水資源学シンポジウム&第3回水フォーラム「総合的水マネジメントの今後」(2002.3.18)

水資源学シンポジウム 第3回水フォーラム 合同開催
「総合的水マネジメントの今後」

日時 2002年3月18日(月)10:00〜16:30
場所 日経ホール
主催 日本学術会議水資源学専門委員会、水文・水資源学会、国土交通省

基調講演「農業水利と流域水資源管理(水マネジメント)の展望
      丸山利輔(石川県農業短期大学長)
事例報告「流域水循環系の健全化と流域マネジメント」
      虫明巧臣(東京大学生産技術研究所教授)
    「海老川流域の取組み」
      鈴木茂樹(千葉県土木部都市河川課主幹)
    「鶴見川流域の取組み」
      高野匡裕(国土交通省関東地方整備局京浜工事事務所長)
パネルディスカッション
  コーディネータ/虫明功臣(東京大学生産技術研究所教授)
  パネリスト/宮村忠(関東学院大学工学部土木工学科教授)
          岸由二(慶応義塾大学経済学部教授)
          恵小百合(江戸川大学社会学部環境情報学科教授)
          鈴木茂樹(千葉県土木部都市河川課主幹)
         小林正典(国土交通省土地・水資源局水資源部水資源計画課長)


□基調講演「農業水利と流域水資源管理(水マネジメント)の展望
      丸山利輔(石川県農業短期大学長)

・健全な水循環系とは
  人間の営みと環境の保全とが適切にバランスしている状態
  人間の営みと環境とが満足できる物質・エネルギー循環が形成されている状態
  小循環を基本に系外にでる物質を最小限に Small is beautiful

・農業用水の今後の課題
  水量の節減よりも水質の保全を
  減農薬・減肥料の努力を
  休耕田は生態保全・地下水涵養源として機能
  環境用水・地域用水として機能 犀川の鯉の遡上を見て

□事例報告「流域水循環系の健全化と流域マネジメント」
      虫明巧臣(東京大学生産技術研究所教授)

・地球規模での水循環。正確な予測は困難と考える。
・いかに効率的に使っていくか。
  都市用水を以下に節約するか。水洗トイレを全地球的に適応できるか?

・流域における水循環。
・人間と水循環系との係わり。利水、治水、環境の保全・回復。
  各側面での要求の相違、地域間、部門間での利害の対立、新技術の適用とそれに
  伴う制度的な対応によって、軽減されるが本質的には問題は存在。
・水循環における種々のバランスと持続可能性が保たれた状態。

・平成11年10月。関係省庁連絡会議。
 流域を中心とした一連の水の流れの過程において、人間の営みと循環の保全に果たす
 水の機能が、適切なバランスの下にともに確保されている状態。

・「健全な水循環系」とは?
 流域を中心とした水循環の場において、治水と利水と環境保全に果たす
 水の機能を適切でバランスのとれた状態にする。→流域水マネジメント。

・専門分野、行政分野の統合化がマネジメント。
・流域が一つの経済圏、文化件圏をなしていた。

・流域(圏)水マネジメントとは?
 流域:集水域。
 流域圏は、集水域・利水域・氾濫域。

・古典的な流域管理は、利水と治水。トップダウン方式。
・米、1990年代〜、流域マネジメント、持続可能な発展。利水+治水+環境重視。
  地域・市民・住民包含するボトムアップ型。
 どうにかこうにかやっていく、調整型・協調型マネジメント。

・都市河川流域での水循環系健全化の試み
  ・1993〜95、都市の水循環改善研究会
  ・1996〜98、都市の水循環再生リーディングプロジェクト
    行政間の役割分担と連携、開発事業者への協力要請と義務つけ
    地域・市民参加の推進
・より大きな都市河川流域での試み 行政部門間の連携・協働
                 地域住民参加型行政における壮大な社会実験
   新河川流域(東京都と埼玉県)水循環マスタープラン
   鶴見川流域(東京都・神奈川県)水マスタープラン(関係者100名以上)

□事例報告「海老川流域の取組み」
      鈴木茂樹(千葉県土木部都市河川課主幹)

