あれはまだ僕が社会人一年生のの頃、主張先で知り合った名古屋に住む女の子と付き合ってた時の話。
当時は今のようなメールなど存在しない時代で、電話か週末には新幹線で彼女の住む名古屋まで行っていた。
薄給だった僕にとって正直往復の新幹線は痛かったが、それをさっ引いても彼女と逢う方が僕には優先された。それほど彼女を愛していたのだ。
日曜の夜の最終新幹線。僕は『出来るなら止まってしまえ!』といつも思ってた。
そんなことになる前までは、僕は日曜の最終新幹線の話をテレビなどで見て、『なに!悲劇のヒーロー・ヒロイン気取ってんだよ!』などと漠然と思ってたが、まさか当事者になるとは!
ひとりで帰る新幹線の2時間彼女の事を思い出しては、感傷に浸っていた。
しかし、22才と19才の若い二人は遠距離恋愛などに耐えられるわけもなく。
【別れの予感】は日増しに近づいていた。
『ゴールデンウィークを利用して東京に遊びに来る 』
彼女はいつもの調子で電話をしてきた。僕は直感的に【別れの予感】を感じた。
そして、彼女は東京に来た。彼女からこちらに来るのは初めてだった。
本当に至福の数日間を彼女と過ごした。
別れの話しは最後まででなかった。
そして、東京最後の夜。僕は当時お気に入りだった六本木のディスコに彼女を連れていった。新幹線の最終時間を気にしながら。『そろそろ店を出ないと間に合わないな』という時間が近づいたときチークタイムとなった。
彼女を誘い踊った。かかってる曲はダイアナロスとマービンゲイのディユエットの『you are everything』二人はいつになく強く抱きしめ合い、激しいキスを交わした。
そして、タイムリミットとなり、店を出る際『東京駅まではひとりでタクシーで行くから』という彼女の瞳は濡れていた。『ああ、そう』僕は素っ気ない返事を装った。最終新幹線のプラットホームにもう二度と立つことはない。二人とも勘がいいのでそれが最後の瞬間になることは解っていた。
昨日(7月2日)友人と別れた後、新宿のバージンメガストアで、たまたま試聴したラブバラードにこの曲が入っていた。もう僕にとっては遠い過去の出来事であったはずなのに。鮮明にあの時の光景を思い出し、なぜか涙があふれた。音楽は時として残酷だ!
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