Research news

研究・論文紹介

3月のoptics expressから: ファイバレーザを用いた倍周波発生+OCTによるCosmetic Science 2006.3.8

2006年3月のOptics Expressから2本

■ファイバレーザを用いた可視域光源 独University of Konstanz
K. Moutzouris, F. Sotier, F. Adler, and A. Leitenstorfer, "Highly efficient second, third and fourth harmonic generation from a two- branch femtosecond erbium fiber source," Opt. Express 14, 1905-1912 (2006)
 ファイバレーザから得られる超短パルスを丁寧に(波形が崩れないように)増幅し、MgO: LiNbO3結晶を複数用いて、2倍波、3倍波、4倍波発生を非常に効率よく発生させたという論文。近赤外の1550nmからの光から、紫外の390nmがわりときれいに出てるようです。
原理などには新しいところはないのですが、非常に丁寧な実験という印象を受けました。


■OCTを用いた人間の皮膚の3次元画像の解析アルゴリズム 筑波大・カネボウ・大阪大
Y. Hori, Y. Yasuno, S. Sakai, M. Matsumoto, T. Sugawara, V. Madjarova, M. Yamanari, S. Makita, T. Yasui, T. Araki, M. Itoh, and T. Yatagai, "Automatic characterization and segmentation of human skin using three-dimensional optical coherence tomography," Opt. Express 14, 1862-1877 (2006)
 (Deluceの専門からちょっと遠いので正しく理解していな場合はご容赦を。)
皮膚科に関連したOCT(光断層診断)の論文はわりとたくさんありますが、このグループの目的はCosmetic Science、つまりお肌のしわなどの表面の状態と皮膚の内部構造との因果関係を明らかにしようということらしいが、これまでの方法では測定できる深度、コントラスト、分解能が十分でないらしい。この論文では、OCTで得られる不十分な情報から表面状態などの特徴を抽出するアルゴリズム群を開発し、実際にスキャニングレーザを用いて実験を行っている。

(あってます?) いずれにせよ、すごい産学連携ですね。

Feb. 19, 2006のNature Materialsから: 半導体ナノ構造を用いた新しい光増幅を実証 英Imperial大, 2006.2.19

Nature Materials(ネイチャーマテリアルズ)の次の号の予告で、英インペリアル大のChris Phillipらのグループ。 Laser Focus Worldにも記事が出てます。
"Gain without inversion in semiconductor nanostructures"という題の通り、反転分布を用いない新しいメカニズムで光増幅を行ったというもの。
ちなみに光増幅とは光を光のまま増幅することで、すべてのレーザーの原理は光の増幅+共振器構造によるもの。その原理の原理はアインシュタインまださかのぼり、すべて反転分布という現象を使っています。
この論文のすごいところは、この反転分布を使わない新しい方法を半導体ナノ構造を用いて実証したところです。 原理自体は以前から知られていたそうで、専門家の間では"Gain without inversion (GWI)"と呼ばれています。中身を解説するのはここでは避けますが、物質と光のコヒーレントな相互作用(干渉)によって光増幅が起こることが量子力学で説明できるそうです。ところが、この現象を見るためには原子気体を特殊な状況下で配列させるようなかなり特殊なことが必要で、実際に行うのは非常に難しいのですが、インペリアル大のグループは半導体ナノ構造を用いて「擬似原子」を作り上げることによって問題を解決したそうです。 ちなみに、この「擬似原子」を用いれば、一部ではやっているslow light(音よりもゆっくり進むような光)なんかも出来るそう。

2月のoptics expressから: フォトニック結晶を用いた光フリップフロップ回路 2006.2.8

Optics Express 14(3)からのチョイスはこれAll-optical flip-flop circuit composed of coupled two-port resonant tunneling filter in two-dimensional photonic crystal slab。ブログのほうにも乗っけました。

フォトニック結晶関連というと玉石混交で、「普通のフィルタでいいじゃん」「ロスが低くなったといってもファイバからの結合損がxxったらつかえねーじゃん」など、華々しい予算取りの裏側で山のような愚痴が聞かれます

今回のこの論文は、そういった論文とはちょっとちがうような渋さがあります。

中身は板状のフォトニック結晶を用いて光のフリップフロップ回路を作る(作れる)ことをシミュレーションで示してます。

光で最も苦手なのは論理演算などのデジタル的な信号処理なのだそうで、最も難しいのが光メモリや全光記憶素子だそうです。ですから、フリップフロップ回路が光で出来ちゃうといろいろと役に立つことは多そう。 中身は完全に理解しておりませんが、非線形+結合共振+フォトニック結晶による光の閉じ込めで、比較的低いパワーで動作するらしい。 実用化になるとかといったレベルではないけれど、こういった渋い研究が大学以外で脈々と進められていることは大変すばらしいことだと思います。NTT、がんばれー。

超広帯域光源を用いた高性能ライダーの開発 米国NIST 2006.2.7

元記事はこちら。ついでにLaser Focus Worldにも大きく取り上げられてます

ライダーとはlight detection and ranging (LIDAR)の略で、レーダーの光版のようなもの。光パルスを遠方に向けて発射し、反射光の強度やドップラーシフトにより遠く離れた物体との距離や移動速度(振動)などを計測する。国内では三菱電機が製品で強く、産総研がよい研究をやっている。

今回の米国NIST(アメリカの計量研のようなところ)発表は、光源と、データの処理法に特徴がある。光源は、光コムという等間隔に並んだ広帯域なスペクトルを持つ特殊なもので、同グループはこのような光の発生・応用法では権威(昨年のノーベル物理学賞にニアミスしてます。)。また、反射された光が戻ってくる際の波形歪みを処理するソフトを開発し、非常に高性能なものが出来たといっている。例えば、1km先の物体が45ミクロン(1ミクロン=1000分の1ミリ)くらい移動したかどうかを見極められるらしい。

技術的な中身はあまり触れられておらず、3月のOptics Lettersの掲載を待つことになる。

1月のoptics expressから: CMOS作成技術で作る光集積回路 ゲント大 2006.1.31

まだまだ製品には程遠そうですが、これCompact wavelength router based on a Silicon-on-insulator arrayed waveguide grating pigtailed to a fiber array 。ブログのほうにも乗っけました。

SOI(Silicon-on-insulator)技術を使って光集積回路を作ったという論文。サブミクロンサイズで作成でき、導波路のコア・クラッド間の屈折率差を高くとれるため、高い集積度が期待できる。また、作成方法が、電気回路のCMOS LSIと同じであるので、わりと安く出来るという点が売り。
この論文では、従来問題であった光ファイバとの結合損失を解決し、4x4のコンパクトな波長ルーター(といってもただのAWGのようであるが)を作成したというもの。

Ghent大のグループ。ベルギー恐るべし。やるなー。がんばれー。



xxxx

新着情報

WDM PON技術レポートup
研究・論文紹介更新 3/13
ニュース更新 ほぼ毎日
English page will open soon.