。
ジョエル:「妹みたいなものだから」。定番だね(笑)。
かおる:……つまりアレか? 私のことは恋愛対象として見ていないから? ロゼちゃんとフタマタかけてるわけじゃないって?
一同:(さらに爆笑)
ティーグル:……いや……その……だから,人をおいといて勝手に話を進めないでください!(笑)
GM:まぁ冗談はさておき,
ジーノ:でも今の,どこまで冗談で済むんだろう。
GM:……さておき(笑),立ち去るのはちょっと待ってください。十字架持ってってください。
ティーグル:え? ああ,あれって持っていっていいの?
GM/ローゼリット:「何かの役に立つだろうと思うしね。私にはもう必要ないから,あんたとあの子で使って」……と,いうわけでティーグルさんは「銀の十字架(女物)」を手に入れました。ちなみに,双方の十字架とも効果は同じよ。
ティーグル:ああ。では,そうさせてもらおう。
GM/ローゼリット:「(ぼそっと)そのかわり,私のはあんたが持っててよね」
一同:うわっ。
ジーノ:大変だー。ロゼちゃんもまだ諦めてないじゃん。
ティーグル:ではこっそりくすっと笑おう。
GM:余裕だな虎さん。まぁいいや。そんなとこでそろそろこの部屋は終わりにしよう。
 

*1 「気まずい雰囲気」:PSゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』で,その場にいる誰かがヤキモチを焼いていたりすると起こる。陰鬱なBGMがヤな感じ。ちなみにもっとも有名なのは「Hな雰囲気」の謎なBGMであろう。
*2 ツインテール黒ニーソ:
『fate/stay night』に登場する遠坂凛嬢のトレードマーク(?)である。アーチャーさんがいれば,もれなく凛ちゃんもついてくる。そういうものである。(……えーとすいません。シュミに走りすぎたという自覚はあります……)
*3 「男と逢っては寝る生活」:
自室で寝ると1日が終わってセーブできる,というシステムなのでそうなっちゃうだけですよ?(笑)