・人口21万人を推移。
・市街化率、平成5年65%、2020年65%、21世紀中頃83%を想定。

・洪水の発生。河川の整備の遅れもある。
・下水が普及していない。生活排水が流入。→水質の悪化。
 朝から午前中は洗濯等、夕〜夜はお風呂で、流量が増加。
 BDD11mg/lで推移。目標は10mg/l。
・魚類。コイ、フナ、ドジョウ等いるが少ない。生息しない地域もある。
・下水道の整備、市街化の増加で、流量、汚濁が現象すると予測。

・治水、環境面を重視。
・千葉県、船橋市、企業、市民団体等で、推進協議会。
 平成12年13月に「海老川流域水循環系再生行動計画」
  水循環再生の考え方(基本方針と計画目標)
  施策の実施主体と関係制度。それぞれの役割を定めた。
・雨水貯留浸透施設。流域全体に設けている。
 ほとんどの小中学校にも設けている。浸透施設を付加しようとしている。
 戸建ての浸透桝、2700家庭。平成7年時点で。
 年間150〜300程度の浸透桝を住宅につけている。補助金もある。

・公園緑地の整備と保全。
 一人あたりの面積が周辺に比べて半分。特に斜面緑地の保全。
・河川の整備。調整池、河川浄化施設。
・下水道の整備。
・合併浄化槽の普及。
・水資源の有効利用。

・計画のフォローアップ。始まって2年程度で、河川の影響は未だ。

・海老川流域地域懇談会。
 流域全体としてのネットワーク作りを推進しようとしている。
・市民参加のイベント。水質調査。

・21世紀中頃の海老川の姿(目標)。豊かな水量、BOD2mg。

□事例報告「鶴見川流域の取組み」
      高野匡裕(国土交通省関東地方整備局京浜工事事務所長)

・流域面積 235kmm
 流域人口 184万人
 市街化率  85%。典型的な都市河川。

・流域の都市化に伴い、水害の発生が頻発。昭和51年から取り組む。

・昭和30年より、ピーク流量は2倍、水位上昇時間も早い。
・全国に先駆けた総合治水対策。新横浜でのピロティ型貯水池。
・鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)
 上流から下流まで50を超える市民団体により組織。

・流域の課題。
  河川の流出増
  平常時流量の現象
  自然環境の悪化
・治水面 流域の保水、遊水機能。埋め立てられた調整池。
・平常時の流量と水質。水量減量、水質もワースト3。
・土地利用。谷戸の現象。緑の現象。

・準備会(平成11年10月〜平成13年〜5月)の設置と多様な検討
  学識経験者、自治体、市民、国。空前絶後の総勢100名の参加。
  課題抽出→マネジメント検討→考えられる施策例→マスタプラン

・マネジメント、5つの視点
  @洪水時水マネジメント 洪水危機、豪雨
  A平常時水マネジメント 水量、水質、雨天時の水質
  B自然環境マネジメント 流域ランドスケープ
  C震災・火災時のマネジメント
  D水辺ふれあいのマネジメント

・検討
 @水循環系の健全化がキーワード
  流域という視点で都市を見つめる。
  流域人。バクのかたちをアピール。
 A情報の提供と協働の場
    制度研究会・分科会→流域水委員会
    一般市民との関わり
 B各種シミュレーションモデル 鶴見川流域データベースと水循環モデル
   降水量100mmに対して、流水は上回る。区域外からの導水。
   下水道の処理水が多い。水質悪化の原因。
   普段の水量は減っている。上流、支線には下水処理の水は戻らない。
 C新しい制度の検討
   保水・遊水機能の移転・代替システムのイメージ
 D合意形成 マスタプランの推進へ

・今後の取り組み
  平成14年1月〜 マスタプランの推進。実行性の重視。
           20〜30年目標。実行は5〜10年。

   基本理念、水マネジメント、推進方針
                基本方針
                計画目標
                施策展開

   組織構成 行政会議,モデル分科会→流域水委員会
        市民・流域懇談会

・流域をどう捉えるか。望ましい河川と流域の姿を目指す。
   河川としてだけでなく、流域として捉える。
   行動主体の明確化
   施策充実の検討 いろんな枠組みを検討。すき間をなくす。
    法制度、インセンティブ
   市民、自治体との連携。フレキシブルな枠組みが必要。


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